特集
後藤・山田・笠原の3氏と振り返る2014年のニュース
~4K、新VAIO、Windows無償化、Oculus Riftなど
(2014/12/31 06:00)
2014年も残すところあと1日。今年もさまざまなニュースがあった。その締めくくりとして、2013年に続き、弊誌に長年寄稿頂いている後藤弘茂氏、山田祥平氏、笠原一輝氏の3名にお集まり頂き、座談会を開催した。
前回は1月から大きな話題となったニュースを個別に取り上げていったが、予想を遙かに超える長時間となってしまったので、その反省から今回は話題を10個に絞った上で、あれやこれやと語って頂いた。
また、今回も2014年に購入した物についても伺ったので、3氏が何を買って、何を買わなかったのか? そして何を最も気に入ったのかについては後編でお届けする。
なお、座談会を実施したのが12月中旬頃だったため、その後にあった、VAIOのスマートフォン参入という大きなニュースはここでは取り上げていない。
4K液晶の低価格化
【司会】2014年はCESを皮切りに一般ユーザーにも手の届く価格帯の4K液晶ディスプレイが発表され、以降、製品数もぐっと増えた年でした。デルが年末に出した製品は、予想を超える受注で発売が延期になったり、話題性だけでなく、実売もそこそこあったようです。みなさんは4K液晶は買いましたか?
(誰も挙手せず)誰も買っていないと(笑)
【山田】まだ必要ないと考えてます。96dpiの設定で視認性を考えると僕の場合50型の大きさが必要なんだけど、いくらなんでも50型は僕の机には置けないからです(笑)。それから4Kのコンテンツもまだないですし。まぁ、デジカメの写真は別ですけど。
【司会】確かに、TVの場合だと、ネイティブ4Kのコンテンツはまだかなり限られているので、アップスケールでフルHDがさらにきれいになるとは言え、買い換えを促進するほどのパンチはないですね。
一方PCの場合、サイズが小さいと視認性が下がるというのはさておき、解像度が上がると、情報量が増え、生産性も上がるので、すぐにでも4Kの恩恵に預かれると思うんですよね。
【笠原】僕個人の唯一の問題は、メインPCの「VAIO Duo 13」にDisplayPortがないので4Kで60Hz表示ができない点なんですよね。HDMI出力や、USBアダプタを使っても30Hz止まりになってしまうので。
【司会】では、ノートPCを買い換えてDisplayPortが付いていたら、4K液晶を買います?
【笠原】その場合は喜んで買いますよ。僕も若杉さん(注:司会者)と同意見で、デスクトップが広くなるのは大歓迎ですから。
(ここで後藤氏のスマートフォンからIngressの効果音がけたたましく鳴る)
ちょっと、人がしゃべってる時に音出さないでよ(笑)。今27型のWQHDと23型のフルHDを並べてるんですが、問題が解決されれば、4K 1枚にしたいと思っています。
【司会】4Kだと、動画編集の時、フルHDの動画もドットバイドットでプレビューを表示させながら、ほかのタイムラインとかで作業できるので、いいと思うんですよね。
【山田】でも、Adobeのソフトは高解像度対応できてないから、4Kだとどうやってボタンを押すの? っていうくらい小さくなって困るじゃん(笑)。Adobeが一番遅れてるよね。
【後藤】僕の場合は、ベッドに取り付けられるかだけが問題です。
【笠原】そんなの後藤さんだけでしょ(笑)。
【山田】解像度より、サイズが重要と(笑)。
【後藤】そうそう。
【司会】今後藤さんのベッドルームのディスプレイ環境はどうなってるんですか?
【後藤】今は、アームでベッドに覆い被さるように21.5と22と24型の3台を取り付けてます。これがベッドの下のデスクトップPCに繋がってます。この脇にはノートPC 2台を置いてます。
【司会】後藤さんはそれを寝っ転がって使ってるんですよね?
【後藤】そうそう。で、キーボードとマウス用のアームもある。
【山田】そのうち、上海問屋あたりから、後藤モデルのアームとか出るんじゃないの(笑)?
【司会】じゃぁ、今使っている24型くらいの4Kが出ればありですか?
【後藤】それはあり。でも、モバイル業界にいる人を見てると、まるで4Kには関心がないんだよね。
【司会】ただ、モバイル端末を見ると、最新のXperiaやGoPro、ミラーレスデジカメなど、普及機クラスで4Kを撮影できる端末が増えてきていますよね。
【山田】それについては、デジカメと同じで、画素だけ競って上げても、しょうがないと思うんだよね。画質が追いついていない。
【笠原】コンシューマとITだと状況が少し違ってて、IT業界だとこれまでもそうであったように、高解像度化は普通に進むでしょうね。それから2015年になれば価格はもっと下がりますし。
【司会】COMPUTEXでは、IntelがSamsungと協業して399ドルの4Kを出すと言ってたので、そろそろそれが製品化されてもおかしくないですね。
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ソニーのVAIO分離と、新生VAIOの誕生
【司会】ソニーがVAIO事業を分離というのは衝撃的な出来事でした。
【山田】12月を迎えるまでに他社が追随しなくて良かったよ。
【後藤】日本では大きなニュースだけど、世界レベルで見ると、さざ波程度だよね。
【笠原】ただ、PC業界という視点で見ると、業界シェア9位の企業が消えたので、衝撃は大きかったですよね。
【後藤】と言っても、今までもさらに上位の会社が消えていったこともあったよね。
【笠原】この件についてはたくさん記事も書きましたが、一言言うとすると、なぜ海外市場を他者に売ることもなく消滅させたのかというところが今でも不思議です。
【後藤】だよね。
【笠原】で、その消してしまった部分はそのままLenovoとHPに食われた。今年LenovoとHPのシェアが上がったのは、元ソニーの分がそのまま移った格好ですよね。国内だけに集中するといのは分かるけど、持っていた海外市場は譲渡しておけばお金になったのにと。
【山田】Nokiaみたいに海外でブランドだけを他者に売ると言うこともできたよね。
【笠原】まぁ、売りに行ったけど、買ってもらえなかったのかも知れませんが。
【後藤】広い視点で見ると、PCは市場から消えつつあって、VAIO分離はその一端に過ぎないんだよね。僕自身はPCと心中するつもりでいるけど(笑)。
【笠原】消えつつあるというのは語弊があるんでは? 確かにコンシューマPCは消えつつあるけど、ビジネスPCは変わっていないので。
【後藤】でも、ビジネスPCは、パーソナルコンピュータと言っても、タイプライターと同じだもん。
【笠原】コンシューマPCが縮小してるのは単純で、PCでないとできないことがどんどん減っているから。
【後藤】今後はさらに、子供達がスマホ・タブレットネイティブで生まれてくるから、PCはますます難しいよね。
【山田】僕は若い世代もまたPCに戻ってくると思ってるけどなぁ。
【後藤】戻ってこないって(笑)。うちの中学生の子供を見てれば分かる。
【笠原】後藤さん家の“うちの中学生”は特殊だから(笑)。
【後藤】むしろ、うちの中学生はPCを持ってるという点で特殊だから。同級生は誰も自分専用のPCを持ってないって。でも、自分用のスマホは必ず持ってる。
【笠原】ただ、コンピューティングデバイスという意味ではスマホもPC。その台数は減ってない。今、ここで減ると議論されてるのは、“Win-Tel”やMacに限った話でしょ? で、10型以上はこれからもクラムシェルのままでいく変わらないと言うのが僕の考えです。これが一番便利だし。もちろん10~20型級のPCの数が減っていくということは僕も同意です。
【司会】話をVAIOに戻すと、新生VAIOが7月に誕生し、その後プロトタイプタブレットも公開されました。VAIOファンやPC好きにとって、この新生VAIOはソニー時代と比べてより期待できるものだとお考えですか?
【山田】僕はプロトタイプに全然魅力を感じないんだよねぇ。
【司会】それはPCとしてのハードウェアがということですか?
【山田】いまいちつまらないし、VAIOがやる必要はないんじゃないかと。
【後藤】僕はVAIO Pro 11命なので、それ以外の機種は興味ない。以上終わり(笑)。
【山田】まだ我々のクラスタに響くものが出てきてないってことだよね。もちろん年が明ければびっくりするようなものが出てくるかも知れない。VAIO Type Pが再誕生するとかね。
【笠原】まぁ、新VAIOはニッチを狙って、メインストリームは狙わないと宣言したので、万人に刺さらないのはある意味当然かも知れませんね。プロトタイプは漫画家やクリエイターにはいいと思います。でも、次のニッチでは、僕らのようなビジネス・パーソナルで使う人向けを狙ってくるのではと予想してます。VAIO XとZのあいのこのような、スタミナも性能もある製品だといいですよね。
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Oculus RiftなどVRヘッドマウントディスプレイの興隆
【司会】Oculus RiftやSCEのMorpheusといったヘッドマウントディスプレイ(HMD)が発表され、Oculus Riftについては、映画とか進撃の巨人の展示会とか、まだ開発者向け段階であるにも関わらず、個人的に思ったより一般に近いところで活用される事例が増えていて驚いていますが、みなさんの感想はどうですか?
【後藤】ゲーム業界では分かりやすく受け入れられてるけど、それ以外の市場でどう見られてるのかは僕が教えてもらいたいところですね。
【山田】僕は全然ウォッチしてないから分からないなぁ。
【後藤】ゲーム業界では、新しいパラダイムだし、ゲーム性を変える鍵になるので諸手を挙げて歓迎されてますよね。
【笠原】僕はゲーマーじゃないですが、NVIDIAなんかのデモで試すと、すごくそのすごさが分かりやすいデバイスだなと思います。ただ、自分で試すまでは、記事で読んだりしても、さっぱり響かないんですよね(笑)。
【後藤】今回はMorpheusがあって、PS4ユーザーなら安価にHMDが手に入るようになるというのは重要だと思います。
【笠原】でもみんなPS4持ってるのかなぁ(笑)?
【後藤】確かに日本では厳しい。でも、欧米では売れてる。で、Morpheusは、外部カメラを使って、ユーザーの絶対的位置も測れるようになった。HMDは今年後半になって大分こなれてきたという印象です。
【笠原】ちょっと外れるけど、今年はIntelのReal Senseとか新しい技術が出てきて楽しかったですよね。
【後藤】別の視点だと、これは機械が知覚を持つっていう話なんですよね。これはすごく大きな進歩。これまで機械は、ユーザーがキーボード、マウスで入力するものを認識できるだけだったのが、3Dカメラによって機械は能動的にユーザーを視ることができるようになる。次はユーザーとインタラクトする腕を持つようになるでしょうね。
【山田】物体の大きさを測定できるとか、そういうのは良いと思うんだけど、せっかくタッチが来て触れるようになったものが、今度は遠隔ジェスチャー入力だから触るなってなることに違和感があるんだよね(笑)。
【後藤】カンブリア紀に生物の種が爆発的に増えたのは、生物が目を持ったからなんだよね。目を持って、環境を知覚できるようになり、防御力なんかを発達させ、あっという間に進化していった。そういうことがPCにも起きるかも知れない。
【司会】違う視点だと、Oculus Riftを使うにはハイスペックなPCがいるので、Oculusを使いたいから、ハイスペックPCを買うというように、ハイスペックPCが見直されるのではと思っています。また、完全に目を覆うので、部屋の中で座って使うという意味でも、モバイルデバイスよりPCとの親和性が高いので、デスクトップPCの地位が復権するかもなと思っています。
【後藤】ただ、VRはその先ARと結びつくから、あまりその点が問題になるとは僕は考えてないです。
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Microsoftが数々の大胆な施策を発表、実施
【司会】次の話題は結構多岐に渡るのですが、Microsoftが大胆な施策を多数打ち出して、方向性をがらりと変えたという点についてです。
【笠原】今年はMicrosoftにとって本当にいい年だったと思います。来年に向けていろんなことが仕込めました。CEOが変わるだけであんなに方針を変えられるんだ、と言う点は驚きでもありました。逆に言うと、今まで何やってたんだろうとも思いますが(笑)。
【山田】新しいプリインストールOfficeの仕組みはよく考えたなと思います。他の地域に遠慮して妥協するでもなく、得る側も買う側も皆が幸せになれる仕組みでした。
【笠原】全体感としては、祥平さんはどう思います?
【山田】WindowsやOfficeの無償化については、あまり恩恵を受けられていないという感じかな。8型PCは安いけど、魅力が感じられない。
【笠原】それは僕らがハイエンドユーザーだからですよ。一般市場で、Androidタブレットと同じ値段でWindowsタブレットが売られていて、「あ、こっちもいいかな」と思わせたら、それは意味があると思います。Microsoftは、スマートフォンやタブレットではAppleのように画一的なスペックで進めようとしたけど失敗した。で、その反省を踏まえて、無償化などの取り組みを始め、製品の選択肢が増えた。
【山田】安いWindows PCをより広げたいなら10型以上でもやるべきだったと思うけどね。
【後藤】元々のビジネスモデルを崩さないように注意深くやってるよね。
【笠原】逆に言うと、Microsoftは10型以上はビジネス向けだと考えてるわけです。
【山田】でも、ライセンスもユーザー単位へと変わってきていて、サイズによる区分けとか細かいことは気にせず全部タダにすればよかったのに。
【笠原】それは僕もそう思います。
【後藤】そんなことしたら担当者はクビになっちゃうよ(笑)。
【笠原】その時の問題は、じゃぁどこから利益を上げるのかということですよね。
【山田】それは企業向け製品で上げれば良いと思うよ。
【笠原】鍵となるのは次のWindows 10でどういう戦略を採ってくるかですよね。今は過渡期だからバランスが悪いけど、Windows 10だとコンシューマ向けとビジネス向けのWindowsは別モデルになると言われていて、そうなったら、コンシューマ向けは全部タダになるかもしれません。
【司会】無償という点ではOfficeもタブレットで閲覧までは無償でできるようになったり、AppleのiPadで動くようになったりしました。
【笠原】マルチデバイス戦略という点では、正しい動きですよね。Microsoftの強みが何かというと、10月にナデラCEOも来日して言っていましたが、Officeに代表される生産性ソフトなわけです。マルチデバイス戦略は、それをさらに伸ばすことができます。
【山田】そこで後藤さんの息子さん世代が、きっとスマホでExcelを使うようになり、それに不満を感じてPCに移行するんだよ(笑)。
【司会】2014年の動きを見ていると、2015年はさらに期待できそうですね。
【笠原】ええ、Windows 10には期待しています。
【山田】OneDriveが1TBから無制限になるといのは本当にすばらしい決断だった。
【笠原】それは同意ですが、個人的にはOneDrive for Businessの方ももっとまともにして欲しいと思います(笑)。それから、今はOffice 365 Soloを使っていて、これだと毎年更新に1万2千円かかるので、来年はOffice Premium搭載PCを買いたいと思います。これだと、更新料は年間6千円くらいで済むので(笑)。
【山田】1つ買う時に気をつけるべきは、安いPCだとOfficeでも古いOffice 2013が入っているものもあるので、そこはちゃんと確認しましょう。
【司会】こちらはハードウェアですが、今年Surface Pro 3も発売になりました。
【山田】これはすばらしいPCだと思う。画面比率が3:2というのがいい。これだと縦でも横でも使いやすいんです。これ、VAIOプロトタイプでも3:2が採用されているけど、元々は別のVAIOで使う予定だったものが流れて、Surface Pro 3に採用されたらしいです(笑)。
【笠原】排熱面でもう少しがんばって欲しかったなとは思いますが、全体としてPCとして非常に良くできてますよね。ただ、タブレットとして見ると、ちょっと不満も残ります。皆2-in-1 PCとして使っていて、Microsoftはこの製品で新しい用途を提案できていないですよね。ので、最初からキーボード標準装備の製品で良かったのではないかと。
【山田】YOGAとSurfaceシリーズに共通して良いのは、単体で自立する点なんだよね。縦画面でも自立してくれれば最高なんだけど。
【司会】最近MicrosoftはSurface Pro 3をクリエイター向けに訴求し始めてますよね。
【笠原】それはAdobeの製品がSurface Pro 3で採用されたN-Trigのペンに対応したからですね。このペンはVAIO Duo 13とか今度のVAIOタブレットでも採用されていているので、今後VAIOユーザーにとってもペン周りのサポートが厚くなることは歓迎できると思います。
【司会】Surfaceについては、Pro 3は出たけど、Miniは出ませんでしたね。Microsoftの7~8型タブレットを期待してたユーザーも多かったですが、出さなかったことは正解だったんでしょうか?
【山田】絶対正解だよ。
【笠原】正解ですね。あれはWindows RTで出る予定だったので、だとしたら出さなくて正解です。Bay Trailだったなら出しても良かったかもしれませんが。
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Core M発表
【司会】Intelは新しい14nmプロセス採用のCPUとしてBroadwellを開発していましたが、その最初のモバイル向けモデルはCore Mというブランドで登場しました。
【後藤】Intelの14nmは非常に画期的なもので業界でも驚きでした。誰もあそこまでフィンピッチとメタルピッチを狭めると思ってなかったので。ただ、やり過ぎた結果トラブルもあったわけで(笑)。
【笠原】Intelは大きく製品部門と製造部門に分かれているんですが、8月に取材した時、製造部門の人に聞くと「14nmは非常に成功していて立ち上がりは問題ない」と言うけど、製品部門の人たちの答えは違うと(笑)。そのギャップは端から見ていて面白いです(笑)。で、結局はダイに問題があったし、プロセスにも問題があったらしい。
【山田】Core Mに続いて、第5世代CoreとしてのBroadwellがじきに出てくるわけですが、その時Core Mの存在意義は続くのかなとも思います。というのも、他方では通常電圧版を組み込んだ薄型ノートもあるわけで。
【笠原】でも、Core Mがあったおかげで、祥平さんが買ったLet'snote RZ4のような製品が出たわけですから。
【山田】というのは、Let'snote RZ4を買って非常に満足してるんだけど、覚悟していたとは言え、やっぱりちょっと遅いんだよね。
【後藤】プロセスルールが縮小されるとダイサイズは小さくなるけど、熱設計は変わらない。その結果、世代毎に熱密度が上がってきて、その放熱がより難しくなる。それが今足かせになってるわけです。
【笠原】Core Mに限って言うと、せっかく良い物を作ったのに、いまいち製品の数が少ないですよね。IFAでいくつか発表されたけど、それらの多くもまだ市場には出てきてないし、Core Mあってこそのフォームファクタの製品というのもほとんどない。
【司会】2015年になれば、メーカーもこなれてきて、よりCore Mらしい製品が出てきますかね。
【笠原】そうなって欲しいですね。
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Windows 10発表
【司会】Windows 10が2015年に発売になることが発表されました。ブランドバージョンとしての「9」を飛ばしたばかりか、カーネルバージョンも「10」にジャンプアップしました。
【笠原】かなり期待しているし、Microsoftにとって転換点となる製品になると思います。このバージョンは今のデスクトップ版の延長のものと、モバイル含むコンシューマ向けの2つが用意され、1つのOSでスマートフォンから80型クラスの製品までカバーできるようになるので、今までと違った展開があり得ると思います。GoogleもAppleも、10型あたりを境に、AndroidとChrome OS、iOSとOS Xのようにプラットフォームが分断されてますが、Microsoftは、Windows 10でその問題を解消できるようになる。
【山田】マーケティング的にはWindows 10は歓迎されて今のところ成功してるように見えるけど、テクニカルプレビューを見ると、技術的には本当に良くなるのか心配な点もあるよね。
【司会】今の話を総合すると、PC個体が大きく変わると言うより、Windowsプラットフォームが変貌して、使い勝手が高まる、そういう感じでしょうか?
【山田】Windows 10は非タッチ環境でも使いやすくしているので、来年の各社の製品にはタッチなしモデルがすごく増えてると思う。
【司会】今はまだ不明瞭なコンシューマ向け機能は2015年1月に発表予定なので、そこでまた評価は大きく変わるかも知れませんね。
【後藤】僕は長年Windowsを使ってるけど、その世界がどんどん狭まってきていると感じる。今回久しぶりにこんなにWindowsの話をした(笑)。最近僕が会う人はみんなWebプログラムとかの話ばかりしていて、MicrosoftにもWindowsにも興味がない。この状況を打破しないと、Windows 10でも状況は大きく変わらないんじゃないかなぁ。
【笠原】僕らは今までPCだけとか、スマホだけとか、タブレットだけとか、個々の視点でものを見ていたけど、これからはそれらは一緒にしてみないとダメなんですよね。
【後藤】いやいや、デバイスにしがみついてたらダメなんだって。
【笠原】後藤さんの言うことも分かります。でも、デバイスの市場を見れば、23~24億台の規模があり、そのうちPCは3億台。つまり、コンピューティングデバイスにおけるPCのシェアは十数%。その意味で、Windowsの話が出ないという後藤さんの指摘は正しいです。少数派なわけですから。でも、新しいモバイル向けのWindows 10は残りの80%を取りに行くための製品なんです。
【司会】でも、そこを狙ったWindows RTは失敗したわけですが、今回は成功するんでしょうか?
【笠原】成功するかどうかは分からないけど、今Androidが築いている大きな市場を取りに行くには、そういう製品が必要なわけです。
【山田】とりあえず、Windows 7あたり以降のPCにはWindows 10は無償で提供されそう。
【笠原】そうですよ。大きなバージョンアップというのは、Windows 10が最後だそうです。
【山田】大きなバージョンアップというのは?
【笠原】今までは、Windows 7とか8とかのバージョンアップをして、提供していたわけですが、そういう形のバージョンアップは10が最後になると聞いています。
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Android 5.0発表
【司会】片やGoogleはAndroid 5.0を発表しました。まだ搭載デバイスが少ないので、恩恵を受けている人も少ないかと思いますが、ユーザーの期待は大きいです。ちなみに個人的には、最初マテリアルデザインを見たとき、洗練されていていいと思ったんですが、それがガイドラインになり、それまでデザインが違っていたアプリまで揃ってマテリアルデザインになると、ちょっとつまらなくなったかなとも思い始めてます。
【笠原】Androidはこれまでカオスな状況で発展してきた経緯がありますからね。デバイスを見ても、100ドルくらいから1,000ドルまである中、果たして1つに統一できるのか疑問はありますね(笑)。
【山田】でも近いうちに統一せざるを得なくなると思うし、それは悪いことじゃないと思う。見た目はつまらなくなっても、頭を使ってその分を補えばいいわけで。
【笠原】Android 5.0の真の価値は、実行環境をARTに完全に切り替えたことですよね。Chrome OSともアプリを共通化できるようになったし。
【後藤】不満多きDalvikから離れられるのは、大きな転換点ですね。また、ARMの場合64bitはすごく大きな意味があります。x86の64bitと違って、命令セットが完全に切り替わる。端的に言うと、コードが64bitになっただけで速くなる。64bitになって、メモリの出し入れも減り、変な命令もなくなって、ハード自体も作りやすくなりました。まぁ、32bitがひどすぎたとも言えるんだけど(笑)。
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Appleの新製品
【司会】今年のAppleの新製品としては、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iMac with Retina 5K Display、iPad Air 2、iPad mini 3などが登場しました。個人的にはこれらのApple製品を使ってないので実感というより、端から見ていた感じですが、今年の製品はインパクトに欠けた気がします。
【山田】“楽々iPhone”を想像してiPhone 6 Plusを買ったけど、全然そんなことなかった(笑)。文字のサイズは同じ。
【後藤】iPhoneは外見が大きく変わらない時に中身が変わるんですね。例えばiPhone 5sでOSが64bitになった。だから、外見を見たら今年のiPhoneは変わったけど、中身を見ると個人的にはつまらないよね。でも、20nmのTSMCのキャパシティはほぼ全部Appleで埋まってる状態。
【山田】今回のiPhoneは、ようやく世界中どこに持って行っても困らないものになった。電話としてようやくいいものになったなと。
【後藤】それはどういう意味で?
【山田】周波数的な意味で1つのモデルで世界対応したから。
【笠原】でも、ヨーロッパで買った人は日本のCDMAは繋げないんですよね(笑)。
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スマートウォッチ
【司会】スマートウォッチも今年後半になって、花開いたジャンルです。
【後藤】スマートウォッチは今年は買うのを見送るべきだね。
【山田】どうして?(笑) すばらしいと思うんだけど。これを持つようになってポケットからスマホを出す機会がぐんと減った。
【笠原】スマートウォッチについては、名前が良くないと思います。時計じゃないからこれ(笑)。若杉さんも以前言ってたけど、使ってみて分かったのは、これは単なる通知受け取りデバイスなんですよね。その意味ではスマートフォンのコンパニオンとしてすごく便利です。
【山田】丸いディスプレイが良いと言う人もいるけど、僕はそうは思わない。表示できる情報が減っちゃうし。
【後藤】でも、丸いと若い女の子も使えるようになる。そこは大きいよ(笑)。
【笠原】とりあえず、液晶は大きいですね。あと、SoCがSnapdragonn 400とかリッチすぎる(笑)。
【後藤】その問題は僕もいっぱい記事を書いたけど、スマートウォッチ用SoCが出てこないと電力問題は解決できない。
【笠原】僕は、時計としてみないで、スマホのコンパニオンデバイスとしてみれば、1日1回の充電は許容できます。話は変わるけど、この前Car Watchの仕事で旅行業界の人とマカオに行ってきたんですが、その人達にスマートウォッチでスマホのカメラのシャッターが切れるところを見せたら、大受けでしたよ(笑)。とりあえず、今はそういう宴会芸的おもしろさを訴求するといいのでは(笑)?
【司会】ただ、今のネックは価格ですね。2~3万円するので。僕が使っているZenFone 5(16GB)とZen Watchだと、Zen Watchの方が高いくらいですから。単体で使えないコンパニオンデバイスにこの値段は高いかなと。
【後藤】業界では、ターゲット価格は50~99ドルと言われてますね。
【山田】もっと安っぽくてもいいんだよね。
【笠原】今はアーリーアダプタ向けの時期だから、こんなもんでいいんじゃないですかね? 実際僕らの周りではたくさん買ってますし。
【後藤】ちなみにうちの奥さんの場合だと、2~3日に1回充電が必要だと使わなくなっちゃう。限度は1週間に1回くらい。普通の人に使わせるには、その辺りを考えなきゃいけない。だからNike+ FuelBandも使わなくなっちゃったし。ウェアラブルとモバイルの違いは、ウェアラブルだと常にセンサーがオンになるんだよね。だからセンサーハブの内蔵が必須になる。
【司会】それが出てくるのは?
【後藤】2015年。みんな今そういうチップを開発している。デバイスとしては2015年後半かな。だから僕はそれ待ちです。
【山田】Android Wearの良いところは、アプリが対応していなくても、とりあえず通知が出るだけで便利。
【笠原】それを便利だと思うのは、僕らがネット依存症だからですよ(笑)。
【後藤】通知だけなら、僕みたいにスマホを腕に付けちゃえばいいんだよ。
【笠原】それは後藤さんだけですよ(笑)。
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Windowsタブレットのさらなる低価格化
【司会】ここまででも少し話に上りましたが、去年の末から今年頭にかけて3万円くらいで8型Windowsタブレットが登場して、すごく話題になりました。それがこの年末には、1万円前半のものも出てくるくらいまでに、さらに値下がりしました。この点、どうお考えですか?
【笠原】まず、Windowsタブレットが売れているのは日本だけです。
【後藤】「艦これ」ブームが終わった時にどうなるかが問題だね(笑)。
【笠原】日本マイクロソフトの分析だと、艦これが後押ししてるのは事実だけど、それより重要なのはOfficeが使えることだと言っています。ただ、マルチデバイスになってくると、そのせっかくの強みが薄くなるわけですが。実際、PCに詳しくない友人なんかにWindowsタブレットはOfficeも使えると言うと、結構食いつきが良いです。
【後藤】僕の周りで買った人は、全員艦これ用だったけど。
【笠原】それは後藤さんの周りが特殊なだけですから(笑)。はっきり言いますが、今回はいつもと逆で、後藤さんの周りの人がおかしいんです(笑)。
【山田】ちょっと懸念しているのは、多くのWindowsタブレットはストレージが32GBでしょ? これってストレージが足りなくて、8.1から10にアップグレードできないかも知れない。すでに8から8.1 Updateに行けないから。
【笠原】今の国内の状況はいいと思うんですが、来年以降を考えると、グローバルで売れてないという状況を前に、Lenovoあたりが後継製品を出すのか不安がありますね。
【後藤】やっぱ艦これに続くキラーアプリがないとね。
【笠原】いやいや(笑)。ちなみに、さっきマルチデバイスの話をしましたが、iPad向けとかは微妙に機能が制限されているので、使い込むと足りなくなって、PCに移るという人はいるかもしれませんね。
【山田】マクロ動かないとかね。
【笠原】そうそう、そこは結構ヘビーユーザーには重要ですね。
【司会】ハードウェアはまだ進化の余地はありますが、価格は底値に近付いた感があるので、とりあえず買って損はしないですかね?
【笠原】今8型は2分していて、徹底的に安いのと、徹底的に高いのがあるんですよね。そのあたり、ハードウェアの流れはまだ変化していくのではとみています。
【司会】ペンの有無という違いもありますね。
【笠原】最近ペンはよく使っていて、OneNoteなんかで手書きメモをとるのに重宝してます。
【後藤】同意。僕も、Windowsじゃないけど、SHIELDタブレットから離れられない。
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マウスのスティック型PC
【司会】これは業界のトレンドとかではないんですが、もう1つ追加で個人的に面白いなと思ったので、皆さんの意見も聞いてみたいのが、マウスコンピューターのスティック型PC「m-Stick」です。
【山田】あれすごくそそるよね。
【笠原】僕もすごく良いと思いますよ。今までTVに出したい時はMiracastを使ってたんですが、これがあればもうHDMIに挿すだけでよくなっちゃう。自宅のベッドルームのTVにも大きなPCが繋がってるんですが、それの置き換えにちょうどいいなぁと思って。
【山田】あれにOffice Premiumをプリインストールしてくれれば、すっごい売れると思うけど(笑)。
【笠原】あともう1つ、旅行の際のバックアップPCとしてもいいなと思ってます。
【後藤】確かにそれはありだな。
【笠原】小型のBluetoothキーボードなりを併せて持っておけば、旅行先でノートPCが壊れても、これを部屋のTVに挿すだけで一時的には代用できるので。ただ、日本の宿は部屋のTVにHDMIがないこともあるので、そこはネックですが。
【山田】そうかなぁ? 海外より日本の方がHDMIは多いと思うけど。
【笠原】安いホテルだと、結構ないですよ。
【山田】僕も安ホテルに泊まるけど、大体あるけどなぁ。
【後藤】結局、祥平さんはなんだかんだ良いホテルに泊まってるんだよ(笑)。
【山田】そんなことない(笑)。1泊4千円とかの宿を使うけど、普通にHDMIあるよ。
【笠原】僕が泊まるビジネスホテルにはいつもないです(笑)。
【後藤】うん、ない。
【司会】ちなみに、買った人はいます?
【笠原】買いたいのに、買えないんですよ(笑)。本気でCESの予備機として持って行こうと思ったけど、売り切れで買えないんです(笑)。
【山田】ストレージはこれも32GBか。これmicroSDは使えるんでしたっけ?
【司会】使えます。
【山田】じゃぁ、そこにOfficeを入れればいいか。
【笠原】僕はOneDriveに自分のデータは全部上げてあるので、データを端末に入れてなくても、OneDriveを使えば仕事を再開できるようにしています。
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【司会】と、まぁ、いろんな話題について語って頂きましたが、最後に皆さんがそれぞれ印象に残ったニュースや出来事を挙げて頂けますか。
【後藤】僕としては今年は根本的な転換点だった気がします。組み込みに焦点が当たってる。去年もその雰囲気はあったけど、今年はいよいよそれが本格化した。PCは個人的にも好きだし、それが仕事でもあるけど、ずっとそこにいたらおしまいみたいなことを感じてます。全てのデバイスもメーカーも今は組み込みの方に向いてる。Intelだって組み込みとファウンダリ事業を成功させないと先がないという状況です。
【山田】僕にとっての最大のニュースはOneDriveの容量無制限化の発表かな。これでもうバックアップのやりくりとか考えなくて良くなるわけだから。月500円で。
【笠原】僕はソニー・VAIOと言いたいところだけど、今年一番印象的だったのはMicrosoftがすごく変わったなということです。去年までは彼らの戦略を聞くと、頭をひねるものばかりでした。PC市場が縮小する中、時代に逆行している戦略を採っていたので。それが、今年は、クラウドやモバイルを重視するとか、無償化とか、論理的だったと思います。そして来年のWindows 10に向けた準備ができたなと感じています。
【司会】では、以上で2014年の総括とさせて頂きたいと思います。みなさん、ありがとうございました。