イベントレポート

Build 2014基調講演、MicrosoftのWindowsビジネスのモデルが変革

基調講演冒頭でSteve Ballmer氏を真似た「デベロッパーズ!! デベロッパーズ!! デベロッパーズ!!」を披露して会場をわかせたTerry Myerson氏(Windows OS Group担当EVP)
会期:4月2日〜4日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Moscone Center

 米Microsoftの開発者向けカンファレンス「Build 2014」が現地時間4月2日から開催された。同社はこのカンファレンスでWindowsに関するさまざまな強化と施策を発表した。数回に分けて、そのあらましを紹介したい。

心の故郷としてのCortana

 基調講演はWindows Phone 8.1の話題でスタートした。BuildはWindowsのカンファレンスではあるが、そこでスマートフォン向けOSがメインの話題に据えられていたわけだ。事前の噂等で、ある程度予想はできていたことではあるが、実際にその場に立ち会って目の当たりにすると、ちょっとした驚きを感じてしまう。

 壇上に立ったTerry Myerson氏(Windows OS Group担当EVP)は、ステージ上で、かつてのCEO、Steve Ballmer氏を真似た「デベロッパーズ!! デベロッパーズ!! デベロッパーズ!!」を披露して会場を笑いの渦に包み込んだ。同氏は、15億の人々がWindowsを使っていることをアピールし、そのエコシステムを構成しているパートナーである開発者たちに対して、その活性化のために尽力することを宣言した。

 そして、Windows Phone 8.1だ。

Windows Phone 8.1を紹介するJoe Belfiore氏(Windows Phone担当CVP)

 ステージには、Joe Belfiore氏(Windows Phone担当CVP)が登壇、世界で最もパーソナルなスマートフォンとしてWindows Phoneを紹介した。そして、Windows Phone 8.1では新しいAPIが多数追加され、タイルが並び、タイルそのものが設定したテーマで彩られるホームスクリーンの新しいビューで刷新されたことを報告した。

 Windows Phone 8.1の特筆すべき強化点として、音声を認識するパーソナルデジタルアシスタントとして「Cortana」(コルタナ)が披露された。Microsoftの検索情報サービスであるBingを活用して機能する仕組みで、質問を繰り返すことで賢く成長し、関心や興味を予測、さまざまな作業を代行してくれる。

 Cortanaのデビューがアナウンスされたとき、会場はちょっとどよめいた。Cortanaは米国の国民的ゲームともいえる「Halo」シリーズに登場するAIの名前だ。主人公であるマスターチーフの神経回路に接続され、ゲームの進行に必要な情報を的確に教えてくれる存在だ。日本人的にはピンとこないのだが、のび太にとってのドラえもん、あるいは最近なら安堂麻陽にとっての安藤ロイドといったところだといえばムードがわかってもらえるだろうか。Cortanaはキャサリン・ハルゼイ博士の脳のクローンという設定なので女性だという点にも注目しておきたい。そういう意味では「銀河鉄道999」の鉄郎にとってのメーテル的なものか。喩えが古くて申し訳ない。

 Cortanaには各種の許可を与えて、日常の生活に活かすことができる。「明日の7時に起こして」というとアラームをセットしてくれるなど、パーソナルアシスタントのデモではお約束のリマインドや、カレンダーから予定をピックアップしたり、レストランの推薦もしてくれる。

 また、「昨日のマリナーズはどうだったの?」といった質問にも、試合の経過を教えてくれるほか、選手の年齢を訊いても答えてくれるなど、Bingとの連動による検索結果の積極的活用が特徴という点ではGoogle Nowを彷彿とさせる面もある。

 ラスベガスの天気を訊くと、温度を知らせるが、華氏で表示されている温度を摂氏でと言うと、換算して再表示するなど芸も細かい。さらに、「次のHaloはどうなるの?」という質問には、「あなたにはその情報を入手する権限がありません」とまで答えてみせた。

 これらがほぼ自然語でのやりとりで実現されていた。もちろん音声のみならず、文字入力によるやりとりもできる。Microsoftでは、Cortanaを真のデジタルアシスタントとアピールする。デジタルアシスタントがフレーズリストとの照合というアルゴリズムで実現されていた8.0までとは違い、自然言語を理解するのがCortanaの特徴だ。

 Windows Phone 8.1のセールスポイントとしては、処理や通知を一覧表示する「Action Center」と管理作業に必要な処理を代行してくれる「Sense」なども紹介された。例えば、「Wi-Fi Sence」では、位置情報によって、表示するさまざまな情報を切り替えるほか、PCとPhoneでWi-Fiパスワードを同期するといったこともできるようになる。

 ソフトウェアキーボードの新しい入力方法も紹介された。こちらは、キートップを指でタップするのではなくキートップをなぞって入力する。「Galaxy S4」を破り、スマートフォン文字入力でギネス記録を達成した様子なども披露され圧倒的な入力速度がアピールされていた。

 また、BYODの時代に対応するために、ようやく、S/MIME、VPNなどをサポートするようになるなどエンタープライズサポートも強調されていた。

Windows Phone 8.1のアクションセンター。さまざまな情報が通知としてまとめられる
タイルで構成される新たなホーム。背景を変えるとタイルそのものの背景が変わる。見かけはWindowsのスタート画面を彷彿とさせる
キートップをなぞって入力する新しい入力方法。Galaxy S4とのスピード競争の様子もビデオで紹介された

Windows 8.1 Updateを正式に発表

 基調講演は2つ目のWindowsとして、PC用のWindows 8.1の話題に入った。ステージには、David Treadwell氏(OS担当CVP)が登場、Windows 8.1 Updateを正式に発表した。

 PC用のWindowsというのもおかしな話だが、Treadwell氏は、新しいWindowsによって開発者が得られるメリットとして、スマートフォン、タブレット、PCの全てでユーザーにリーチできること、投資に応じたイノベーションを得られること、クロスプラットフォームでの可用性を提供できることの3点を挙げる。つまり、人々が、スマートフォン、タブレット、PCを自由に往来する新しい時代の到来と、そこにWindowsが対応するということの宣言だ。

 ユニバーサルWindows appsは、1つのバイナリで、スマートフォン(Windows Phone)、タブレット(Windows RT)、PC(Windows 8.1)の全てに対応する。タッチ操作、キーボード/マウス操作、大きな画面、小さな画面、横画面、縦画面など、さまざまな環境で辻褄を合わせたユーザー体験を提供できるようになる。開発者にとっても、より簡単にコードを書き、デバッグができるようになるという。つまり、プラットフォームを超えてコードをシェアできるというわけだ。ユーザーは、アプリを1度買えば、どこでも、どんなデバイスでも使えるようになり、同じアプリは同じデザインのバッジ、タイルで表示されるという。開発者はコードの9割を再利用して単一のパッケージを作り、各プラットフォーム共通のユーザーインターフェイスを開発できるそうだ。

 そして将来的には、Xbox OneでもユニバーサルWindows Appが動くようになるという。

Windows 8.1 Updateでは、ストアアプリもタスクバーにボタンとして表示される
タッチファーストバージョンのPowerPoint。タッチ操作に最適化されている

 そして、Windows 8.1 Updateだが、Windowsのキーボードエクスペリエンスの強化、デスクトップタスクバーにおけるストアアプリとデスクトップアプリの共存など、新たな機能が紹介された。これについては別記事で詳細を紹介したい。即日MSDNで公開されるとともに、一般向けには4月8日から配布が始まるとされている。

 さらに将来のWindows環境として、いわば参考展示的に紹介されたのが、タッチファーストバージョンのOfficeだ。ステージではタッチ対応PowerPointが披露された。

 Windows 8.1のモダンUIでPowerPointのファイルを探し、それを開くとタッチ操作に最適化されたPowerPointがそれを開く。印象としては、先に公開されたiPad用PowerPointと似ている。そして、すべてのオフィスドキュメントは、保存などを意識することなく自動的にOneDriveに保存されるようになるという。もちろんデータはユニバーサルコンパチビリティを持ち、PCはもちろん、タブレットでも電話でもきちんと編集ができる。

 さらに、Windowsのスタートメニューとして、Windows 7時代と同様のものが復活することが予告されている。しかも、右側ペインには、GUIとしてのスタート画面の縮小版が表示されるなど、転んでもただでは起きない的な展開が紹介され、会場は大爆笑に包まれた。

今後のWindowsとして、スタートメニューの復活も紹介された
右側ペインがモダンUIのスタート画面となっている。ライブタイルも機能しているようだ
ストアアプリをデスクトップにウィンドウ表示できるようにもなる

Windowsが0ドルで提供開始

 このように、プログラミングで動かすデバイスはどんどん変わっていることがアピールされたが、電話、タブレット、PC、ゲーム機に加え、IoTも忘れてはならない。

 ステージ上ではIntelのGalileoで動く電子ピアノが披露された。もちろんWindowsが稼働している。世界で初めて披露されるWindowsピアノだ。そのピアノにPCからtelnetで接続し、コマンドを入力すると、自動演奏が始まる。

IntelのGalileoでWindowsが稼働する。
telnetでGalileo上のWindowsに接続し、コマンドを入力してピアノを制御する。
床のピアノ鍵盤の上を飛び跳ねて演奏を披露するJoe Belfiore氏

 このあと、重要なこととして、IoT用のWindowsが0ドルで提供されることが発表された。つまり無料だ。しかも、スマートフォンとタブレットのうち9型を下回る画面を持つ製品についても0ドルという価格体系が発表され、Microsoftがビジネスモデルを大きく変えようとしていることわかる。この詳細については、追加取材の結果などを含めて別記事で紹介することにしたい。

Windows for IoTは0ドル
さらに9型以下の画面を持つスマートフォンやタブレットもWindowsは0ドル

 その後の基調講演には買収直前のNokiaのEVP、Stephen Elop氏が登壇し、Windows Phone 8.1搭載のLumia新製品を披露、さらに大団円として、Microsoft新CEOのSatya Nadella氏が登壇、Buildの前身ともいえるProfessional Developers Conferenceで訪れたサンフランシスコに戻ってきて、開発者のみなさんと一緒にいられることの喜びを伝え、Officeカンパニーであり、WindowsカンパニーであるMicrosoftを引っ張っていく抱負を語った。そして、あらかじめ収録したビデオによる質問に、1つずつ自分の言葉で答えていくなどしながら、開発者に対して、これからさまざまな機会を作っていく決意を表明した。

買収直前のNokiaのEVP、Stephen Elop氏と握手をかわすMicrosoft新CEOのSatya Nadella氏
Tシャツにジーンズという出で立ちは普段そのままだというMicrosoft新CEOのSatya Nadella氏。公の場の多くでスーツを身につけていたBill Gates氏やSteve Ballmer氏とは、ずいぶんムードが違う

(山田 祥平)