ニュース
AppleがSpecial Eventを開催。5Kパネル搭載のiMacなど多数発表
~OS X Yosemite、iMacは同日、iOS 8.1を来週リリースへ
(2014/10/17 10:29)
Appleは、同社キャンパス内にあるTown Hallで開催したSpecial Eventで、一体型製品としては世界で初めて5,120×2,880ドットのディスプレイを搭載する「iMac with Retina 5K display」や、Touch IDを搭載し6.1mmまで薄型化された「iPad Air 2」などの新製品を発表した。6月に開催された開発者向け会議のWWDCでアナウンスされたOS XおよびiOSのアップデートは、それぞれ「OS X 10.10 Yosemite」、「iOS 8.1」として正規リリースされる。
iPhone 6/6 Plusの発表から1カ月あまり、例年どおりに年末商戦に向けたAppleの新製品がティム・クックCEOを中心とする同社のエグゼクティブ陣によって発表されている。ストリーミング中継も行なわれたイベントは1時間20分弱で、ここで「iOS 8.1」、「OS X 10.10 Yosemite」、「iPad Air 2」、「iPad mini 3」、「iMac ith Retina 5K display」、「Mac mini」などが次々に紹介された。
イベントの冒頭は、9月9日(現地時間)に発表され、翌週の19日から販売がはじまったiPhone 6/6 Plusの販売初日のビデオ映像からスタート。ニューヨークの5th Ave.をはじめとする世界中の旗艦店舗の様子に加えて、今年(2014年)開店したばかりの表参道店の販売光景も含まれていた。ティム・クックCEOは、iPhone 6/6 Plusの初動を、iPhoneとして過去最高のスタートと紹介、販売実数などを具体的に明らかにはしなかったが、今週末から販売が始まる中国(※香港は発売済み)を含めて、現時点で世界32の国と地域での好調なセールスをアピールした。年末までには出荷地域を約150まで拡大する見通し。
また9月に発表が行なわれた「Apple Pay」のサービスを来週の月曜日に当たる10月20日(米国時間)から導入することを明らかにした。すでに発表されているとおり、サービスは米国内のみでスタートする。決済サービスで対応するのは米国内の特定銀行から発行されているVISA、Mastercard、American Expressのクレジットカードあるいはデビットカードだが、9月発表時点よりも、対象とする発行銀行や、Apple Payで支払いが可能な店舗数などが、発表以降も順調に増えていることを強調した。利用可能な店舗数はほぼ倍増している。
OS XおよびiOSの紹介は、6月に開催されたWWDCの復習とも言える内容で、特に隠し球と言える規模の新機能は紹介されていない。特にiOSでは、先行してリリースされたiOS 8では含まれていなかったいくつかの機能が、iOS 8.1で実装されることになる。特に、作業状態を同じApple IDを利用するデバイス間で同期させるハンズオフや、iPhoneへの着信をiPadやMacを通じて受ける機能など、OS XとiOS間での連携が必要な機能は、OS X 10.10 Yosemiteのリリースに合わせて追加された形になる。
OS X 10.10 Yosemiteは、発表当日からMac App Storeを通じて無償で提供される。アップグレード対象となるOSは、Snow Leopard、Lion、Mountain Lion、Mavericksの各世代。ステップアップではなく、一気にYosemiteへと更新が可能。要求されるハードウェア仕様はさほど高くはなく、CPUで言えばCore i世代は全てが対象。Core 2 Duo世代も一部機種が対象となる。具体的な対応モデルは同社サイトで確認できる。
iOS側は、来週の月曜日(現地時間)に当たる10月20日からiOS 8.1が提供される。前述のApple Payなどを利用するためには、iPhone 6/6 Plusでも8.1への更新が必要となる。いつものように「Today!」といかなかった理由は、やはり決済に関わるという部分で金融機関の営業日に合わせたのかも知れない。国内でも時差がある米国において、実際に何時頃から更新が始まるかは明確にされなかった。
更新はiOSデバイス単独でも行なえるほか、iTune経由で行なうこともできる。日本国内ではApple Payを利用することは当面できないものの、iOS 8.1への更新は他の機能の実装も含めて世界同時に行なわれると見られる。Yosemiteと同様に、iOS 8.1への更新は無償。対象となるiOSデバイスは、iPhoneは4s以降、iPadはiPad 2以降、iPad miniは全モデル、iPod touchは第5世代、Apple TVは、第2、第3世代となる。
iPad Air、iPad miniを更新。Touch IDをiPadにも導入
このiOS 8.1をプリインストールして出荷されるのが、同日に発表された「iPad Air 2」と「iPad mini 3」だ。前者はiPadを通じて第6世代、後者はiPad miniとして第3世代にあたる。
iPad Air 2のスペック詳細は既報の記事を参照いただきたい。より薄い6.1mm厚を実現し、iPhone 5sから搭載されている指紋認証機能「Touch ID」をiPadとして初めて搭載した。カメラ機能は背面側、前面側ともに新設計とされている。iPhone 6/6 Plusと同様に、ストレージは16GB/64GB/128GBのラインナップとなった。従来通り、Wi-Fiモデルと、モバイル通信機能を搭載するWi-Fi+Cellularモデルを用意する。Wi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルの米国における価格差は、130ドル(税別)となっている。カラーバリエーションもゴールドが新たに加わってiPhoneと同じ3色展開となった。前モデル以上に薄くなった本体は、初代iPadと比較すると2分の1以下の薄さを実現している。
薄さを始め、新プロセッサのA8Xを中心とした性能向上にもフォーカスされているiPad Air 2に比べると、iPad mini 3の紹介は比較的淡泊だった。iPad Air 2と同様に、Touch IDと新色のゴールドが追加されたことがトピックスで、現時点で分かる仕様としては、A7プロセッサ+M7モーションコプロセッサや本体サイズなどは前モデルのiPad mini 2とほぼ同一と思われる。ストレージのコンフィグレーションは変わって、16GB/64GB/128GBの構成となっている。iPad mini 3もWi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルがあり、同一容量のストレージの場合の価格差は130ドル(税別)。
一新されたように見えるラインナップだが、従来モデルも価格変更などを伴って併売される。特にiPad miniは、非Retina Displayの初代iPad miniも最廉価モデルとして16GBモデルのみが存続する。iPad Airは、これまでの廉価モデルだったiPad Retina Displayモデル(第4世代iPad)が生産終了となり、iPad Airが16GB/32GBの2モデル構成になり併売される。
細かい点を見れば、昨年(2013年)の発表時は「iPad mini Retina Displayモデル」として販売された製品は、世代を分かりやすくするためか「iPad mini 2」とシンプルなモデル名に変更されている。特にiPad miniは2年前の初代miniを残したこともあって、世代×色×ストレージ容量×モバイル通信機能の有無で、合計30のSKUが存在することになる(※米国市場)。同様にiPad AirのSKU数は26(※同)。iPadをリリースしたタブレット初期とは市場規模も市場の構造も大きく異なってはいるものの、シンプルな分かりやすいラインナップというイメージのあるApple、というよりも故スティーブ・ジョブズCEOの片腕だったティム・クック氏の当時のマーケットコントロールとは異なる世代に、ラインナップも市場も変化をしているものと想像される。
iPad Air 2およびiPad mini 3は同日より予約を受け付けて、翌週より出荷を開始する。イベントの中では翌週というかなりスパンをとった発表で、発売地域や具体的な日付は明示されなかった。この点については、実際にまだ確定していないのか、あるいはiPhone 6/6 Plusの発売に併せて諸問題が指摘された中国市場に向けた転売騒動などが背景にあり、あえて具体的な日時を避けたのかは想像にとどまる。
5Kパネルを搭載し、1画面の表示エリアとしてはMac Proも上回るiMac
YosemiteをプリインストールしたMacとしては最初の製品となる「iMac with Retina 5K display」は、この日の目玉と言ってもいい製品だ。来年初旬の出荷を予定している「Apple Watch」を始め、iPhone、iPad、MacBook Proとスケーラブルに高精細なRetina Displayを搭載する同社製品の延長上として、iMacが位置付けられた格好だ。
iMac with Retina 5K displayはAIO製品としては世界で初めて5,120×2,880ドットの5Kパネルを搭載する製品。ちなみにディスプレイ単体としての5K製品は、Dellが「UltraSharp 27 Ultra HD 5K」を、今年第4半期の出荷予定としている。
6月の予測記事でも想定していたとおり、Retina相当の高解像度パネルを搭載するMac製品の登場は想定の範囲内だったが、特に注目されていたのはその価格である。前述のDellの製品が2,499.99ドルを想定価格としていることもあり、入出力インターフェイスの相違はあれど、パネルの価格はそれなりに上乗せされることが予期されていたが、iMac with Retina 5K displayは、最小構成で2,499ドル(税別)/258,800円(税別)と発表された。Apple StoreでのBTOはもちろんだが、いわゆる標準仕様の最上位モデルとして店頭販売も行なわれる。
ラインナップとしては、Haswell世代の従来のiMacも21型、27型ともに価格変更をともなって併売され、「iMac with Retina 5K display」が27型の最上位製品として追加されることになる。
標準仕様ではHaswell RefreshのCore i5(3.5GHz/Turbo Boost時3.9GHz)を搭載するが、BTOではi7(4.0GHz/Turbo Boost時4.4GHz)も選択が可能。5KパネルをドライブするGPUには、AMD製のRadeon R9 M290Xが採用されている。こちらもBTOによりAMD Radeon R9 M295Xに変更が可能。型番から分かるように、290X世代のモバイル向けGPUが搭載されている。現行のiMacはNVIDIA製のGPUを採用しており、iMac with Retina 5K displayのみがAMD製のGPUを採用する形となる。いずれ、現行のiMadもHaswell世代からHaswell Refreshへの移行があるものと推測されるが、その際にAMD、NVIDIAいずれのGPUが搭載されるのかは現時点では分からない。
BTO選択肢には、前述のCPU、GPUのほか、メモリも標準の8GBから最大32GBまで選択が可能。Apple Storeの表記から、1,600MHz DDR3 SDRAMのメモリスロット数は4スロットで、標準タイプでは4GB×2の構成だが、最大の32GBにした場合には8GB×4の構成になることが分かっている。ストレージはSSDとHDDを組み合わせた1TBのFusion Driveを標準として、最大3TBのFusion Driveか最大1TBのFlash Storage(SSD)が選択可能となっている。キーボードとマウス(あるいはトラックパッド)は標準で付属している。日本におけるiMac with Retina 5K displayの販売価格は、258,800円(税別)。BTOによってフルカスタマイズした場合の価格は445,000円(税別)。
iMac with Retina 5K displayは、発表同日より販売を開始。オンラインのApple Storeで注文した場合には、17日午前6時時点で、3~5営業日の配送が予定されている。
iMac with Retina 5K displayの登場で、ディスプレイ解像度としてはMac Proを上回る仕様をiMadが備えたことになる。現行のMac Proが持つ映像出力はThunderbolt 2とHDMI 1.4a。Thunderbolt 2はDisplayPort 1.2相当の出力を備えるため、4K/60fpsの表示を行なうことはできるが、5Kでの60fps出力はできない。規格上は先日規格化されたDisplayPort 1.3相当の出力が必要になる。今回、eDPで内部接続が可能なiMacが先行して5K表示に対応し、5K相当のThunderboltあるいはDisplayPort対応の純正ディスプレイが発表されないのは、こうした出力インターフェイスの整合性も背景にあると推測される。
華々しく紹介されたiMacとは対照的だが、Mac miniも約2年ぶりとなるアップデートを遂げた。本体の外観は従来モデルを継承し、これまでのIvy Bridge世代からHaswell世代へとCPUを更新している。最廉価モデルはIntel HD Graphics 5000、最上位ではIntel Iris Graphicsのいずれも統合型GPUを採用する。価格は52,800円から。標準仕様は3モデルが用意され、いずれもApple StoreでCPU、メモリ、ストレージなどをカスタマイズすることができる。
インターフェイスとしては、ついにFireWire 800(IEEE 1394b)を廃止して、Thunderbolt 2端子を2基搭載した。ほか、Gigabit Ethernet、HDMI 1.4a、USB 3.0×4、SDXCカードスロットなど。
結果として、現行製品が継続販売される非RetinaのiMacが21型、27型ともにThunderbolt端子がThunderbolt×2であるのに対し、Mad miniはThunderbolt 2×2と、全体としてはややちぐはぐとも言えるラインナップとなった。より直接的には、iMac with Retina 5K display以外のiMacが更新されなかったことで、これらが現行製品でありながら、仕様上はやや遅れていると言い換えられる。ただしこれまでの例から、市場在庫は従来通りだが、新たにApple Storeなどから出荷されるiMacに関しては、最新のOS XであるYosemiteがプリインストールして出荷される見通しだ。
同日に発表された製品は、日本時間の10月17日にハンズオンが予定されており、実機の様子などは写真を中心にあらためて紹介する。