イベントレポート

Intel、TDP 4.5WのCore Mプロセッサを正式に発表

〜ファンレスのタブレット/2-in-1を実現

Intelが公開したCore Mのダイ写真

 ドイツ・ベルリン市で行なわれているデジタル家電の展示会IFAに合わせて、Intelは最新製品となるCore Mプロセッサ(開発コードネーム:Broadwell-Y、以下Core M)を正式に発表した。技術概要は、すでに8月に発表(別記事)されていたが、今回は製品としての正式発表となる。

 Core Mは、同社が業界他社に先駆けて導入した最先端の14nmプロセスで製造され、トランジスタ数は13億個、ダイサイズは82平方mmとなる。TDPが4.5Wと、ファンレスタブレットを製造するのに必要な低消費電力を実現しており、Coreプロセッサとしての性能を保ちつつ、OEM/ODMメーカーは薄型軽量タブレットや2-in-1デバイスを製造できるようになる。

 出荷は開始済みで、すでにCOMPUTEX TAIPEIで発表されたASUSの「Transformer Book T300 Chi」(別記事)/「Transformer Book V」(別記事)に加えて、IFAではLenovoの「ThinkPad Helix」が発表されている。

 Intelによれば2014年第4四半期中に、5社のPCメーカーから搭載製品が年末商戦向けとして投入され、それ以外のシステムに関しては2015年の初旬から順次発表される見通しだ。

ファンレスタブレットの設計が可能に

 今回発表されたCore Mは、第4世代Core(開発コードネーム:Haswell)のYプロセッサの後継となる製品だ。従来はCoreプロセッサの中の1つの製品群(Yプロセッサ)という扱いだったのに対して、Core Mでは独自のブランド名が与えられ、Coreとは別の製品として区別されて扱われることになった。Intelとしては、ファンレスのタブレット/2-in-1デバイスを製造できることをアピールすることで、その特徴を分かりやすく一般消費者に対して訴求したい狙いがあるものと考えられる。

 ブランド名は変わったものの、実質的な前世代となるHaswell-Yと比較すると、以下のような点が違いとなる。

【表1】第4世代Core YとCore Mの比較
第4世代Coreプロセッサ Yプロセッサ Core Mプロセッサ
開発コードネーム Haswell-Y Broadwell-Y
製造プロセスルール 22nm 14nm
トランジスタ数 9億6,000万個 13億個
ダイサイズ 131平方mm 82平方mm
CPUコア数/スレッド 2/4 2/4
L3キャッシュ 3MB 4MB
GPU Gen7.5(Intel HD Graphics 4400) Gen8(Intel HD Graphics 5300)
GPU/EU数 GT2/20 GT2/24
メモリ LPDDR3/DDR3L(最大1,600MHz)
TDP 11.5W 4.5W
SDP 6〜4.5W -
パッケージサイズ 24×40×1.5mm 16.5×30×1.05mm

 Core Mの最大の強化点は、Intelの14nmプロセスを利用して製造されていることだ。一般的にプロセスが微細化されると、性能が向上し消費電力が低下するので、モバイルではこの点が性能や機能の向上に寄与する。実際、プロセッサの性能と相関関係があるトランジスタ数は9億6,000万個から13億個にと1.4倍になっているのに、ダイサイズは131平方mmから82平方mmへと縮小されている。また、パッケージサイズも実装面積で約半分になっているほか、厚さも30%ほど薄くなっており、より薄型のデバイスを設計することが容易になる。

 CPUアーキテクチャの基本的な構造に関してはCoreと大きな違いはないが、IPC(Instruction Per Cycle)が5%改善しているほか、L3キャッシュが3MBから4MBに増えた。GPUに関しても、第4世代Coreが“Gen7.5”と呼ばれる内蔵GPUだったのに対して、Core Mでは“Gen8”と呼ばれる内蔵GPUを採用。違いは実行エンジン(EU)が20個から24個に増えていることだ。

 消費電力も大きな改善点だ。第4世代CoreではTDPが11.5Wで、SDP(Scenario Design Power、特定のシナリオ下での動作での想定ピーク電力)が6Wないしは4.5Wに設定されていたのに対して、Core MはTDPが4.5Wと60%削減されている。これにより、11.6型で厚さ8mmの金属筐体でファンレスのタブレットを設計することが可能になるという。

 なお、Core Mは第4世代Coreと同じように、パッケージ上にCPUとチップセットがMCM(Multi Chip Module)で実装されるが、チップセットも新世代に更新されている。製造プロセスは32nmと同じだが、オーディオDSPが一新され、ボイスによるレジュームやCPUオフロード機能が追加され、前世代に比べて消費電力が減っている。

 また、同時に新しい無線LANモジュールとなるIntel Wireless-AC7265(開発コードネーム:Stone Peak)も追加される。従来のIEEE 802.11acに対応したIntel Wireless-AC7260に比べて15%ほどスループットが改善されているほか、アイドル時で50%、アクティブ時で30%ほど消費電力が削減され、前世代では対応していなかったWindows 8.1のInstantGo(Connected Standby)に対応するようになる。

Core Mプロセッサの詳細。基本的には8月の発表(別記事参照)とほぼ同じ内容
8月の発表からの差分となるのがトランジスタ数とダイサイズが正式に発表された。トランジスタ数は13億個、ダイサイズは82平方mm
従来の第4世代CoreのYプロセッサではSDPで4.5Wを実現していたが、Core MではTDPで4.5Wを実現している。パッケージの実装面積は約2分の1になっている
11.6型の液晶を搭載した、厚さ8mmのタブレットをファンレスで設計することが可能
Core Mのチップセット。消費電力が削減されているほか、新しいオーディオDSPが採用されている
新しい無線LANモジュールとなるIntel Wireless-AC7265。消費電力が削減され、InstantGo対応が追加されている
Core Mのブランドロゴ。テキストで表す時にはMは大文字だが、ロゴシールでは小文字になる

5Y70、5Y10a、5Y10という3つのSKU、差はクロック周波数とcTDPの設定

 Core Mには、Core M-5Y70、Core M-5Y10a、Core M-5Y10という3つのSKUが用意される。それぞれのスペックは以下のようになっている。

【表2】Core MのSKU構成
プロセッサナンバー 5Y70 5Y10a 5Y10
コア/スレッド 2/4
L3キャッシュ 4MB
ベースクロック 1.10GHz 0.8GHz
最大ターボクロック(シングル/デュアル) 2.6GHz 2GHz
内蔵グラフィックス Intel HD Graphics 5300
グラフィックスベースクロック 100MHz 100MHz 100MHz
グラフィックス最大クロック 850MHz 800MHz 800MHz
LPDDR3/DDR3Lクロック 1600
TDP 4.5W
cTDP(UP) 6W
cTDP(Down) 3.5W 4W
vPro -
TXT -
VT-d
VT-x
AES-NI

 大きな違いは定格クロックとTurbo Boostクロックで、5Y10a/5Y10の定格クロックが0.8GHzになっているのに対して、5Y70は1.1GHzと高め設定されている。Turbo Boost時は前者が2GHzまでなのに対して、後者は2.6GHzまで上がる(シングルコア/デュアルコア時)。内蔵GPUも、Turbo Boost有効時は前者が800MHz留まりで、5Y70は850MHzまで上がる。

 なお、5Y10aと5Y10はクロックが同等だが、cTDP(Configurable TDP)の上限と下限が異なる。cTDPとは、OEMメーカーにデザイン上の自由度を与える仕組みで、CPUのパラメータを調整することで、TDPよりも上あるいは下の消費電力で動作させられる。cTDPには上限となるcTDP(up)とcTDP(down)という2つのパラメータが設定されており、全てcTDP(up)は6Wに設定されているが、cTDP(down)に関しては5Y70と5Y10aが3.5W、5Y10は4Wに設定されている。

 つまり、OEMメーカーは5Y70と5Y10aを利用した場合に、TDPを3.5Wに絞った設計が可能になる。例えば若干性能は低下してもいい(低いTDPを選べばクロック周波数は低下することになる)から、より薄い製品を設計したいOEMメーカーの場合は、5Y70と5Y10aを選択すればよいということになる。

処理能力が向上し、バッテリ駆動時間も伸びるCore M

 公開された性能データによれば、Core i5-4302Y(1.6GHz)とCore M-5Y70を比較した場合、オフィスアプリケーションを使う場合(SYSmark2014)で19%、Webブラウザで写真のエフェクトをかける場合(WebXPRT)で12%、3Dグラフィックス(3DMark)で47%、QSVを利用したメディア変換(Media Espresso)で82%の性能向上を実現しているという。

 バッテリ駆動時間に関しては、35Whのバッテリを搭載した場合、HDビデオの再生で6.9時間から8.6時間へ、アイドル時で8.8時間から10時間へ、Webブラウジングで7.4時間から8.4時間へ、MobileMark 2012で6.7時間から7.6時間へ伸びるという。

第4世代CoreプロセッサのCore i5-4302YとCore M-5Y70の性能比較データ。ベースクロックは下がっているが、性能が向上していることが分かる
第4世代CoreプロセッサのCore i5-4302YとCore M-5Y70とのバッテリ駆動時間の比較。どの用途でもバッテリ駆動時間が延びていることが分かる
4年前に販売されていたArrandaleベースのCore i5-520UMとの性能比較データ。Core Mがファンレスを実現しているのに、大きな性能向上を見せていることが分かる

搭載システムは5社から第4四半期中に、多くは2015年の初旬から登場予定

Intel社が公表した今後のスケジュール。Core Mはまず5社のOEMメーカーから第4四半期中に発売され、2015年の初旬に多くのメーカーから発表される予定

 Intelによれば、第4四半期中に5つのOEMメーカーよりコンシューマ向けと企業向けのCore M搭載システムの販売を開始する予定だという。さらに、2015年の初旬にはより多くの製品に採用され、さまざまな価格帯やフォームファクタで登場する予定だという。現在開発中のシステムは20機種以上ということも明らかにされており、来年(2015年)の1月にラスベガスで行なわれるInternational CESではそれらがお披露目されることになりそうだ。

 そして今回は発表されていない、Ultrabookや薄型ノートブックPC向けとなるBroadwell-Uは2014年末までに製造が開始され、2015年の初旬に発表予定だと言う言葉が明らかにされた。Intelが年初ということを使う時には、CESをターゲットとしていることを意味していることが多く、1月には新プラットフォームの薄型ノートが発表されそうだ。

(笠原 一輝)