イベントレポート

米国をはじめ世界135地域で配信の始まった「Office for iPad」

〜Office 365契約者向け。無償利用ではOffice書類の閲覧が可能

3月27日(現地時間) 発表

MicrosoftのCEO就任後、初めてとなるメディア向けブリーフィングを行ったサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏

 米Microsoftは、3月27日午前10時(現地時間)からサンフランシスコ市内でクラウドとモバイルに関連するメディア向けのブリーフィングを行なった。ブリーフィングは一部の在米メディアを除いて、基本的にはWebcastを使って配信する会見となった。同会見は先日、スティーブ・バルマーCEOに代わってMicrosoftの新しいCEOに就任したサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏による初めてのメディア向けブリーフィングになった。会見の中でナデラCEOは、この日でCEO就任52日めとなったことをコメントしている。

 既報のとおり、このブリーフィングでは「Office for iPad」がApp Storeを通じて無償で提供開始されることがアナウンスされている。同社は翌週となる4月2日〜4日に開発者向けイベント「Build」を企画しており、将来の計画の大部分はこのBulidで紹介されるものという見方もあったが、Office for iPadの発表を先行させた格好だ。

 本誌でもレポートしているとおり、現在サンフランシスコでは「Macworld | iWorld」が開催されている。メディア向けブリーフィングの時間は開場の一時間前からに設定されており、タイミングを合わせたと考えて間違いないだろう。Microsoft自体はMacworld | iWorldの会場にブース出展はしていないが、Appleの出展見送り後も数年にわたってイベントへのスポンサードを続けていた。以前にはiOSデバイス向けの「OneNote」などもMacworldに合わせる形でリリースした例もあり、継続してMac/iOSプラットホームへもコミットしている姿勢が伺える。

 ブリーフィングにおいてナデラCEOが強調していたのは、クラウドのサービスをすべてのユーザー、そしてすべてのデバイスへとつなげていくと言う点だ。この日のテーマに沿って言えば、Microsoft Office書類をすべてのユーザーの持つあらゆるデバイスから利用できる環境を拡大していくということになる。その新しい第1歩が「Office for iPad」というわけだ。WindowsでのOffice 2013、MacでのMicrosoft Office 2011 for Macに続いて、アプリケーションとしてはiOS(iPad)がプラットホームに選ばれたことになる。加えて、ブラウザベースで利用できる「Office Online」(旧Office Web Apps)も存在する。

ユーザーとデバイス、そしてアプリが増加することで相乗的にクラウドも成長する
Microsoftのクラウドサービスはさらにモバイル機器へとフォーカスする
すべての人のすべての機器で生産性を高めていく

 ナデラCEOが10億人と言うOfficeのユーザーに向けては、全てのデバイスでOfficeが使えるというメリットを訴えた。開発者に向けてはOfficeのネイティブAPIがiOSデバイス向けにも提供されることで、iOS アプリを制作する開発者にとってはOffice関連のアプリケーションを作成するビジネスチャンスが拡がったことを意味する。さらに企業導入に関しても、Microsoft Azure(旧Windows Azure)のActiveDirectryにおいて、個人の所有するデバイス全般においてエンタープライズ環境でもアプリマネージメント、権利マネージメント、アクセスマネージメントを行なう「Cloud First Mobile First」というクラウド+ポータブル情報デバイスのマネージメントを強化していく考えを示した。

A Cloud for Everyone on every device(全ての人のすべてのデバイスにクラウドを)
OneDrive(旧SkyDrive)に保存されているOffice書類。これまではブラウザベースでの閲覧と、限定された編集作業が行なえた
iPadにネイティブなWord、Excel、PowerPointの各アプリを提供
「Word for iPad」
「Excel for iPad」
「PowerPoint for iPad」
iPadを使って編集したPowerPoint書類を大画面でプレゼンテーション
モバイル機器のアプリケーションマネジメント
Docusignの例。iOSアプリでもOffice APIを使ってOffce連携アプリの制作を容易に

 発表された「Office for iPad」だが、残念ながら現時点では日本のApp Storeからはダウンロードできない。各アプリケーションの対応言語には日本語が含まれているものの、配信先である135地域のマーケットに日本市場が含まれていないためだ。ダウンロードが可能な米国のApp Storeでは「Word for iPad」、「Excel for iPad」、「PowerPoint for iPad」が個別にダウンロードできる。

 Appのサイズは比較的大きく、いずれも200MBを超える。App Storeには「Microsoft Office」のカテゴリができており、上記の3本に「OneNote for iPad」を含めた4本のOffice Suiteが一覧される。OneNote for iPadに限っては、日本のApp Storeでも提供が行なわれている。

 Office for iPadの動作環境は、iOS 7以降を導入したiPad。iPad製品の中ではiOS 7対応からはずれた初代iPadのみが動作条件から除外となるわけだ。

 日本市場での提供が現時点では行なわれていない理由はいろいろ想像できるが、基本的にはサブスクリプションモデルの「Office 365」がコンシューマ向けとして提供されていないことが一因だろう。ナデラCEOの会見の中で、Office for iPadは無償でダウンロードできるが、フリーミアムモデルになるという説明があった。Word for iPad、Excel for iPad、PowerPoint for iPadのいずれも、利用にあたってはMicrosoftアカウントとOneDriveの利用が必要となる。Office 365のサブスクリプションを持っていないユーザーは自身のOneDriveに保存しているOffice書類を閲覧したりPowerPoint書類のプレゼンテーション表示をすることはできるが、新規作成や編集作業をiPadから行なうことができない。

 Microsoftは米国において30日間のOffice 365のトライアル期間をユーザーに提供するとともに、アプリ内課金で「Office 365 Home」のサブスクリプションを99.99ドルで申し込めるようにしている。日本ではこの「Office 365 Home」自体が存在しない。気持ちとしては閲覧機能だけでも利用できればというユーザーも決して少なくないはずだが、Microsoftとしてもフリーミアムモデルと位置付ける以上、付加機能でのマネタイズ手段がない状況では、今すぐに日本市場でも提供とはいかないようだ。

 Office 365 Homeのサブスクリプションを利用した場合、各アプリをインストールして利用できるデバイスの数は5台。対象はOffice 365 Home以上ということで、利用条件は契約しているOffice 365の種類によって異なる。

「Word for iPad」。Word書類の参照は無償でも利用可能。Office 365のサブスクリプションを行なうことで、iPad上での新規書類作成や編集が行なえるようになる
「Excel for iPad」。シートの閲覧のみ無償で利用できる。UIはタッチに最適化され、キーパッドもセルや数式の入力に適したもの
「PowerPoint for iPad」。無償で利用できるのはプレゼン書類の参照と表示。言い換えれば無償でも、プレゼンテーションツールとしては利用できる
これまで米国などOffice 365が提供されるマーケットでビジネス向けにされていたiPhone向けのOffice Mobile for iPhoneもバージョンアップして、利用対象をOffice 365 Homeの契約者に拡大した
日本のApp Storeからは、「OneNote for iPad」の更新のみが利用できる
開発者向けには、Office連携アプリがiOS Appに拡がることを訴求

(矢作 晃)