買い物山脈

カーソルキー(物理)なんて必要なかった! “HHKB”の無駄のなさで操作が超捗る

製品名
HHKB Professional HYBRID Type-S(英語配列/白)
購入価格
35,200円
購入時期
2019年12月
使用期間
約3カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 Happy Hacking Keyboard(HHKB)シリーズは、日本語配列の「HHKB Professional JP」を使っていたときがある。ただ、PCゲームを遊ぶのに英語配列のキーボードのほうが使い勝手が良いことに気づき、いつしか仕事を含めて普段から英語キーボードを好んで使用するようになっていった。

 REALFORCEの静電容量無接点方式やCherry MXのメカニカル方式など、新しいキーボードを見ては食指が動き、なんだかんだで買い換え頻度の高い筆者だが、まだHHKBの英語キーボードには手を出したことがなかった。

 なぜならカーソルキーがないからだ。

 そのコンパクトさは一線を画すもので、そこに大きな魅力を感じる人は多いことだろう。しかし、英語配列だとカーソルキーがないというのはなかなかハードルが高い。正確に言えば、「Fn」キーを組み合わせた2つのキーでカーソルキーを操るのだが、おそらくほとんどの人がその仕様にとまどい、購入を躊躇しているのではないだろうか。そもそも2万円を超えるような高級品である。

 HHKBシリーズはSun Type3をお手本に作られたキーボードとされ、1996年の発売から何度か世代が変わり、バリエーションもモデルも出ているが、その配列や小型重視設計の思想は変わらない。「F1」などのファンクションキーを使う場合に、数字キーと「Fn」キーを組み合わせるという独特の仕様ではあるが、今もなお至高のキーボードとして名高い。

筆者が以前使っていた「HHKB Professional JP」と比較。本体色が白なので退色して黄色くなってしまったが、使ってきた感が出るので、これはこれで味があって好みだ
墨モデルの“墨っぽさ”を表現した質感も捨てがたい魅力がある。こちらは白モデルのように退色しないだろう

発表会でHHKBをゲット! でも買った!!

発表会で提供いただいた「HHKB Professional HYBRID Type-S」の墨モデル

 HHKBシリーズの販売を行なっている株式会社PFUは昨年(2019年)の12月10日に新しいHHKBをリリースするとともに、同日に製品発表会を開催した。筆者はこの発表会に参加したのだが、そのときに同社の粋な計らいで来場者に新しいHHKBシリーズのサンプルを提供するという太っ腹な対応をしていた。もちろんメーカーとしては誌面などで紹介してくださいねという意図があるのだろう。

 当日は合計16モデルを発表しており、台数にかぎりはあったものの、おそらくそのすべてのモデルが用意されていた。筆者はこれは好機と思い、これまでどうしても手が出せなかった英語配列の「HHKB Professional HYBRID Type-S」の墨モデルを有り難く使わせてもらうことにした。

 “買い物山脈”という連載なのにもらいものではないか! という非難が来るだろうから先に言っておきたい。結論として筆者は本製品の使いやすさに魅了され、「HHKB Professional HYBRID Type-S(白)」を購入したのである。つまり、会社と家の両方使えるようにしたのだ。それほど気に入ったということである。

下にあるのが筆者が購入した「HHKB Professional HYBRID Type-S」の白モデル
初回購入特典としてついてきた「HHKBキーボードルーフ」。価格は4,400円と結構高い
ゴム足が非常にとれやすいので紛失注意。ちなみに筆者は全然使ってないが、ホコリ避けになるのできれい好きの人には良いかもしれない

計算されたレイアウトがカーソルキーへの運指を迷わせない

 筆者はその発表会のあと会社に戻り、HHKB Professional HYBRID Type-S(以下、必要な場合を除きHHKBで略す)を使ってみようと早速その製品発表記事をHHKBで書きはじめた。そして、打ちはじめて少し経って、不思議なくらい迷わずに打てることがわかった。

 もちろんアルファベットキーや数字キーは間違えようがないのだが、難関と思われたカーソルキーを押すのに四苦八苦することがない。下の表にあるように、HHKBでカーソルキーを操作するには、キーボードの右端にある「Fn」キーを押しながら、↑であれば「[」を押さなければならず、一見するとほかのキーと押し間違えたりしそうだが案外そうでもないのである。

カーソルキーの操作方法
Fn + [ (角括弧)
Fn + / (スラッシュ)
Fn + ; (セミコロン)
Fn + ' (シングルクォーテーション)
HHKB ProfessionalのカーソルとFnキーの位置

 というのも、「Fn」キーに右手小指を置くと、自然と人差し指は「←」に、中指は「→」キーに指が落ち着くように作られているからだ(薬指は「Enter」キー)。そして小指を維持しつつ、中指を延ばせば「↑」に、人差し指を曲げれば「↓」キーに指先がピタリと重なる。

カーソルキー操作の基本ポジション。「Fn」キーに小指を置くと、自然と人差し指が「←」に、中指は「→」キーに来る

 キー数は60個と少ないHHKBだが、無駄なキーがなく無理のないレイアウトをしているおかげで指が迷わない。コンビネーションキーとして使う「Fn」キーは、キーボードの右端にあるので、見えなくても感覚的に押しやすい。加えて「Fn」キーの周りには横長の「Shift」と「Enter」キーしかないので、似たキーと押し間違うことはない。この点は非常に計算された配置なのだと、使いながら実感できた。

 もちろん、使いはじめてすぐは頭と指が慣れていないので、若干とろくさかった。ただ、「Fn」キーに小指を置くさいに、中指が「→」の位置にあるということが手元を見ずにわかるので、自然とほかのカーソルキーの位置も浮かんできて混乱しない。

 テキストエディタなどで文字や文章を選択するさいの「Shift」キーとカーソルキーの連携も障害にはならなかった。筆者は普段から「左Shift」を使っているし、おそらくたいていの人がそうだろう。もしも指先が器用だったり、指が長い人なら「右Shift」を使って片手だけでカーソル操作から選択までを完結できるかもしれない。「右Shift」の押下はカーソル操作時に余る薬指を使うので、若干中指が延ばしづらくなるがやれなくはないのだ。

 そんなこんなで、1日みっちりHHKBで操作していれば、普段に近いタイピング速度にまで持っていけるはずだ。むしろ、これまでノートPCの平べったいキーボードを使って仕事をしていたが、デスクトップPC向けのストロークの長いキーボードのほうが、ミスタイプしにくいので、いま現在のほうが速いとまで言える。

 それに、筆者がつい最近まで使っていたThinkPadのキーボードはカーソルキーの近くにPage Up/Downがあるのでたまに間違えて押すことがあり、そのたびにテキストエディタ上の編集位置を見失ってしまい、ため息をつくことがなくなった。

 とにかく、HHKBのカーソルキーは一度実際に試してみると、想像していたよりもずっと使いやすいことに気づくはずだ。打鍵感については静電容量無接点方式スイッチなので、REALFORCEと同じなめらかな感覚で打てるだろう。後でも説明するが押下圧は45gとなっている。

WindowsとMacで兼用可能。キーボードを1つに集約してスペース確保

HHKBとMagic Keyboard 2(英語配列)のレイアウトは特殊キーの位置が似ているのでMacで使いやすい

 筆者は自宅でゲーム用にWindowsマシンを使っているが、それ以外の目的ではもっぱら画面一体型のiMacを使っている。両マシンとも同じ机の上で操作しているので、キーボードがWindowsとMacで2つあるが、HHKB Professional HYBRIDおよび同Type-Sなら最大4台のマシンで使えるので、キーボードを1つにまとめることができる。

 それに、HHKBのキーレイアウトはWindowsよりもMacの英語キーボード寄りのレイアウトなので、あまり打ちやすいとは言えない純正の短ストロークなMagic Keyboard 2を使わなくて済むのでむしろ良いくらいだ。

 HHKB Professional HYBRIDは、Bluetoothで3台のPCとのペアリング、有線USBで1台のPCと接続でき、切り替えはキーボードの特定のキーを押す。Bluetoothなら「Fn」+「Ctrl」+「1/2/3」、USBが「Fn」+「Ctrl」+「0」だ。前モデルではこの機能がなく、切り換えるには接続しているデバイスの電源を落としたりする必要があったため、非常に使いやすくなっている。

 しかし、Bluetooth/USBのそれぞれの切り替えでうまくいかないときもあるので、そんな場合はいったんHHKBの電源を入れ直したりすると良いだろう。Bluetoothの場合、それでもダメだったときはペアリングし直したほうが手っ取り早かったりもする。

ペアリング先を切り替えるためのキーコンビネーションは、Bluetoothが「Fn」+「Ctrl」+「1/2/3」で、USBが「Fn」+「Ctrl」+「0」
キーボード底面のラベルにペアリングに使用するキーが書いてある

 なお、市販品の初期ファームウェアと思われる「A0.36」では、切り替えがうまくいかないという不具合があった。筆者が遭遇したものは、USB接続しているデスクトップPCをシャットダウンした場合に、Bluetoothでペアリングされているデバイスに接続を切り換えようとしても、まったく切り替えができないというものだ。その場合は、いったんケーブルを抜いて、HHKBの電源を入れ直せば再度ペアリングできるのだが、正直めんどうだった。

 筆者がPFUのサポートにこのことを報告すると、数日後にファームウェアのアップデートで解決するからもう少し待ってほしいとの返信が来た。きちんとサポートが機能しているのが確認できたし、テンプレートな回答でないのは好感が持てた。

 現在ではサポートページにて新ファームウェアの「A0.41」が公開されており、修正内容を見るかぎり、筆者が指摘した問題も直っているようだ。ただ、筆者の環境のせいかはわからないが、USB接続で電源を落とした後は切り替えにかなり時間がかかる。

 この場合、切り替えボタンを押してもLEDが光らずに反応がなかったり、逆に点灯しっぱなしで切り替わらなかったりといった状態が数秒続き、そのあとでLEDの点滅が起きて切り替わったりする。前の状態よりはましになっているのだが、もう少し速く切り替わるとうれしいところだ。ちなみにUSBケーブルを抜けばすぐに切り替わったりもする。

HHKBのLEDの位置。点灯速度や点滅でいまの状態がわかるようになっている

WindowsとMacでウィンドウの切り替えがごちゃごちゃに。キーレイアウト変更で使い分けしやすくする

 WindowsとMacで兼用してHHKBを使う場合、個人的にはキーボードのレイアウトを変えたほうが使いやすいと思う。と言うのも、HHKBの左下の特殊キーは、Windowsから見れば左から「Alt」と「Windows」キー、Macだと左から「Option」と「Command」キーという配置になっているからだ。

 たとえば、Windowsでウィンドウを切り換える「Alt + Tab」は、Macでは「Command + Tab」キーで行なうことになる。「Alt」と「Command」の位置が一致していないため、HHKBをMacからWindowsに切り換えたときに、HHKBでは間違えて「Windows +Tab」キーを押しがちで、うっかりタイムライン機能を呼び出してしまったりする。そもそも英語キーボードの多くは「Space」の左隣が「Alt」キーなので、癖で間違えやすい。

HHKBの「Alt」+「Tab」の位置。「Alt」の右は「Windows」キー
一般的な英語配列キーボードの「Alt」+「Tab」の位置。HHKBとは「Alt」と「Windows」キーの位置が逆だ

 片方のOSのみ集中して使うのであれば問題にならないだろうが、同時にOSを起動してそれなりに切り換えが発生するという場合は、無意識的に押してしまうことがある。

 それで、HHKBにはキーボードのレイアウトを変更する「Happy Hacking Keyboardキーマップ変更ツール」が用意されているのだがこのツールで「Windows(MacではCommand)」キーを「Alt」キーにした場合、Macで「Command + Tab」が使えなくなってしまうのが問題だ。Bluetoothのペアリング番号ごとに異なるレイアウトを適用する機能があれば解決するのだが、残念ながらそうした機能は用意されていない。

Happy Hacking Keyboardキーマップ変更ツール

 これは、WindowsモードおよびMacモードを使い分けることでそれぞれ個別のキーレイアウトを適用することは可能だ。DIPスイッチでWindows/Macモードのいずれかの状態にし、Happy Hacking Keyboardキーマップ変更ツールを使ってキーを変更すれば良い。

HHKBのDIPスイッチ
WindowsおよびMacモードへの切り替え設定。ちなみにHHKモードだと、Windowsなら「Windows」キー、Macなら「Command」キーが使えないので、Windows/Macのいずれかにしておく必要がある

 ただし、この場合「Fn」+「Ctrl」+「1/2/3/0」でデバイスを切り替えた後、さらに「Fn」+「Ctrl」+「W」でWindowsモードにするか、「Fn」+「Ctrl」+「M」でMacモードに変える必要がある。ショートカットキーを2回分は若干めんどうだ。

 なので筆者はWindows/Macモードは使わず、レジストリを書き換えてキーレイアウトを変更できるフリーソフトを使って「Windows」キーを「Alt」キーに変えている。これならWindowsでもMacでも同じキーでウィンドウの切り替えができる。

 とは言え、この設定だとWindows上で「Alt」キーが2個並んでいることになる。気になる人は「Alt」キーに「Windows」キーを割り当てたりすると良いだろう。個人的には、Happy Hacking Keyboardキーマップ変更ツールを使って左「Alt」に「Fn」キーを割り当てたかったのだが、PFUによると仕様的に「Fn」キーは設定できないとのことだった。

 また、筆者は「CapsLock」を「Ctrl」キーに変える派なので、「A」キーの左隣に「Ctrl」キーがあるHHKBでも問題なく使えるが、一般的なキーボードのように左下に「Ctrl」キーがないとしっくりこないという人は「Alt」に「Ctrl」を割り当てると良いかもしれない。こちらについても、Macと併用する場合はWindows側でのみ機能するようにレイアウトを変更したほうがよいだろう。なお、HHKBの場合「CapsLock」は「Fn」+「Tab」キーで使用する。

特定のキーを切り換えるDIPスイッチも用意されているが、Happy Hacking Keyboardキーマップ変更ツールでも変更できる。DIPスイッチでしか変えられない機能は、SW6の省電力モードのオン/オフだ

ゲームでも問題なく使えるが有線USBのほうが安心

 「HHKB Professional HYBRID Type-S」のキーストロークは3.8mm、押下圧は45g。下位モデルの「HHKB Professional HYBRID」と「HHKB Professional Classic」ではキーストロークが4mmで、押下圧は同じ45gだ。

キートップは市販の引き抜き工具で外せる

 また、Webサイトでは公開されていないが、PFUの広報担当者に確認したところ、キーを押下したさいに入力が認識されるアクチュエーションポイントはHHKB Professional HYBRID Type-Sが最大3.3mmで、HHKB Professional HYBRIDおよびClassicは最大3.5mmという。ただし、この数値は仕様として保証されているものではないとのことだったので、実用上の差はなさそうだ。

 なお、Type-Sのほうが静粛性に優れるといった違いがあるようだが、発表会のさいに短時間で使い比べたかぎりでは、周りに大勢の人がいたこともあり、正直大きな違いは感じられなかった。

 アンチゴーストやNキーロールオーバーもサポートしており、ゲーム用途で使っても問題ない。実際にFPSやTPSといったアクション系のゲームで使用してもREALFORCEと同様の感覚で遊べる。

 ただ、ゲームをするならBluetoothではなく、有線USBを使ったほうが良いだろう。筆者はBluetoothでも入力遅延を感じることなく快適に使えていたが、一度だけ混線の影響か、数秒間入力を受けつけなかったことがあった。

 のんびりとしたゲームならBluetoothでも問題にならないだろうが、アクションゲームなどではその間に倒されてしまったりする可能性があるので、若干不安を感じた。そのため、そういったゲームで遊ぶときは、有線USBで接続することにしている。ちなみに切り替えのショートカットキーは「Fn」+「Ctrl」+「0」だ。

 HHKBでゲームに厳しい点を挙げるとすれば、「F1~F12」までのファンクションキーが、「Fn」+「1」というように「Fn」キーを組み合わせなければならないことだろう。コンパクトキーボードを選ぶ時点でテンキーは必要としていないだろうが、ファンクションキーについてはどうしようもない。これらのキーを多用するゲームでは正直つらいし、そもそも「Fn」キーが右側にあるので、マウスから手を離す必要がある。

ファンクションキーは「Fn」キーと数字キーを組み合わせる必要があるので、多用するゲームだとつらそうだ

 上でHappy Hacking Keyboardキーマップ変更ツールで「Fn」キーを割り当てられないと言ったが、じつはDIPスイッチを使えば、左の「Windows/Command」キーを「Fn」キーに変えることができる。こうすれば少なくともF1~F5までは左手だけで押せるようになる。しかし前述のとおり、筆者はWindows/CommandキーをWindowsとMacの両方でウィンドウ切り替えに使用するので変えたくない。なので、左の「Alt」を「Fn」キーに変えられれば良いのにと思うのだが、それはかなわないので致し方ない。

 なお、初期のファームウェアでは特定のキーを押したさいに、ほかのキーの入力がキャンセルされるという不具合があった。たとえば、FPSなどで「W」キーで前に歩きつつ、そのまま「Q」キーを押すと、「W」キーがキャンセルされて立ち止まってしまうといったものだ。

 すでにこの不具合を修正するファームウェアが配布されているので、同じような問題が発生しているという人はファームウェアのバージョンを確認したほうがいいだろう。

14型ノートだとHHKBが載せられない

 さて、じつは最近筆者は仕事用のモバイルノートとして「VAIO SX14」を購入した。ThinkPad X280の「Shift」キーの戻りがおかしくなっていたこともあるし、HHKBを使いはじめてから仕事用PCをまた英語キーボードに戻したくなったので、VAIO SX14に買い換えたのだ。

 X280を使っていたときは、ポンとHHKBをX280の上に載せて使っていた。X280のキーボードの端にHHKBのゴム足部分がちょうど載るというぴったりなサイズだったので、X280のキーを踏まずに済んだのだ。しかし、SX14ではそうはいかなかった。

 X280は12.5型(幅307.7mm)、SX14は14型(幅320.4mm)なので予想していたとおり、HHKBのゴム足部分がキーを踏んでしまい、X280のときのようにHHKBを置けない。PFUはオプションで「キーボードブリッジ(PZ-KBBRG)」なるHHKBをノートPCに載せてタイピングするための台カバーを販売しているが、こちらは13/15インチのMacBookなどで使用可能とし、幅は295mm。物差しでSX14のキーボード面と合わせてみたものの、キーボードを踏んでしまう可能性が高かったので導入は断念した。

キーボードブリッジ(PZ-KBBRG)。VAIO SX14ではサイズ的に合わなそうだった

 なお、SX14と同日に発売された12.5型のSX12なら幅が287.8mmなので収まるのだが、SX12はキーボードと側面までの長さがわずかなので、キーボードブリッジのゴム足がキーを踏んでしまうだろうからこちらも使用はできないと思われる。

現在使っているVAIO S14ではパームレストの位置までHHKBを載せている。そのため、HHKBの下半分ほどは机に接している
以前使っていたThinkPad X280だとHHKBを全部載せても、X280側のキーを押さずに済むちょうど良い大きさだった

 結局、SX14のパームレストにHHKBの上半分だけを載せ、下側のゴム足が机につくようにして使うようにした。なお、HHKBをSX14の「Space」キーに当たる間際まで詰めてしまうと、下側のゴム足が浮いてしまい不安定になる。ディスプレイとの距離は少しだけ遠くなるが、14型の画面サイズならテキストエディタのフォントサイズを変えるまでもない。X280のときよりもHHKBに傾斜がつくかたちだが、これは以下に述べるように別途パームレストを用意すれば問題ない。

ノートPCに載せて使うなら市販のパームレストを使うと手がラク

 すでに述べたとおり、筆者は会社でもHHKBを使用するようになったが、その接続先はノートPC(VAIO SX14)である。会社の机は奥行きがあまりなく、奥にはVAIO SX14につなげるサブ画面用の27型液晶があるので、VAIO SX14を置くとキーボードの位置が机ギリギリになってしまってタイピングしにくい。

会社での机の状態

 27型液晶のほうをメイン画面にし、VAIO SX14を横に置けば解決するが、個人的にテキストエディタを使うときは画面を見下ろしたほうが目が疲れないし、ノートPCを使ったデュアルディスプレイ時では、画面が上下に合ったほうが首の動作が少なくて済むので、メイン/サブを入れ替えたくない。そのため、上の写真にあるようにVAIO SX14の上にHHKBを載せている。

 そのままでも大きな支障はないのだが、VAIO SX14に載せて浮いた分を市販のパームレストで埋めたほうが打ちやすい。なので筆者はAmazon.co.jpで700円ほどで売っていた「ARCHISS Massive Wrist Rest」のSサイズを買ってみたが、幅が325mmと若干HHKBより長いものの高さが約18mmと肉厚で、キーボードが浮いている分をうまく補えた。

 このほかにも、純正オプション的な存在のバード電子製「アクリル製パームレスト(CP-HHK)」も購入して試してみた。5,500円と高いのだが、寸法はHHKBとぴったりだし、透明で格好いい。ちなみに木製のものもあり、そちらは色違いで2種類用意されている。

ARCHISS Massive Wrist Rest(Sサイズ)
アクリル製パームレスト(CP-HHK)
アクリル製パームレスト(CP-HHK)は透明感がなかなか美しい

 会社ではARCHISS、自宅ではCP-HHKを使っているが、ARCHISSのほうは奥行き90mmで高さ18mm、CP-HHKは奥行き66mmで高さ15mmとなっており、後者はHHKBにピタッとくっつけてしまうと手首がパームレストに収まらないため、若干離して使う必要がある。ARCHISSのほうは奥行きが長いのでくっつけてしまっても問題ない。高さは3mm程度の差なので気にならない。

 筆者としてはどちらでも支障なく打てるが、ARCHISSのほうは表面が布なので使用しているうちに皮脂汚れがついていくだろう。そんなときはアルコールで拭き取れば良いのだが、端などはマウスパッドのように経年劣化によって布がほつれたりする可能性はある。一方のCP-HHKのほうは汚れを簡単に拭き取れるし、高所から落としでもしないかぎり傷がつくこともない。とは言え、パームレストとしては高価なので、そこが短所である。

電池の持ちは十分

HHKBの電池格納部分
横から見ると少し出っ張っている

 HHKBはUSB給電か、単3形乾電池2本で動作する。USB充電器などからでも良いので、USBケーブルを差していれば、電池が入っていても電池を消耗しない。とは言え、気軽に持ち運べたり、置き場所を変えたりできるのがウリのキーボードなので、邪魔なケーブルを外して使いたいという人は多そうだ。

 DIPスイッチで省電力モードのオン/オフを設定でき、オンのときには30分間操作がないと自動的にHHKBの電源が落ちるようになっている(USBケーブル接続時は省電力モードはつねに無効)。HHKBを再度使うさいには、電源ボタンを1秒くらい長押しする必要があるため、1日に何度か使う場合は少しめんどうかもしれない。

 そのため、筆者は省電力モードはオフにして使用し、自宅ではつねにつけっぱなし、会社では帰るときに手動で電源をオフにしていた。自宅では会社にいるときほどキーボードを使うわけではないが、だいたい1カ月は持っており、一方で会社のHHKBのほうは使用してから3カ月近く経ついまでも初期の電池のままなので、電源を切っておけばかなり長持ちすることがわかった。

小型キーボード好きならぜひ試してほしい

 HHKB Professional HYBRID Type-Sを自宅と会社で使いはじめてから約3カ月。最初はカーソルがないことが大きな気がかりだったが、いまではすっかり馴染んでしまい、むしろカーソルキーがある一般的なキーボードよりもカーソルへの指の移動量が少ないため、ずっと使いやすいとさえ思える。

REALFORCE 86Uとの比較。HHKBのこのコンパクトさはやはり魅力だが、同じ英語配列でも「~(チルダ)」や「Esc」、「Backspace」キーの位置が異なる点は注意したい

 ただ、標準的な英語配列と比べると、「~(チルダ)」キーが右上にあり、その左隣に「¥(バックスラッシュ)」キーがあること、「Esc」キーが「1」キーの左にあることが大きな違いと言える。英語キーボードで日本語IMEをオンにするときは「Alt」+「~」キーを使うため、標準の英語配列に慣れているとうっかり「Alt」+「Esc」キーを押してウィンドウを最小化してしまったりすることがある。

 また、標準の英語配列ではHHKBの「Backspace」キーの位置には、上述の「¥(バックスラッシュ)」キーがあるため、HHKB以外の英語キーボードを使ったときに、「Backspace」がキー1つ分だけ遠く感じるという弊害があったりもする。

 とは言え、本当にごくたまに間違えるだけで、取材時などに英語配列のVAIO SX14を使っていて、そのレイアウトの違いにストレスを感じたことはない。そもそもパンタグラフと静電容量無接点方式スイッチとではタッチの感覚が違うため、なんとなく自分のなかで違うデバイスとして、うまくレイアウトの切り替えができているのかもしれない。


 ここまでで、HHKB Professional HYBRID Type-Sがいかに見た目以上に使いやすいか、ということがわかってもらえただろうか。カーソルキーについては確かにクセはあるが、実際に使ってみればその快適さに気づいてもらえるはずだ。購入金額のハードルは高いものの、英語キーボードが好きだったり、HHKBはまだ使ったことはないけど興味があるという人は、店頭などでぜひ一度は試し打ちしてみてほしい。これまでとは違った新しい感覚を味わえるはずだ。