Hothotレビュー

もうMagic Keyboardには戻れない! PFU版REALFORCE for Macで快適タイピング

~HHKBと同じ感覚で使える45gのキー荷重を採用

REALFORCE for Mac テンキーレス「PFU Limited Edition」(英語配列、スーパーホワイト)

 株式会社PFUは、東プレが販売しているMac用REALFORCEの特別仕様版となる『REALFORCE for Mac テンキーレス「PFU Limited Edition」』を、直販サイトのPFUダイレクト限定で5月21日より発売した。価格は31,350円。ご存じのとおり、REALFORCEと言えば、静電容量無接点方式スイッチによるなめらかな打鍵感がウリのキーボードだ。

 今回、REALFORCE for Mac テンキーレス「PFU Limited Edition」を試用する機会を得たので、その使い心地についてレビューをお届けする。

東プレ版REALFORCE for Macとの違い

 筆者は自宅でiMacを使っているが、Mac用の純正キーボードであるMagic Keyboardがあまり好きではない。キーストロークは一般的なノートPCのものと大きく違わないが、打鍵感がペコペコしていて、同じパンタグラフでもThinkPadなどと比べるとどうにも気持ちよく打てない。傾き調整機能もないし、なにより横一列のカーソルキーが使いにくい。

PFU版REALFORCE for MacとMagic Keyboard

 同じような不満を持つMacユーザーが少なからずいるかはわからないが、東プレは昨年(2019年)の4月にそんな不満を解消してくれるMac用のREALFORCEを発売し、続く12月にはテンキーレス版も出した(東プレ、Mac向けのテンキーレスキーボード参照)。おもにWindows向けのREALFORCE R2シリーズと同じく、キーが入力される位置を任意に設定できるAPC(アクチュエーションポイントチェンジャー)対応モデルを用意している。

 今回、PFUが同社直販ショップ限定で発売したのは、テンキーレスでAPCに対応したモデルであり、日本語配列/英語配列の2種類に対して、スーパーホワイトとブラックの2色をそれぞれ取り扱っている。

 筆者の手元に届いたのは、REALFORCE for Mac テンキーレス「PFU Limited Edition」の英語配列で、本体色がスーパーホワイトのモデルだった。筐体は樹脂だが、Magic Keyboardを意識したホワイトとシルバーの組み合わせになっており、Mac本体との親和性が高い。ブラックのほうは本体が黒いiMac Proに合うことだろう。

 東プレ版との大きな違いはキー荷重で、東プレのAPC対応モデルが全キー35gであるのに対し、PFU版は全キー45gと少しだけ重めになっている。45gといっても極端に重いということはなく、PFUが販売しているHappy Hacking Keyboard(HHKB)の最新モデル“Professional”シリーズと同じで、筆者はこちらを快適に使っている(カーソルキー(物理)なんて必要なかった! “HHKB”の無駄のなさで操作が超捗る参照)。

 HHKB Professionalと共通の荷重にしたことで、PFU版として差別化が図られているほか、キーボード右上のLEDプレート部分にカーボン調の柄を採用し、個性を加えているのが特徴である。

高級感を醸し出すカーボン調デザインはPFU版のみの特典
本体色に“スーパーホワイト”という名前を使っているだけあって、キーはやけに白い。どちらかと言えばMagic Keyboardよりも昔のA1048キーボードを彷彿とさせる

 正直なところ、35gと45gでどちらが良いかは完全に好みの問題であり、自分にとって最適なものを選ぶには実物を打ち比べるしかないだろう。いずれにせよ、東プレが“フェザーキータッチ”と呼称するなめらかな感触は健在であり、Magic Keyboardとは段違いの打ちやすさをもたらしてくれる。

参考までに、多少退色はしているがアイボリー色のREALFORCE 86Uと比べてみると歴然の白さである

テンキーつきMagic Keyboardに寄せたキー配列

 キーの配列は多少の違いはあるが、テンキーつきのMagic Keyboardに近づけてある。ファンクションキーは一続きにならずに区切られており、おもに日本語入力などでファンクションキーを多用する人にとって、タッチタイピングで誤入力が減ることだろう。

カーソルキーの列はテンキーつきのMagic Keyboardとまったく同じ配置
テンキーつきMagic Keyboard
ファンクションキーは一続きにならず4分割されている

 独自のものとして、returnキーの列の一番下には、ファンクションキーの機能切り替えキーが用意されている。Macのファンクションキーはその各キーのアイコンが示すように、標準でディスプレイの明るさなどを変えるための特殊機能が割り当てられており、F1キーなどを押すためには、fnキーを押しておく必要がある。ただ、「システム環境→キーボード→F1、F2などのキーを標準のファンクションキーとして使用」にチェックを入れることでソフトウェア的に入れ替えができる。

ファンクションキーの機能切り替えキー

 REALFORCE for Macでは、この入れ替えがキー1つでできるようになっており、わざわざシステム環境を呼び出す必要がない。また、システム環境の設定にかかわらず、REALFORCE for Macの入れ替え状態は影響されないので、2台のキーボードを使うかどうかは別として、Magic Keyboard側のみfnキーを押さずに特殊機能で画面の明るさを変えるといった使い分けができる。

 テンキーレスのMagic Keyboardはfnキーが左shiftの下にあるが、REALFORCE for MacではテンキーつきのMagic Keyboardと同じく、カーソル列上にある。カーソルを含めて、キーの配置はテンキーつきMagic Keyboardと同じであり、Windowsで言うところのBackspaceではないDeleteキーも使用できる。

 なお、Magic KeyboardではF3にMission Controlが、F4にLaunchpadが特殊キーとして割り当てられているが、REALFORCE for Macではそうなっていない。そのため、Mission Controlであれば本来のショートカットキーであるcontrol+↑を使うか、環境設定であえてF3に割り当てるといった変更を行なう必要がある。

特定キーのロックやWinモードを有効にする特殊キー

fn+home/end/pageup/pagedownを押すことで、「Keylock」/「Winモード」/「インジケータランプの色設定」/「インジケータランプの輝度設定」が行なえる

 キーボード上にはプリントされていないが、fnキーと同じブロックにあるhome、end、pageup、pagedownにはそれぞれfnキーを組み合わせることで、順に「Keylock」、「Winモード」、「インジケータランプの色設定」、「インジケータランプの輝度設定」ができる。

 「Keylock」は、REALFORCE for Mac用アプリ「REALFORCE Software」で設定できる特定のキーの有効/無効を切り替える機能だ。

Keylockの有効/無効化はfn+homeかREALFORCE Software上で設定できるが、各キーへの反映はアプリ上で行なう必要がある

 なお、REALFORCE Softwareを使えば、capslockとcontrolの位置を入れ替えることができる。この手の設定はこれまでDIPスイッチを使って行なえたが、REALFORCE for MacにはDIPスイッチがないので、アプリを使って切り替える必要がある。

REALFORCE Softwareを使ったcapslockとcontrolの入れ替え

 「Winモード」については、右commandキーがアプリケーションキーに、F13にPrintScreen、F14にScrollLock、F15にPause/Insキーなどが割り当てられ、Macのキーボードでは用意されていない機能を使えるようになる。ちなみにWinモードはParallels Desktopで動く仮想化Windows上でも有効になっていることを確認できた。

Parallels Desktop上の仮想化Windows 10でもWinモードが動作していた

 「インジケータランプの色設定」と「インジケータランプの輝度設定」についてはその名のとおりで、REALFORCE for Macでは標準の赤のほかに、緑、青、紫、黄色、水色、白の7色が用意されており、キーを押すたびに切り替わる。輝度については3段階の明るさを設定できる。

fn+pagedoupでインジケータランプの色を変更できる。fn+pagedownでは輝度が変わる

APC機能でキーのオン位置を1.5/2.2/3mmに設定できる

 Windows向けのREALFORCE R2も含めて、新しい世代のREALFORCEの大きな特色の1つがAPC(アクチュエーションポイントチェンジャー)機能だろう。REALFORCEの下位モデルには搭載されていないが、PFU版のREALFORCE for Macはしっかりと対応している。

APCの変更キー。Fn+↑で全キー1.5/2.2/3mm、個別設定のいずれかの設定を呼び出せる

 前述したとおり、APCはキーが入力したと判定される“オン”の位置を変更できるというもので、1.5mm、2.2mm、3mmの3種類が用意されている。

 1.5mmにすれば、かなり浅くキーを押しただけでも入力され、3mmと比べれば十分その差がわかる。高速タイピングやWASDキーで移動行なうようなゲームをするさいには、1.5mm設定は魅力と言えるだろう。逆に、間違えて2回打ちしやすいキーを3mmにして誤入力を防止したり、小指といった力の弱い指が触るAキーなどを1.5mmにして負担を微減させるといった使い方もある。APCに対応していないREALFORCEでは、代わりに変荷重のキーボードになっており、キー位置によって押下の重さを変えているので、その応用のようなものだ。

 標準では荷重が2.2mmになっており、Fn+↑キーで変更できる。このキーを押すと、capslockからファンクションキー切り替えキーまでの4つのLEDが数秒間点灯するようになっており、青が1.5mm、緑が2.2mm、赤が3mmとなる。

APCの変更キーを押すと4つのLEDが全部点灯する。緑は2.2mmを指す
標準のAPCは全キー2.2mm

 また、白にも点灯するが、これはREALFORCE Softwareでキーを個別に設定したものが適用されるようだ。このショートカットキーを使わずとも、REALFORCE Softwareで一括変更することもできる。

REALFORCE Softwareでキーごとに変えることも可能。力の強い人差し指は3mmに、中指を2.2mm、薬指と小指を1.5mmにしてみた

 APCの変更が文字入力において大きな差につながるかというと、断言はしづらい。ただ、1.5mmに統一すると反応が早くなるのは間違いないだろう。とくに「っ」などを出すときの同一キーの2回連続入力は、3mmと比べればあまり底まで打ち込まずに済むので軽く感じられる。筆者は力強くキーを叩くタイプではないので、1.5mmの浅いAPCでも問題なく使うことができた。このあたりはキーの荷重と同じで個人の好みによるだろうから、自分でいろいろと試してみるのが一番だ。同じキーボードでいくつもの入力特性を試せるのはなかなか楽しい。

 また、入力を補助するアイテムとして本製品には一体型スペーサーが同梱されている。これはキーの下に敷くことでキーが底打ちされずに戻りを速くできるというもので、2mmと3mm厚の2種類から選べる。キーの反応位置を変えるAPCにも影響するので、マニュアルには2mm厚のものでは3mmのAPC設定が利用できず、3mm厚ではさらに2.2mmのAPC設定も利用できないと書かれている。

一体型スペーサーは2mmと3mm厚のものが付属する
取り付けるにはファンクションキーやカーソルキーなどを除いたすべてのキーを外す必要がある

 ただ、一体型スペーサーを入れると入力の途中でスポンジのぐにゃりとした感触が返ってくるので、打鍵感を損なっているように思えた。筆者としては多少の底打ち感がないとしっくりこない。おそらくタイピストばりに高速タイピングを極めたい人には良いのかもしれないが、速く打とうとすると結構打ち間違いをしてしまうので、あえて使いたい代物ではなかった。

 なお、一体型スペーサーを使うにはファンクションキーやカーソルキーなどを除いたすべての主要キーを取り外す必要がある。キーを引き抜くためのキートッププラーが付属しているので、引き抜くのは難しくないが、キーを戻すことも含めて結構手間がかかる。

付属のキートッププラー
キーに対して斜めにひっかけて引き抜く
スペースキーは大きすぎて引っかからないので、先に両隣のcommandキーを外してから、スペースキーの両端をつかんで持ち上げればよい

Magic Keyboardとおさらばしよう

 すでに書いたように、PFU版のREALFORCE for Macは、全キーの荷重が45gであり、筐体の差もあってか多少打鍵感が違うのだが、ある程度はHHKB Professionalシリーズに近い感覚で打つことができる。ただ、筆者が使っているHHKB Professional HYBRID Type-Sは、アクチュエーションポイントが最大3.3mmとされており、REALFORCE for Macを標準の2.2mmで使っていたさいには、押し込みが必要な分、気持ちHHKBのほうが重いように感じることがあった。逆に言えば、APCで3mmにしてしまえば、HHKBにより近づけられるとも言える。

Magic Keyboardと違って傾きを調整できる
無線非対応なのがREALFORCE for Macの価格につぐ弱点かもしれない
ケーブルは3箇所から引き出せる

 無線接続に対応しておらず、それでも3万円を超える高級品ではあるものの、キー入力という観点においてはMagic Keyboardよりはるかに使いやすいことは間違いない。キーボードは日頃から多用されるデバイスなだけに、耐久性もあって末永く使い続けられるREALFORCE for Macであれば、十分に元が取れるはずだ。

 PFU版か東プレ版を選ぶかどうかは個人の嗜好によるが、今回PFU版のREALFORCE for Macで文章を入力したかぎり、まったく不満はなかった。PFUダイレクトでしか販売されないため、おそらく店頭では試せないと思われるが、そのさいは45g荷重のHHKB Professional HYBRID Type-Sを参考にしてみるとよいだろう。

PFU版REALFORCE for Macのパッケージの左下に「PFU Limited Edition」とプリントされている