買い物山脈

テレワークをする自宅ではキーボードくらい贅沢してもいいんだぞ

~健康と能率のためのキーボード選び

製品名
REALFORCE S / R2S-JPV-IV(写真上)
購入価格
18,000円くらい(購入当時)
製品名
Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S 英語配列/白(写真左下)
購入価格
32,000円(PFUダイレクト)
購入時期
2020年3月
使用期間
1カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 出だしの話はテレワーク初心者とはまったく縁がないパワーユーザー向けなのだが、この数カ月、中華パーツとか中華料理とかが足りない気がする。

 筆者はかつてアキバに週6日通い、PCパーツやジャンク品をを売っていたが、現在の筆者の主な執筆媒体は中華料理系メディアである。 日本の中華料理産業を応援すべく、最近の土日はテレワーク向けの備蓄用中華点心の紹介記事などをがんばって書いている。

 たまーにチャンスを見て深センの華強北路(筆者はメーカー勤務時代に深センに送り込まれていたので中華料理に詳しい)に行ったりしていて、ちょうど今頃は北京の中関村電脳街あたりを取材で訪れているはずだった。

 しかし中国が鎖国状態で横浜中華街もこの有様。

見事なシャッター通りとなった横浜中華街

 こんな惨憺たる状況ではあるが、筆者おすすめの美味しいオーナーシェフの店は安全管理を徹底しながら昼営業・テイクアウトしてるので、じつは狙い目だとおもう。テレワークで心が荒んできたら、安全に注意しながらランチと備蓄用食料品の買い出しに出てほしい。

 筆者(ぴーたん)の備蓄用オススメは横浜中華街の裏手で手作りしている大珍食品の業務用アウトレット。 都内の高級ホテル向けの製品アウトレットなので、味は広州や深セン電脳街あたりの高級店で食べるものと大差ない。

深センの高級店の飲茶。味とかタッチとか、感覚が重要なものは本人が現物を比較しないとわからない。キーボードなんか特にそうだ

 テレワークのときは昼休みの1時間で飯を作って食べ終わるのは至難の業なので、蒸し器にいれて20分放置するだけで食べられる美味しい点心類を冷凍庫にストックしておくと心強い。というか筆者はテレワークの昼休み時間は料理をするのが苦痛に感じてきた。話の長い人に捕まって下手すると30分も休めないで午後のMTGに突入だ。

同居人のアネサマがテレワークだというので、問答無用でRealforceをポチる

 うちのアネサマは、自分では動かない人なのだが言うことだけはいろいろうるさい。テレワーク用にキーボードがほしい、5,000円以下なら会社の経費になるとかいってきた。2人ともすでに若くないので、安物のキーボードだと腱鞘炎が心配だ。

 なにかトラブルが起きて八つ当たりを食らうのは自分なので、同居人が腱鞘炎になって病院に行くリスクを最小化したかった。PCパーツ屋店員っぽく現在の悩みを聞いていくと、やはり話を聞いていると会社キーボードは指が疲れるということだ。

 もちろん、今回も「買ってから怒られる作戦」で届いた瞬間に怒られるのを承知で速攻Realforceをポチった。非PCマニアには18,000円のキーボードへの投資など理解できないのは仕方ないが、昔のワープロの親指シフトなんかは5万円くらいしたのだ。100個もボタンが付いてるんだからボタン1個200円少々、激安だと思う。

いきなりF1キーを「邪魔だから」と引っこ抜くアネサマ。Excel使いで参照セル確認のF2を多用するためだそうだ

 案の定、大げさなダンボールを見つけられてお小言を食らったのだが、使い始めてみれば「あれ、小指が疲れない」と使い始めればまんざらでもないらしい。ただもう1つ言われた文句は「机がいきなり昭和の(OA機器の)雰囲気になった」ということだ。

 しかし、テレワーク用にキーボードもマウスもディスプレイも会社支給品より良いものを用意したため、仕事のパフォーマンスは低下せず、ほかのテレワーク社員と比べて時間を有効に使えているようだ。

 ところでRealforceを自分のものでもないのに、あえてポチった理由、それは筆者はHappy Hacking Keyboardを以前2台ほど使っていたのでゲーマーに支持されるRealforceを触ってみたかったというのが本当の理由だ。後ほど比較してみる。

やべえ、俺も欲しくなったので、Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-Sをポチる

 家では外部ディスプレイがあるため、Apple Wireless keyboardを使ってMacbook Proをクラムシェルで運用していた。

 最近は中華料理ライター業もしているので、打鍵は案外多い。プログラマーの役割だとどれだけコードをシンプルにするかが勝負でIDEやスニペットの助けもあり打鍵数は案外すくないのだが、読み物系記事執筆は文章こねくり回しで指が案外疲れるのだ。

 Realforceのキーボードは、ちょっと好みよりキーストロークが深いものの、打鍵感は小気味よい。やはりAppleのキーボードより高いだけあるよねと感じた。そこで頭をよぎったのは15年くらい使っていないHappy Hacking Keyboardではなく会社のWindows PCで長年使ってきたTelemation製AXキーボードだ。

Telemation AXキーボード。アキバ店員時代の昼休み、1996年ごろにどこかの店頭にて1,480円で購入

 ミニキーボードなのになかに鉄板が入っている剛性感と安定感、素早く指が伸びるカーソル位置。適切なキーストロークで打鍵した後に指をスライドさせてもキーに干渉せず、超高速打鍵が可能。小指で叩くエンターキーは25g程度のフェザータッチで反応する。一時期オークションで5万円以上の値段がついただけはある伝説級キーボードだった。軽く叩いただけでわかる使いやすさだ。

 Macのペラペラキーボードを10年以上使っていたので、久々に使ってみようと思ったら自分のPCはMacだったので接続に問題がありすぎた。

 そもそもTelemationキーボードは端子がPS/2。変換器はあるが、さすがにUSB Type-C時代に使うのはしんどいし、AXのキーマップの利点もMacでは単なる101でしかない。WindowsであればAXドライバを入れて実力を引き出せるのだが。

AXキーを押すとIMEが切り替わる。無変換/漢字キーでも切り替え可能。なぜ消えてしまったのか

 仕方ない、キーストロークの深さが気に入らなくて使うのをやめていたHappy Hacking Keyboard(HHKB)の3台目を買ってみることにした。

自分用HHKB着弾

 またダンボールが届いたのを目ざとく見つけられて冷たい視線を浴びたが、いいキーボードは何かという違いを身を持って知ってしまったアネサマは文句をこらえていた。人間、よくなる方には鈍感だが悪くなるほうには敏感で、もう安物キーボードには戻れないことを知ったのだ。

 嫁のものを先に買っておくのはいい作戦だ。自転車乗りの先輩は「新しいパーツが欲しくなったら、先に嫁の指輪を買うのが世界平和を守るコツだ」と言っていたが、タイミングさえあえば実用品でもいいらしい。

 また、同僚が「テレワーク用にRealforce買いました」と言うので「うちも、嫁用に買いました!」と返したら何いってんだこの人は? という視線と、その後に謎の連帯感が生まれたので家族の女性にRealforceを贈るのはオススメだ。

 HHKBについては、直近の買い物山脈の記事で書きつくされていたので加えて紹介することはない。まったく同意しかない内容だった。 Bluetooth接続が可能ではあるが、筆者も有線接続で利用している。会社PCと個人PCの差し替えもケーブル一発だったら迷わない。

 そして、キータッチもMacbook Proのバタフライキーボードは論外として、Apple純正のMagic keyboardや旧型のワイヤレスキーボードよりも打鍵時の指への衝撃が少ない。強い反発を受けないように指を浮かせるため逆に疲れていたのが、少しだけ改善された。これでキーストロークが短ければもう少し楽になるのだが。今回のモデルではキースロトークが0.2mmほど短く改善されたが、もっと思い切って短くしてほしい。

キーボード裏側の記載は簡体中国語で書かれている。台湾香港では販売していそうだが中国でも販売しているのだろうか?

 写真をSNSで上げたら、台湾人の元同僚からも「俺も買ったぜ~」とコメントが飛んできた。海外でもソフトウェアエンジニアに支持されているようだ。

買うならどっちだ? RealforceとHHKB

 ここで問題は、テレワーカーとしてRealforceとHHKBどちらを買うべきか? である。筆者の自宅で使っているのは無印良品の折りたたみ机。たぶん子供時代の学習机より小さい気がする。

 ここに27型のディスプレイ置き、メモ用のノートを広げてテレカンをしながら仕事をこなすとなると、フルサイズのキーボードは場所的に厳しい。仕事では数字の入力は少ないのでHHKBのキーマップでこと足りる。

比べてみると大差ないキーボード配列

 Happy Hacking Keyboardはキーが少ないとかいろいろ言われるが、タッチバー付きのMacbook Proと比べるとほとんど変わらない。最近の仕事ではめったに使わなくなったviのエディタでよく使うESCが押しやすいのが地味に嬉しい。最新型でESCが物理キーに戻る前のモデルのMacbook Pro(2016-2019)を使っているソフトウェアエンジニアは買うと幸せになれること請け合いだ。CtrlキーがAの左側にあるのも気分的に嬉しいが、Emacsを使う機会もなくなってしまったので昔ほどのメリットはない。

 カーソルの使い勝手も慣れればの話だが、悪くない。使うのは15年ぶりでも1時間で感覚がもどった。

 逆に同居のアネサマの仕事内容だと、Excelに数字を打込みまくるのでテンキーは必須。そうすると106キー配列のRealforceのほうが断然良い。

 キータッチ自体は双方大差はない。Realforceのほうが小気味よい気がするが、よほど神経質な人でなければ許容範囲だろう。

 筆者は、テレワーク初心者の普通の人にはRealforceをおすすめする。一番安いベーシックなやつで構わない。むしろそれがいい。会社で配られてる安物キーボードやノートPCのキーボードと比べれば随分楽に仕事ができることに気づくだろう。

 とくに女性には、Realforceのキー変荷重という仕様(45g、30gのキーが存在する)が助けになるはずだ。普通のキーは45gだが、薬指小指で操作するキーは30gで押すことができる。

狭いワークスペースではけっこうギリギリのレイアウト。住宅事情が許せば腰に優しい電動昇降デスクがほしいところ

 会社員だとどうしても支給されたものだけで済ませる癖がついていて、健康のために追加投資を個人でしようと思わない人が多いハズ。もしもこの記事を読んでいる人の奥さんがテレワークすることになったら、何も言わずRealforceを買ってあげてほしい。だって、もしも気に入らなかったら自分で使えばいいだけの話だから。

 筆者も記事を書くためにAXキーボードを取り出したら「ゲッ、この間買ったのにまだあったのかよ。それ使えばよかった」とアネサマから小言を言われたが、自分の宝物をけなされるのも嫌なのでRealforceを買っておいてよかった。

 結論としては、パワーユーザーだったらHHKB、そうじゃなければ Realforceだ。パワーユーザーは両方買っておいてシチュエーションに合わせて使い分けるのも悪くない。確定申告のときなどはテンキーが欲しくなるはずだ。

 いずれにせよ、腱鞘炎に注意して健康でいられるようにしたい。このご時世にお医者さんに負担をかけるのは極力避けたいのだ。