買い物山脈

道路拡張で家が取り壊しに。補償金を得てマンションを購入した話

製品名
某分譲マンション
購入価格
とりあえず600万円くらい
購入時期
2019年12月
使用期間
約0カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 この連載は、基本的に編集者やライターによるPC関連製品の購入記だ。しかし、今回筆者が購入したのは不動産。この連載には相応しくないかもしれない。それでも今回筆を執ったのは、購入に至った経緯がかなり特殊だったからだ。

 その特殊な経緯とは、道路拡張によるマンション取り壊しに伴う立ち退きである。高速道路などの建設で、土地や家を売り払い、新たに豪華な家を建てたという話は耳にしたことはあった。しかし、まさかそういったことが自分の身に起きるとは思っていなかった。

 じっさい、今回のマンション購入でお世話になった、この道30年のベテラン不動産屋の人も、そういう理由で引っ越しする人にははじめて会ったと言っていたので、あるにはあるが相当珍しいことのようだ。ネットを検索しても、こういう事例の記事はあまりない。そこで、参考までに記録に残しておこうと思った次第だ。

立ち退きまでの流れ

 これまで筆者が住んでいたのは、東京・押上の賃貸マンション。越してきたのは10年前くらい前。その頃はまだスカイツリーが土台部分しかできていなかった。会社のみならず、空港にも乗り換えなしで行けるということで、以前まで海外出張が多かった筆者はこの地を選んだ。

 住みはじめてから5~6年が経った頃だったろうか、建設局から道路拡張に関する案内とアンケートのようなものが届いた。それによると、筆者のマンションが面している放射第32号線道路(四つ目通り)が片道1車線から2車線に拡張されるため、隣接する建物がそのうち取り壊し対象になるということだった。拡張の目的は、防災とよりスムーズな通行実現のためとされている。

四つ目通りはこんな感じで拡張される

 アンケートには、どういう条件なら立ち退きに同意するかなどといったことが記載されていた。前述のとおり、通勤にも便利だし、徒歩6分と駅からも近く、住みよい物件だったので、正直、引っ越しはしたくなかったが、とりあえず補償金が出るなら同意するという選択肢に丸をつけて返送した。

 それからまたしばらくして、建設局からの説明会の案内が来ていたが、基本的に土地所有者向けだった(と思った)ので、賃貸住みの筆者はそれには参加しなかった。

 そこからは何年もそれについてとくに案内や連絡などはなかった。周りもとくに取り壊しになっていく様子もなく、計画自体がなくなったのかもなどと思っていた。

 しかし、2年前くらいから、近隣の道路沿いの建物が1軒、また1軒と次第に更地になりはじめた。どうやら、用地買収が本格的にはじまったようだ。

筆者マンションの真横は歩道に面する建物があったが、いったん取り壊した後、1車線分くらい内側に空けるかたちで建て直された
道路を挟んで向かい側も、結構更地になっている

 そして、今年(2019年)の3月に、マンションの管理会社から1本の電話があった。着信に気づかなかったので、要件はわからなかったのだが、ちょうど契約更新のタイミングだったので、その件なんだろうと思っていた。

 その後、また電話があり、出てみると、このマンションが取り壊し対象であるため、建設局の担当者が筆者に直接連絡を取りたいと言っており、筆者の携帯電話番号を伝えてもいいかという内容だった。

 「ついに来たか」。

 できることなら引っ越しはしたくなかったが、断固拒否するほどでもない。というか、引っ越さないという選択肢は事実上ない(どれだけ粘っても、最後は強制立ち退きになるらしい)。管理会社の方には伝えても構わない旨を返答した。

 翌4月、建設局の方から電話があった。内容は、立ち退きに向け、契約を取り交わしたいが、時期は10月以降くらいになるので、また8月頃に連絡するというものだった。やや気が長い話だなと思ったが、焦って引っ越ししなくても済むよう、早めに連絡をくれたのだろう。

 迎えた8月、再度同じ担当者から電話があり、立ち退きに向けた説明に伺いたいとのことだったので、数日後に自宅に来ていただいた。

 おもな内容は、

  • 遅くとも2019年度中にはこのマンション全員の立ち退きを完了させたい
  • 早ければ10月にその契約を結ぶ
  • 立ち退きにあたっては補償金が出る

というものだった。

 こういう立ち退きにおいて、集合住宅では、所有者および居住者全員が同じタイミングで契約を結ぶ必要があるそうだ。筆者のマンションでは、筆者が最初にこの説明を受けたらしく、その後、順次、他の住人にスケジュールの確認を行なっていく予定とのことだった。

 9月中に全関係者の承認が取れ、10月に住人全員と契約ができた場合は、1月までに引っ越しを終えるスケジュールとなる。しかし、誰かしらそのスケジュールに不都合がある場合は、契約のタイミングを1カ月ずつ後に調整していくと聞かされた。

 ただ、この後説明する補償金の算定にさいし、土地・物件について年1回の基礎改定が10月に行なわれるため、10月に契約ができなかった場合、補償金算出に時間がかかるので、次のタイミングは12月になると言われた。

用地補償契約の流れ。これはもう、ほぼ最終段階の流れ

 筆者はその頃には、引っ越ししなければならないのなら、早くしてしまおうと決めていたので、10月の契約で問題ないと回答した。が、住人の誰かがそのスケジュールでは無理だったらしく、契約は12月に延期され、3月までに退去を完了してほしいとの電話が9月にあった。

 この時点でも、12月の契約というのは、「ほぼ確実」という状況で、確定はしていなかったのだが、とりあえず、11月頃から不動産アプリで物件の物色をしはじめたのだった。

気になる立ち退き補償金

 少し話しが戻るが、8月に建設局の方がいらしたときに、補償金についても説明を受けた。保証金の項目は大きく

  • 動産移転補償料
  • 借家人補償料
  • 移転雑費補償料

の3つがある。

 動産移転補償料は、住居用家財の引っ越し費用。業者に依頼してかかる引っ越し費用となる。その部屋の広さ(筆者宅は1LDK)を基準に算出される。8月の説明の時点で概算額を示されていたのだが、これは14万円となっていた。単身者の引っ越し費用としてじゅうぶんな額だろう。

 借家人補償料とは、いまと同程度の物件を賃貸するために必要となる費用に対する補償だ。具体的には、いまと同等条件、つまり押上駅から徒歩6分で1LDKの物件の相場家賃と現家賃との差額を2年分ということらしい。少なくとも向こう2年間は、いまと同じ生活ができることを補償するためのお金となっている。ただ、これにはある程度の迷惑料的なものも含まれるそうだ。その結果、概算額は140万円となっていた。

 140万円÷24カ月は月6万円近い。同じような間取りで、家賃が6万円も上がるとは思えないので、半分以上は迷惑料なのではないかと思っている。

 ちなみに、それまでより家賃が安いところに越したとしても補助金が減額されることはない。

 そして移転雑費補償料とは、引っ越しの物件探しにかかる費用や、物件探し、契約などで仕事を休まなければならないときの補償費などを含めたもの。こちらは概算で40万円となっていた。

 占めて194万円である。

 「え?そんなにもらえんの?なんか、ありがとう(ぽわわ~ん)」。

 金額を示されての筆者の素直な感想がこれだ。賃貸の借家人でこれだから、土地・建物の権利者だと、迷惑料分だけで、それこそ大型宝くじ1等に当たるくらいの金額になるんではないかと思う。じっさい、権利者の場合は、(あれば)庭木の移転の費用も出るなど、かなり細かく、手厚い補償が受けられる。

補償のあらまし

 そして、12月の初旬に契約を結んだのだが、基礎改定および、正確な算出が行なわれた結果、それぞれの補償費が1割ずつくらい上昇し、合計214万円とあいなった。

最終的な補償金の内訳と金額

 引っ越しに関する面倒臭さはあるものの、金銭的にはなんともおいしい話だ。

 もう1つおいしいのが、このマンションは取り壊しになるため、退出時に原状復帰する必要がなく、家賃2カ月分の敷金が丸々返ってくること。次に入ってくる人もいないので、鍵の取り替えもしなくていい。

ならいっそ、と分譲マンションを購入

 というわけで、引っ越しにあたって200万円ほどもらえることになった。最初はいままでより少し高いくらいの賃貸で探し、浮いたお金で新しい家具などを買おうかと思っていた。

 これは筆者に限らないと思うが、人間、よほどのことがないと、生活のレベルは下げにくい。つまり、引っ越すなら、できるかぎりいま以上の間取り、条件の物件に住みたい。

 そうして探してみると、似た条件で2LDK以上にすると、月額が少なくとも4~5万円くらいは上がってしまう。そこでふと、賃貸ではなく分譲で探してみたところ、支払い年数にもよるが、分譲の方が月額を抑えられるようであり、物件の選択肢もずいぶん広がることがわかった。

 月額が安いなら誰でも分譲にした方がいいのではと思うかもしれないが、分譲の場合、初期費用が高い。頭金次第だが、購入に必要な(引っ越し代を除く)諸費用だけでも100万円はかかる。またローン契約には賃貸契約より厳しい審査もある。

 いろいろ悩み、最終的には分譲を購入するとこにした。結果、頭金として約200万円を現金で支払い、そのほかの初期費用が300万円ほどとなり、引っ越し費用や、新たに買う家財道具一式で100万円ほどかかったので、計600万円ほどの出費となった。冒頭に書いた購入金額はこれのことだ。もちろん、ここからさらに、うん十年のローンを返済していく。

 ちなみに、最終的に家賃(ローン返済額)の月額は、当初想定を超えて、もとの家賃から3万円ほど上がることになってしまった。まあ、住宅ローン減税により今後10年で300万円ほど税金が控除されるのと、今回の補償金を加味すると、トータルの月額はそれほど上昇しないので、「まいっか」と思っている。

 今回は買った物件そのものより、購入に至る経緯が主役なので、家探しや物件のことはあまり詳しく書かないが(じつはいろいろ悩ましいこともがあった)、購入したのは都内3LDK 7階の1室。築年数は結構経っているが、リノベーション済みで内装は新築同様だ。

 最寄り駅からは徒歩3分。路線は変わったが、会社まで乗り換えなし、ドアツードアで24分くらいと、通勤時間はそれまでの約30分からさらに短くなった。

先日、引っ越しを無事終え、新居にて

 なお、補償金も収入扱いとなるので、課税されるし、来年は確定申告を行なう必要がある。ただ、これもその多くは控除対象となるようで、建設局の担当者の方によれば、金額的には大したことないだろうとのことだ。

 補償金は通常、物件保有者の契約完了から1~2週間くらいで前金として8割が振り込まれ、残りの2割は1カ月後くらいになるらしいが、筆者の場合、年末が近いと言うことで、前金は年明けになるそうだ。

 最後に1つ、PC Watchらしいことも書いておこう。筆者はniftyのIPoE IPv6サービスであるv6プラスを契約している。プロバイダはniftyだが、光回線の契約はNTT東日本と結んでいる。

 この場合、引っ越しによる回線移転で工事費用がかかる。戸建てだと9千円、集合住宅だと7,500円だ(宅内工事不要な場合はもう少し安い)。

 しかし、光回線をNTTとではなく、プロバイダと結ぶこともできる。niftyの場合で言うと「@nifty光ライフwithフレッツ」(NTT契約)ではなく、「@nifty光」がそれだ。

 この場合、3年契約こそ必要になるが、引っ越し代移転費用が無料になる。@nifty光ライフwithフレッツから、@nifty光への移行もプランに変更がなければ費用はかからない。

 ということで、筆者は引っ越し前に回線契約をniftyに変更したうえで、転居の申請を行なうことで、回線移転にかかる出費を抑えることができた。

@nifty光で回線種別の変更を伴わない移転工事費は無料になるらしい

続きもそのうち

 立ち退き補償金でプチ成金になった筆者がマンションを購入し、早々にその補償金を使い切った(というか、正確には借金を作ったのだが)話はここでお終い。

 100万円ほどかかった家財道具だが、このなかには、最新のエアコンなどもある。このあたりは、しばらく使ってみて、レビューを書いてみようかと思っているので、この引っ越しに関連した記事は、もう何本か掲載の予定だ。