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最強ミニPC「Mac Studio」。メモリ512GBのバケモノスペックで使う
2025年4月1日 06:01
Appleは「Mac史上最もパワフル」と謳うプロ向けデスクトップ「Mac Studio」の2025年モデルを3月12日に発売した。
本製品はAppleシリコンの最上位プロセッサを採用した上で、メモリは最大512GB、ストレージは最大16TBを搭載可能。しかも、手のひらからは大きくはみ出すものの、フットプリントで20×20cmを切るコンパクトなボディーに収めている。さらに電源ユニットを内蔵しつつ、最大消費電力が480Wと低く抑えられているのもポイントだ。
価格はM4 Max搭載機が32万8,800円から、M3 Ultra搭載機が66万8,800円からと高価だが、「プロ専用」または「エンスージアスト向け」のコンピュータという立ち位置であり、いわばレーシングカーを一般人に販売しているようなものだ。
今回はプロセッサとメモリは最上位、ストレージは8TBの「ほぼ最上位」のカスタマイズモデルを借用できた。本製品を必要とするプロフェッショナルユーザーのために、できるだけ具体的な情報をお伝えしたい。
合計1,840億個のトランジスタで構成される「M3 Ultra」を採用
今回のMac Studioは、macOS Sequoia バ-ジョン15を採用、プロセッサは下記の4種類が用意されている。
- Apple M4 Max
(14コアCPU[高性能コア×10、高効率コア×4]、32コアGPU、16コアNeural Engine、410GB/sのメモリ帯域幅) - Apple M4 Max
(16コアCPU[高性能コア×12、高効率コア×4]、40コアGPU、16コアNeural Engine、546GB/sのメモリ帯域幅) - Apple M3 Ultra
(28コアCPU[高性能コア×20、高効率コア×8]、60コアGPU、32コアNeural Engine、819GB/sのメモリ帯域幅) - Apple M3 Ultra
(32コアCPU[高性能コア×24、高効率コア×8]、80コアGPU、32コアNeural Engine、819GB/sのメモリ帯域幅)
「Apple M4 Max」はすでに2024年11月8日に発売されたMacBook Proに採用されているプロセッサ。今回Appleシリコン最上位プロセッサとしてリリースされたのがApple M3 Ultraであり、UltraFusionパッケージングアーキテクチャにより、2つのApple M3 Maxのダイをつなぎ合わせることで、最大で32コアCPU、80コアGPU、32コアNeural Engineを内蔵。合計1840億個ものトランジスタで構成されている。
各コアの設計は1世代古いが、プロセッサとして比較すればApple M4 Maxより、Apple M3 Ultraのほうが上位に位置づけられる。
搭載できるメモリ、ストレージはプロセッサによって異なる。Apple M4 Max搭載機36GB/48GB/64GB/128GBユニファイドメモリ(LPDDR5)と512GB/1TB/2TB/4TB/8TB SSD、Apple M3 Ultra搭載機は96GB/256GB/512GBユニファイドメモリ(LPDDR5)と1TB/2TB/4TB/8TB/16TB SSDから選択する。
背面インターフェイスはThunderbolt 5×4、USB Type-A×2、HDMI、10Gbit Ethernet)、3.5mmヘッドフォンジャックと同じ構成だが、前面インターフェイスはApple M4 Max搭載機がUSB Type-C(10Gbps)×2、SDXCカードスロット、Apple M3 Ultra搭載機がThunderbolt 5(120Gbps)×2、SDXCカードスロット(UHS-II)と異なる。
また、外部モニターの接続台数についても、Apple M4 Max」搭載機が最大5台、Apple M3 Ultra搭載機が最大8台だ。解像度やリフレッシュレートなどの詳細については下記表を参照してほしい。
本体サイズは197×197×95mm、重量はApple M4 Max搭載機が約2.74kg、Apple M3 Ultra搭載機が約3.64kg。両者には0.9kgもの差がある。Apple M3 UltraはApple M4 Maxよりも多くのトランジスタを搭載しており、発熱量が大きい。両者の重量差は冷却システムの違いによるものであろう。
OS※発売時 | macOS Sequoia バ-ジョン15 | |||
---|---|---|---|---|
SoC | Apple M4 Max (14コアCPU[高性能コア×10、高効率コア×4]、32コアGPU、16コアNeural Engine、410GB/sのメモリ帯域幅) | Apple M4 Max (16コアCPU[高性能コア×12、高効率コア×4]、40コアGPU、16コアNeural Engine、546GB/sのメモリ帯域幅) | Apple M3 Ultra (28コアCPU[高性能コア×20、高効率コア×8]、60コアGPU、32コアNeural Engine、819GB/sのメモリ帯域幅) | Apple M3 Ultra (32コアCPU[高性能コア×24、高効率コア×8]、80コアGPU、32コアNeural Engine、819GB/sのメモリ帯域幅) |
メモリ | 36GB/48GB/64GB/128GBユニファイドメモリ(LPDDR5) | 96GB/256GB/512GBユニファイドメモリ(LPDDR5) | ||
ストレージ | 512GB/1TB/2TB/4TB/8TB | 1TB/2TB/4TB/8TB/16TB | ||
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 | |||
背面インターフェイス | Thunderbolt 5(最大120Gbps、DisplayPort 2.1) 4基、USB Type-A(最大5Gbps) 2基、HDMI、10Gbit Ethernet)、3.5mmヘッドフォンジャック | |||
前面インターフェイス | USB Type-C(最大10Gbps) 2基、SDXCカードスロット(UHS-II) | Thunderbolt 5(最大120Gbps) 2基、SDXCカードスロット(UHS-II) | ||
外部モニターへの対応 | 最大5台 Thunderbolt経由で6K/60Hzのモニターを4台と、HDMI経由で4K/144Hzのモニターを1台 Thunderbolt経由で6K/60Hzのモニターを2台と、HDMI経由で8K/60Hzまたは4K/240Hzのモニターを1台 | 最大8台 6K/60Hzまたは4K/144Hzのモニターを8台 8K/60Hzまたは4K/240Hzのモニターを4台 | ||
本体サイズ | 197×197×95mm | |||
重量 | 約2.74kg | 約3.64kg |
ユニファイドメモリはともかく、ストレージは割高に感じられる
価格については章を分けて触れておこう。一般店舗で購入可能な標準構成モデルは、M4 Max(14コアCPU/32コアGPU/16コアNE)/メモリ36GB/SSD 512GBが直販価格32万8,800円、M3 Ultra(28コアCPU/60コアGPU/32コアNE)/メモリ96GB/SSD 1TBが直販価格66万8,800円だ。
どのような構成で買うかは悩ましいところだ。標準構成モデルの2機種に、プロセッサのみを変更した2機種を追加した際の価格一覧は下記のようになる。なおM4 Maxは16コアCPU/40コアGPU版を選ぶと、メモリの下限が48GBになるので、下記の表ではメモリ容量も増えている。
構成 | 価格 |
---|---|
M4 Max (14コアCPU/32コアGPU/16コアNE)/36GB/512GB SSD | 32万8,800円 |
M4 Max (16コアCPU/40コアGPU/16コアNE)/48GB/512GB SSD | 40万3,800円 |
M3 Ultra (28コアCPU/60コアGPU/32コアNE)/96GB/1TB SSD | 66万8,800円 |
M3 Ultra (32コアCPU/80コアGPU/32コアNE)/96GB/1TB SSD | 89万3,800円 |
M4 Max搭載機については想像していたより手頃な価格に感じる。ただし、ここからメモリとストレージをアップグレードすると、価格はグッと上がる。
メモリ容量 | 価格 |
---|---|
36GBユニファイドメモリ | - |
48GBユニファイドメモリ | プラス3万円 |
64GBユニファイドメモリ | プラス6万円 |
96GBユニファイドメモリ | プラス12万円 |
128GBユニファイドメモリ | プラス18万円 |
256GBユニファイドメモリ | プラス36万円 |
512GBユニファイドメモリ | プラス72万円 |
SSD容量 | 価格 |
---|---|
512GB SSDストレージ | - |
1TB SSDストレージ | プラス3万円 |
2TB SSDストレージ | プラス9万円 |
4TB SSDストレージ | プラス18万円 |
8TB SSDストレージ | プラス36万円 |
16TB SSDストレージ | プラス72万円 |
メモリはユニファイドメモリなので納得感があるが、ストレージについては、MacとWindowsの両刀使いの筆者としては割高に感じられる。個人的に購入するならシステムストレージは1TBぐらいに抑えておいて、Thunderbolt 5接続のSSDエンクロージャを利用すると思う。
M3 Ultra搭載Mac Studioのベンチ結果
それでは最も気になるベンチマークスコアを見ていこう。ただし、今回はApple M3 Ultra(32コアCPU/80コアGPU)/メモリ512GB/SSD 8TBという構成の貸出機に見合うマシン、スコアを用意できなかった。
そのため各ベンチマークプログラムのランキングデータや、PC Watchの記事に掲載されたスコアと比較している。当然、メモリやストレージなどのスペックを揃えられていないので、あくまでも参考に留めてほしい。
CPU性能
まずCPU性能については、Mac Studioは「Cinebench 2024」のCPU(Multi Core)で3082pts、CPU(Single Core)で150ptsを記録した。
Ryzen 9 9950X3Dのスコアと比較すると、Mac StudioはCore Ultra 9 285K搭載機に対して、「Cinebench 2024」のCPU(Multi Core)は129%相当、CPU(Single Core)は107%相当となる。
一方、Ryzen 9 9950X搭載機に対して、「Cinebench 2024」のCPU(Multi Core)は133%相当、CPU(Single Core)は109%相当を記録している。
異なるOS間での比較であり、その上で動くアプリケーションがどのぐらい最適化されているかの度合いも違うので単純には比較できない。しかし、少なくともCinebench 2024では、Core Ultra 9 285K、Ryzen 9 9950X搭載機を上回るスコアを記録したことになる。
グラフィックス性能
GPUの性能については、「Geekbench 6.4.0」のComputeを実行したところ、Mac StudioはCompute(Metal)で254,480を記録した。Geekbench 6ではCompute(Metal)のランキングデータと比較してみたが、AMD Radeon RX 6900XT搭載機の107%相当、Apple M2 Ultra搭載機の122%相当ということになる。
「Geekbench 6.4.0」の結果では筆者自身もピンと来なかったので、Mac用にリリースされている3Dゲームを最高画質(ただし1,920×1,080ドット)に設定した上でフレームレートを確認したところ、「BIOHAZARD RE:4」は181fps前後、「BIOHAZARD VILLAGE for Mac」は193fps前後、「DEATH STRANDING DIRECTOR’S CUT」は164fps前後、「鳴潮」は118fps前後となった。なお、「鳴潮」は上限が120fpsなので、リミットに達している。
「サイバーパンク2077 : アルティメットエディション」のMac版が2025年初頭に発売される予定だ。未来世界を鮮やか、かつディテール細かく描いているぶん、高い処理能力を要求する本作も、Apple M3 Ultra搭載「Mac Studio」であれば快適に動作するだろう。
ストレージ性能
ストレージについては、「AmorphousDiskMark 4.0.1」で計測を実施したところ、SEQ1M QD8シーケンシャルリードは7,216.9MB/s、SEQ1M QD8シーケンシャルライトは9,467.72MB/sとなった。内蔵ストレージとしては高速ではあるが、Thunderbolt 5接続のSSDエンクロージャを接続すれば、比較的近い速度で利用できることになる。
写真/動画処理の性能
ちょうど同じ時期にM4とM3を搭載したMacBook Airがあったので、実際のアプリケーションの処理時間を両機種と比較してみた。Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像するのにかかる時間を計測したところ、Mac StudioはM4搭載MBAの15%相当、M3搭載MBAの17%相当の所要時間で処理を終えた。
また、Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出しするのにかかる時間を計測したところ、Mac StudioはM4搭載MBAの33%相当、M3搭載MBAの30%相当の所要時間で処理が完了した。
あまりにも価格差があるので比較対象機種としては適切ではないが、お手持ちのマシンと比較して、クリエイティブ系アプリの処理がどのぐらい短縮できるのかの参考にしてほしい。
高負荷時の発熱
最後に本体の発熱と、消費電力を見てみよう。まずは本体の発熱だが、Cinebench 2024を10分間実行した際の本体背面の表面温度を計測したところ、最大51.1℃となった(室温29.8℃で測定)。持ちながら使うマシンではないので特に問題はないが、本体背面にはある程度のスペースを確保したほうがよさそうだ。
電気代が高騰している昨今、高性能かつ低消費電力というのは大きな売りだ
Mac StudioはMac史上最速のプロセッサを搭載したこともさることながら、最大512GBのユニファイドメモリを選択可能という点が最大のアドバンテージだ。
プレスリリースでも「最大512GBのユニファイドメモリにより、6,000億以上のパラメータを持つ大規模言語モデル(LLM)を完全にインメモリで実行」と謳われている。1つのアプリでそれだけのメモリを使わなくても、複数のアプリで巨大なデータを読み込み、切り替えつつ作業するのならメモリが多いにこしたことはない。
筆者自身は64GBのメモリを搭載したコンピュータで不足はない。しかし、最大512GBという選択肢が用意されていることは非常に価値があると思う。
また、電気代が高騰している昨今、高性能かつ低消費電力というのは大きな売り。ゲーミングデスクトップPCはべつに確保するとして、家計を圧迫せずに動画編集なども含めた日常業務をこなすメインマシンとして、「Mac Studio」は魅力的なモデルだ。