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1kgノート「VAIO S13」が正統進化。各種装備、軽量さ、使い勝手に磨きがかかる

 ジャスト1kgのモバイルノート「VAIO S13」の新モデルが、前回からおよそ1年半の時を経て登場した。2025年3月13日より受注を開始し、価格は16万9,800円から。各部パーツや装備のブラッシュアップが図られ、使い勝手の面でも熟成が進んでいるようだ。前モデルと比較しつつ、その実力をチェックしてみよう。

さらに軽量化、各部の熟成も進んだ13型VAIO

VAIO S13

 「VAIO S13」は、13型クラスの個人向けビジネスノートPC。VAIOのモバイルPCの中ではミドルレンジの位置付けとなる「アドバンスト」にカテゴライズされ、持ち運びのしやすさと性能のバランスを取ったモデルとなる。これと同等仕様の法人向けモデルは「VAIO Pro PG」で、KDDI ConnectINを利用したWWAN(モバイルネットワーク)対応などといった違いがある。

 注目の重量は、最軽量構成時で約1.019kgとなった。旧モデルと比較して約53g減と違いは大きくないが、さらなる軽量化を遂げている。筐体サイズは一切変わらずそのままで、わずかに軽快感が上がった、というところ。

試用機の実測重量は1,043gだった
【表】試用機と比較用PC(2023年型VAIO S13)のスペック
VAIO S13VAIO S13(2023年)
OSWindows 11 ProWindows 11 Pro
CPUCore 7 150U
(10コア12スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 15W)
Core i7-1355U
(10コア12スレッド、最大5GHz、Processor Base Power 15W)
GPUIntel GraphicsIntel Iris Xe Graphics
メモリ32GB(LPDDR5X、最大32GB)32GB(LPDDR4X、最大32GB)
ストレージ1TB
(NVMe M.2 SSD、PCIe 4.0 x4、最大1TB)
512GB
(NVMe M.2 SSD、PCIe 3.0 x4、最大1TB)
ディスプレイ13.3型1,920×1,200ドット13.3型1,920×1,200ドット
インターフェイスUSB 3.2 Gen 2 Type-C 2基
USB 3.2 Gen 1 2基
HDMI
ヘッドセット端子
USB 3.2 Gen 2 Type-C
USB 3.2 Gen 1 3基
HDMI
ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6E
Bluetooth 5.3
Gigabit Ethernet
Wi-Fi 6
Bluetooth 5.1
Gigabit Ethernet
WAN4G LTE/5Gモデルあり
(nanoSIM+eSIM)
4G LTEモデルあり
(nanoSIM+eSIM)
カメラ内蔵(1,920×1,080ドット)内蔵(1,920×1,080ドット)
セキュリティWindows Hello顔認証、指紋認証Windows Hello顔認証、指紋認証
バッテリ駆動時間動画再生時 約8時間
アイドル時 約21時間
動画再生時 約8時間
アイドル時 約21時間
付属品ACアダプタ(65W)ACアダプタ(65W)
サイズ約299.3×221.1×17.7~19.6mm約299.3×221.1×17.7~19.6mm
重量約1.019~1.056kg約1.072~1.084kg
カラーブラック、ブロンズブラック、ブロンズ
価格16万9,800円から15万9,800円から

 外観デザインの変化は少なく、ボディカラーのラインアップはブラウンとブラックで同じ。天板はマット塗装で、キーボード面のアルミニウム1枚板、筐体後部のオーナメント、ディスプレイを開いたときのリフトアップヒンジも継承している。

試用機のボディカラーはブラック。天板はシンプルなマット塗装、後端はシルバーのオーナメントで彩られている
キーボード面はアルミニウム1枚板で、デザイン性の高さと剛性の高さが感じられる
リフトアップヒンジも健在

 ただ、中身は大きく変わっている。CPUはUltraではない低消費電力のCore 7 150U(10コア12スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 15W)で、過去にレビューした前モデルのCore i7-1355Uと比べて最大動作周波数が400MHzアップしている。メモリはLPDDR5Xで、ストレージのNVMe M.2 SSDについてもラインアップ全機種でPCIe 4.0 x4接続となった。

 ディスプレイは13.3型WUXGA解像度(1,920×1,200ドット、60Hz)の非光沢液晶で変わらないものの、インターフェイスの種類や配置には工夫が見える。USB Type-Cポートが2基に増え、代わりに5GbpsのUSB Type-Aポートは2基に減った。Type-Aポートは左右側面に1つずつ設けられ、周辺機器の接続のしやすさに配慮した形。

ディスプレイは1,920×1,200ドット
右側面にはUSB Type-C 2基、USB Type-A 1基、有線LAN、HDMI出力
左側面にはUSB Type-Aとヘッドセット端子

 Type-CポートはUSB 3.2 Gen 2とのことだが、試用機で確認した限りでは2ポートとも速度面はUSB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)相当のようだ。もちろんUSB PDによる高速充電やDisplayPort Alt Modeによる外部映像出力にも対応している。充電用のDC端子は省略されたが、Type-Cポートが2基になっているおかげで不便さは感じないだろう。

USB 3.2 Gen 2x2対応の外付けSSDで速度計測してみると……
シーケンシャルで2GB/s超を記録。10Gbpsだと1GB/sがせいぜいなので、20Gbps相当の性能は少なくとも備えていると思われる
Type-Cは2ポートともDisplayPort Alt Modeに対応

 Web会議などにおいて安定した通信を実現する最大1Gbpsの有線LANも引き続き備える。無線LANはWi-Fi 6Eとなり、混雑しつつある5GHz帯だけでなく6GHz帯も利用できるため、対応するネットワーク環境では1レベル上の高速化や安定化を図れるはずだ。

 モバイルネットワークにも対応し、個人向けのVAIO S13では5Gモデルを選択できる(4G LTEオンリーのモデルは法人向けのみ)。Nano SIMとeSIMのデュアルとなっているため、スマホで使っている物理SIMの流用や、電波状況などに応じたキャリアの切り替えもしやすい。

底面にNano SIMスロット

 電源ボタン一体型センサーによる指紋認証と、Webカメラによる顔認証も引き続き搭載する。もちろんいずれもWindows Hello対応で、ビジネスシーンにおけるセキュリティは十分に確保した格好だ。

Windows Hello指紋認証対応の電源ボタン一体型指紋センサー
Windows Hello顔認証対応のWebカメラ
物理プライバシーシャッターを備える

 バッテリ駆動時間は、スペックシート上では動画再生時約8時間、アイドル時約21時間で変化はないとしている。ベンチマークテストで計測したところでは、後述の「バッテリー節約設定」オンで15時間を超えた。相変わらずしっかり1日以上使い続けられる。

「PCMark 10 Modern Office Battery Test」の結果。※ディスプレイ輝度50%、Wi-Fiオン、「バッテリー節約設定」をオン(CPUとファンの動作モードは「静かさ優先」)とオフ(同「標準」)の両方で計測

上位機種の技術要素を追加、長く使えるようにする工夫も

 ミドルレンジのモバイルPCとはいえ、要所には上位機種の「VAIO SX14-R」で取り入れられた技術要素が詰め込まれているのもポイントだ。まず、キーボードは内部構造がSX14-Rと同等のものとなり、押下時のノイズがかなり抑えられている印象。キートップ1つ1つに設けられた凹みやサラサラした塗装のおかげでタイピング時のフィーリングもいい。

キーボードの内部構造はVAIO SX14-Rと同等とし、静粛性の高いものに

 また、キーボード最上段の右側には「オンライン会話設定キー」が配置され、これもSX14-Rと同じくワンプッシュで「VAIO オンライン会話設定」アプリが立ち上がる。

F12キーの右隣に設けられた「オンライン会話設定キー」

 「VAIO オンライン会話設定」アプリでは、シチュエーションに合わせてマイクの音質やカメラ画質などを調整できる。たとえば「オンライン会話モード」の設定では、マイクの集音範囲を正面の自分の周囲だけにしたり、会議室全体(360度方向)にしたりできる。これは、SX14-Rがそうだったように、ビームフォーミング用の3つ目のマイクをVAIO S13も搭載したことによるものだ。

「VAIO オンライン会話設定」アプリ
「オンライン会話モード」を含むAI ノイズキャンセリング機能ではノイズの低減度合いも変えられる
右側面にある3つ目のマイク。ほかの2つは通常配置であるWebカメラの左右にある

 Webカメラについては明るさ補正や逆光補正、背景ぼかし、バーチャル背景などの設定が可能。NPUを搭載していないことからVAIO S13はCopilot+ PCではなく、Windows スタジオエフェクトも利用できないが、本来はそこに含まれる「背景ぼかし」や「自動フレーミング」といった機能はVAIOが独自に実装している。

「VAIOの設定」アプリを使うことで、Windows スタジオエフェクトにあるようなカメラ画質の調整が可能

 これらは以前からVAIOのノートPCに存在していた機能で、Windows スタジオエフェクトの登場によってNPU搭載マシンでは残念ながら追いやられる格好になってしまった。しかし今回のようなNPU非搭載マシンでは、その資産が引き続き生きることになる。上位機種と比べても遜色のない形で快適にWeb会議できるのは、VAIOの強みと言えるだろう。

 他にも、独自のアルゴリズムでバッテリ駆動時間を延ばす「バッテリー節約設定」や、充電の上限値を設定してバッテリ寿命を延ばす「いたわり充電」など、ノートPCを可能な限り長く大事に使いたいユーザーにとってうれしい機能もある。同じ機種を数年間は使い続けることになるだろうから、このあたりは真っ先に設定しておきたい。

「いたわり充電」は最大値を90%と80%のいずれかに設定可能。従来は80%と50%だった

実務アプリのパフォーマンスが明らかに向上

 PCとしてのパフォーマンスも確かめてみよう。2023年発売の前モデルと比較する形でベンチマークテストを実行してみた。

「Cinebench R23」の結果
「Cinebench 2024」(新型VAIO S13のみ)の結果

 搭載CPUは名前こそ違えど前モデルも新モデルも世代としては同等で、コア構成や消費電力も同じ。動作周波数が少し向上しているところだけが異なる。しかしそれでも、「Cinebench R23」ではマルチコア性能で約7%アップという有意な差が生まれた。

「PCMark 10」の結果
「PCMark 10 Applications」の結果
「CrystalDiskMark」(内蔵SSD)の結果

 「PCMark 10」は一部で後れを取る項目があったものの、オフィスアプリを実際に動作させる「PCMark 10 Applications」では明らかなアドバンテージがある。マルチコア性能の向上に加えてメモリとストレージの高速化が図られたことで、実務性能は確実に高まっているようだ。

「3DMark」の結果
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(新型VAIO S13のみ)の結果

 一方で、3D性能についてはほとんど変わらないか、ごくわずかな向上に留まる。「3DMark」の数値もそうだが、前モデルでテストしていた「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」を実行したところでもスコアは誤差程度。あくまでもビジネス用途に向いたモバイルPCということで、本格3Dゲームは荷が重いと考えておきたい。

最新装備で高耐久、コストパフォーマンスの高い1台に

 CPUやメモリ、ストレージを最新装備とし、インターフェイスやソフトウェアのブラッシュアップが図られたVAIO S13。外からは見えないが、これまで通りMIL規格(MIL-STD 810H)相当の耐久性に加えて、筐体のさらなる剛性アップに取り組むとともに、「飛び跳ね振動試験」という新たな試験項目を追加しているとのことで、安心感も一段と増している。

飛び跳ね振動試験(VAIO Official)

 以前と比べて(最小構成で)1万円値上がりしたとはいえ、そうした着実な進化を果たしたうえでのこの価格帯、そして昨今の社会情勢を踏まえると、実質的には値下げと言ってもいいかもしれない。GPU負荷の高い作業でない限りは必要十分な性能なので、メインのモバイルPCとして、あるいはサブノートとして幅広く活躍してくれそうだ。