Hothotレビュー

帰ってきた「VAIO Z」を早速レビュー。フルカーボンや5G採用で「最高」が凝縮

VAIO Z

 VAIO株式会社は18日、14型モバイルノート「VAIO Z」を発表し、予約受付を開始した。出荷時期は3月上旬からとなる。価格はオープンプライスで、量販店で取り扱われる個人向け標準モデルの価格は30万9,800円からを想定している。

 今回VAIO Zを試用する機会を得たので、現行のVAIO SX14(Ice Lake)などと比較しつつ、評価を行なった。

加工難度の高いカーボンファイバーを全面使用。チームジャパンのものづくり

 VAIOにとって「Z」を冠する製品はフラグシップに位置づけられる。2008年登場のtype Zをはじめとし、ソニー時代の2010年にVAIO Zが登場。そしてソニーからの独立後の2015年に新生VAIO Zが誕生するにいたるまで、その時代の最新鋭のモバイルデバイスとして投入されてきた経緯がある。

 そんなVAIO Zがとうとう長い年月を経て新しく生まれ変わった。これまで同社がモバイルノートとして提供してきた、VAIO SX12やSX14の上に君臨する最上位のデバイスとしてである。製品名は変わらず「VAIO Z」だが、これまでのVAIOノートになかった試みが取り入れられている。

 その1つが全面カーボンファイバーの採用だ。ノートPCの筐体は天板から底面まで4面で構成されているが、VAIO Zではこのすべてにカーボンファイバー素材が使用されている。カーボンファイバーの魅力は剛性の高さにあり、同じ重量あたりの弾性率(剛性)は、軽量モバイルノートでよく使われているマグネシウムリチウム合金やアルミニウム合金をしのぐ耐久性を備えている。

 しかし、カーボンファイバーは伸びにくいという特性から、加工が非常に難しく、平面部材での利用例は多いものの、側面部やヒンジと言った曲げ加工が必要な場所での採用は難易度が高い。そのため、複雑な構造での大量生産は不向きとされる。

カーボンファイバーで困難な曲げ加工
今回のVAIO Zのアクセントになっているヒンジ箇所のオーナメント。曲げ加工の難しいカーボンファイバーを駆使しているという象徴的な部分だ
ところどころに丸みを帯びたデザインを採用しているが、すべてにカーボンファイバーが使われている

 VAIOは長年にわたり、東レ株式会社と協力して素材や成型の開発を行なっているが、今回両社が培ってきたカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)の量産技術と、職人の手仕事による作り込みを融合することで、4面カーボンファイバーの筐体を可能にしたという。なお、VAIO Zは本体の形状カット、立体成型、組み立て塗装、加工など、すべてを国内メーカーの協力で成し遂げており、「チームジャパンのものづくり」を標榜している。

 全面カーボンファイバーによるメリットは強度だけでなく、軽量化にも現れており、現行の14型モバイルノートであるVAIO SX14が最小約999gであるのに対し、VAIO Zでは約958gを実現。それでいてTDP 35WのハイエンドCPU「Core H35」シリーズを実装。このCPUのために、内部のファンは2基で構成されているものの、それでもより軽量というカーボンファイバーによる恩恵を見せつけている。

TDP 35WのハイエンドCPU「Core H35」シリーズを採用

VAIO ZではUプロセッサではなく、Hプロセッサの「Core H35」シリーズを搭載している

 VAIO Zが搭載するCPUは第11世代Core(Tiger Lake)のなかでも、TDP 35Wでハイエンドの「Core H35」シリーズだ。UシリーズのTDP 28WのCore i7-1185G7などよりもさらに性能を引き出せるのが特徴。VAIO Zで用意されるCPUの種類は、量販店モデルだとCore i7-11370Hのほかに、Core i5-11300Hがある。

 メモリはLPDDR4xの16GBで、ストレージは512GBのSSD。このSSDは最新のPCI Express 4.0 x4接続となっており、後述のベンチマークの段でも触れるが、シーケンシャルリードで6GB/sを超える性能を出す。WAN対応モデルもあり、Sub6の5Gをサポートしている。

 おもな仕様は下表のとおり。

【表1】VAIO Z量販店モデルのスペック
型番VJZ14190111BVJZ14190211BVJZ14190311B
CPUCore i7-11370H
(4コア/8スレッド、3.3~4.8GHz)
Core i5-11300H
(4コア/8スレッド、3.1~4.4GHz)
GPUIris Xe Graphics
メモリLPDDR4x 16GB
ストレージNVMe M.2 SSD 512GB(PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型4K非光沢液晶14型フルHD非光沢液晶
解像度3,840×2,160ドット1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Home
バッテリ駆動時間約17時間約34時間
汎用ポートThunderbolt 4×2(DisplayPort、USB PD対応)
映像出力Thunderbolt 4、HDMI
無線機能5G(Nano SIM)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
WANの対応バンド5G: n1/2/3/5/7/8/12/20/28/
38/41/66/71/77/78/79
4G: B1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/
17/18/19/20/25/26/28/29/30/32/
34/38/39/40/41/42/46/48/66/71
3G: B1/2/4/5/6/8/9/19
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Webカメラ207万画素
セキュリティ顔認証センサー、指紋認証センサー
その他インターフェイスステレオスピーカー、ステレオマイク、音声入出力端子
付属アプリOffice Home & Business 2019
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
約320.4×220.8×12.2~16.9mm
重量約1,059g約982g約958g
店頭予想価格41万9,800円34万9,800円30万9,800円
天板
底面
前面
背面
左側面
右側面

 なお、構成をカスタマイズできるWeb直販のCTOモデルも用意されており、こちらではTurbo Boostで5GHzまで回るより高性能な「Core i7-11375H」を搭載可能な「SIGNATURE EDITION」を選ぶことができる。メモリを32GB構成にしたり、2TBのNVMe SSDを装備したりすることも可能だ。

Core i7-11375H

 また、SIGNATURE EDITIONでは本体色に通常のブラックだけでなく、「シグネチャーブラック」というカーボンファイバーの繊維目を活かしたデザインもあり、こだわりの最高級モデルとなっている。

SIGNATURE EDITIONと通常塗装の表面処理の違い
左側の写真がSIGNATURE EDITIONのシグネチャーブラック塗装、右は通常のブラック。SIGNATURE EDITIONではカーボンファイバーの繊維がわずかに見える表面処理になっている
SIGNATURE EDITIONの天板のロゴ部分の拡大。カーボンファイバーの繊維の線がわかりやすい

レガシーポートが消え去ったVAIO Z

 ここからはVAIO Zを細かく見ていこう。

 まずは以下のVAIO Zの両側面の写真を見てほしい。USBポートはType-C(Thunderbolt 4)が左右に1基ずつしかない。MacBookを筆頭として最近のWindowsノートでも、USB Type-Aポートの排除はめずらしくないが、ことVAIOに関して言えばこれはかなり思い切った構成だ。

VAIO Zのインターフェイスはシンプル
VAIO Zの左側面は、Thunderbolt 4とイヤフォンジャックのみ
右側面は、Thunderbolt 4とHDMI

 と言うのも、同じ14型モバイルノートのVAIO SX14などではいまだにミニD-Sub 15ピンやLANポートが搭載されているぐらいだし、VAIOはどちらかと言えばコンシューマよりもビジネス需要を主眼にしているので、レガシーなポートが排除されるとは思わなかった。

こちらはVAIO SX14のインターフェイス。独自の丸形電源コネクタのほか、現在はおもにプロジェクタの使用に必要とされるレガシーなミニD-Sub15ピンまで用意されている

 筆者は2020年1月に登場した第2世代SX14(Comet Lake)を使っているが、同年10月に登場した第3世代のSX14(Ice Lake)や、2019年の第1世代(Whiskey Lake)も含めてポートの構成は変わっていない。タッチパッドもいまどきのノートPCと比べると非常に狭く、筐体のデザインや質感は悪くないものの、こうした部分が古臭さを醸し出してしまっていた。

 今回のVAIO Zで、潔くレガシーなポートを切り捨て、いまどきなインターフェイス構成になったことは素直に喜びたい。とは言え、USB系がType-Cのみというのはやはり賛否両論あるだろう。

 実際、筆者はVAIO Zのレビューを書くまで、Type-CのUSB Hubを持っていなかったが、USBマウスやUSBメモリを挿すのにわざわざType-A変換アダプタを使うのが面倒なので急ぎ購入したくらいだ。

 それに電源はType-Cを利用するので、実質的に使えるのは2基あるうちのもう一方のType-Cのみということになる。Type-Aポートをまったく使っていないのであれば不要だろうが、できればUSB PDのパススルー充電に対応したドッキングステーションを用意したいところである。

VAIO純正の「Type-C 4Kマルチモニタードッキングステーション」

 そのことを踏まえてか、今回VAIOは純正アクセサリとして「Type-C 4Kマルチモニタードッキングステーション」をオプションで用意してる。インターフェイスは、DisplayPort×2、HDMI、USB Type-A×3、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン出力だ。Type-Cだけで4K60Hzのディスプレイ2台を表示できるようになっており、USB PDのパススルーもサポートしている。

 こうしたドッキングステーションを用意してしまえば、いつも使うお決まりのデバイスを集約できるし、持ち運びのさいには1本のType-Cケーブルを外すだけですぐにVAIO Zをカバンに押し込める。コストはかさむが、これからの時代のモバイルノートの運用の仕方として、避けられない道だろう。

 もちろん、Type-Aポートを1基備えてくれるだけでもこうした面倒な問題は大きく軽減されるが、VAIO Zでは筐体の左右に排気口があり、そのスペースを用意できなかったのかもしれない。VAIO Zに搭載されているCPUはハイエンドのCore H35シリーズなので、冷却機構をおろそかにはできず、致し方ないところなのだろう。

左右どちらのType-CでもUSB PD充電が可能

 前述したとおり、VAIO Zには2基のType-C(Thunderbolt 4)ポートがある。どちらもUSB PDに対応するほか、DisplayPort Alternate Modeによる画面出力も行なえる。

USB PDをサポート
写真は左側面のType-Cポートだが右側にもあり、両方ともUSB PDに対応している

 VAIO SX12および14では、丸形コネクタのACアダプタを採用しつつ、Type-CポートによるUSB PDも利用できる仕様だったが、なにせポートが右側にあるので、マウス操作の邪魔になること必至だった。この点が改善されたのはとても喜ばしい。

VAIO SX12/14では右側のみにあるType-CがUSB PD対応だった。そのため、ACアダプタではなく、USB PD充電器を使う場合や、DisplayPort出力を行なう場合にマウス操作の邪魔になっていた

 USB PD対応充電器は最大65W(20V/3.25A)出力のものが標準で付属。コンパクトな作りで、最新の半導体であるGaN(窒化ガリウム)が使われている。Type-Cコネクタのつまみ部分に傾斜が設けられているのは、着脱に配慮したかたちを採用したからだそうだ。

VAIO ZのUSB PD充電器
USB PDに対応する付属充電器
コネクタのつまみ部分に傾斜があり、差し込み/引き抜きしやすいとする
出力は15W(5V/3A)、18W(9V/3A)、45W(15V/3A)、65W(20V/3.25A)の4種類
重量はケーブル込みで162gだった

 ただし、コンセントプラグが折りたたみ式ではないのが残念ところ。持ち運びに苦労するわけではないが、プラグの突起が若干邪魔に感じるかもしれない。

本体も含めれば4画面のマルチディスプレイ出力に

ディスプレイは狭額縁

 USB Type-C(Thunderbolt 4)ポートで出力可能な最大画面解像度は5,120×2,880ドットで、HDMIは4,096×2,160ドットとなり、それぞれリフレッシュレートは60Hzまでだ。

 実際に各Type-Cポートにディスプレイを接続し、2基とも同時に4K(3,840×2,160ドット)/60Hzの表示が可能だった。また、VAIO ZにはHDMIもあるので、本体と合わせれば4画面出力が可能だ。Type-Cを4Kに、HDMIをフルHDディスプレイに接続し、問題なく4画面表示ができることも確認している。

VAIO Zで4画面出力してみた
VAIO Zを合わせて4画面出力。1がVAIO Z、2と3が4Kディスプレイ、4がフルHDディスプレイ

 なお、HDMIで接続したフルHDのディスプレイのほうは、最初60Hzに設定していたが、ゲーミングモデルであり、リフレッシュレートの設定で120Hzと144Hzが選択可能だったので試してみたところ、144Hzにすると画面が表示されなくなってしまった。

 そのため、60Hzに戻そうとしたところ、リフレッシュレートの項目そのものが出てこなくなってしまい、まったく利用できないという事態になった。複製表示(ミラーリング)では強制的に60Hzに引っ張られるのか画面を出せるが、拡張表示ではどうやっても画面が出ないという状態だ。

画面はVAIO SX14のものだが、120Hzと144Hzを選択できるものの、144Hzに設定したあと画面が出ず、このリフレッシュレートの選択もできなくなった。Intelのグラフィックスドライバの問題だろうか

 Ice Lakeを搭載するVAIO SX14でも、HDMIで144Hz表示にすると、VAIO Zと同じでまったく項目が出て来ず、お手上げ状態になってしまった。Intelのグラフィックスドライバの問題なのか、筆者のディスプレイの相性の問題なのかは不明だが、外部ディスプレイでリフレッシュレートを調整するさいには注意したい。

商談で便利! ディスプレイは180度展開で画面は上下反転可能

ヒンジ部分は180度開くことができる

 VAIOのノートは液晶部分を開いたさいに、ヒンジ部分が持ち上がり、タイピングしやすい傾斜を作る「チルトアップヒンジ」が採用されている。VAIO Zでもこれは変わらないが、これまでと違うのは画面を180度倒せるようになったことだ。

クラムシェルでも180度開くようになった
ヒンジが180度開くVAIO Z(左)。右の写真のVAIO SX14のように、これまでのVAIOのクラムシェルでは途中までしか倒せなかった

 これによって、さらにタイピングの最適な角度が求められる……というよりは、商談などでテーブル越しに相対している相手に画面を見せることを想定しているようだ。そのため、画面を180度反転させると同時に、タッチパッドの操作も反転させるショートカットを用意し、画面を反転させたままでも戸惑わずにマウスカーソルを操作できる。

ショートカットキー一発で画面が反転
画面を反転。タッチパッドの操作も自動的に反転している

 反転の設定はユーティリティの「ファンクションキーの設定」から、[Fn]+[F8]~[F12]のいずれかに割り当てることができる。

画面の上下反転をショットカットキーで割り当て可能

 なお、VAIO ZのディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)と4K(3,840×2,160ドット)の2種類が用意されている。4KのほうはHDRをサポートしているため、コントラスト比が高く、DCI-P3のカバー率が99.8%とデジタルシネマ規格に準拠するといった特徴がある。

 消費電力の面もあり、今回筆者はフルHDのモデルを使っている。やはりモバイルノートとして使用することを考えると、バッテリの動作時間が気になるからだが、そうそう外で使うことがなく、写真や映像を忠実な色域で見たいとか、HDRを使いたいというのであれば、4Kのほうを選んだほうが良い。

 もちろん、フルHDのほうでも画質が悪いということはない。パネルはIPSだろうし、視野角は十分で、いくつかのコンテンツを視聴してみても色合いは適切だった。

キーストロークが1.2mmから1.5mmになりもはや別物

キーボードのレイアウトは従来モデルと変わらないが……
VAIO Zのキーボード
VAIO SX14のキーボード

 これまでのVAIOのキーボードはキーピッチが19mmと標準的で、キーストロークも1.2mmでとくに浅いわけでもなく、筆者自身不満なく使用していた。しかし、今回のVAIO Zではキーストロークが1.5mmとなり、0.3mm分深くなっている。

 0.3mmがどの程度影響するのか、VAIO SX14を使っている筆者からするとかなり印象が違う。SX14のキーボードはあまりカチャカチャならない静音よりのキーボードということもあり、どちらかと言えば押下時にペタッっとした感触で反発力はそれほど強くなかった。

 しかし、今回のVAIO Zは明らかに打点が深くなっているし、それとともに反発力が強くなっているので、メリハリがあって気持ちよくタイピングできるようになっている。

キーストロークはより深く、より反発が強くなった
VAIO Zのキーストロークは1.5mm

 1.5mmと言えば、筆者が以前使用していたThinkPad X1 Carbonと同じキーストロークだ。VAIO Zとは反発力といった押下の感触は異なるものの、キーの深みは同様のものを感じる。X1 Carbonから現在のSX14に移ったさいにはその点で多少違和感を覚えたが、VAIO ZについてはThinkPadユーザーでも比較的素直に移行できると思う。

 また、パッと見ではわからないが、VAIO Zではキートップの中央に軽くくぼみが設けられており、いわゆる「シリンドリカルキーボード」になった。そのため、指先がキーにフィットするとともに、キートップも以前のサラサラしたものからスベスベとした感触の材質に変わっており、若干の摩擦が生まれて指が馴染みやすい。

 筆者はこの原稿を実際にVAIO Zを使って書いているが、SX14よりも明らかに打ちやすくなっている。前述したように、ストロークが深くなったこともあるが、どちらかと言えば押下時の反発が上がっていることが大きい。これによって、押し込んでからキーがすぐに戻るような感覚があり、跳ねるように次のキーに指を運ぶことができる。

 キーボード面はこれまでどおり、天板を開いたさいにヒンジが持ち上がり、タイピングに最適な傾斜を作る「チルトアップヒンジ」になっており、自然な角度で入力可能。この機構は底面が持ち上がることもあり、熱を逃がす効果も期待できる。

 なお、キーボードについては日本語配列だけでなく、英語配列も用意されている。さらに日本語配列では「かな文字なし」を選択できるほか、日本語配列と英語配列の両方でキートップの刻印を薄く見せる「隠し刻印」にすることもできるなど、豊富にカスタマイズできる。

材質が変わり指紋や皮脂汚れがつきにくくなったパームレスト

 筆者はいま使っているVAIO SX14に満足しており、機能面での大きな不満はない。ただ、キーボード面のパームレストは指紋や皮脂汚れがつきやすい材質についてはそのかぎりではなく、改善してほしいとつねづね思っていた。

筆者のVAIO SX14。しばらく使っていると、パームレスト部分などの皮脂汚れが非常に目立ってくる
汚れを拭けば美しい表面処理が拝める

 VAIO SX12/SX14のキーボード面の表面処理はきれいでツルツルとした手触りなのだが、ものすごく汚れがつきやすいのだ。しばらく使っていると手のひらの皺がくっきりとパームレストに浮かんでしまうくらいなので、筆者は汚れがひどくなるたびに無水エタノールで拭いていた。

 VAIO Zでは、キーボード面も含めて素材がカーボンファイバーに変わるとともに、耐指紋性のある塗料が使われるようになった。実際にこの原稿を打ち込んでいたが、筆者のVAIO SX14のように極端に汚れが目立つということがなくなっていた。

表面処理の変更により汚れがつきにくい
こちらはVAIO Zのパームレスト。表面の塗装が変わり、皮脂汚れがつきにくくなった

 キートップについては、これまでも汚れにくいというフッ素含有UV硬化塗装が施されていたが、今回は新開発のものが使われているそうで、防汚性と耐指紋性が強化されたとする。キートップはパームレストほど汚れは目立たないが、ずっと使っているとやはり皮脂汚れでテカってくるので、非常に細かい部分ではあるが、日々のストレスが軽減されるのはうれしいところだ。

キーボードバックライトが大きく改善

 キーボードバックライトについても改善が見られる。VAIO SX14などのこれまでのキーボードバックライトは、キーの下のはめ込み部分の隙間から光が漏れるだけで印字部分がまったく見えなかった。そのため、ファンクションキーといった目視で押すようなキーの位置がいまいちわかりにくかったのだが、VAIO Zではきちんと印字部分のアルファベットや数字にバックライトが透過され、視認できるようになっている。

ライトがキーの印字を透過するようになった
VAIO Zのキーボードバックライト。ライトがキーの印字を透過するようになった
こちらはVAIO SX14のキーボードバックライト。透過処理がされておらず、キーの印字が見えない

 キーボードバックライトは専用ユーティリティの「VAIOの設定」から、「常に点灯する」か「点灯しない」、そして「いずれかのキーを押したときに点灯する」の3つから選ぶことができ、最後については10秒/30秒/60秒のどれかに決められ、その時間中に操作が行なわれなければ消灯される。

ユーティリティに用意されているキーボードバックライトの設定

 また、キーボードバックライトの機能のオン/オフをショートカットキーで行なえるようになった点も見逃せない。これまでは「VAIOの設定」というユーティリティを立ち上げて、常時点灯か、押下時のみ点灯にするかを選ぶ必要があったが、今回から[Fn]+[F8]に割り当ててすぐにオン/オフするといったことができるようになっている。

バックライトの機能のオン/オフをユーティリティで割り当てできるようになった

 押下時に点灯する設定にしておくだけで良いのでは? と思うかもしれないが、キーボードのバックライトが点灯していた場合、バッテリに影響があるわけで、できればモバイル時にはオフにしておきたいのだ。

 ちなみにバックライトのオンにした場合と、オフにした場合でバッテリの持ちを検証してみると、じつに7時間も差が出る。これは充電率100%の状態から5%になるまでを測った結果だ。

【表2】バックライトオン/オフでのバッテリ駆動時間
4G接続でアイドル状態かテキストエディタを操作した場合(100%→5%まで)
バックライトオン9時間1分
バックライトオフ16時間5分

 計測するにあたり、電源モードは「より良いバッテリー」にして、画面はつねに表示で輝度は試用機の標準だった60%に固定。通信機能は消費電力を増やして手早く計測を終えるために、Wi-Fiをオフにして4G接続にした。そしてEdgeとテキストエディタのみ立ち上げて、テキストエディタでこの原稿を書く、もしくは放置でアイドル状態にしていた(Edgeは立ち上げただけ)。テキスト入力と放置する時間はバラバラなので、厳密には同条件ではないのだが、キーボードバックライトオンでは9時間1分、オフだと16時間5分だった。結構な差だ。

 作業内容によってこの時間がもっと縮まってくるわけで、筆者はバックライトが必要なときだけオンにしておきたいと考える。たとえば、記者発表会などではメーカーがプレゼンするときに、室内の照明を消してプロジェクタから投影されるスライドを参加者に見やすくしようとすることがほとんどで、場合によっては手元がかなり暗くなることがある。

 そうした場合に、バックライトの設定をオフにしていると、いったんユーティリティを起動してオンにしなければならず、非常にわずらわしかった。発表会では登壇者がしゃべったことを聞き逃さないようにメモする必要があり、スライドの写真を撮ったりもするのでつねに慌ただしいのだ。悠長にユーティリティを起動して設定を変えて……という時間が惜しい。

 そのため、ショートカットキーでオン/オフができるようになったことはうれしい。欲を言えば、ThinkPadのように標準で[Fn]+[Space]でバックライトのオン/オフができると、いざというときにF8だっけ? F9だっけ? などと迷わずに済むのだが……。

 なお、ベンチマーク結果のところでも語るが、4GではなくWi-Fi接続にした状態で、バックライトをオフにして同じように動かした場合は21時間29分を記録した。4G時の16時間5分からさらに増えている。このように、携帯電話回線だと消費電力が大きいので、やはりモバイル時には必要がないならキーボードバックライトを自動点灯させるという設定にはしたくないのだ。

ようやく大型化したタッチパッド

 最近では一部のメーカーを除き、多くのノートPCでタッチパッドが大型化している。VAIOに関しては2020年モデルでも依然として小さいままで、デザインに古臭い印象を与えてしまっていたが、VAIO Zではこれが改善された。

従来モデルよりタッチパッドを広く使える
VAIO Z(左)とVAIO SX14のタッチパッド。VAIO Zでは最近のノートPCらしい大きさに変更された

 VAIO SX14のタッチパッドは実測で8×4.5cm(幅×奥行)しかなかったが、VAIO Zでは11×6.2cm(同)へと拡張。見た目はいまどきのノートPCらしくなった。

 タッチパッドは実際に使うときは大体真ん中あたりから操作するわけで、幅だけで言えばSX14では実質4cmくらいしか使えないわけだ。そのため、画面の端から端へとカーソルを動かすのにスッスッスッと何度か指を真ん中の位置に戻して操作する必要があった。

 筆者のカーソル速度の設定で言えば、対角線上に端から端まで行くのに約3回タッチパッドで指の位置を真ん中に戻す必要があったが、VAIO Zではこれが約2回で済むようになった(フルHD表示)。

 VAIO Zのタッチパッドは大きすぎず、親指の付け根の膨らんでいるところ(母指球)があたることもない。あえて当てたとしてもカーソルが誤動作しないようになっている。もちろんクリック判定もされないので、たとえば日本語入力時にカーソルがクリックされ、まだ文字変換していないのに文字が確定されてしまうといったことは起きない。

 カーソルの操作性は良好だ。おそらくSX14と変わらないとは思うが、タッチパッドの材質が以前のツルツルとしたものからサラサラしたものに変わっているので、指を運びやすくなったという印象がある。

 クリックボタンは一般的に好まれやすい独立型で、このボタンに関してはSX14とさほど変わらずちょっと固めの感触だ。心なしかSX14よりもクリック時にカチッという音がはっきりと聞こえるようになっている。

指紋センサーで即ログイン。人感センサーで離席/着席時に自動ロック/解錠

 VAIOの指紋センサーは電源ボタンと一体化されている。これまではパームレスト右側部分に用意されていたが、電源ボタンと一体となったことで、電源投入と同時に読み取りも行ない、そのままWindows 10の起動時には生体認証が済み、ノータッチでログイン可能になった。

電源ボタンに指紋認証センサーを内蔵
電源ボタンには指紋認証センサーが内蔵されている。そのため、電源投入と同時にセンシングも行ない、そのままWindows 10にログインできるようになっている

 顔認証カメラも用意されているが、このコロナ禍ではマスクをつけることが日常であり、顔認証するにはマスクをずらす必要があるなど、スマートフォンも含めて改めて指紋認証方式のありがたみを感じる。

 今回使用した試作機では指紋登録して指紋認証も行なえたのだが、電源投入からOS起動までの一括ログインは利用できず、体感はできなかったが、製品版では問題なく使えるようになっているはずだ。

 さて、こうした認証以外のセンサーの活用として、VAIO Zでは人感センサーが取り入れられた。人感センサーが提供する機能は、①「ユーザーの離籍を検知してスリープに移行」、②「ユーザーが席に戻ってきたさいにスリープを解除」、③「在席中に時間経過によるスリープやスクリーンセーバーを無効にする」といったものだ。

人感センサーの設定

 しばらく離籍するさいにパソコンの画面内容を見られないようにしたり、誰かに操作されたりしないように、システムをロックしておくというのはセキュリティ面で大切なことで、VAIO Zではこれを自動的に行なってくれるのだ。

 離籍について具体的には、まずは画面を暗くし、そのあとでロックして、スリープに移行する。離籍から画面を暗くするまでの時間と、それからロックするまでの時間はそれぞれユーザーが任意に設定でき、10~600秒まで11段階で用意されている。

 さらに、外付けディスプレイを接続している場合とそうでない場合で、画面の暗転とロックまでの時間を変えて設定できる。おそらく、メインの画面を外付けディスプレイにして、VAIO Zのほうを横に置いて使うといった想定なのだろう。横に置くと感知範囲が変わってくるからだ。

人感センサーで離席と着席を感知
人感センサーはカメラ部分にある。なお、後述するプライバシーシャッターでカメラを塞いだとしても人感センサーに影響はない

 実際に使ってみると、問題なくユーザーの在と不在を判定しており、安心して使用できる。本製品はモダンスタンバイをサポートしており、着席してのスリープからの復帰も速く、わずらわしさは感じない。もちろん着席時は本人かどうかを確認しているわけではないので、スリープ解除されるさいはロックを解除する必要がある。とは言え、顔認証で瞬時に解除されるし、マスクをしていても指紋認証が使えるので手間はかからない。

 ただし、前述したように外部ディスプレイをメインの画面にする使い方で、VAIO Zを自分の斜めに横に置いた場合は在席状態をうまく検知できていないことがあった。そのため、席についているのに、画面が暗転してしまう。人感センサーの感知範囲がかぎられているため仕方がないところだろう。

 なので、外部ディスプレイを接続した場合とそうでない場合で、暗転させる時間を調整すれば良い。たとえば、ちょっと姿勢を正したりして、少しでもセンサーが反応すれば、画面が暗転するのを防ぐことができる。まったく微動だにせずに同じ姿勢で仕事を続ける人はいないだろうから、時間を変えるだけで十分に対応できるはずだ。

画面が暗転する時間、それからロックするまでの時間は外部ディスプレイ接続時と非接続時でそれぞれ設定可能

カメラ部分にシャッター装備。マイクはタイピング音を拾いにくい構造に

 これまでのVAIOになかった機構として、今回のWebカメラにはプライバシー保護のためのスライド式シャッターが実装。指でスライドさせて物理的にカメラの映像をシャットアウトできるようになっている。ただし、シャッターでカメラを塞ぐと当然ながら顔認証が使えなくなる。

カメラを物理的に塞げるシャッター
Webカメラにスライド式のプライバシー保護シャッターが装備された

 Webカメラ自体はIce Lake世代のVAIO SX12/14と変わらずの207万画素で、とくに性能が向上したという印象はない。ノートPC一体のWebカメラとしては標準的な画質であり、会議では十分に使えるだろう。

 なお、以下はGoogle MeetでVAIO ZのWebカメラを使用したときのキャプチャで、あまり画質が良くないが、これは筆者の仕事部屋のシーリングライトがちょうど真後ろに来ているため、逆光になって暗部にノイズが載りやすいからだ。こういう悪条件下では正面から当てるLEDライトを用意するなどして対応するほかない。

VAIO ZのWebカメラを使用。カメラの画質は標準的なものだが、写真の場所では真後ろにシーリングライトがあり、逆光になるため画質が悪くなっている

 マイクについては明らかな改善が見られる。Web会議ではマイクがノートPCのタイピング音を含めた筐体の振動音を拾いがちで、筆者が使っているVAIO SX14では、これがかなり相手に届く。しかし、今回VAIO Zで試したところ、SX14の「ゴトゴト」といった音にはならず、REALFORCEといった静電容量式キーボードを使用しているくらいの「コトコト」といった感じまで低減されている印象だった。

 VAIO Zではマイク部分に新しく制振性の高いゴムが採用されたとのことで、密閉性が増しており、タイピング音を小さく拾うようになっているようだ。また、ビームフォーミングの指向性が増しており、周囲のノイズも拾いにくくなっているとしている。

 スピーカーについては、音声だけを聞き取りやすくするDolby Audioの機能が用意されており、Web会議での利用を強く意識しているのがわかる。

スピーカーはキーボード面の前側の側面部に用意されている
マイクの指向性などをショートカットキーの設定で選べるようになる
Dolby Audioのモードの切り替えも行なえる

やっぱり速い5G通信。DLで900Mbps台を記録

 VAIO ZのWAN対応モデルでは、同社初の5Gモデムが搭載されている。また、これまでSIMスロットはMicro SIMだったが、Nano SIMに変わっており、Nano SIMをアダプタでMicro SIMにしていた場合は別として、以前のSIMが利用できないので注意が必要である。

VAIO ZのSIMスロットは底面後部にある
SIMはこれまでのMicroからNano形状に変わった

 対応バンドについてはスペック表に記載したとおりで、5GならNTTドコモのSub6で使われるn77~n79などを利用できる。ミリ波(n257)は非対応だ。

 今回NTTドコモの5Gギガライトプランを使用し、回線速度を計測するアプリ「Speedtest」で、VAIO Zの5Gと、VAIO SX14(Comet Lake版)の4Gでそれぞれ速度を計ってみた。VAIO Zで4Gを使わなかったのは、なぜか用意した5GのSIMだと4G回線がうまくつながらなかったためだ。場所は5Gアンテナが設置されている神奈川県内のドコモショップで行なっている。

 結果は以下のとおりで、VAIO Zのダウンロード速度が972.24Mbps、アップロード速度は24.94Mbps。それに対して、VAIO S14のほうはダウンロードが25.37Mbpsでアップロードは23.42Mbpsだ。ダウンロード速度については約38倍もの差が出ており、圧倒的な速さを確認できた。

5Gではダウンロード速度が圧倒的
VAIO Z(5G)
VAIO SX14(4G)

 なお、VAIOは1年契約で32GB分の通信を行なえるオリジナルSIMを提供しているのだが、現時点ではまだ5Gプランが用意されておらず、検討中との話だった。専用SIMの場合、VAIOのSIM設定アプリが用意されており、設定も楽なのだが、当然同社が提供しているもの以外では利用できない。5GのSIMを使用する場合は各社のAPNの設定を確認して登録する必要がある。

今回使用したNTTドコモのAPN設定。ユーザー名とパスワードは入れる必要がない

 VAIOのSIM設定アプリは、データ量が消費されない低速モードを即座にオン/オフできたりと便利なので、5G SIMの追加が期待されるところだ。

 SIMを挿したまましばらく外で使ってみたが、モバイルノートとして十分に利用できることを確認できた。筆者愛用のVAIO SX14(Comet Lake版)は4Gモデムつきで実測重量が1,016g、一方今回の5GモデムつきVAIO Zは実測1,008gと少し軽いくらいで、同じ14型のため使用感はほぼ変わらない。

 ただし、実際のサイズを見比べてみると、VAIO SX14は約320.4×222.7×15~17.9mm(幅×奥行き×高さ)だが、VAIO Zは約320.4×220.8×12.2~16.9mm(同)で、本体の厚みが最薄部で約3mmは薄くなっていて、実質的には微妙に小さくなっているのだ。

モデムありは1,008g、モデムなしなら974gとより軽量
5Gモデムを搭載するVAIO Zの実測重量は1,008gだった。モバイルノートとしては十分に軽量だ
こちらはモデムなしのVAIO Zで、重量は974gとさらに軽い。ちなみに公式の「約958g」という最小重量はCore i5-11300H搭載モデルでの話だ

 VAIO SX14はかなりモバイル用途で利用しているが、性能やバッテリ面で困ったことはない。VAIO Zについては、むしろ性能が上がりつつ、後述するベンチマーク結果で示しているとおりバッテリ駆動時間も長いので、より快適にモバイルで作業ができるようになったと言える。

 唯一気にしなければいけないのはインターフェイス面だろう。汎用ポートはThunderbolt 4しかないので、USB Type-AやSDカードを利用したい場合は、Type-C接続のHubも携帯する必要がある。

高負荷アプリで実力が見えるCore H35のベンチマーク結果

 VAIO Zの性能を測るために、PCMark 10、3DMark、Cinebenchなどの代表的なベンチマークを走らせてみた。VAIO ZはSIGNATURE EDITIONで用意されているCore i7-11375Hのほかに、下位のCore i7-11370Hも加えている。

このほか、Tiger Lake世代のXPS 13(Core i7-1165G7)と、Ice Lake世代のVAIO SX14(Core i7-1065G7)を比較対象とした。すべてWindows 10の電源モードは「高パフォーマンス」にしている。

【表3】検証環境
VAIO ZVAIO Zデル XPS 13VAIO SX14
CPUCore i7-11375H
(4コア/8スレッド、最大5GHz)
Core i7-11370H
(4コア/8スレッド、最大4.8GHz)
Core i7-1165G7
(4コア/8スレッド、最大4.7GHz)
Core i7-1065G7
(4コア/8スレッド、最大3.9GHz)
GPUIris Xe GraphicsIrix Plus Graphics
メモリ32GB16GB
SSD256GB(PCIe 4.0)1TB(PCIe 3.0)256GB(PCIe 3.0)

 VAIO Zは性能を底上げする「VAIO TruePerformance」機能があるので、これのオン/オフを加えているが、これは時間の都合で上位のCore i7-11375Hにとどめた。そのため、Core i7-11370Hの値はすべてTruePerformanceがオンのものである。

 なお、XPS 13はコンフィグラブルTDP(cTDP)が上限の28Wで動いていないようなので、ほかのCore i7-1165G7搭載製品と比べて性能が低い可能性があることをご承知いただきたい。

【表4】基本ベンチマークの結果
VAIO Z
(Core i7-11375H)
VAIO Z
[TPオフ]
(Core i7-11375H)
VAIO Z
(Core i7-11370H)
XPS 13
(Core i7-1165G7)
VAIO SX14
(Core i7-1065G7)
PCMark 10 Extended v2.1.2506
Overall4,9594,9204,8824,4133,541
Essentials10,13610,10910,0949,5448,504
App Start-up13,48313,39713,23512,52111,194
Video Conferencing8,0638,0398,0537,8057,065
Web Browsing9,5799,5949,6508,8987,778
Productivity7,0356,9116,7975,4755,629
Spreadsheets6,4166,2976,0686,0185,055
Writing7,7157,5877,6154,9816,270
Digital Content Creation5,1985,1105,0564,8043,945
Photo Editing8,1048,0408,0987,6385,473
Rendering and Visualization3,3663,2843,0512,8872,822
Video Editing5,1495,0565,2325,0294,214
Gaming4,4104,4364,4274,0852,206
Graphics5,7785,8175,8005,3872,809
Physics14,64014,77414,81413,89111,580
Combined2,0392,0472,0451,8491,022
3DMark v2.167113
Timespy1,8581,8511,8571712945
Night Raid19,40618,97319,52916,6319,838
Fire Strike5,3005,2945,31547252,691
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK
標準品質
(1,920×1,080ドット)
2,519
(やや重い)
2,593
(やや重い)
2,538
(やや重い)
1,912
(動作困難)
1,312
(動作困難)
軽量品質
(1,920×1,080ドット)
3,326
(普通)
3,335
(普通)
3,265
(普通)
2,044
(重い)
1,687
(動作困難)
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク
1,920×1,080ドット
標準品質(ノ-トPC)
7,968
(非常に快適)
7,870
(非常に快適)
8,022
(非常に快適)
6,247
(とても快適)
4,536
(快適)
1,920×1,080ドット
高品質(ノ-トPC)
6,535
(とても快適)
6,481
(とても快適)
6,448
(とても快適)
4,737
(快適)
3,423
(やや快適)

 全体的にCore i7-11375Hを搭載するVAIO Zの性能がかなり高いことがわかる結果となっている。VAIO TruePerformanceのオン/オフや、Core i7-11375Hとその下位の11370Hとの性能差はここでは出ていないが、後述するCinebenchでは明確に出る。

 また、XPS 13が搭載する同じTiger Lake世代のCore i7-1165G7は同じ4コア/8スレッドのCPUではあるが、以下のようにcTDPによるクロックの差がかなりあり、この点がスコアに大きく影響しているのだろう。

【表5】Core i7-11375H/11370HとCore i7-1165G7の違い
Core i7-11375HCore i7-11370HCore i7-1165G7
コア数4コア/8スレッド
キャッシュ12MB
Turbo Boostクロック
(1コア動作時)
5GHz4.8GHz4.7GHz
Turbo Boostクロック
(4コア動作時)
4.3GHz4.3GHz4.1GHz
cTDP-up35W35W28W
cTDP-upクロック3.3GHz3.3GHz2.8GHz
cTDP-down28W28W12W
cTDP-downクロック3GHz3GHz1.2GHz

 次にCinebench R23の結果だ。

【表6】Cinebench R23の結果
VAIO Z
(Core i7-11375H)
VAIO Z
[TPオフ]
(Core i7-11375H)
VAIO Z
(Core i7-11370H)
XPS 13
(Core i7-1165G7)
VAIO SX14
(Core i7-1065G7)
CPU
(MultiCore )
6,8075,7815,6134,2303,779
CPU
(Single Core)
1,6181,5341,4841,4201,169

 マルチコアの場合、Core i7-11375Hと11370Hの差は、前者のTruePerformanceをオフにした値よりも若干低い結果となっている。4コア動作状態でのTurbo Boost時の最大クロックはともに公式仕様で4.3GHzなのだが、11370HのほうはTruePerformanceがオンになっていても11375Hほど高クロックで動いていないか維持できていないようだ。今回は時間の都合で確認しきれなかったが、Power Limitの設定で差別化が図られているのかもしれない。

 そして、Core i7-11375Hだけを見れば、TruePerformanceをオンにした場合は、オフのものと比べてじつに1,000以上も差が出ている。どうしてこういった差になるのかを示したのが以下のグラフで、Cinebench測定中にHWiNFOで計ったものだ。横軸が時間(秒)、縦軸が動作クロック(MHz)となっている。

 TruePerformanceがオンの場合はクロックが4.1GHz前後でだいたい一定に保たれているのがわかるだろう。TruePerformanceがオフだと、34秒までは同じクロックで動作しているが、その直後に4GHz台を下回り、3.6GHz前後で張りつこうとする。

 このときのCPU温度を見てみると、次の縦軸を温度で表したグラフのように、TruePerformanceオフではコア温度が90℃台に達すると、すぐにクロックを落としており、80℃前後で動いているのがわかる。

 TruePerformanceの詳細は以下の記事に詳しく書かれているが、要するにTruePerformanceがオンの場合、Turbo Boostを効かせ続けようと、Turbo Boost時の消費電力の上限(Power Limit)を保つように動作しており、その結果、高クロックが維持され大きくスコアを伸ばしているのだ。

 残念ながら、ツールからCPUファンの回転数を拾うことができなかったためグラフ化できなかったが、騒音計を使ったところ、TruePerformanceオンのときのファン付近の騒音値が61.5dBであるのに対し、オフのときは48.5dBとなった(暗騒音は41.2dB)。

 そのため、TruePerformanceオン時ではファンの回転数を上げて高クロックを維持しているのがわかる。なお、61.5dBでもゲーミングノートのような爆音にはなっておらず、不快感のない程度の音の大きさにとどまっていた。

VAIO Zの排気口は左右に2つある。心なしか右側のほうが風量が多かったので、騒音計は右側に設置した
吸気はヒンジ部分のスリットから行なっているようだ

 参考までに、以下はシングルコアでの動作クロックの推移だ。Cinebench R23のスコアは1,618と1,534で80ほどしか差がついていないが、それでもグラフからTruePerformanceオンのときのほうが若干だが瞬間的に高いクロックを何度も出している。

 TruePerformanceは、CPUを酷使するような条件で効果的ということであり、エンコードなどでも優位な差が出るだろう。ちなみにTruePerformanceを有効にするには、専用ユーティリティの「VAIOの設定→CPUとファン」の項目から行なうが、インターフェイス上でTruePerformanceという名前が一切使われていないので注意。「パフォーマンス優先」にしておけばオン、「標準」または「静かさ優先」にすればオフとなる。

CPUとファンの項目で「パフォーマンス優先」にすれば、TruePerformanceが有効になる

 次はPCMark 10のバッテリテストの結果だ。こちらもTruePerformanceのオン/オフを含めて計測し、ディスプレイの輝度は全機種標準値(VAIO Zは60%)に固定。電源の設定は「より良いバッテリー」だ。WANについては4GのSIMを使っており、5Gでは接続していない。なお、比較機のVAIO SX14は4Kモデルなので消費電力が高いことに注意。

【表7】バッテリベンチマーク結果
VAIO Z
(Core i7-11375H)
VAIO Z
[TPオフ]
(Core i7-11375H)
VAIO Z
(Core i7-11370H)
XPS 13
(Core i7-1165G7)
VAIO SX14
(Core i7-1065G7)
PCMark 10 Battery Profile - Modern Office
Performance7,8877,0326,7755,3635,854
Battery14時間57分16時間7分15時間14分9時間29分6時間32分
アイドル状態かテキストエディタを操作した場合(100%→5%まで)
Wi-Fi接続時21時間29分-
4G接続時16時間5分-
4G接続時
キーボードバックライトオン
9時間1分-

 VAIO Zのバッテリ容量は53Whで、XPS 13は52Whとかなり近いのだが、VAIO Zのほうが5時間以上も長く動作する結果となった。XPS 13の輝度は標準値の50%にしていたので、極端に明るいわけでもなく興味深い。

 VAIO Zは、TruePerformanceがオンでもほぼ15時間と、高性能CPUをモバイルで使ってもバッテリで不安になることは少なそうだ。むしろこの性能を持ち運べるのは大きなメリットとなる。

 JEITA2.0測定条件のスペックでは、5G搭載モデルで最大約17時間、Wi-Fiモデルのみでは約34時間となっているが、JEITA基準ではバッテリ駆動時間が基本多めになるのを考えても、15時間近く持つのであれば悪くない結果だろう。

 また、上の表にあるとおり、バッテリテストとして別に、テキストエディタでこの原稿を書くか、基本画面点灯のまま放置という動作を試しにやってみた。TruePerformanceはすべてオンだ。

 結果はWi-Fi接続時は約21時間も動作し、4G接続時でも約16時間と長時間動作した。まったくWebサイトの巡回はしていないが、たとえ巡回をしたとしてこの結果が半分になったとしても、1日使うには十分な動作時間が得られる。

 前述したキーボードバックライトを常時オンにした結果も載せているが、かなりバッテリを消耗しているのがわかり、不要なときはやはりバックライトをオフにして使用したい。

 最後はストレージの性能をCrystalDiskMark 8.0.0で計測した。多く語ることはないが、VAIO ZはPCI Express 4.0のx4接続の高速SSDを搭載しているため、シーケンシャルリードが6GB/s台と比較機を圧倒している。シーケンシャルライト性能についてはそうでもないが、ランダムライトではやはりほかよりも成績が良く、ストレージのレスポンスはかなり期待できるはずだ。

【表8】CrystalDiskMark 8.0.0の結果
VAIO Z
(Core i7-11375H)
VAIO Z
[TPオフ]
(Core i7-11375H)
VAIO Z
(Core i7-11370H)
XPS 13
(Core i7-1165G7)
VAIO SX14
(Core i7-1065G7)
1M Q8T1 シーケンシャルリード6,363.96MB/s-6,416.28MB/s3,217.17MB/s3,324.74MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト2,669.36MB/s-2,671.44MB/s3,083.28MB/s2,348.18MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード4,035.35MB/s-3,878.55MB/s1,767.40MB/s1,894.7MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト2,644.88MB/s-2,650.52MB/s1,785.45MB/s2,078.04MB/s
4K Q32T16 ランダムリ-ド772.21MB/s-756.67MB/s333.40MB/s532.02MB/s
4K Q32T16 ランダムライト699.79MB/s-673.54MB/s421.96MB/s523.14MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド78.71MB/s-79.98MB/s45.73MB/s50.33MB/s
4K Q1T1 ランダムライト239.69MB/s-247.62MB/s88.56MB/s190.03MB/s

まとめ - いま買える最高のVAIO

 VAIO Zは、これまでのVAIOのモバイルノートから大きく飛躍した製品に仕上がっている。フラグシップ機としての性能や機能面しかり、全面カーボンファイバーといった難度の高い設計への挑戦など、最高のVAIOノートとして、従来品とはその在り方で一線を画した存在だ。

 価格はもちろん高い。量販店向けの5G搭載モデルは41万円、Wi-FiのみのCore i5モデルでも30万円からと、長く付き合っていこうという覚悟が必要だ。しかし、VAIO Zには専用のサポート窓口が用意され、個々のユーザーに合わせた柔軟な対応を受けられるとしており、執筆時点では具体的なサービス内容がわからないが、故障時の代替機の即手配などを行なえるのではないだろうか。そういったサポート面も加味してこの価格を読む必要がある。

 性能的にも今後数年はまったく困ることがないだろう。末永く愛着を持ってPCを使いたいというこだわりの強い人には、高性能でなおかつ特別感のあるVAIO Zは、またとない相棒になってくれるはずだ。