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新VAIO SX14を発表当日レビュー。大幅刷新でペンやノイズ除去対応など、VAIO Z以上の魅力も

VAIO SX14

 VAIOは、最新OSのWindows 11を搭載する14型モバイルノート「VAIO SX14」の新モデルを発表。CPUが最新世代の第11世代Core(Tiger Lake)になるとともに、筐体の刷新が行なわれ、ポート構成の変更やノイズキャンセリングといった新機能を実装するなど、メジャーバージョンアップと言える仕上がりになっている。発売は10月22日からで、VAIOストアでの最小構成価格は14万1,900円からとなる。

 今回この新しいVAIO SX14を一足早く試用する機会を得た。筆者は現在、2020年1月発売で第10世代Core(Comet Lake)を搭載するSX14(第2世代)を使うリアルユーザーでもある。最新モデルでどのような変化が取り入れられたのか、合わせて用意した1世代前のSX14(第3世代)とも比較しつつ、評価していきたい。

VAIO Zから機能を継承しながら、VAIO Zにない新機能も搭載

新SX14(第4世代)
旧SX14(第3世代)
新SX14の天板。VAIOのロゴが旧モデルよりも少し小さくなった
旧SX14の天板

 まず結論から言っておくと、筆者のように2020年以前のVAIO SX14を使用しているユーザーであれば、今回の2021年モデルのVAIO SX14は間違いなく買いである。その根拠としては筐体が刷新されたことが大きい。

 VAIOは今年(2021年)の3月にフラグシップの14型モバイルノート「VAIO Z」を発売している。詳細を知りたい方は以下のレビューを見てほしいが、およそ5年ぶりの登場となったということもあり、最上位機種らしい意欲的な実装や機能が搭載された。

 VAIOはフラグシップモデルに採用した技術や機能を、その機種だけに留めず、下のラインにも降ろすという方式で、ラインナップの進歩を図っている。つまり、今回のVAIO SX14には、VAIO Zに用意された技術や機能のいくつかが実装されているのだ。

 VAIO SX14は今回で第4世代目となり、その第3世代および最新のVAIO Zとの違いを示したのが以下の表だ。

【表1】新旧VAIO SX14とVAIO Xとの機能比較
VAIO SX14(第4世代)VAIO SX14(第3世代)
2020年10月発売
VAIO Z
2021年3月発売
筐体立体成型カーボン(天板のみ)カーボン(天板のみ)立体成型含む4面カーボン
ヒンジ180度回転×
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
約320.4×222.9×13.3~17.9mm約320.4×222.7×15~17.9mm約320.4×220.8×12.2~16.9mm
最小重量約999g約999g約958g
CPU第11世代Core Uプロセッサ
(Tiger Lake)
第10世代Core Uプロセッサ
(Ice Lake)
第11世代Core Hプロセッサ
(Tiger Lake)
電源USB PDUSB PD
ACアダプタ
USB PD
付属電源の出力USB PD 65WACアダプタ40WUSB PD 65W
バッテリ容量53Wh43Wh53Wh
SSDPCIe 4.0PCIe 3.0PCIe 4.0
Thunderbolt 4/USB Type-C2基(Thunderbolt 4)1基(USB 3.1 Type-C)2基(Thunderbolt 4)
USB Type-A2基(USB 3.0)3基(USB 3.0)0基
ミニD-Sub15ピン××
Webカメラのプライバシーシャッター×
AIノイズキャンセリング機能××
スタイラスペン対応○ ※タッチパネルモデルのみ××
無線通信機能4G、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.14G、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.15G、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
キーボードVAIO Z相当
ストローク約1.5mm
ストローク約1.2mm-
タッチパッドVAIO Z相当--
耐指紋/防汚キートップVAIO Z相当×-
電源一体指紋認証×
人感センサー
着席ログオン/離席ロック
×

 最新世代のVAIO Zの大きな特徴の一つは、天面・ディスプレイ面・キーボード面・底面の4面すべてへのカーボン採用で、なおかつ工作難易度の高い立体成型が使われていることだ。

 今回のVAIO SX14の素材は従来通り、天面にカーボン、ディスプレイ面と底面に樹脂、キーボード面にアルミニウム合金を採用してはいるが、天面が立体成型カーボンになっており、耐久性が増しているという。

 具体的には、これまでは天面からヒンジへと繋がる樹脂部分については、カーボンで覆われていなかったが、ここにVAIO Zと同じように、立体成型でカーボンが使われた。これにより、剛性が高まっている。

新SX14のヒンジ部分
旧SX14のヒンジ部分

 VAIO Zから引き継がれたものは、Webカメラのプライバシーシャッター、キーストロークを増しつつ静音化したキーボード、大型化したタッチパッド、電源一体形の指紋認証センサー、着席や離席を確認してログオン/ロックを行なう人感センサーなど、多岐に渡る。当然旧SX14に対し、CPUやSSDの性能向上、バッテリ容量の向上も挙げられる。

人感センサーの設定

 しかし注目すべきなのは“VAIO Zに無い機能”も採用されていることだ。それは、AIノイズキャンセリング機能と、デジタルスタイラスペンへの対応の2点である。

 前者のAIノイズキャンセリング機能については、最近のビジネス向けノートではよく見かける機能のひとつであり、とうとうVAIOにも採用された形だ。後者のデジタルスタイラスペンについてだが、こちらはフルHDのタッチパネル対応モデルにて利用できる。詳しくはそれぞれ後述する。

筐体の変更に伴いタッチパッドが大型化

 前述した通り、4世代目のVAIO SX14では筐体が刷新された。外見がガラッと変わったわけではないが、外側から目につくのは立体成型のカーボンを採用した天板のヒンジ部分ぐらいだ。

 しかし、キーボード面の印象はかなり変わった。なぜならタッチパッドが大型化されたからだ。従来のVAIO SX14のタッチパッドは実測値で80×45mm(幅×奥行き)とかなり狭く、デザイン的にも一昔前の古臭さを感じずにはいられなかった。

新SX14のタッチパッドは実測で約110×62mm
旧SX14のタッチパッドは約80×45mm

 タッチパッドはVAIO Zと同じく、約110×62mmになっており、カーソルを操作するのに十分な大きさになっている。多少手の平が当たることはあるが、使用していて誤動作に悩まされることはなかった。個人的にもタッチパッドの大型化は一番うれしい部分だ。

 そのほか、見た目で変わったのは電源ボタン部分だろう。ここもVAIO Zと同じく、指紋認証センサー内蔵タイプになった。Windows Helloと専用ユーティリティ「VAIOの設定」による設定が必要だが、指紋を登録しておけば、電源が落ちた状態から電源を入れると同時に指紋認証が行なわれ、ワンアクションでデスクトップ画面まで行ける。

新SX14の指紋認証センサー内蔵電源ボタン
旧SX14の指紋認証センサー。電源ボタンは別にある

 ただ、電源ボタンを押してから指を離すのが早かったりするせいなのか、上手くいかないこともあるのだが、正直なところ、顔認証が早いので、例え指紋認証に失敗していたとしても、まったくストレスにはならない。もし、カメラをプライバシーシャッターで塞いでいたり、マスクをしていたりといった場合には、指紋でのワンタッチログインの有り難みを実感できるだろう。

 一方、今回の筐体変更で少し残念に思ったのが、パームレストといったキーボード面の表面処理が変わらなかったことだ。素材は従来と同じアルミニウム合金で、剛性などに全く問題はない。しかし、以前から指紋や手の平の跡がつきやすいことが気になっていた。

新SX14のキーボード面の表面処理は旧SX14から変化なし
旧SX14のキーボード面。手の跡がつきやすく、ブラックモデルは特に目立つ

 VAIO Zのキーボード面はカーボン素材で表面処理が異なるということもあり、跡がつきにくい。しかし、VAIO SX14は変わらず手の跡がついてしまう。筆者は手汗が多いわけではないが、1週間くらい使っていると汚れが目立ってくる。

 汚れが特に気にならない人は問題ないだろうが、筆者は気になってくるのでまめに拭き取っている。方法としては、表面処理が剥げないように、不純物含まれていない無水エタノールをキムワイプに染みこませて拭く。このやり方でパームレストの塗装が剥げたことはない。もちろんこれでディスプレイを拭けば、表面処理が溶けるだろうから、適した場所に使うように注意が必要だ。

新SX14のキーボード
旧SX14のキーボード

 なお、キーボードユニットはVAIO Zのものが継承されているので、キートップは指紋などの汚れがつきにくいフッ素含有UV硬化塗装の耐防汚仕様になっている。以下の写真にあるように、筆者が使っているSX14は、タイピングのし過ぎなのかキートップの表面が一部剥げているので、この強化は有り難い。ただ、せっかくならこれに合わせて、キーボード面も耐汚性能のある塗装にしてほしかったところだ。

新SX14のキートップは、フッ素含有UV硬化塗装が施され、耐防汚仕様になっている
筆者が使用している旧SX14(第2世代)のキーボード。日頃から激しく使うせいなのか、キートップ表面の塗装が剥げてきている

インターフェイスはType-Cケーブルとマウスの干渉が最小限に

 VAIO SX14は第1世代から、ミニD-Sub15ピン(アナログRGBの画面出力)、SDカードスロットといった最近のモバイルノートではほぼ見ないインターフェイスを搭載し続けていた。VAIOはビジネス主体で展開しているメーカーだし、日本国内でのミニD-Sub15ピンの需要が高いというのは、同じビジネス向けで6月に発売されたばかりの「レッツノート FV1」が搭載していることからも察せられる。

 しかし、筆者は手持ちのSX14でミニD-Sub15ピンを一度たりとも使ったことがないし、使わない人にとっては無駄でしかない。「そんなものは削ってUSB Type-Cポートを増やすべきでは?」などと新モデルが出るたびに思っていた。

 今回そんな願いが届いたのか、上記のレガシーなポートは完全に取っ払われた。加えて、独自の丸形コネクタを採用するACアダプタもなくなり、完全にUSB PDでのみの充電に移行した。タッチパッドもそうだったが、これでデザイン上の古臭さも減り、よりスマートな印象を与えるようになった。

新SX14ではUSB PDで充電を行なう
旧SX14で使われていた丸形コネクタの電源
新SX14付属のUSB PD充電器(65W出力)
旧SX14のACアダプタ(40W出力)。総出力は45Wだが、充電用Type-Aポートがあり、そこで5Wを使っている

 USB Type-Cポートは2基あり、これらは全てThunderbolt 4仕様だ。これまではUSB 3.1(USB 3.2 Gen 2)だったので、転送速度も10Gbpsから40Gbpsに上がっている。その代わり、前モデルからUSB 3.0 Type-Aが1基減の2基になったが、まったく問題ないだろう。このほかのポートとしては、HDMIとGigabit Ethernet、音声入出力端子が用意されている。

新SX14の右側面。USB Type-C(Thunderbolt 4)が2基ある
旧SX14の右側面。USB Type-C(USB 3.1)は1基のみ
新SX14の左側面。USB Type-Aのポートが少なくなっている
旧SX14の左側面

 Thunderbolt 4の1基は充電で使うので、もう1基あるのはありがたい。しかし残念なのは、全て筐体の右側に配置されていることだ。筐体の右側はマウス操作のスペースとなるので、ケーブル類が来るのは望ましいことではない。

 VAIO Zであれば、筐体の左右にThunderbolt 4が配置されているので問題ないのだが、SX14は残念ながら右側のみだ。むしろ左側に集めてくれればとも思うが、ファンの吹き出し口が左側にあり、これが右側にあるとその熱を不快に感じる場合もあり、なかなか難しいのだろう。

 そもそも以下の分解写真を見ると、とてもじゃないが左側にポートを配置する余裕がない。このクーラーについてはベンチマークの節で説明するが、旧モデルよりも大型化し、大きな面積を占めているのだ。

新SX14の内部。右側にポート類のコネクタがあるのが見える。そして左側上部はクーラーのヒートパイプが配してあり、コネクタを置く余裕がない

 ただ、一定の配慮がなされていることを言及せねばなるまい。従来のSX14ではUSB Type-Cの位置が右側のど真ん中にあるという、かなり最悪な配置だったが、これが奥側、つまりディスプレイ側に移動している。一応VAIOの名誉のために言っておくと、これまでのSX14のベースとなったVAIO S13が出た頃は、Type-Cがまだ主流ではなく、その位置にあってもなんら問題なかったのだ。

新SX14ではUSB Type-Cが奥側に移動したため、ケーブルが邪魔になりにくい
旧SX14はType-Cが真ん中にあるため、マウス操作の邪魔になる

 新SX14は、Type-C(Thunderbolt 4)が奥に移動したことで、マウス操作の邪魔になることはなくなった。筆者がSX14(第2世代)を導入したときは、USB PD対応のディスプレイを使って、画面表示と給電を行なっていたので、この邪魔さをどうにかすべく、Amazonで見つけたL型変換アダプタを使ってなんとかしていたが、そのせいでHDMIとLANポートは塞がれてしまっていた。

L型のType-C変換アダプタを使うとケーブルの干渉をより減らせる

 なので、Thunderbolt 4が奥側に配置されたことは素直に歓迎したい。もちろん、もう1基のThunderbolt 4は真ん中の方にあるので、ここを使うとなると話が蒸し返す。そもそもHDMIとLANポートは変わらず右側にあり、これらを普段から使っている人で、マウスを操作する場合は、やはり右側に多少スペースを空けなければならない。

 ただ、こういった問題はドッキングステーションを使えば全て解決する。ドッキングステーションは多少値が張るが、大抵はHDMIポートやLANポートを備えているし、そのままType-C/Thunderbolt経由でのDisplayPort出力、USB PDでの給電も行なえる。それもノートPC本体からの1本のケーブルでできてしまえるので、ノートPCを持ち運ぶ場合も取り外しが楽だ。

 最近ではThunderbolt 4対応で価格を抑えたものが出てきているので、複数のポートを使う必要があるという場合には積極的に活用し、作業効率を上げたい。今回はAnkerの「PowerExpand 5-in-1 Thunderbolt 4 Mini Dock」と、OWCの「Thunderbolt Hub」をそれぞれ使い、4K液晶への出力、Type-CのWebカメラとLANアダプタへの接続を行なってみたが、全く問題なかった。

タッチパネルモデルはデジタルスタイラスペンを利用可能

 上でも軽く説明したが、今回のVAIO SX14のタッチパネル対応モデルはデジタルスタイラスペンをサポートしている。新SX14では画面が180度倒れるようになったものの、360度回転する2in1のような利用はできないので、イラストを描くといった用途には不向きだ。

VAIOのデジタルスタイラスペン
新SX14はディスプレイを180度倒せる
旧SX14ではここまでが限界

 ただ、デジタル文書へのサインや、簡単な図やメモ書きをするといった用途では便利だ。コロナ禍でテレワークが広まり、それに伴いデジタル文書でのやり取りが増えたという人もいることだろう。

 筆者のような職業もそうで、NDA書類へのサインや、校正時の赤入れなどをスタイラスペンで行なっているが、一度クラウドにアップロード→iPadで開く→Apple Pencilで書き込む、というようにデバイスを行き来するのが手間で、OneDrive上ですぐに最新のデータが反映されないときなど、イライラさせられることもしばしば。

 そのため、デジタルでの書類の扱いが多いという人には、タッチパネル搭載モデルがおすすめだ。ペンは別売りになっており、VAIO SX14と一緒に注文すれば8,800円、単品では1万450円となる。ワコムの技術を使っているそうだが、ワコムのBamboo Inkでは動作しなかったため、ペンを使いたいなら素直にVAIO製のペンを購入した方が良い。

VAIO純正ペンとワコムのBamboo Ink(上)。プロトコルが異なるのか、Bamboo Inkは動作しなかった
VAIO純正ペンはボタンを2つ装備
単6形乾電池で動作する

 書き心地は悪くない。液晶モジュール内にタッチセンサーを内蔵したインセルタッチのため、薄型で視差も少ない。筆者が普段使っているiPad Pro + Apple Pencilの組み合わせと遜色なかった。なお、VAIO製ペンは筆圧が4,096段階で、傾き検知にも対応している。

スタイラスペンの書き心地は良好。VAIO Zから引き継いだ回転表示機能(Fn+2)を押すことで、対面の相手に即座に内容を見せることも

 新SX14には、VAIO Z譲りの表示画面を180度回転させる機能もあるため、書いたものをすぐに相手に見せたり、サインしてもらったりという使い方もできるだろう。

 ただ、タッチパネル対応モデルは液晶が光沢仕上げになるので、多少反射や映り込みが気になる。センサーがある分、バッテリ駆動時間にも影響するだろうし、若干重量も増えるはずだ。

 今回のタッチパネル対応モデルの試用機は実測で1,020gだったが、筆者が使用している旧SX14(第2世代)でも1,016gだったので、それほど大きな重量増とはなっていないようだ。なお、タッチパネルモデルの解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)のみであり、4Kのモデルは用意されていない。

新SX14タッチパネル搭載モデルの重量は実測で1,020gだった

タイピング音や環境音を抑制するAIノイズキャンセリング機能

 今回のSX14で初めて採用されたものとして「AIノイズキャンセリング機能」は特に注目だ。こちらはVAIO Zでも、ソフトウェアアップデートなどで対応できそうに思えるが、すでに発売済みの現行機ではハードウェアの仕組みが違うため対応できないという。そのため、新VAIO SX14が唯一の対応製品となっている。

マイクはカメラの左右にある

 ノイズキャンセリング機能は、他社製品ですでに採用されていたりするので、特段珍しいわけではないが、実用性の高さは間違いない。筆者がWeb会議アプリで試したところ、キーボードのタイピング音や、ラジオや音楽、けたたましいサイレンの音など、何でもカットしてくれていた。それでいて音声はオフにしていた場合と同様に聞こえていたそうなので、有用性は極めて高い。

 筆者は普段はAfterShokzのヘッドセット「OpenComm」を使っている。これは骨伝導式のため耳穴塞がらず、別のスピーカーで鳴らしている音楽やラジオを違和感なく聴くことができるし、ノイズキャンセリング機能が入っているので、会議中でもそういった音が入らない。

 ただ、ヘッドセットは充電する必要があるし、装着時はイスの背もたれに頭を預けると、フレームが当たって邪魔に感じるといったことがあるので、SX14のこの機能があれば、そういったちょっとした不便さからも解放されるだろう。

ノイズキャンセリング機能では、ノイズの低減レベルを下げたり、マイクの指向性を全方向から正面に変えるといったことができる

 なお、後ろから人に声をかけられたりといった、話者の位置によっては当然ノイズとして認識されない場合がある。SX14のマイクの位置に、部屋のスピーカーを近付けて、ラジオのアナウンサーが話している声を拾わせた場合は、Web会議アプリの接続先の相手にきちんと聞こえていた。

 マイクはビームフォーミングによる指向性を持っているので、自分の真正面から誰かの声が聞こえてくる場合などは、きちんとノイズとして認識されるだろう。一方、家で後ろから家族に話しかけられた場合などは、多少声は拾ってしまうだろうが、自分の声よりもはっきりとは聞こえなくなっていたようだ。万能ではないものの、居間で仕事をするという状況でも十分に機能するはずだ。

 AIノイズキャンセリング機能は、SX14のスピーカー側から出る音、つまりWeb会議等での接続先の相手からのノイズも消すことができる。相手が何らかのノイズキャンセル機能を使っていない場合、バチバチ叩くキーボードのタイピング音が聞こえてきてうるさいこともあるので、音声入力と出力で合わせてノイズを抑えておくとわずらわしさから解放される。

 この通り、音声周りには不満はまったくなかったが、カメラの画質は正直いまいちだった。ノートPCに内蔵されているカメラは、どのメーカーでも基本的に画質が悪いので、SX14だけの問題というわけではない。室内は光量が少ないので、小型センサーではどうしても暗めになってしまうだろう。

新SX14のカメラは旧モデルとさして性能は変わらない。筆者の室内の配置だと、天井のシーリングライトで逆光になるため、かなり顔が暗く写る。といっても、USBのWebカメラの方では適正な露出で明るく表示するので、単純にカメラの性能が低いのだろう

 ただ、上記のようなノイズキャンセリング機能が優秀に働いているので、Web会議アプリで同じく活用されるカメラについても、大きな進歩がほしいところだ。

第4世代と第3世代SX14の性能を比較

 今回は最新のVAIO SX14と、その前となる第3世代のVAIO SX14を借用できたので、新旧で性能を比較してみる。前者はCore i7-1195G7を、後者はCore i7-1065G7を搭載している。ちなみにOSがWindows 11と10で異なっているため、厳密な横並びの比較とはならないことをご承知いただきたい。

【表2】検証環境
VAIO SX14(第4世代)VAIO SX14(第3世代)
CPUCore i7-1195G7
(4コア/8スレッド、2.9~5GHz、TDP 28W)
Core i7-1065G7
(4コア/8スレッド、1.3~3.9GHz、TDP 25W)
GPUIris Xe GraphicsIris Plus Graphics
メモリLPDDR4 16GBLPDDR4 32GB
ストレージNVMe SSD 512GB(PCIe 4.0 x4)NVMe SSD 256GB(PCIe 3.0 x4)
ディスプレイ14型フルHD(1,920×1,080ドット)
タッチパネル搭載
14型フルHD
OSWindows 11 HomeWindows 10 Home

 なお、検証ではそれぞれTruePerformanceをオン/オフしたデータも合わせて載せている。TruePerformanceは簡単に言うと、メーカーが独自に用意した高クロック動作のための設定で、Turbo Boost時のクロックの持続を調整するなどして、マシンの性能向上を図ることができる。CPU温度が上がるので、ファンの回転数も比例して上がるが、そのぶん高い性能を得られるというトレオードオフがある。詳しくは以下の記事を参照されたい。

 TruePerformanceの設定は、ユーティリティ「VAIOの設定」の「電源・バッテリー」のページにある「CPUとファン」の項目に用意されている。ただし、TruePerformanceという言葉は一切使われていないので注意したい。オンにするには「パフォーマンス優先」を選ぶ必要がある。

TruePerformanceの設定。「パフォーマンス優先」を選べばオンになる

 それでは、順に結果を示していく。

 Cinebench R23では、マルチコアおよびシングルコア時の純粋なCPU性能のみを計測できる。新旧での性能差はマルチコアで約4割、シングルコアで約3割ほどの向上が見られ、大幅な性能アップが見て取れる。また、TruePerformance(TP)をオン/オフした違いも見ると、第4世代の新VAIO SX14のCore i7-1195G7の方が伸び率が高く、マルチコアでは500以上のスコア差が出ている。

 総合性能を測るPCMarkでも、新旧での性能差は明らかで、総合スコアのOverallは4割近い差が出た。ただ、Wordなどの文書作成アプリのベンチを想定したWritingの項目に関してはなぜか旧SX14の方が性能を発揮している。

 とは言え、画像編集のPhoto Editingは倍近い性能差が出ているほか、グラフィックス性能を測るGamingやGraphicsでも差が大きい。GPUに関しては、新SX14でIris Xe Graphicsになり、性能がかなり上がったことがわかる結果だ。

 ただ、TruePerformanceオン/オフの差は小さく、PCMarkといったあまり負荷の大きくないベンチマークでは差が出にくいことが見えてくる。傾向としては性能が上がるが、CPUを酷使するような処理でこそ、真価が発揮されるはずだ。

 3DMarkとファイナルファンタジーのベンチマーク結果は、PCMarkのゲーム性能で示していたのと同じ傾向で、Iris Xe Graphicsの効果がよく出ている。ファイナルファンタジーについては、標準品質において、新SX14でのTPオン時に8,110というスコアが出たが、ベンチマークは「快適」という評価を出し、TPオフ時の6,538は「やや快適」と評価された。おそらくCPU負荷が高いベンチマークであることが要因であると思われ、TPの有効化に大きなメリットがあるとわかる。

 ストレージの性能を測るCrystalDiskMarkの結果については、TPの有無が性能に影響しないため、オンの状態でのみ計測した。

 新旧のシーケンシャルのリードおよびライトでおよそ2倍の性能差で、新SX14はPCIe 4.0接続で、旧SX14は同3.0接続となっているため、順当な性能差だろう。シーケンシャルリードにおける1M Q1T1(1MiBでの1キュー1スレッド)の値が低いことだけが気になるが、ランダムリードも含めて、ほかは新SX14の方が性能が高く、測定中に何らかの割り込みが入ってしまったなどの可能性も考えられる。残念ながらもう手元に機材がないため、再測定はできなかった。

 PCMark 10のバッテリベンチ「Battery Profile - Modern Office」も計測した。新SX14はディスプレイがタッチパネルなので、より消費電力的に不利であることに注意したい。それぞれ輝度を50%にし、TPをオフにした状態でバッテリ容量が5%を切るまでの時間は、新SX14が10時間20分、旧SX14が12時間10分だった。

 新SX14はバッテリ容量が53Whと、旧SX14の43Whよりも10Whも増えているのだが、タッチパネルの影響かむしろ駆動時間は落ちてしまった。今回は非タッチパネルのモデルを入手できなかったので、データの示しようがないが、JEITA 2.0による測定法では新SX14のバッテリ駆動時間が公称で最大約30時間、旧SX14は最大約22時間を謳っているので、結果は逆転するだろう。

TruePerformanceでのクロックと温度、ファンノイズを計測

 さて、TruePerformanceの方が高い性能が出るのは間違いないが、オン/オフでどの程度の差が出ているのかを示したのが、以下のグラフだ。こちらはCinebench R23をマルチコア処理で実行していたときの値を抽出している。

 TPをオンにしたときの方が、高いクロックを維持できており、オン時は大体3.4GHzを維持するのに対し、オフ時は3.1GHzくらいまでクロックが下がる。この持続するクロックの違いがスコアに大きな差を作っている。

 一方で、このときのCPU温度の差を示したのが以下のグラフだ。

 高負荷時のCPU温度にほとんど差がないことがわかる。つまり、より高クロックで動作しているTPオンの時は、ファンの回転数を上げることでCPUの余力を引き出していることになる。

 下表ではTPがオンとオフのときそれぞれのアイドル状態(負荷なし)と高負荷状態(Cinebench実行中)の騒音値を記したものだ。「TP OFF(静かさ優先)」というのは、TPオフからさらに静音性を重視した設定である。

【表3】Cinebench R23実行中のノイズレベル
TP ONTP OFF(標準)TP OFF(静かさ優先)
アイドル時41.4dB40.9dB40.7dB
高負荷時61.3dB50.9dB45.4dB

 室内の暗騒音は40.6dBだったので、アイドル状態の騒音値はほぼ測れていないことになる。ここで注目すべきはもちろん高負荷時で、TPのオン時とオフ時(標準)で10dB以上差が出た。高負荷時の61.3dBがどの程度の音なのかピンとこないと思うが、筆者の部屋にある直径25cmほどの羽の扇風機を最大風量で回した場合が約60dBだ。

 なお、第3世代の旧SX14の高負荷時TPオンの騒音値は52.6dBだったので、前モデルよりも性能は上がっているものの、多少うるさくなっている。と言っても、新SX14のファンは高音を抑制した音になっているので、耳障りというわけではない。ただ、前モデルよりは確実に音が大きくなったのは体感でわかる。

 しかし、普段の業務において、Cinebenchのような負荷が掛かることはまずないので、身構える必要はない。それでも音が気になるという人はTPをオフにして使えば良い。PCMarkのベンチマーク結果で示したように、通常用途での差が出にくいからだ。

 新SX14のCore i7-1195G7(4コア/8スレッド、2.9~5GHz、TDP 28W)と、旧SX14のCore i7-1065G7(4コア/8スレッド、1.3~3.9GHz、TDP 25W)では動作クロックやTDPも異なり、同じ10nmプロセスではあるが、発熱は上がっている。

 以下の分解写真にあるように、新SX14と旧SX14では冷却機構の規模が変わっていることからもそれがわかるだろう。

新SX14の内部。ヒートパイプが増えるなど冷却機構が大型化している
旧SX14の内部
上が新SX14のクーラー、下が旧SX14

 だが、逆に気付いてほしいのだが、ヒートパイプが増えるなど、これだけクーラーが大型化しているのに、新旧で本体重量は変わっていないのだ。

 ここに開発者の涙ぐましい努力があるのだが、次の写真を見てほしい。

新SX14のキーボードのフレーム
旧SX14のキーボードのフレーム
新SX14のキーボードのフレーム(左)は一部の樹脂が取り除かれている

 このキーボードフレームを見ると、新SX14の方はキーの周りにある黒い樹脂部分が取れているのがわかるだろう。このほかにも、ヒートパイプ上の金属カバーの肉抜きの穴が細かくなっていたりと、耐久性が落ちない範囲で軽量化が図られている。

新SX14の金属カバーは肉抜きの穴が細かい
旧SX14の金属カバー

 VAIOの開発者の方によれば、「従来モデルから重くなることは許されない」という認識が開発チームにあったそうで、品質を保ちつつ、なんとしてでも規定重量を達成したことは、VAIO開発陣の不断の努力を感じずにはいられない。

Windows 11登場と筐体刷新だからこそ、今が買い換え時

 ここまで、VAIO SX14が4世代目にして大きな進化を果たしたことを見せてきた。もちろん筆者が指摘したように、Thunderbolt 4を筐体の左にも配置してほしかったといった残念なところもあり、満点で褒めることはできない。

 しかし、そうした要望を多少なりとも満たすべく、ポートの配置が工夫がされているし、VAIO Zから新機能や実装が継承されたことで、これまでのSX14から確実に性能と使い勝手が底上げされたのは大きい。

 特にVAIO Zにはなかったノイズキャンセリングや、デジタルスタイラスペンへの対応といった有用な機能を出し惜しみせずに投入するなど、新SX14ならではの特別感ももたらされている。

 今年でOSもWindows 11へと代わり、PCを新調するにはちょうど良い時期だ。筆者はVAIOユーザーなので、多少なりとも贔屓目に見てはいるだろうが、新SX14は間違いなく同シリーズの中で最良のモデルに変身を遂げたと言える。Windows 11搭載のモバイルノートの導入を考えているのであれば、ぜひ一度検討してみてほしい。