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240Hzはなぜ効くのか!?ゲーマーのための高リフレッシュレートディスプレイ入門
~ iiyama「G-MASTER GB2590HSU-2」でプロプレイヤーとともに検証
- 提供:
- 株式会社マウスコンピューター
2021年11月12日 06:55
昨今のeスポーツブームなどの影響もあって、日本でもPCでゲームを楽しむ人が増えてきている。そしてPCでのゲームプレイに夢中になってくると欲しくなってくるのがゲーミングディスプレイだ。
TVでもゲームは楽しめるが、TVでは製品によっては表示が遅れる「遅延問題」がついて回ったりする。また、格闘ゲームや一人称シューティングゲームを初めとした競技性の高いゲームでは、映像の一望性が重要になってくるため、大型TVではプレイしにくいことがある。競技性の高いゲームをプレイしている時は視距離が短くなりがちで、そんな環境では20型前後から30型前後の画面サイズのものが多いゲーミングディスプレイ製品が好まれる傾向にある。
また、最近では、多くのPCゲームが60fps(毎秒60コマ)よりも高いフレームレート表示に対応するようになってきており、高いリフレッシュレートに対応したゲーミングディスプレイ製品が人気を博し始めている。PlayStation 5(PS5)やXbox Series Xなどの新世代ゲーム機においても120fpsがサポートされるようになったので、今後は、ますますそうしたニーズが高まりそうである。
そんな時代の潮流に応える形でマウスコンピューターがiiyamaブランドから魅力的なゲーミングディスプレイを9月に発売している。それが今回紹介する「G-MASTER GB2590HSU-2」(以下、GB2590HSU-2)だ。
高リフレッシュレートの恩恵(1)~ゲーム映像が低残像で見やすくなる
ゲーミングディスプレイ製品としてのGB2590HSU-2の最大の魅力はなんといっても「最大リフレッシュレート240Hz」という部分にある。そもそもリフレッシュレートとはなんなのかを前提知識として整理しておこう。
リフレッシュレートとは、簡単に言えば「表示映像の書き換え頻度」のこと。動画とは連続した静止画を“パラパラ漫画”のように連続的に表示して見せているわけだが、リフレッシュレートとは、ディスプレイ機器として、時間方向に連続的に伝送されてくる静止画群を秒間何枚表示することができるかに相当するスペック値になる。240Hzということは毎秒240枚の静止画を表示できる能力があるということだ。
この「毎秒240枚の映像書き換え」を実現するためには、画面上の全ての画素達が240分の1秒以内で書き換えられる性能を持っていなければならない。240分の1秒といえば約0.0042秒であり、すなわち4.2ms(ミリ秒)ということになる。本機の液晶パネルの応答速度(MPRT)は0.4msなので、この要求に十分に堪えうると言うわけである。
ここまでで「リフレッシュレートってゲームの映像の秒間コマ数、フレームレートと似たようなものだね」と思った人も多いと思う。たしかにその理解で概ねあってはいる。細かいことをいえば、フレームレートは「映像送出機器側による映像更新(≒描画)頻度」であり、リフレッシュレートは「ディスプレイ機器側の表示頻度」という感じで、両者、それぞれ異なった立場から見たスペック値/技術キーワードとなる。
いずれにせよ、一般的には「フレームレートとリフレッシュレートは合致させて運用することが理想」とされる(特殊な事例については後述)。
実際にGB2590HSU-2にてPC版の「PUBG: BATTLEGROUNDS」(以下、PUBG)を動かし、60fps、120fps、240fpsの各フレームレート(=リフレッシュレート)にて視界回転と前進移動を行った際の動画を20倍スローにして作成した動画を下に示す。
こうして見比べると、これまで「なめらか」と言われてきたはずの60fps/60Hzが、120fps/120Hzや240fps/240Hzと比較すると、相当にカクカクして見えることが分かるだろう。
ごく普通のディスプレイ機器では、これまで対応リフレッシュレートは60Hzのものが多かった。なぜ、ゲーミングディスプレイ製品ではこの60Hzを大きく超えたリフレッシュレートの製品が好まれるようになったのだろうか。
最大の理由は、PCゲーミングにおいて、高いフレームレートの方が遊びやすいという認識が浸透したためだ。特に、一人称シューティング(FPS)ゲームでは、マウスやコントローラで視点を目まぐるしく操作して視界を移動させる。同時に、高速に動く敵を照準器(ガンサイト)で追い回すことになる。
フレームレートが高い方が視界移動が滑らかでスムーズになり、また、高速に移動する敵もぼやけにくい(≒残像の少ない)状態で目で追うことができるようになる。こうして、高いフレームレートのゲーム映像を表示することが可能な高リフレッシュレート対応のゲーミングディスプレイ製品が人気を博すようになったのだ。
以前は、ここまで高速な応答速度を実現出来る液晶パネルがなく、残像低減というと「黒挿入」を行なって、人間の視覚特性に訴える形での手法が主流だった。黒挿入とは事実上の「点滅表示」なので残像は低減されたとしても眼精疲労の観点からは好ましくない。
また、画素電極に一時的に強電荷を与えて液晶の応答速度を高めて残像低減を狙う「オーバードライブ駆動」は本機にも搭載されているが、これも過度にやり過ぎると本来の表示色から一瞬外れることがあり、残像は低減されても明暗差の強い輪郭付近で表示が二重になる「リンギング現象」を起こすことがある。
結局、残像低減の根本方策はリフレッシュレートを高くすることが、一番、副作用がないとされている。このあたりも、間接的にゲーミングディスプレイ製品の高リフレッシュレート化の促進に繋がっていると思われる。
高リフレッシュレートの恩恵(2)~ゲームの操作性が向上する
もう1つ、高フレームレート/高リフレッシュレート表示は、ゲームの操作性/操作感の改善/向上にも関係してくることをご存じだろうか。
「映像表示が滑らかになるから操作がしやすくなる」というような感覚的なことだけではなく、論理的な見地から見ても高フレームレート/高リフレッシュレート表示は「ゲームの操作性/操作感の改善/向上」が期待できるのだ。
この点を理解するには一般的なゲームの処理系の“流れ”を理解する必要がある。ゲームでは、かなり簡略化すると、およそ以下のような流れで処理が行なわれている。
- プレイヤーからの操作入力
- ゲーム世界の更新(※)
- 更新されたゲーム世界の映像を描画/表示
- (1)へ戻る
(※)「ゲーム世界の更新」とは(1)で行なわれたプレイヤーからの操作入力の反映や、敵キャラや各種オブジェクトの動きの更新、当たり判定などのもろもろを含む
こうした処理サイクルをゲームループと呼んだりするが、高フレームレートでゲームが動作できている場合、このゲームループのサイクルが高速に回っていることになる(後述するような例外はあり)。
例えば映像出力が60fpsで実現できているゲームは、このゲームループが毎秒60回で反復していることになる。一方、240fpsで動いている場合は、毎秒240回ということになり、60fps時の4倍も高速に反復しているわけだ。
そして240fpsで動いているゲームの場合、プレイヤーの操作入力は、秒間240回も受け付けていることになる。これは60fpsで動いている時の4倍の回数の操作入力受付に対応する。
プレイヤーが、表示映像の内容を認識してなんらかのプレイ操作を行なったとき、ゲームループのサイクルが遅いと、その操作入力の受付を一度逃すと、次回の操作入力の受付まで待たなければならない。60fpsの場合は、次回は60分の1秒後、すなわち16.67ms後だ。しかし、ゲームループのサイクルが早ければその「次回の操作入力の受付」はすぐにやってくる。240fpsの場合は、次回は240分の1秒後、4.2ms後だ。つまり“映像を見てからのゲーム操作”がとても“クイックになる”。分かりやすい言葉で言えば「低遅延となる」のだ。
もちろん、ゲームの設計の都合で、単位時間あたりのゲーム操作入力頻度が、ゲームの映像のフレームレートと一致していないゲームもある。この場合は、高フレームレート/高リフレッシュレート表示の恩恵は、前述した「ゲーム映像が滑らかかつ低残像で見やすい」という感覚的なものだけにはなる。
では「ゲーム映像のフレームレートとゲーム操作入力は一致で固定」しかし「リフレッシュレートだけを高く設定」した場合、GB2590HSU-2のような高リフレッシュレート対応のゲーミングディスプレイ製品には恩恵は何かあるのだろうか。このパターンでも、ゲームプレイの操作感が低遅延になる。
例えば多くの対戦格闘ゲームではゲームループは毎秒60回で60fps相当、そして映像描画も60fpsだ。しかし、PC側の映像出力のリフレッシュレートを60Hzを大きく超えて設定してやると、ゲームプレイの操作感が低遅延になる。この事象は、近年のeスポーツなどの競技シーンでも広く受け止められ、上級プレイヤーを中心に、結構な数のプレイヤーが競技タイトルをPC版に移行したとされる。
どうしてこうしたことが起きるのか。これは、簡単に言うと、十分にCPUとGPUが高速な場合、プレイ操作入力の結果を反映した映像を短時間で表示できるようになるためだ。
この理屈をもう少し詳しく解説しよう。例えば、ゲームループとフレームレートが60fps固定の対戦格闘ゲームでは、プレイ操作入力頻度もゲームの秒間コマ数も60fps(Hz)のままだが、リフレッシュレートを2倍の120Hzとしていた場合、上のフロー図の(1)から(3)が実践されるまでがすぐに完了するので、ゲームプレイ操作を行なってから映像が表示されるまでが劇的に短縮することになる。
逆に言えば、120Hz時ではプレイ操作を反映した映像が60Hz時よりも早く表示されるということは、プレイヤーは、その表示映像を長く見ていられることになる。これは、格闘ゲームにおける定番の上級テクニックである「ヒット確認」(攻撃が命中したか否かで行動を切り換えるテクニック)を行ないやすくすることに結びつく。
実際に、PC版の「ストリートファイターVチャンピオンエディション」(以下ストV CE)を「AMD Ryzen 9 5950X/NVIDIA GeForce RTX 3090」構成のPCで動かし、NVIDIAが提供しているGPUのパフォーマンス解析ツール「FrameView」を使って「MsBetweenPresents」(映像表示間隔)と,「MsRenderPresentLatency」(映像表示指示が出されてから実際に表示が行なわれるまでの遅延時間)を1,200フレーム分計測し,平均をとってみたのが下表になる。
MsBetweenPresents | MsRenderPresentLatency | |
---|---|---|
60Hz | 16.67 | 13.09 |
120Hz | 16.67 | 6.26 |
240Hz | 16.67 | 5.48 |
60fpsで動作するゲームの1フレームが約16.67msなのは周知のとおりだが、ストV CEにおいても、ゲーム映像の表示はリフレッシュレート値によらずこの間隔になっていることが分かる。
しかし一方で、表示指示が出されてから実際に表示が行なわれるまでの所要時間は、16.67msよりも短く、しかも、リフレッシュレートが高ければ高いほど値が小さくなっていることが分かる。これで、映像描画が60fps固定のゲームでも、リフレッシュレートを高くすると映像が早く表示されることが実測値からも証明されたことになる。
ここまでの解説や理屈を図解したのが下図になる。
なお、この事象は、PC版に切り換えたら必ず起こりうるものではなく、繰り返しになるが、CPUとGPUが必要十分に高速であることが必須条件となる。
なお、この事象が家庭用ゲーム機版のゲームで起きないのは、そもそもこれまでの家庭用ゲーム機ではリフレッシュレートが60Hzに固定化されているためだ。120Hzのリフレッシュレートに対応したPS5/Xbox Series Xなどの新世代ゲーム機では、このPC的な事象は技術的に起こりうるが、それには「ゲームのフレームレート≠リフレッシュレート」という仕組みにゲーム側、あるいはシステムソフトウェアが対応する必要がある。このあたりについては、本稿の主題から逸れていくのでここまでとしたい。
AXIZのTech選手、魚群のマゴ選手と実機で240Hzの効果を検証
さて、理論的に高リフレッシュレートがゲームプレイに有利に働くことが分かった。続いて、その効果を実際にプロプレイヤーに検証してもらった。1人はAXIZ所属のTech選手、もう1人は魚群所属のマゴ選手だ。GB2590HSU-2を用いて、Tech選手にはPUBGを、マゴ選手にはストV CEを60Hz、120Hz、240Hzの環境でプレイしてもらった。
Tech選手は大学1年生。高校生時代、コロナ禍でそれまで打ち込んでいた部活のサッカーがプレイできなくなり、新たに本気で取り組む物を探した結果、eスポーツの道を選んだ。そしてすぐにゲーマーとしての才能を開花させ、2021年9月にAXIZのトライアウトに挑戦、合格し、見事プロゲーマーになった。
現在、自宅ではCore i7-10700F、GeForce RTX 2060 Super、144Hzディスプレイという環境でプレイしている。ディスプレイは当初は60HzのTVを使っていたが、本気でPUBGに取り組みはじめた2019年末から導入したという。PUBGにおける高リフレッシュレートの効果について、「60Hzから144Hzに変更すると、ゲームの印象がガラッと変わります。敵の動き、自分の視点などが滑らかになり、敵の視認やエイムがしやすくなります」とTech選手は語る。
今回、改めてGB2590HSU-2でPUBGをプレイしてもらった。まず60Hzでプレイしてもらったところ、普段から144Hzでプレイしているため、60Hzでは視点移動、敵の移動、リコイル(反動)動作などに遅延を感じるため、敵や銃の動きを先読みしてエイムするする必要があった。また、カクついているため、ちょっとした酔いも感じたそうだ。
一方、144Hzではそれらが滑らかになった。銃のリコイルは瞬時に描画してくれるので、目で追いかけやすく、動いている敵もADS(照準を覗いた状態)でエイムしやすくなった。
240Hzについても試し、フレームレートが上がる局面ではよりスムーズになったと感じる点もあった。ただし、PUBGは重いため、ハイエンドマシンでも安定して240fps(240Hz)で描画できない。
そこで、60Hz、144Hz、240Hzでエイム精度にどれくらい差が出るかを「AimLab」というソフトで測ってみた。
それぞれ3回ずつプレイし、結果としては、リフレッシュレートが高いほど、スコア、命中精度、キル所要時間が改善した。Tech選手に感想を聞いたところ、60Hzと144Hz程の差ではないもの、144Hzと240Hzの差も確かに感じたという。
もちろんこの結果は、リフレッシュレートが上がるにつれて「AimLabでのスコアが上昇した」というものでしかないが、エイムというFPS系ゲームの基本動作に焦点を当てたゲームなので、今回の結果と同様の影響が他のFPSでも出ると言っていいだろう。
リフレッシュレート | スコア | 命中精度 | キル所要時間 |
---|---|---|---|
60Hz | 65624 | 77 | 262 |
144Hz | 74567 | 79 | 244 |
240Hz | 79221 | 82 | 238 |
次に魚群のマゴ選手にSFVにおけるヒット確認を検証してもらった。マゴ選手は、言わずと知れた2D格闘ゲームのベテランプレイヤー。SFVではCAPCOM Pro Tour 2021の日本大会において早々に優勝を決め、CAPCOM CUP VIIIへの出場権を獲得した日本トッププレイヤーの1人だ。
マゴ選手は、これまであまりPCではゲームに打ち込んでこなかったという。しかし、SFVについては現在はPC+240Hzのディスプレイでプレイしている。というのも、PC版において、高リフレッシュレート環境では前述のように表示遅延が減るからだ。マゴ選手も「この情報を聞いて自分でも試してみたところ、ゲームのプレイングががらっと変わった」と語る。
これまでのゲームプレイ環境では単発技のヒット確認ができるキャラや技は限定されていたが、高リフレッシュレートでは、いろんなキャラ、技、そしてプレイヤーがこれをできるようになった。そのため、「食らえない技が増えたり、自分では活用する技が変わったりと、対策が変わり、今までよりゲームプレイングがおもしろくなった」とマゴ選手。
今回検証してもらったのは、マゴ選手の持ちキャラであるキャミィのしゃがみ中キック(以下、中足)のヒット確認を、同じようにリフレッシュレートを変えて試してもらった。キャミィの中足のヒット確認猶予時間は15フレーム。これは表示遅延が少ないPC版でも難しいレベルの技だ。
各リフレッシュレートで100回ヒット確認を行ない、「中足がヒットしてスパイラルアローまで繋げたもの」を成功とし、それ以外に、「中足はヒットしたがアローが出なかったもの」を失敗1、「中足をガードされたがアローを出してしまったもの」を失敗2としている。
リフレッシュレート | 成功 | 失敗1 | 失敗2 |
---|---|---|---|
60Hz | 58 | 31 | 11 |
144Hz | 87 | 7 | 6 |
144Hz | 87 | 6 | 7 |
240Hz | 90 | 7 | 3 |
60Hzでは成功確率は60%を切った。しかし、144Hzにすると、90%近くに跳ね上がった。240Hzについては、144Hzとほぼ同じ結果で誤差の範囲と言える。しかし、失敗2が半分近くに減っていることは注目しておきたい。というのも、SFVにおいて失敗1の状況は相手によりダメージを与えられなかったという失敗だが、失敗2は逆に相手からダメージを食らってしまうタイプの失敗であり、これはなんとしても避けたいからだ。
実際、成功率だけを見ると144Hzと240Hzの差は誤差の範囲だが、失敗2が半減したことでマゴ選手は体感での成功率が大きく上がったと感じており、SFVでも240Hzの効果があるのかもしれないと語ってくれた。
なお、144Hzの結果が2行あるのは、240Hz→144Hz→60Hzの順で検証を終えた後、マゴ選手から「リフレッシュレートを知らずにもう1度試してみたい」との申し出があったため。144Hzでの追試となったが、結果としては144Hzと知って行なった時とほぼ同じ結果に終わった。
表示性能チェック~IPS方式採用で応答速度0.4msを実現。DisplayPortだけでなくHDMIでも240Hz表示に対応
メインとなる特徴を検証したところで、基本的なディスプレイ製品としての素性もおさらいしておく。
GB2590HSU-2の映像パネルは視野角特性のよいIPS方式液晶を採用している。以前はIPS方式液晶パネルの応答速度はVA方式液晶パネルに及ばないところがあったが、近年は大差ないレベルにまで高まっている。本機のIPS方式液晶パネルの応答速度は前述の通り0.4ms(MPRT:Moving Picture Response Timeでの計測値。オーバードライブ駆動利用時)である。
表示解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。エッジ型バックライト採用機ながら、輝度は標準表示時に400cd/平方mに達しており、一般的なTV並の明るさを実現できている。
最大対応リフレッシュレートは繰り返し述べた通り240Hz。ゲーミングディスプレイ製品では高リフレッシュレート設定はDisplayPortでのみ実現される機種もあるが、本機ではHDMIにおいても高いリフレッシュレート設定に対応している。筆者調べになるが、DisplayPortでは24Hz、60Hz、100Hz、120Hz、144Hz、165Hz、240Hzの表示が確認できたが、HDMIでも165Hz以外は全て問題なく表示が行なえた。HDMIで144Hzや240Hzが行えるので、165Hzモードが選択できないことの実害はほとんどない。
新世代ゲーム機と組み合わせたときはどうか。筆者が調べた限りではPS5は、フルHDのRGBフォーマットでHDR表示に対応したが120Hz出力は未対応となった。Xbox Series Xは、逆にHDR表示は未対応となり、120Hz出力は対応となった。このあたりの特性は、本機がYUVフォーマットに対応していないことと関係があるかもしれない。いずれにせよ、本機を新世代ゲーム機と組み合わせて使いたいと考えている人はこの特性にはあらかじめ留意しておきたい。
AV Watchで連載中の筆者の「大画面☆マニア」でお馴染みの白色光の光スペクトラムを、本機でもデフォルト画質モード(i-Style Color:オフ)で計測してみた(下図)。
スペクトラム自体は、白色LEDバックライトを採用した液晶ディスプレイではよく見られるピーク分布となっている。赤と緑のスペトラムピークがそれなりに出ているので、発色も良好だ。実際、大画面☆マニアにて定点観測的に視聴しているブルーレイ映画「マリアンヌ」においても、肌色の発色、コントラスト感、階調特性においても大きな問題は見受けられず。映画視聴も普通に楽しめる画質に仕上がっている。
続いて、入力遅延についても大画面☆マニアでお馴染みのLeo Bodnar Electronicsの「4K Lag Tester」を用いて計測して見た。このテスターはフルHDのリフレッシュレート120Hzまでの計測ができるので、60Hz時と120Hz時を計測した。
結果は、フルHD/60Hz時に6.7ms、フルHD/120Hz時に0.8msとなった。
60Hz時の計測結果は6.7msと、ゲーミングディスプレイ製品としては標準的な値で、120Hz時の計測結果は0.8msとかなりの低遅延の値であった。ゲームプレイにおいて不満が出ることはあるまい。
最後に、これまた大画面☆マニアで計測している映像機器評価用ソフト「The Spears & Munsil UHD HDRベンチマーク」の「A/V Sync」による音ズレチェックを行なってみた。結果を下の動画で示す。YouTubeの設定にて再生速度を0.25倍にして再生して確認してみよう。さすがはゲーミングディスプレイ製品。音ずれは全くないことが分かる。
製品概要チェック~一望性の高い画面サイズ。内蔵スピーカーはカジュアルプレイに便利
GB2590HSU-2は、ゲーミングディスプレイ製品では定番ともいえるゲームプレイ支援機能が色々と搭載されている。まず、可変フレームレートのゲーム映像を美しくなめらかに表示させることのできるAMD FreeSync Premiumに対応している。筆者が試したところでは、GeForce RTX 3090との接続時にG-Sync Compatibleを有効化できたのでRADEONのみならず、GeForceでも滑らかな可変フレームレート表示が行なえることだろう。
本機は、映像の明暗具合に応じてフレームバイフレームでバックライトの輝度調整を行うAdvanced Contrast Ratio機能が搭載されているので、基本的には最適な階調表現で映像表示がなされるはずだが、暗いシーンが続くゲームで暗がりにいる敵が見づらいと感じた場合にはGB2590HSU-2に搭載されている「黒レベル調整」を活用するといい。暗部階調に限定して階調の持ち上げが行なえる。
様々なゲームジャンルを想定してGB2590HSU-2には「標準」、「スポーツ」、「シューティング」、「シミュレーション」、「テキスト」などの「i-Style Color」という名前のプリセット画調モードが搭載されている。基本はデフォルト値のオフか、「標準」で良いとは思うが、色あいがしっくりこないときには切り換えて試してみるといいだろう。どのモードを選んでも遅延性能などに変化はないので安心だ。
GB2590HSU-2の画面サイズは24.5型で、これはeスポーツの競技シーンなどにおいて人気の高い大きさになる。というのも、50cm~1m程度の比較的短い視距離で、首を動かさずに目の動きだけで画面の隅々まで見るには丁度よい大きさだからだ。
ディスプレイ部の大きさは557.5×210×370~500mm(幅×奥行き×高さ)。スタンド部の底面積は240×210mm(幅×奥行き)。重量は約5.0kg。上左右の額縁がわずか6.3mmの狭額縁設計ということもあってコンパクトで、重くもないので設置/移動は楽に行なえる。
スタンド部は高さ13cmの範囲で調整が可能で、最も下げたときはディスプレイ部の下辺と接地面までの距離は実測で約55mmとなっていた。ディスプレイ部の角度調整は下向き5度、上向き22度に対応。スタンド部は左右±45度で90度の範囲で回転が行なえる。ピボット機能で画面全体を時計回りに90度回転させての縦画面表示にも対応する。設置/調整の自由度はかなり高い。100×100mmのVESAマウントにも対応しているので、アームに組み付けての設置にも対応できる。
また、この台座部分はスクエア形状となっているため、キーボードの奥側を台座の手前に引っかけるように置くと、ディスプレイとユーザーとの距離をより柔軟に調節できるという使い方もできる。気付きにくいメリットの1つとして覚えておきたい。
接続端子は背面下部にレイアウトされており、映像入力端子はHDMIとDisplayPortを1系統ずつを配備。このほか、ヘッドフォン端子とUSB Hub機能の提供を目的としたUSB 3.0アップストリームを1つと、ダウンストリームを2つ備える。
電源はACアダプタではなく、3芯電源端子のケーブルを直接接続する方式。ACアダプタなしを好むユーザー層には嬉しいポイントである。
さて、ゲーミングディスプレイ製品ではサウンド機能についてはヘッドフォン端子を備えるだけのものも多いが、GB2590HSU-2はちゃんとステレオスピーカーを内蔵しているところもユニークだ。内蔵スピーカーは出力2W+2Wのものなので、音質/音量的にはノートPCの内蔵スピーカーに近いイメージ。ひとまずヘッドフォン不要ですぐに使えるのは便利である。
標準消費電力は25W。エッジ型バックライトシステムを採用していることもあって、なかなかの省電力性能である。
結論~プロはもちろん真剣に取り組むゲーマーに強くお薦め
というわけで、筆者はGB2590HSU-2を1週間ほど評価したのだが、実に楽しく使うことができた。筆者は、eスポーツ系のゲームだと、ストV CEをかなり真剣にプレイしている方なので、そのPC版をリフレッシュレート240Hzで動かした時には、60Hzの一般的なTVでプレイするよりも操作感が劇的によくなったことを実感できた。
これは感覚的なものではなく、ここまでで紹介してきた様々な評価/計測が根拠にもなっていると考える。また、前述の通り、プロゲーマーも高リフレッシュレートの効果を高く評価している。プロ/アマを問わず、ゲームに真剣に取り組んでいるプレイヤー、特にeスポーツ系のゲームをプレイしているユーザーにはGB2590HSU-2はお勧めの1台だ。