特集

わが社はこうやってテレワークしています 【レノボ・ジャパン編】

~東京本社の出社率は1割、社員にThinkPadとヘッドセットを支給済み

テレワークの実施により、社員がいない東京・秋葉原のレノボ・ジャパン本社の様子

 本誌では、3月31日づけで、PCWatch編集部のテレワークへの取り組みについて紹介した特集記事「PC Watchはこうやってテレワークしています」を掲載した。その後、新型コロナウイルスの感染拡大がさらに加速。4月7日には、安倍晋三首相が、緊急事態宣言を7都府県を対象に発令し、原則在宅勤務とする企業が一気に拡大した。テレワークの重要性がますます高まっている状況にある。

 そこで、今回から短期集中連載として「わが社はこうやってテレワークしています」を掲載していく。IT/エレクトニクス業界各社のテレワークへの取り組みのいまを取材した。読者の参考になれば幸いだ。まずは、テレワークにいち早く取り組んできたレノボ・ジャパンを紹介する。

4年前から本格テレワークを実施。現在の東京本社の出社率は10%程度

 レノボ・ジャパンは、コロナウイルスの感染拡大を受けて、現在、「原則全員テレワーク」を実施。東京本社への出社率は10%程度になっているという。つまり、90%の社員がテレワークを実施している。

 もともと同社は、いまから4年以上前になる2015年12月からテレワークに取り組んできた経緯がある。しかも、同社の特徴は、その時点から、対象を特定の部門に限定せず、また1カ月や1週間といった単位でテレワークを行なう回数を設けない「全社無制限テレワーク」に取り組んできた点にある。

 2015年12月に全社無制限テレワークを試験的に導入。2016年3月には、テレワークディを開催して、社員がテレワークに積極的に参加する機会を設け、その成果をもとに、同年4月には、全社無制限テレワークの正式運用を開始した。その後、毎年3月の定例行事として、全社一斉テレワークディを実施。社内へのテレワークの浸透を図ってきた。

 同社では、「テレワークの取得回数を無制限としたのは、回数を設定する理由が見あたらなかったため。そして、毎年、全社一斉テレワークディを実施してきたのは、1回の取り組みだけでは定着しないと考えたため。毎年繰り返すことで、テレワークの浸透を図ることができる」と語る。

 これまでのテレワークでは、前日までに承認を取得すればテレワークでの勤務が可能であり、勤怠管理については、オフィスと同様に出社時間と退社時間を報告することになる。また、テレワークを遂行する上で、上司と部下の定期的な1対1のミーティングを設けることも盛り込んでいる。

 テレワークの利用頻度は、週1回以上が56%と半分以上を占め、社内にかなり定着していたことがわかる。なお、2020年7月に予定されていた東京オリンピック開催時には、約2週間にわたって一斉テレワークを実施する予定であり、それに向けた準備も着々と進めていた。

 今回の新型コロナウイルス感染症の広がりにあわせた取り組みについては、当初、「テレワークは各自の判断で実施する」としていたが、2月25日に発表された政府の基本方針にあわせて、同日から「原則テレワークを推奨」へと移行。出勤が必要な場合は、時差出勤や検温を徹底することを定めた。なお、この時点では、すべての会議はオンラインで行なうことを原則として徹底していた。

 同社によると、昨年(2019年)までは、平均20%だったテレワークの実施状況は、2月27日時点では60%に増加し、3月4日には70%に拡大。今年の全社一斉テレワークディを実施した3月11日は86%にまで拡大したという。

テレワーク用にThinkPadとヘッドセットを支給

 レノボ・ジャパンでは、社員に対して、14型液晶ディスプレイを搭載した「ThinkPad」を支給。さらに、プライバシーフィルタ、オンライン会議用ヘッドセットを全員に配布している。これは、今回の新型コロナウイルス対策がはじまる前に配布が完了しており、2月以降、特別に用意したものは1つもないという。また、必要に応じて、携帯用超小型ACアダプタや、モバイルディスプレイなどを会社から支給する仕組みもある。テレワークを行なう環境が、会社支給によってすべて整えられている、かなり恵まれた環境だと言えよう。

 使用している現場からは、「1日7つほどの会議を行なうと、1日中ヘッドセットを装着することになる。そのため、ホールド感があったり、ミュートボタンがあったりするヘッドセットのほうが使いやすい。クオリティが高いヘッドセットを入手することをおすすめしたい。また、ディスプレイの解像度が高いノートPCを活用すること、場合によっては、ノートPCの横にタブレットを置いて、そこに別の情報を表示するといった使い方もいいだろう」などとする。

テレワークを行なっているレノボ・ジャパンの社員。ノートPCとともにタブレットを併用している

 標準ツールとして使用しているのが、Microsoft TeamsまたはSkype for Businessである。PCを使用したデスクワークやオンライン会議などに利用。VPN環境で社内ネットワークに参加し、各種ファイルを使って作業を行なったり、Teamsや電話を使った打ち合わせやオンライン会議を実施しているという。電話はソフトフォンとし、つねにUCをアクティブにするルールを設けている。

 直接会話がしたい場合には、Skype for Businessで相手の状況を確認し、相手が対応可能であれば、チャットで「電話してもいいですか」などのメッセージを送り、相手が「OK」と返事すれば、電話をするといった使い方もしている。また、スムーズなテレワークを行なうためには、オンライン会議情報を必ず会議依頼に含めることも大切だとする。

Skype for Businessを利用してステイタスを確認。チャットを使って情報交換を行なう

 全社展開する上では、コールセンターなど、社内LANでないと使えないシステムへの対応が課題だった。だが、「Work at homeに対応したソリューションを活用し、コールセンターのエージェントが自宅から対応できるようにした。今後は、自宅からも対応が可能なエージェントの採用を進めている」という。

 当初は、業務委託をしている社員のテレワーク率が上がらないといった課題もあったというが、これも委託事業者と話し合いを行ない、事業者側にテレワーク制度を採用してもらうといったことにも取り組んだ。

 一方で、セキュリティに対する考え方にも言及する。

 「テレワークを実施する際には、PCそのものを守ることを優先するのではなく、情報を守ることが大切であるという考え方を徹底すべきである。デバイスの暗号化やユーザーパスワードの適切な設定、覗き見防止、OSやファームウェア、アプリケーションを最新の状態にしておくことが大切である」と提案した。

 ところで、在宅勤務がすでに長期化しているが、その点での課題はないのだろうか。

 同社では、「2015年から取り組んできた成果もあり、テレワークの生産性は、オフィスに出社して働く時とは変わらない水準を維持している」とする。同社の調査によると、オフィスでの勤務時より生産性が向上したとの回答は42%となり、同等との回答が50%に達している。合計で92%の社員がテレワークでの生産性には不満がないようだ。

 だが、こんな課題も生まれている。

 「終日、部屋にこもりきりで孤独になったり、ついつい残業してしまい、リフレッシュができなかったりといったことが起こっている。社員には、体を動かすことや、TeamsやSkypeを通じて同僚と雑談をすることなどを奨励している」という。

 なお、レノボ・ジャパンでは、全社一斉テレワークのノウハウをまとめた「テレワークスタートガイド」を公開し、急遽、一斉テレワークを実施したり、はじめてテレワークを実施したりする企業など、テレワークの経験が十分でない企業がどのように対処すべきかを紹介している。無償でダウンロードが可能だ。

無償配布している「テレワークスタートガイド」