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PC Watchはこうやってテレワークしています

 新型コロナウイルスが世間を脅かすなか、PC Watchを運営する株式会社インプレスも3月より、従業員に対し自宅勤務を推奨している。じつはPC Watchでは、以前から試験的にテレワークを実施している。4人いるスタッフが持ち回りで週1日自宅で作業してきた。今回の全社的な自宅勤務指示により、基本的に全スタッフが同時にテレワークすることになったが、この試験的な取り組みにより、スムーズに対応できている。Web媒体の編集者という、ややニッチな職種ではあるが、どのようにして離れた距離に居ながらコミュニケーションを取りつつ作業しているのか、その実態をご紹介する。

もともと場所を問わず仕事をしていたWeb媒体編集者

 PC Watch編集部のおもな仕事内容は、記事の執筆とライターさんから入った原稿の編集、つまり記事の作成だ。記事を書くという作業はデスクワークだが、国内外の発表会やイベントへの参加、深夜帯のストリーミング発表会(米国のものは日本での深夜帯に実施されることが多い)などもあり、働く場所は会社にかぎられず、発表会場や自宅などでも記事を書くというのは20年以上前から行なっていた。

 まれに動画の編集などもあるが、PC Watchの記事制作における作業量の8割は原稿執筆(テキスト入力)で、残りの2割が写真の編集といったところ。写真も、RAW画像の現像などではなく、トリミングやリサイズ程度の作業なので、モバイルPCでもこなせる。Webサーバーへの記事のアップロードの仕組みは、時代とともに変わってきており、現在は、専用のCMS(Contents Management System)にテキストと写真をアップロードして行なう。つまり、モバイルノートとインターネット回線があれば、どこでも仕事ができるわけだ。

 PC Watchのスタッフは、日頃からモバイルノートやモバイルルーターを持ち歩いており、自宅にもPCや固定回線がある。また、会社の外から独自CMSにアクセスするためのVPN回線も用意されている。そのため、テレワークの開始にあたっては、なにも障壁はなかった。

コミュニケーションにはSlack、進行管理にはTodoistを利用

 しかし、テレワークをやるにあたり考えなければいけなかったのが、管理/コミュニケーションツールの準備だ。記事制作は、基本的には1人で1つの記事を完成させる個人作業となるが、たとえばネタの内容やどのように取り上げるかなどを周囲と相談したり、指示を出す必要がある。各スタッフが同時に別の記事を制作するなか、メールベースのコミュニケーションは管理や透明性などの面で効率が良くない。

 いくつか各種のサービス/ツールを試し、現在では、各種の連絡用には「Slack」を、記事の進行管理には「Todoist」を使っている。

定番のコミュニケーションツール「Slack」

 Slackは言わずと知れた定番のコミュニケーションツールだ。テーマやグループごとにチャンネルを作成し、リアルタイムに近いかたちで情報をやりとりする。Slackは外部サービス/アプリとの連携もできるが、PC Watchはスタッフの人数もすくなく、1つ1つの作業にかける時間も短い(数時間~数日程度)なので、あまり凝ったことはせず、シンプルに情報が伝達できる運用を目指した。

 その結果、記事制作と業務連絡という2つのチャンネルだけを作成、運用している。もちろんメールも併用しているが、記事にするネタの共有はほぼSlackで行なっている。なお、社内外の機密情報も多く扱うので、外部のライターさんや取引先とはSlackは接続しておらず、おおむねメールで対応している。

 Slackのいいところは、各自の情報のやりとりを部内で共有できる点だ。メールでも、CCに関係者を入れたり、メーリングリストを使えば共有できるが、Slackはそもそも(グループ内では)オープンなチャットなので、CCに入れ忘れたりということがなく、いま誰が誰とどういうやりとりをしているのかを第三者も把握できる。

 また、メールだと慣例として、毎回頭に「お疲れさまです~です」をつけ、最後には「よろしくお願いいたします」などで締めなければならないが、チャットベースだと、たとえ上司相手であっても要件のみ伝えれば済む。また、「承知しました」と書くのも面倒だろうから、内容を確認したらチェックマークの絵文字をつけるだけでいいルールにしてある。

 もともと編集部のスタッフは裁量労働制で、全社的な自宅勤務になってからは、各自が始業をSlack上で報告するようにしている。

その日の始業の時点でSlackで報告している

 記事のネタのURLを共有したときに、そのページの概要が自動的に表示されるのも便利だ。ちなみに、シンプルな運用にしていると先に書いたが、個人的にはGoogleカレンダーと連携させており、予定のリマインダーとしても使っている。

 1つ改善されたらなと思うのが、UI的に、誰かの投稿にレスをつけようと思って投稿したら、新規の投稿になることがありがちということだ。本来は、各投稿やテーマごとにスレッドでレスをつけていくと管理しやすいのだが、テキスト入力欄が新規投稿用の1つしか表示されていないので、間違って新規投稿することが起きやすい。

 業務内容的に、長期にわたって1つのテーマでスレッドを展開したり、あとから検索したりする必要性がないので、いまのところは間違って新規投稿してしまっても、そのままにしている。

 また同じ人が連続して新規投稿したときに、2つめの投稿にその人のアイコンが表示されず、一見すると1つのスレッドのように見えるのも、投稿を見逃す要因になりかねないので、改善されたらと思っている。

 Slackで執筆/編集するネタを共有したあとは、Todoistで担当を割り振り、進行を管理している。まず、Slackで共有したネタをTodoistにも登録する。これは二度手間なのだが、ネタの情報共有と議論の場と、進行管理はきっちり分離したいのでそうしている。

 なお、これまでSlackは無料プランを使っていたが、より活用するため、近く有料プランに移行予定だ。

スケジュール/タスク管理ソフト「Todoist」

 Todoistは、チームによるプロジェクトの進捗管理にも使えるスケジュール/タスク管理ソフトだが、個人的な簡易ToDo管理ソフト的に手軽に運用できるため採用した。

 まずは、共有プロジェクトを作成。ここに記事にするネタを登録していく。各タスクには期限を決められるが、多くの場合、その日に掲載する記事なので、「今日」とだけ指定することが多い。タスクの割り当ては、編集長やデスクがやることもあるが、PC Watchの場合、1つの記事が終わり次第、自分で選ぶことも多い。そういう場合は、他人が担当者を空白のまま登録しておいたタスクに対して、自分で自分自身に割り当てる。記事の作成が終わったらSlackで原稿の校正を上司などに依頼。掲載が終わったら、Todoistの各タスクの完了にチェックを入れれば一覧から消えて、完了済みにアーカイブされる。

タスクごとに期限を入れる。日本語にも対応しており、「明日」なども指定可能
タスクごとに担当者を割り振り

 1日数十個の新規タスクが発生し、適宜担当者を割り振って、終わったそばからアーカイブしていくという編集部の仕事の流れにおいて、このタスク登録と完了登録の簡単さがTodoistの魅力だ。また、毎日、あるいは毎週発生する定期タスクの登録や、時間レベルでの期限の設定、タスクへのメモ添付、重要度の設定なども行なえる。

 なお、Todoistは5人までの利用は無料だが、現在PC Watchでは外部委託のスタッフを含めると6人いるので、月額338円のプレミアムプランを利用している。編集部では使っていないが、プレミアムだとバックアップやカレンダー同期などより高度な機能も使える。

 もう1つ、Slack、Todoistともに、いい点としてモバイル対応が挙げられる。外出中でPCが使えないときでも、モバイル版アプリで指示や情報共有ができる。リアルタイムに近いかたちで記事制作を行なうに当たって、いつも使っているツールにいつでもアクセスできるのも重要だ。加えて、いずれもPCでは専用アプリでもブラウザでも利用できる。

全員テレワークとなったことで、Hangouts Meetも利用開始

 そんなわけで、こういったオンラインツールを使い、試験的にテレワークを実行していたので、全社的にテレワークになったさいも、PC Watchではとくにパフォーマンスを落とすことなく仕事ができている。むしろ、身支度や通勤の時間がいらなくなったり、作業に集中したいときに話しかけられて作業を中断することがなくなる分、自宅のほうが捗ることすらある。音楽をかけながら仕事しても、誰にも迷惑もかからない。

 また、ずっと自宅にいるのに加え、新型コロナウイルス感染/拡大予防の観点から外食をひかえるという意味で、最近は自炊もはじめた。これも一種のメリットだと思っている。

 一方、全員が同時にテレワークするようになって少し困ったのが、部内会議についてだ。編集部では毎週木曜日は全員が出社し、定例会議を行なっていた。当初はコロナによる自宅勤務推奨は短期で終わるかと思っていたので、しばらく会議は開かずにいたのだが、少なくとも4月いっぱいはいまの状況が続く見込みだ。

 そこで、会議にはGoogleのHangouts Meetを使うことにした。弊社ではメールやカレンダーなどのプラットフォームとしてGoogleのG Suiteを採用している。Slackにもボイスチャット機能はあるが、無料では1対1でしか使えないこともあり、Hangouts Meetを使うことにした。

 使ってみてわかったのが、G Suiteユーザーならこちらもひじょうに手軽に利用できるということだ。G Suiteアプリ一覧から「Meet」を選ぶ。するとGoogleカレンダーに登録された予定がすべて出てくるので、しかるべき会議の予定をクリックしたら、即座に電話会議がはじめられる。

会社でG Suiteを導入しているので、会社用のGoogleカレンダーの予定から即座にHangouts Meetを開始できる
オンライン会議の様子。といっても、カメラは映してないので各自のアイコンが出るだけだが

 デスクトップPCを使っていたり、ノートのマイクが貧弱などの場合は、別途ヘッドセットを使う必要があるが、それは会社経費で購入してよしとした。ただ、もともとPCのヘビーユーザーで、ボイスチャットを使ったゲームなどをしているスタッフも多い当編集部では、すでにヘッドセットを持っているユーザーが大半だった。

これは編集部をまたいだHangouts Meetでのビデオ会議の様子。バ美肉な人もいるのがインプレスらしいところ

 筆者にいたっては、過去記事でも紹介したとおり、ミラーレスカメラ+キャプチャと、オーディオインターフェイス+オーディオグレードマイクがあるので、無駄に高品質な電話会議ができる。ただ、われわれの会議では、とくに顔を見せる/見る必要はないので、カメラはオフにして音声のみで会議を行なっている。

ゲーム配信向けに用意した無駄に豪華な仕事環境

社会全体が団結して立ち向かう必要

 たとえばハードウェアの検証、撮影、発表会/イベント(あればだが)などは自宅ではできないので、出社しなければいけないこともあるが、大半のスタッフは、3月に出社したのは2~3日といったところ。筆者および定期配信に関わっているスタッフは、週2~3日出社する必要があるが、会社にいるのはその業務を行なう数時間くらいだ。

 ひとまず公開した記事の本数については、2019年3月と2020年3月とでは2020年のほうがやや多いくらいで、全面テレワークでも記事制作面でのパフォーマンスは落ちていない。

 さて、コロナウイルスを取り巻く状況は依然として予断を許さず、今後も慎重な行動、判断が必要だ。PC WatchをはじめとしたWatchグループにとっても、さまざまな影響はあるが、テクノロジの強みを活かし、引き続きいままで以上に求められる情報を発信していきたい。

 とくにコロナウイルス関連については、サービスの縮小などネガティブな話題も増えはするものの、一方で、子供の休校や在宅勤務などを支援する施策やサービスを打ち出してきている企業/団体も増えている。筆者の場合は、一人暮らしなので、自宅でも効率的に仕事ができているが、家族のいる家庭では異なるノウハウも必要になるだろう。Watchシリーズでは、そういった取り組みを紹介していくことで少なからず社会貢献できたらと考えている。