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ガスと電動式のエアダスター対決。どちらが便利でコスパが高い?エアコンプレッサーも加えて戦わせてみた
2023年7月24日 06:05
毎年夏と年末になると気になるPCのホコリ。特に夏は「ホコリ」⇒「熱暴走」⇒「ブルースクリーン」のトラウマがよみがえり、恐怖心に駆り立てられCPUとGPUのヒートシンクや冷却ファン、電源ユニット内に溜まったホコリを、徹底的に掃除!掃除!掃除!
そんな時に必須のアイテムが、スプレー缶で高圧空気が噴き出す「エアダスター」だ。でも10秒も噴射してると冷たくなって虫の吐息。一方、Amazonを見てみると工場にあるようなエアコンプレッサーも売っている。これなら爆風が出そうだけど、お値段10万円かよ!ほかにも充電式の電動エアダスターといった製品もあるけど、なんか風弱そう……。
ということで、PCユーザーが悩んで胃に穴が開きそうになる「エアダスター選手権」でケリを付けようじゃないか!
(1) 用意したのはよく見るヤツからそれは反則!な5製品
(2) エントリーしたはいいが実験方法が困ったぞ!
(3) 最大風速70km/hのコンセント式がコンプレッサーを上回る!
(4) 連続利用に弱いスプレー式と風速の安定する電動式
(5) スプレー式の寿命ってどのくらい?
(6) コスパ的にはコンセント式のエアダスターがお得
用意したのはよく見るヤツからそれは反則!な5製品
今回は最もポピュラーなスプレー式のエアダスターのほか、バッテリ式とコンセント式のエアダスター(ブロアー)、そして工場用のエアコンプレッサーを用意した。
さらに、2023年7月下旬にライフオンプロダクツから発売されたばかりの木目調でおしゃれな充電式エアダスターも加えている。
ほかにもスティック掃除機でブロアー機能が付いているものもあるが、廃番になったり新製品が出たりと、メーカー事態が紆余曲折、右往左往、二転三転しているので、掃除機タイプは除外した。
サンワサプライ「エアダスター(CD-31ECO)」
ダスターと言ったら誰もが思い浮かべるスプレー式のこれ!ノンフロンタイプで逆さまで噴射しても液体が出ない、ド定番中のド定番。Amazonでの価格は2本セットで1,000円前後。
サンワサプライ「電動エアダスター(CD-ADE1BK)」
USB Type-Cコネクタ搭載で充電式の電動エアダスター。デザインセンスはお察しください……。5V/2AのUSB充電器なら2.5時間の充電で連続20分使える。USB充電器は別売だが、PC Watch読者なら腐るほど持ってるよね?
基本的にトリガーを引いている間だけ噴射するが、トリガーを2回押しするとオン状態を固定することもできる。MAXパワーになるまで3秒ぐらいのタイムラグがあるのがちょい気になるところ。
スプレー式と違って、長時間噴射しても噴射が安定しているのが特徴。しかもLEDライトが内蔵されていて、グリップ後ろのスイッチを押すとオン/オフできる。暗いPCの中の掃除にはピッタリで、さすがサンワサプライ!と唸らせる逸品。価格はAmazonで6,500円前後。
サンワサプライ「電動エアダスター(CD-ADE3BK)」
こちらはコンセントから電源を取るダスター。電池切れの心配もないし3種類のノズルがついてくる、爆風用の小さい穴のノズル、ちょっと大きい穴で広い場所用のノズル、平型で隙間などの掃除ができるノズルがある。
しかもジャバラの延長ホースが付いているので、本体をどこかに置いてノズルを32~70cmまで伸ばして使うということも。
車の掃除にもピッタリだが、コンセントの延長が必要。筆者的には木工や金工の削りクズを吹き飛ばすのに重宝しそうだ。コンセント式だけに少し期待が高まる。価格はAmazonで6,200円前後。
LIFELEX「オイルレスエアコンプレッサー」
筆者愛用のコンプレッサー。10年以上使っているので当時の価格は忘れてしまったが、車や自転車の空気入れとしても使える。普段は金属の削りクズなどを吹き飛ばすために使っているが、PCの掃除にも利用。
ちょっと空気貯めのタンクが小さいので数十秒連続で吹いていると、あっという間に風圧が落ちるのが難点。タンク内の圧力が落ちると、絶対に夜は近所迷惑で使えないような爆音を立ててコンプレッサーが動き出すので、昼間の作業専用機だ。
ライフオンプロダクツ「エアダスター(LNACN002)」
ここまでデザイン性のカケラもない製品だったが、おしゃれ家電メーカーが作ったエアダスターだとこうなる。2023年7月末に発売されたばかりの最新アイテムで、「今までになかったおしゃれなモノ」というコンセプトで作られたエアダスター。
ちなみにライフオンプロダクツ(Life on Products)は、3年ほど前に「サラダチキンメーカー」で大ブレイクしたメーカー。だからダークとライトの木目調というダスターにありえないデザインかつ、お尻に紐が付いていてフックなどにひっかけて収納ができる。
USB Type-Cで充電でき、ボタンを押すと3段階の風量が切り替え可能。しかもノズルにライトが付いているので、暗い部分も明るく照らせる。
3タイプのノズルが添付されており、ブロアーに加え、ブラシが付いたノズル、ビーチボールやビニールプールになどに空気を入れられるノズルも。机の上だけなくレジャーにも便利に使えるアイテム。
ただ本体がマイボトルサイズでデカイのと、標準添付のノズルだとGPUのヒートシンクを吹くには辛いかも?ストローなどで延長して使うといいだろう。
エントリーしたはいいが実験方法が困ったぞ!
「どのエアダスターが一番きれいになるか?」のエアダスター選手権だが、公平性を保った実験方法がない!キーボードに砂を入れて外に漏れ出た砂の重さを測るのがベストかと思いきや、キーボードに砂を均等に巻くのが超難しい!偏りが出てしまうと、ブロアーで飛ばしやすい場所とそうでない場所のムラができてしまい、予備実験をしても結果がバラバラなのだ。
そこで今回は風速を基準にして、最強決戦をしていくことにする。それぞれノズルの大きさが違ったり、各種ノズルが添付されている製品もあるが、ここでは「標準」とされているものを利用した。
ちなみにスプレー式のエアダスターは細いストロー状の吹き出しを付けていない状態だ。
最大風速70km/hのコンセント式がコンプレッサーを上回る!
まずは風速計を使って10cm離れたところから風をあて、最大風速を測ってみた。
結果はなんと!コンセント式の電動エアダスターが、コンプレッサーを打ち破るという結果に!その風速時速71.8km/h!コンプレッサーは63km/hなのでおよそ10km/hの差が付いた。
それもそのはず、サンワサプライのコンセント式エアダスターは、本体に電源オンのスイッチがあるだけ。これをオンにすると掃除機のモーターが一気にMAXパワーでブン回るというモンスターなのだ。なのでスイッチを入れた瞬間、銃のようなリコイル(反動)がガツン!と来るほどだ(笑)。
今時はレーザープリンタの電源を入れても、部屋の電気がフワっと暗くなったりしない(そういう回路を入れている)が、このエアダスターは徐々に回転数を上げるなんて優しさはなく、最初からフルパワーなので突入電流が10A以上あり、部屋の電気がフッと暗くなる。延長コードを使うときは12A(1,200W)以上をオススメする。
風速70km/hオーバーのじゃじゃ馬なので、エアダスターをPCの内部に突っ込んでから電源を入れると、リコイルでヒートシンクにガンッ!SATAケーブルをブンッ!と引っこ抜いてしまうかもしれいなので要注意。あらかじめPCの外で電源を入れて、安定したらPC内部に入れよう。
エアコンプレッサーは扱いは簡単だが、家庭用の小さいタンクなのですぐにエア切れしてしまうのが難点、ダッシュの風量はいいが、電動式のように風量が一定ではなく、徐々に落ちてしまうので注意。
もし金に糸目は付けず「俺はエアコンプレッサーでイクぜ!」という場合は、電車の床下についてるようなリザーブタンクを増設するといいだろう。
第3位はスプレー式のエアダスター。MAXで時速46.1km/hを叩き出した。ただご存じの通り数十秒も連続で吹いていると段々弱くなり、缶が冷たくなって持てなくなるほどに!これも瞬発力の勝負だ。
4位はサンワサプライの充電式で、ほぼスプレー式と同等という感じだ。ただしスプレー式は連続利用でどんどん噴射が弱くなるので、安定性から見れば充電式に軍配が上がそうだ。
最下位はライフオンプロダクツの充電式エアダスター。これはオシャレさに主体を置いたものなので、サンワサプライ製とは一線を画するが低速でも安定した風速という電動のよさがある。
連続利用に弱いスプレー式と風速の安定する充電式
先では瞬間的な最大風速を調べたが、スプレー式とエアコンプレッサーは連続利用するとドンドン噴射が弱まっていく。そこでどのくらい使っていると、弱い電動エアダスターを下回ってしまうのかを調べてみた。
特にPC内部のホコリをきれいにしようとすると、さすがに10秒吹いただけでは済まない。最低でも1分は欲しいところだろう。またキーボードの掃除でも20~30秒は欲しいところだ。
次のグラフは縦軸に風速、横軸に時間を取ったグラフだ。
青い線のコンセント式の電動エアダスターは抜群の安定性を持った噴射で、台風クラスの秒速20m/sの風でゴミを吹き飛ばす。これは別格としていいだろう。
問題は、連続利用で顕著に噴射が弱くなる水色線のスプレー式だ。15秒程度では電池式のエアダスター相当だか、みるみる噴射が弱くなる。45秒も吹き続けるとライフオンプロダクツの電池式ダスターを下回る秒速4mほどまでに落ちてしまう。
まあそれでも時速換算すると時速15km/hと自転車で走っているときほどの風なので、ホコリやキーボードに溜まった消しゴムカスぐらいなら吹き飛ばせるだろう。
黄色の線のエアコンプレッサーは、スプレー式ほどではないが、上下の変動をならすと20秒程度で電動エアダスターを下回る。ただ後半の持ちはよく、1分の連続利用でも風速5km/h(時速換算で18km/h、ちょっと早めに漕いだ自転車)程度なので、砂ごみは厳しいかもしれないがホコリ程度なら十分行けるだろう。
これらの結果を踏まえると、PC内部に溜まったCPUやGPU、電源ユニットのホコリを掃除するなら、先が細くなったサンワサプライの充電式がベストだろう。
もちろん同社のコンセント式も圧倒的な噴射で強力に吹き飛ばせるが、いかんせん本体が大きいので延長ホースを使い、その先にノズルを付けての作業がいい。あとちょっと怖いのがファン回り。コンセント式は爆風なのでファンの羽を押さえて置かないと、ファンが風力発電機になってPCに電気を逆流させてしまうおそれがある。
エアコンプレッサーやスプレー式を使うシーンは、ビデオカードと拡張カードの隙間、PCIスロットの奥にあるSSD用のM.2スロット、フロントパネルのピンコネクタあたりだろう。これらは電動のノズルが入らない狭い場所をスポットで掃除するときに使うといい。
普段使いのキーボードのゴミを飛ばす程度ならライフオンプロダクツの電動エアダスターでも十分だし、何よりPCのまわりに置いておいておしゃれだ。
スプレー式の寿命ってどのぐらい?
さてこの記事を読んでいる方、誰もが思う疑問にお応えしよう。それはスプレー式がどれだけ使えるか?という疑問だ。連続噴射すると見る見る噴射が弱くなり、缶も冷たくなる。こうなるとしばらく温めないと勢いが戻らない。かと言ってスプレー式なので、中の圧縮ガスがなくなってくるとこれまた噴射が弱くなる。
ここでは新品のスプレー式のエアダスターを使い、ガスが完全に凍って噴射できなくなるまでを何回か繰り返してみた。なお凍ってしまったガスは、外気で1時間ほど温めて繰り返し実験をしている。
青い線が満タン状態で1回目に噴射したグラフ。1回目ということでスプレーのボタンを押す力が不安定で直後は不安定な線になっているが、30秒で半分、1分40秒でガスが完全に凍って噴射できなくなった。おそらくみなさんも納得の感覚だろう。
2回目はオレンジの線で1回目とほぼ同じ威力を保ったままだが、噴射時間が1回目に比べると10秒ほど短くなった。
3回目はグレーの線で吹いた瞬間の強さは1,2回目と大差ないが数秒で威力がダウンし始め、以降急速に弱くなる感じだ。噴射時間も1分程度まで短くなる。
4回目の噴射は3回目とほぼ変わらずの威力だが、噴射時間が1分を切る。ここまでくるとガスが凍って噴射できなくなるというより、ガスが少なくなった感じだ。
パワーダウンが顕著になり出すのは5回目。ボタンを押した瞬間的でも1回目の6割ダウンという感じで、明らかに噴射が弱くなったのを感じる。
PC内部のホコリ清掃に使えるのはこのあたりまでだろう。休み休み使えば累計で1缶6分ぐらいは使える計算だ。ただグラフはガスが凍って徐々に噴射が弱くなっているので、20秒の噴射を繰り返す場合は6分も持たないはず。
6回目は緑、7回目は青の線だが、ここまでくるとキーボードをちょっとひと吹き程度しか使えない。
電動なら時間を気にせず使えるエアダスターだが、1年ぶんのホコリをきれいにしようとなれば1缶6分ではちょっと心もとないので2缶12分は用意したい。価格は2本で1,000円ほどだ。
コスパ的にはコンセント式のエアダスターがお得
ここまで実験してきた通り、スプレー式は1回のPC内部の掃除で2缶は用意したいので大体1,000円の出費になる。
一方、電動タイプでもコンセント式は超ハイパワーな上に価格が6,400円程度、充電式が6,200円程度なので、いずれもスプレー式で7回掃除をしたら充電/コンセント式の方が安くなる計算だ。
多分PC Watchの読者ともなれば、マシンの2、3台+自前のサーバーを持っていてる変態さんが多いはずなので、スプレー式のエアダスターは速攻やめて、電動エアダスターへの乗り換えをオススメする。
ノズルの細さや瞬間的に強い噴射ができるスプレー式は、その特性を生かし、CPUやGPUのヒートシンクの隙間、M2スロット、フロントパネルやSATAコネクタ回りに適当。ほかは電動タイプで吹くという使い分けをすると効率よく経済的にお掃除できるだろう。
一方、家電メーカーのライフオンプロダクツのオシャレなエアダスターは、キーボードの掃除用として机に置いておくのがいい。出しっぱなしでもオシャレアイテムにしかみえないし、キーボードのホコリや作業で出た机の上の軽いゴミならフロアーとブラシで簡単にお掃除できる。