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LANケーブルの自作はこうやる!ケーブルをぶった切ってちょうど良い長さに調節しよう

 最近はLANにつながる家電も増え、接続を安定させるためにTVやゲーム機などに無線ではなく有線でつなげている人も多いはず。いーや、絶対多い! そしてTVやルーターの周りにある、余った有線LANのとぐろ。ホコリはたまるし、邪魔だし、掃除しづらいし「いいこと」なし!

ネットワーク機器のまわりには、大体LANケーブルがとぐろを巻いており掃除がしづらい。特に配偶者がいる方は雰囲気壊すだの、かっこ悪いだの言われて標的になりやすい

 はい! この記事では「とぐろ」をなくします! 「とぐろニュートラル」な社会!

 簡単に言うと、

  1. 余ってるLANケーブルをカットして
  2. 自分でLANコネクタをつけて
  3. 最適な長さのLANケーブルを作る

 って話。インターネット黎明期の1995年ごろから、会社で家でLAN工事をしてきた筆者の経験を元に、初心者でも「さじ投げない」工事のノウハウを解説!

 今回は長さの調整だけだが、次回はさまざまなノウハウ編も掲載予定だ。乞うご期待!

LAN工事セットを使ってみる

 PC周辺機器のサプライヤーであるサンワサプライは、普通のLANケーブルから、ケーブルを作る部品などもPCショップで販売している。さらにケーブルを自作するための工具セットも販売しているので、今回はこちらを使ってみよう。

LAN工事に必要なツールが揃っているサンワサプライの「LANケーブル自作キット LANテスター かしめ工具 パンチダウン工具 外被剥き工具(500-LANKIT1)」。価格は1万2,800円。パンチダウン(後述)はコンセントやローゼットの工事をしない人は使わない工具

カシメ工具

 必須の工具。カシメ工具は、「RJ45」と呼ばれる「LANコネクタ」のみに対応している。一般に販売されている工具は電話線に使う小さい「RJ11」(2,4,6P)にも対応しているものが多い。

ジャックの形をした部分のLANコネクタを差し込んでハンドルを握ると電線をカシメて圧着できる
横には刃がついていて、切断用/フラットケーブル用皮むき、通常の丸いLANケーブルの皮むきが付いている。皮むきと切断の切り替えは、ハンドルロックの金具の位置を変える

LANテスター

 あると便利な工具。LANテスターにはLANコネクタが差し込めるジャックが2つあり、親(MASTER)と子(REMOTE)に分離できる。作ったLANケーブルの両端をジャックに差し込むと、それぞれのコネクタのどの端子(何番ピン)がどこに接続されているかが分かる。また断線やショートなども判定できる。

結線状態はランプの位置で分かる。たとえば1Fと2Fを結ぶLANケーブルの場合は、MASTERとREMOTEを1人ずつ持ってコネクタを挿し込み、電話で何番のランプが点灯したかを確認し合うということもできる
【チェック!】

LANケーブルは場合によって50~60Vの電圧がかかっている場合がある。そのためケーブルを測定する場合は、必ず両端のコネクタをハブやルーターから外した状態でテスターに差し込むこと。

ワイヤストリッパ

 必須工具ではないが、電線の皮むきに慣れていない人は絶対あった方がいい。刃の出し具合をネジで調整して、ワイヤストリッパにLANケーブルを噛ませハンドルをひと回しするだけ。これで芯線を傷つけずに外側の被覆のみ皮むきできる。こちらはフラットケーブル非対応で切断と皮むき用。

ネジで刃の出具合を調整して、LANケーブルを噛ませる
ハンドルをクルリンパ! すれば、芯線を傷つけずに皮むきできる

パンチダウン

 オスのコネクタ工事では使わない工具。電話線のモジュラージャックみたいに、LANケーブルの挿し込み口のようなメスを作りたい人向け。U字型になった先端で電線を捉えて、工具の中に仕込まれているバネの力でメスコネクタの端子に食い込ませるという工具。

ローゼットは小さいボックスタイプ。磁石で机の横などにくっつく。情報システム部や経理など会社の基幹システムを扱う部署で使われる
ローゼットやLANコンセントなどのメスコネクタの工事にあると便利。端子に電線をまたがせて、パンチダウン工具で端子に電線を打ち込む

LAN用コネクタ「RJ45」はたくさんあるけどコレ一択!

 工具以外に必要なのは、ネットワーク機器に接続する「コネクタ」が必要。LANで使われるコネクタの規格は「RJ45」だが、色んなバリエーションがあって悩みどころ。ついつい価格で選んじゃうと施工で「うぎゃー! 」って投げ出したくなるので要注意。特に「RJ45の加工はあまりやったことがない」という方は、

  • RJ45コネクタ、ロード/ガイド付き、カテゴリ5e

というヤツ一択と考えてほしい。ほかに目もくれずコレを買う! 高いの安いの文句もなし!

 さてコネクタ選びのポイントは3つ。

  • 「ロード」や「ガイド」と飛ばれるチップ付きを選ぶ
  • LANケーブルの「カテゴリ」に合わせる
  • LANケーブルの「芯線のタイプ」に合わせる

 マストは「ロード」や「ロードバー」「ガイド」という小さいチップが付いているコネクタを選ぶこと。このチップには小さい穴が空いていて電線を順番に差し込んで、チップをRJ45本体のコネクタに押し込むと配線の挿し込みミスが絶対起きないという超便利品。自作ケーブルで一番時間がかかり、一番間違えが発生しやすく、一番イライラする工程が確実で一瞬で終わる。

RJ45の四角いコネクタ本体と付属するロードなど呼ばれるチップ。電話線用のRJ11と間違えないように!
このチップがセットになっていて(上下の向き注意)、あらかじめ電線を穴にセットしてから先端を切り揃えRJ45の中に! 施工一発! ご安全に!

 ケーブルの「カテゴリ」は通信速度の速さによって変わる。LANケーブルには必ず「CATEGORY」「CAT」といった印字があり、その後に「5」「5e」「6」という番号が書かれている。数値は5以下もあるが上位互換なので今なら主流の「5e」を選んでおけば間違いない。事務所だと「6」以上かもしれないので注意。

LANケーブルに印刷されているカテゴリ番号。必ずこの番号と同じがそれ以上のコネクタを使う

 さらにめんどくさいのがLANケーブルの「芯線の種類」。後述の手順の「(4)芯線のタイプを確認する」を説明しているので参照してほしい。その芯線にあわせて「ヨリ線用」か「単線用」を選ぶ。もし「ヨリ線/単線共用」があれば面倒がないが、ロードがないものも販売されているので注意したい。

RJ45コネクタにもたくさんあるので注意

とぐろの呪縛から脱出! 電線をカットしてベストな長さに!

 ここで工事するのは、一般的なLANケーブルの丸いツイストペアケーブル。きしめんみたいなフラットケーブルの工事は、ちょっと面倒なので次回のお楽しみ。

 いきなり工事をするのではなく、まずこの記事を読みながら頭の仲でシミュレーションしてから、実際の工事をしてほしい。

(1)LANケーブルのカット

 まずとぐろを巻いているLANケーブルを適切な長さにカットする。ニッパなどで切断してもいいが、カシメ工具やワイヤストリッパについているカット用の刃を使って切った方が便利。

カシメ工具を使う
カシメ工具を使う場合、ハンドルロックを完全に解除
ケーブルを刃に当ててハンドルを握るとカットできる
ワイヤストリッパを使う
ワイヤカッターの刃にケーブルを当ててハンドルを握る
【チェック!】

刃を当てて軽くでもハンドルを握ってしまった場合は、中の細い動線に傷が入ってしまっている可能性がある。誤って刃を入れてしまった部分は破棄すること。

(2)LANケーブルの外側の被覆3cm程度を剥く

 LAN工事をしたことがない方には意外に難しい最初の難関。工具を始めて使う場合は、刃の調整やLANケーブルの回し具合などを練習しておくといい。カシメ工具で被覆を剥くのは、専用のワイヤストリッパよりちょっと難しい。初心者はワイヤストリッパを使う方が確実だ。

カシメ工具を使う場合
ハンドルロックを皮むきモードの場所に移動する。こうするとハンドルを握っても、途中で止まるのでLANケーブルを切断できなくなる
ケーブルを3cmほど挿し込み、ハンドルを握った状態でカシメ工具かケーブルを2回転ほどさせる(正逆回転してもOK)。これで被覆に傷を入れる
電線を工具から外して被覆を引っ張ると簡単に剥ける
ワイヤストリッパの場合
LANケーブルをクリップのようにして刃に挟み込む
ハンドルを放してハンドルの丸い部分に指を入れ、ワイヤストリッパを1回転させる。
ワイヤストリッパを外して被覆を引っ張ると剥ける
もし中の電線を傷つけてしまう、被覆に傷が入らず剥けないという場合は、刃の上のネジを回しては刃の出具合を調整。何度か繰り返し外側の被覆だけに傷が入るポイントを探す
【チェック!】

初めて使う工具は、刃の出具合やケーブルを刃に当てる力加減、ハンドルの握り具合など、分からないことが多いので、必ず練習すること。そして中から出てきた4組8本の電線の被覆が切れていないかを、ルーペやスマホの拡大鏡機能などを使ってチェックする。LANケーブルによって被覆の厚さなどが変わるので、必ず本番の工事の前に刃の具合をチェックすること。

(3)よじってある芯線を戻しバラバラにする

 外側の被覆を剥くと4組8本の芯線(電線)が出てくる。色は青、オレンジ、緑、茶と、それぞれの色に対応する白い電線が対になってよじられている。これが「ツイストペアケーブル」のゆえん。2本のペアケーブルをツイスト(よる)ことで、ノイズの影響を受けにくくしている。

芯線のよじりを戻して、なるべくカールのクセを取る

 もし樹脂製の芯材が入っていた場合は、ニッパやツメきりで根元で切ること。

(4)芯線のタイプを確認する

 あらかじめ芯線のタイプが分っている場合は、ここでの手順を飛ばしてOK。

芯線の1本の被覆を5mm~1cmほどニッパなどを使って剥く
細い線が何本か束ねられている場合「ヨリ線」
1本の銅線が出てきた場合は「単線」

 それぞれの芯線のタイプにあったRJ45コネクタを用意する。

【チェック!】

ここでは実際に芯線の被覆を剥いてタイプを確認したが、慣れてくると「LANけーブルを少しクイックイッ! と曲げる」と単線かヨリ線か見当が付くようになる。単線は硬く、ヨリ線は少し柔らかいのだ。そのためには両方のLANケーブルを触った経験がないとなかなか判断が難しい。

(5)ロードバーの取り付け向きを確認する

 ロードバーは電線をセットしたあとでRJ45に差し込むので、ロードバーがどの向きで挿すのか上下を調べる。

サンワサプライ製の先のコネクタの場合、ロードバーの山側から電線を差し込む
ロードバーの向きが上下逆
ロードバーが正しく入っている

(6)LANケーブルの反対側のコネクタを見て配線パターンを調べる

 今工事しているコネクタの付いていない側は一旦放置。反対側のコネクタを見て配線パターンがAまたはBかを見定める。ほとんどの場合Bタイプのハズ。

反対側にコネクタの中の電線の色をチェック。端子側(ツメがない方)の一番左側が、「オレンジ」(タイプB)か「緑」(タイプA)かで見分け可能。これはタイプB
配線タイプA(標準だがあまり見かけない)
配線タイプB(通常はこちらの配線)

(7)配線タイプに応じてロードバーに電線を差し込む

 反対側が配線タイプBなら、新しく付けるコネクタもBで配線。AとBを混在させるのはダメ。

配線タイプBでロードバーに電線を差し込んだところ

(8)ロードバーをケーブルの根元まで移動し余った電線をカット

ロードバーを外側の被覆を剥いたキワまで動かす
ロードバーからはみ出している電線をハサミやニッパで切断する

(9)RJ45コネクタ本体をカシメ工具にセットしてロードバーを差し込む

 カシメ工具のハンドルロックは完全解除にする。

RJ45コネクタをカシメ工具に差し込む。まだハンドルは握らない
ロードバーの上下を間違えないようにRJ45コネクタに差し込む。LANケーブルの外側の被覆がコネクタに入るまで強く押す。

(10)カシメる

ハンドルを最後まで握ってロードバーごと電線にかしめる
カシメ前は端子が飛び出した状態
カシメると端子が電線に食い込み接続できる
同時に電線のストッパがカシメられ固定される

(11)コネクタの完成。引っ張りチェックする

片手でコネクタ、もう片方で電線を持って少し引っ張る。電線が外れないかをチェック

(12)LANテスターで正しく結線されているかチェック

 LANテスターの親(MASTER)と子機(REMOTE)を切り離して電線の両端にこれらを差し込む。テスターの電源を入れて親の1~8番のライトと、子の1~8番のライトが一致していればOK。

LANケーブルの両端を親と子機に差し込む。どちらに挿してもOK
親(MASTER)と子機(REMOTE)の同じ番号のランプが付けばOK
マニュアルモードにすると手動で電源ボタンを押すごとに番号が送られるので忙しくない(親子が離れていて同時に見られない場合など

 次のような状態は、配線失敗なのでコネクタを切り落としでやり直し。

点灯するランプの番号が異なる→配線ミス
子のランプが点灯しない→親の端子番号の断線
子のランプが2つ以上、同時に点灯する→ショート

 なお電線によっては、中の4組8本の線を覆うように、網状に織り込まれたシールド線が囲われている場合は「G」のランプも点灯する。

(13)チェック完了で完成!

こんな感じに仕上がる

次回はツメ折れや配線工事について紹介

 さて筆者が数十年に渡って行なってきたLAN工事のノウハウを説明してきたので、初心者でも迷うことなく、失敗することなくLANケーブルのとぐろを絶滅できるはず。

 次回は以下のような方に向けて、フラットケーブルの工事やRJ45のツメが折れてしまったときのリペア、LANコンセントやローゼットを引く工事などについてを説明しよう! 乞うご期待!

  • LANコネクタのツメが折れてガムテープで止めてる方
  • フラットLANケーブルを使いたい方
  • 一般的なプロ用のLANコネクタを使いたい方
  • 屋外経由してLANを敷設したい方
  • LANコンセントや会社のデスクにあるLANローゼットにしたい方
LANケーブルの折れたツメ! コネクタ交換しなくてオッケー!
机の横にローゼットを付けたい