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5年で廃れた電池、今のオモシロ電池、未来の電池ってどんなもの?

~知ってるようで知らない、酒の席のネタになる電池のお話

左はノートPCで使われる直径18mmのリチウムイオン電池。右は直径46mmで高さ80mmの巨大なEV用電池(パナソニック製)

 電池は大きく分けると2つあり、乾電池のように使い捨ての「1次電池」と、スマホの電池のように何度も充電して使える「2次電池」があります。さらに1次電池の中には、マンガン電池やアルカリ電池、ボタン型をしたリチウム電池などがあり、2次電池には有名なリチウムイオン電池やニッケル水素電池、車のバッテリでお馴染みの鉛蓄電池などがあります。これらは約40種類あると言われていて、それぞれにコーヒー缶サイズから大豆サイズまで膨大な数があります。

時代とともに新しい電池が登場したり、古い電池がなくなっていく

 最近では液体水素を充填して電気を取り出す燃料水素電池や太陽電池などもあり、メーカー各社は軽くて安全でコンパクトなボディにたくさんの電気を貯められる電池を研究しています。

 ここでは、よく知ってるようであまり知られていない電池の「!」や「?」を見て行きましょう。

そもそもなんで「電池」は「池」?

 電気を溜めるものなので「電留」(でんる)や「電貯」(でんちょ)であるべきなのに、なぜ「池」なのでしょうか?

 これは電池の歴史をさかのぼることで分かります。1794年に発明された最初の電池はコップに入れた「硫酸」の片側に「銅板」を、反対側に「亜鉛板」を入れ0.76Vの電気を発生させていました。それが現在のように金属筒などにパッケージされた電池となったのは、1887年に日本人が開発した「乾」電池です。電池が発明されてから90年以上電池は「液体」を使ったものだったのです。

 そんなわけで電気を液体に溜めておくことから「電池」と「池」が使われているのです。だから乾いた「乾電池」になったのは革命的だったのです(特許を取らなかったのですが)。ただ車のバッテリは未だに液体の水で薄めた「硫酸」を使っていますし、燃料水素電池も液化水素と酸素が使われているので「池」でも間違いじゃないんです。

電池の基本構造は昔のまんま。2つの金属の間に電解液を挟みこむ

 電池の電圧は2つの金属の組み合わせで決まります。アルカリ乾電池が1本(筒状のものだけではないので、1本ではなくカッコよく「セル」と言います。Excelのマス1個のセルと同じ意味です)が1.5Vなのは、二酸化マンガンと亜鉛を使っているためです。リチウム乾電池(直径2cmほどのコイン電池のCR2032など)は、二酸化マンガン(またはフッ化黒鉛)とリチウムと使っているので3.0Vです。なので1.5Vのリチウム乾電池は「この世に存在しません※」し、1セルで3V出るマンガン乾電池やアルカリ乾電池も「この世には存在しません」。

※実は1.5Vのリチウム乾電池の金属の組み合わせも発見されましたが、現在絶滅種になっています。

 アルカリ乾電池とマンガン乾電池が1セル1.5Vなのは、電解液がそれぞれ水酸化カリウムと塩化亜鉛と違っていますが、電圧を決める金属がどちらも二酸化マンガンと亜鉛を使っているので電圧が同じ、というワケです。つまり電解液は電圧に関係ないのです。おもしろいでしょ?

このVCR用のバッテリは左が1セル使用なので3.6V、右が3.6Vを直列にして7.2V仕様になっている

 ちなみに同じリチウムでも充電できるリチウムイオン電池は、充電可能にするため正極に二酸化マンガンではなくコバルト酸リチウムなどを使っているので、1セル3.7Vと少し高めの電圧になっています。カメラ用のバッテリパックが7.4Vとか中途半端な電圧になっているのは、3.7Vを2セル直列にしているからなんです。

一次電池

 1次電池は使い捨ての乾電池です。普段使っている単3や単4のアルカリ電池なので、一番馴染み深いでしょう。なじみがありすぎて、電池マニアの人かメーカーの人ぐらいしか「1次電池」なんて言いません(笑い)。

 ただアルカリ電池やマンガン電池だけじゃなく、とくにボタン型の電池には色んな種類があります。

 酒の席で女の子にモテる鉄板の電池ネタは「リチウム電池は1次と2次がある」ってこと。1次電池のリチウムは家電で時計のバックアップに使われるコイン型電池です。2次電池のリチウムはリチウムイオン電池と呼ばれるスマホとかに使われている電池です。「君の心は2次のリチウム電池。満たされないときはぼくが充電してあげるよ♪」とか言えば大抵の女性は落とせます。

 ここでは「お持ち帰りでLINEの交換もしない」1次電池をご紹介しましょう。

マンガン乾電池|アルカリ乾電池の高性能化で優位性が低減

 二酸化マンガンと亜鉛の間に電解液の塩化亜鉛などを利用した電池です。実際の電解液は「液体」ではなく、湿った物質になっています。

 みなさんよくご存知の単3や単4でお馴染みの円筒形のものが主流ですが、無線や測定器などで使われる角型の9V電池もあります。こちらは別名006P電池とも言われますが、粒ガムサイズのマンガン電池が6個直列につながってパッケージされています。

 最近はまったく見かけませんが、マンガン乾電池ができた当時から昭和30~40年台までは、紙でできた500ccの牛乳パックぐらいの大きさの大容量マンガン乾電池もありました。これは主に玄関のピンポンに使われていたようです。

色んなサイズがあるマンガン乾電池(出典:星空マニア,CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)
1931年(満州事変の頃)の電池。主に懐中電灯(ランタン)用として販売されていた

 時計やリモコン、懐中電灯など消費電力が少ない機器や、使う頻度が低いモノ、さほど長時間連続して使わなに機器に向いていると言われています。その理由は、ミニ四駆やストロボなどの大電流に向いていない点と、電解液が液体ではなく湿った物質なので、アルカリ乾電池に比べて「昔」は液漏れしにくいという点があります。

 しかし最新はマンガン乾電池よりもアルカリ電池の方がパッケージがしっかりしていることもあり、マンガン乾電池の液漏れしにくいという優位性は少なくなってきました。

アルカリ乾電池|国産は液漏れの解消で万能電池として君臨

 二酸化マンガンと亜鉛の間に、電解液の水酸化カリウムを利用した電池です。電解液は、亜鉛の粉に水溶液を混ぜ込んだ練り物のようになっていて、昔は電池がスッカラカンになった状態で放置していくと、強アルカリ性のため円筒のパッケージ腐食。そこから電解液の水分が漏れて、電池ボックスの端子などを腐食させていました。

 しかし最近は、円筒のパッケージをしっかり密封する技術が発達して、液漏れがかなり少なくなりました。ただ100円ショップなどで販売されている海外製の電池は技術がまだ確立されていないので、液漏れには要注意です。

液漏れを起こしたアルカリ乾電池(© Túrelio (via Wikimedia-Commons), 2009 / Lizenz:Creative Commons CC-BY-SA-3.0-de)

 電池を入れっぱなしにして、たまにしか使わない機器、例えば子どものおもちゃや、あまり使わない電子辞書などは、海外製のアルカリ電池より、国産の液漏れしにくい電池をオススメします。

 マンガン乾電池にくらべ大電流が出せるので、懐中電灯に入れるとより明るく点灯させたり、モーターに使うとより早く走れるなどのメリットがあります。また電子辞書などの電子機器は、意外に消費電力が多いので、アルカリ乾電池がオススメです。ただ大は小を兼ねるので、リモコンや時計などに使ってもまったく問題ありません。

国産ならアルカリ電池でも液漏れしにくいので、省電力機器に使っても大丈夫

 さて昭和~平成に掛けて時計などで多く使われ直径1cm程度のボタン電池LR44などは、実はアルカリ乾電池の仲間です。電池の型番が「L」で始まるのはアルカリ乾電池で続く「R」はボタン電池を含む円筒形の金属でパッケージされた電池を意味しています。最期の数字は大きさを表わす数字ですが、途中で命名規則が変わったようなので混沌としているのでここでは説明を割愛します。

これらのボタン電池もほとんどがアルカリ乾電池。「L」ではじまる型番がアルカリ乾電池を示している

リチウム乾電池|フィルムカメラ用からスマートデバイス用へ

 アルカリ乾電池やマンガン乾電池に比べるとマイナーなリチウム乾電池ですが、PC Watch読者のみなさんなら一般の方より多用してるはずです。まずはマザボのバッテリパックアップに使うボタン電池のCR2032。カードサイズのリモコンなんかでも多用される3Vのボタン電池です。さらに測定器やバッテリ式の小型カメラ、スマートロックやスマートデバイスなどでも多用されるCR123Aもあります。

コイツが切れて内蔵時計がタイムリープして、訳分からん現象に悩まされたことがあるのでは?

 使われているのは二酸化マンガン(CRではじまる型番CR2032など)またはフッ化黒鉛(BRではじまる型番BR425(つり用の電気浮き)とリチウムです。電解液にはリチウム電解質塩を有機溶剤に溶かしたもの。一般的な電池は水を使った水溶液が主流ですが、リチウムは水と激しく反応するために、水溶液が利用できません。

フィルム式カメラの時代はよく使われたCR123Aや2CR5。最近ではスマートデバイス用の電池としてよく使われる

 リチウム乾電池最大の特徴は、軽くて電気容量が多く、長期間放置しても自然放電が少なく、さらに低温下でも通常通り使える点です(一般的に化学変化は低温では不活性化するので電池のパフォーマンスも落ちます)。このような特徴から昔のカメラやスマートデバイスなどで多用されています。

酸化銀電池|銀を使った高コストな電池

 ボタン電池以外であまり見ないのが、酸化銀電池です。ボタン電池の主流はリチウム乾電池やアルカリ電池に切り替わりましたが、酸化銀塩電池は補聴器や時計用に使われるときがあります。

 リチウム乾電池の登場までは、軽量で電気容量が多く小型化できるとして酸化銀電池がブイブイ言わせていました。しかし「銀」を使っているゆえにコストが高くため今ではあまり使われていません。

 使われているのは酸化銀と亜鉛のため、マンガン乾電池より電圧が少し高い1.55Vになります。電解液は水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムです。

「S」ではじまる型番は酸化銀電池を現わす。あくまで「サイズ互換」でLR44の完全互換でないのは、電圧の減り方に違いがあるため

 マンガン乾電池のボタン電池として有名な直径1cmほどの「LR44」とサイズ互換の酸化銀電池「SR44」があり、0.05Vの違いだけなのでLR44の代替品として利用が可能です。

 ただし酸化銀電池(SR44)用に設計された機器にLR44を利用すると、すぐに電池切れしてしまいます。これは酸化銀電池は使っていても電圧が一定のままで寿命になると突然電圧が下がるという特性なのに対して、マンガン乾電池は徐々に電圧が下がってしまうためです。

空気亜鉛電池|ストーンサークルのように丸くパッケージされる電池

 日常生活はほとんど目にすることがありませんが、たまにスーパーやホームセンターのレジ前にボタン電池として並んでいます。特徴は6個ぐらいの電池がストーンサークルのようにブリスターパックされ、それぞれの電池にタブが着いたシールがついているヤツです。

縦に6個並んだパッケージもあるが、なぜかほとんどが円形に並んでいる空気亜鉛電池。使うときはシールを剥がして空気を入れてやると1分ほどで電気が流れる

 これは両端が金属ではなく、片側が空気でもう片方に亜鉛が使われている1.65V(1.4Vの表記もあり)の電池です。電解液は水酸化カリウムを使っています。パッケージによく書かれているのですが、ほとんどが補聴器用の電池で、シールを剥がすと中に空気が入り電気が流れ出します。再びシールをすると電気を止められますが、完全停止はできず徐々に放電してしまうので、完全なスイッチではありません。

オキシライド乾電池|高性能ゆえに5年でアボーン!

 パナソニックがアルカリ乾電池に変わる次世代電池として華々しくデビューしましたが、わずかな電圧の違いに苦しみすぐに消えてしまった乾電池です。

次世代アルカリ乾電池として登場しましたが、わずかに電圧が高かったため5年で販売中止となった。0.1Vの違いや減り方の違いなどで互換性が保てない電池は本当に微妙な世界

 オキシ水酸化ニッケルと亜鉛が使われているため、一般的に使われる「公称電圧」はアルカリやマンガン電池と同じ1.5Vですが、使い始めの「初期電圧」が1.7Vとアルカリやマンガン乾電池より0.1V高くなっています。これによりバッテリ残量系が正しく動作しないという問題が発生します。

 また直列で使うと本数分の電圧が上がってしまうため、ストロボに使うと0.4V電圧が上昇するため、発光すると異常発熱したり、豆電球が切れやすいという事案が発生し、用途に制限が出ました。結果オキシライド乾電池は電圧が高くて危険というイメージが根付いてしまい、発売からわずか5年で発売中止に追い込まれます。

 その後初期電圧の改善などが行なわれ、現在のEVOLTA(二酸化マンガン+黒鉛+オキシ水酸化チタンと亜鉛)につながり、世界ナンバーワンの電池となりましたが、「オキシライド」の名前は一切出していません。

2次電池

 2次電池は充電して繰り返し使える電池です。電池は使っているうちに化学変化を起こし、だんだん片側の極に電子がたまってしまい、最後は電気として流れる電子がなくなります。これが「電池がカラ」になった状態です。ちょうど砂時計で時間を計ったのと同じ状態で、落ちる砂がなくなれば時計として機能しません。

 そこで片側の極にたまった電子を、元の極に戻してやるのが充電というわけです。砂時計はひっくり返せば重力で砂を元に戻せますが、電子は逆さまにしても元にもどらないので、電池に電流を流して電子を移動させます。ちょうどベルトコンベアで元の極に運んでいるイメージです。

 ただ、電池の種類によって、電子の量が違ったり、単位時間で戻せる量が違うので、低速充電や高速充電、電池ごとの充電器が必要になります。

ニッカド(ニカド)電池|昭和で一斉風靡したが有毒でオワコン

 昭和時代を生きた方にとって充電式電池の代名詞は「ニッカド電池」でしょう。正式には「ニッケル・カドミウム電池」で名前の通りオキシ水酸化ニッケルとカドミウムを使っているため、電圧は1.2~1.25Vとなります。電解液は水酸化カリウムです。「ニッカド」や「カドニカ」電池という名前でも呼ばれますが、三洋電機(現パナソニックに統合、電池部門は富士通系FDKに売却)の登録商標なので、一般名詞は「ニカド電池」と言います。

ニッカド電池の数々。昔のコードレス電話などでよく使われていたが最近はニッケル水素電池に切り替わっている(出典:星空マニア,CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 充電式の電池として多く使われた昭和では、大電流が取り出せるとあって電動工具やラジコン、ビデオカメラなどの電池として使われていました。またウォークマンなどの携帯音楽プレイヤーにも、板ガムを何枚か重ねたような四角い電池が数多く利用されたのを記憶している方も多いでしょう。

 しかし「カドミウム」が人体に有害な物質とされ、廃棄方法などが厳しく規定されました。後にリチウムイオン電池やニッケル水素電池が発明されたので、現在ほとんど使われていません。

 少し使っては充電する継ぎ足し充電をしたり、完全に電池すっからかんになるまで使うと劣化するなど、充電タイミングなどが難しいのも起因して、最大では2,000回使えるというタイプもありましたが、実用的には500回程度のものがほとんどでした。

ニッケル水素電池|水回りと安全性なら向かうとこ敵なし!

 ニッカド電池が衰退する一方で、何とかしてこれに変わるものとして登場したのが、2次電池キングの三洋電機が開発した「ニッケル・水素」電池です。オキシ水酸化ニッケルと水素を含んだ「水素吸蔵合金」を使っていますが、奇跡的にカドミウムと同じ1.2Vになりました(実際には1.2Vになるような物質を手当たり次第調べたといいます)。電解液は濃水酸化カリウムです。

 そして今までの電池のイメージを払拭する白地に青地で「eneloop」(エネループ)という商品名が登場します。乾電池代わりに使え、電池が切れたら充電するから「エコ」ということで一大ブームになりました。

乾電池代わりに手軽に使える2次電池として一大ブームに。現在はパナソニックが販売を続け俗名「パナループ」という異名を持つ

 ネコも嫡子もニッケル水素電池がもてはやされましたが、アルカリ乾電池の1.5Vに比べると、だいぶ使い込んだ状態の1.2Vがニッケル水素電池の電圧だったため、デジタル機器にで使うとフル充電してもバッテリ残量系は半分を示し、ずっと長く1.0V程度の電圧を出力し、突然電池が切れるという特性なので、残量計(乾電池の場合は0.9Vを寿命とするため)がまったくアテにならないなども問題も起きました。

 しかしオキシライド乾電池のように製品寿命を短くするなどがなかったので、幅広く受け入れられたようです。

 主流の使われ方は、大電流が出力できる乾電池の代替品として、デジタルカメラやストロボ、携帯用がジェットに多く使われています。また水と激しく反応するリチウムは、水回りで使うと危険なので、電動歯ブラシや電気シェーバーも好んでニッケル水素電池を採用しているようです。

 繰り返し充電回数はおよそ1,000回と言われています。ただ原材料に添加物をわずかに加えると、大電流を取り出せるけど短命、大電流は取り出せないけど繰り返し充電回数を増やせるなど、特性を変えられるので500~2,000回ぐらいの幅があるようです。

 特徴的なのは、充放電を繰り返すと水素ガスが内部にたまるので、それを放出するためのバルブ穴がプラス側の電極についています。

内圧が高くなったときのガス抜き用の穴が空いているプラス極の根元。わずかな水素ガスなので爆発の危険性はない

リチウムイオン電池|現在の主力だか危険で諸刃の剣

 ご存知リチウムイオン電池です。デジタルビデオカメラやカメラ、スマートフォンにPCなど大量に電力消費をするけれど、持ち運びを軽くしたいという理由で、各社入り乱れての開発競争となり大きく発展を遂げます。

円筒形がメインだがスマホ用の板型電池も多い。ノートPCだと直径18mの高さ650mmが4本直列になって14.8Vの長さ30cm位のバッテリが多いのは18650という規格の電池を使っているから。ビデオだと16340を使ってるので、どの会社も同じようなサイズになる

 基本は負極材に黒鉛が使われていますが、もう一方は乱立しており、コバルト系、ニッケル系、マンガン系、リン酸鉄系、三元系などがあり、PCやデカメなどで使われる円筒形の金属にパッケージされた、3.7V(3.6V表記もあり)で500~1,000回程度使えるものが標準です。

 スマホで使われているものは、四角い板状のものですが、こちらは電解液をゲルにしみこませて安全にしたものです。水没などでリチウムが水に触れないようにしています。また「釘刺し試験」というものがあり、電池に釘を刺して爆発や発火しないか(通常は爆発します)のテストも行なわれます。リチウムイオン電池は、ある意味諸刃の剣なのです。

太陽光発電した電力を貯める蓄電池は、繰り返しの充放電が多いので「オリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池」を使うメーカーが多い

 また電気自動車用には大電流が取り出せるもの、ポータブルバッテリ用には繰り返し充電ができるようにしたものなど、用途に応じて特性を使い分けています。さらに乗り物用は事故になって電池が水に触れたり破裂して爆発しないように、バッテリユニットを頑強なケースで覆うなどしているものがあります。

 電気自動車のテスラは円筒形の金属パッケージの電池を使っているようですが、国産車ではスマホと同様に電解液をゲルに染み込ませたタイプを使っているところもあります。

 またトヨタはこれまで安全性を第一にニッケル水素電池を使ってきました(プリウスやアクア)が、車両重量やパワーが必要なスポーツタイプやレクサスはリチウムイオン電池を使い分け、電池の基礎研究や実際の利用でもデータ収集を今後も続けるようです。

鉛蓄電池|環境に悪いし危険だしクソ重いけど車用はコレ一択

 なんでこれだけ「蓄電池」なのか? はチコちゃんに聞かないと分かりません。日本人が乾電池を発明する30年ほど前に発明されたのが、自動車やバイク、産業系で使われているこの鉛蓄電池です。

 当初は別の金属で複雑な作りをしていましたが、現在は二酸化鉛と鉛を使っており1セル2.1Vの電池です。電解液は希硫酸が液体のまま使われているので、プラスチック容器の中にシッカリ密封されています。しかし経年劣化で中の希硫酸が蒸発した場合は、お店で「バッテリ補充液」を購入して、規定のラインまで継ぎ足します。「希」硫酸なので水で薄めたものですが、皮膚につくと火傷するので、交換するときはゴム手袋などして、金属にブッかけないようにします。

車載用の12Vバッテリ(かなりデカめ)。白いボディから6室に分かれたセルが見える。また各セルに補充液を充電するキャップが6個ついている。つまり2.1Vが6セル直列で12.6Vというわけ

 さて車のバッテリは12Vなので、二酸化鉛と鉛と希硫酸の1セルが6個直列に入っています白いパッケージだと6つのセルが見えたり、それぞれのセルにバッテリ補充液を充填するキャップが6つあるのを見たことがあるかも知れません。イグニッションを切って電圧を見ると12.6Vと13V近くあるのは、1セルが2.1Vだからなのです。

 鉛蓄電池の特徴は、雨の日の渋滞でエアコンを全開で音楽ガンガン鳴らして激しくバッテリを消費しても、春秋に風の声を聞きながらほとんどバッテリを使わないドライブをしても、安定して電気を供給してくれる点です。また車は走りながら充電をするので、究極の継ぎ足し充電が行なわれますが、これによる劣化もほとんどありません。ですからクソ重くて危険な硫酸やら環境に悪い鉛が使われているにも関わらず、未だに車に搭載されているのです。

 難点は、寒いとパフォーマンスが悪くなり、室内灯を付けっぱなしにするなどバッテリをスッカラカンにしてしまうと、極端に性能が落ちる点です。バッテリ上がりをするとJAFやスタンドに買い替えを勧められるのはこのためです。

その他のアウトローな電池たち

 これまでの電池とは毛色が変わりますが、1次とも2次とも言えないアウトローな電気発生装置です。科学電池や物理電池などとも言われます。1次電池にジャンルわけしていた空気亜鉛電池も、空気は金属でないためこちらにジャンルわけされることもあります。

太陽電池|政府によって踊らされてしまった不運な電池

 1800年ごろ金属板に光を当てると電気が発生するかも? ということでよくよく調べると、2つの異なる半導体の接合部に光が当たると電気が発生するとして1839年に「太陽電池」が発明されました。

 実はこのまったく逆がLEDです。「2つの異なる半導体を合わせて電気を通すと、その境界から(熱持たない)光が出る」と1906年に発見されたしたのがLEDです。こうして光エネルギーと電気エネルギーは相互に変換可能ということが分かりました。

気候に左右され発電効率がよくないなどの理由で、最近の政府は風力発電に浮気中。陸地の風力発電は騒音問題などもあるので、洋上に風車をアンカーで固定するとのこと

 現在も基本原理はまったく変わらず、屋根にある太陽光パネルはトランジスタやLSIと同様2つの性質が異なる半導体を接合して作られています。各社が凌ぎを削って開発戦争しているのは、半導体の元となるシリコンの純度やわずかに加える添加物で、より狭い面積でより効率よく電気を発生させ、経年劣化を抑えられるか? という研究をしています。

 太陽電池(太陽光発電用)の寿命は、およそ30年とされていますが、それ以上にパネル表面に汚れなどが付着するので、メンテナンスの良し悪しで発電効率が変わってくるのが問題です。

燃料水素電池|次世代電池は確実だが、どう水素を作るか?

 水に電気を流すと水素と酸素に分解できる「水の電気分解」があります。燃料水素電池は「ならこれの逆もできるんじゃネ?」というのが基本的な考えです。ただ水素と酸素を科学的に融合させて水を作り出し、そこから電気(と熱)を取り出す技術は非常に難しく近年になってようやく実用化のメドが経ちました。

 主な用途は、電気自動車と産業で使われるクリーンエネルギー用です。クリーンエネルギー用は、液体水素を貯蔵するためのタンクなどがすでにあり、都市ガス(メタンCH4)から水素を取り出す技術なども確立しているので、電気自動車より一歩先を進んでいるという感じです。

パナソニック草津工場で稼動している「H2 KIBOU FIELD」は、燃料水素電池と太陽光で工場の電力を賄う実証実験を行なっている。タンクは液体水素、太陽光の奥にあるキューブが燃料水素電池で、電気とお湯が作れる。都市ガスから水素を取り出し発電するユニットも試験中

 一方自動車用は、事故を起こしても破裂しない液体水素燃料タンクが必要になるため、カーボンファイバーを使ったタンクなどの研究がされています。いずれにしても断熱して低温を保たなければなりませんが、そのために電気を使って冷やしていては効率が悪いので、一般的になるのはまだ先のようです。

東芝科学未来館では水を電気分解して水素をため、その水素を使って発電する未来を提示していた。が、これだと電気分解する電気のほうは発電量より多くなっちゃう

 さらに燃料となる液体水素を作るには、電気分解などが必要で水素から電気を取り出す以上に、水素を作る電気が必要というおかしな状態になってしまいます。そこで電気を使わずに水素を作る技術に各社注力しています。水素の原料として海中に大量に存在しているといわれるメタンハイドレードにも注目が集まっています。

 すべて実用化レベルに達成すれば、現在は余剰電力と「蓄電池」に貯めますが、将来は余剰電力を「液化水素」と「液化酸素」にして蓄えるようになるでしょう。

全固体電池|電力会社も参入するピークシフト用電池

 全固体電池は電池の種類というより「パッケージング」の方法です。「乾」電池といえども、電解質を含ませた湿った物質が使われているほか、リチウムイオン電池は「有機溶剤」が使われています。そこで問題になるのが、パッケージに亀裂が入った場合に電解液が染み出してしまい、液漏れや爆発などの危険性。そこで主に電気自動車業界が注目しているのが全固体電池です。

東京電力が開発したリチウム硫黄電池。電解質のLLZも固体で1セル2Vを出力できる。貯められる電気エネルギーの量は理論値で3.3倍まで増やせると言い

 液体を一切使わないので安全性が高く、今は円筒形か板状の電池ですが、形の自由度が高まります。また超急速充電が可能で劣化しにくいなどのメリットもあります。余剰電力を蓄電してピークシフトできるとしてメーカー各社だけでなく、電力会社や大学でも研究されています。実用化は、燃料電池よりも先になりそうですが……。

とりあえず覇権を握るのはリチウムイオン電池か?

 ここまでたくさんの電池を見てきましたが、私たちの生活を大きく左右するものということがお分かりいただけたでしょう。取りえず覇権を握っているのはリチウムイオン電池ですが、水素を安価に作り出せる手段さえ確立できれば、速攻で燃料水素電池が覇権を握りそうなのもお分かりいただけたでしょう。

 さらにたった0.1Vの違い、電池の減り方の違いで互換性が取れない電池の難しさ、電池に使える金属は限られ、その組み合わせ電圧が決まってしまう発明の難しさもあります。

岐阜や長野、静岡など多数の温泉地を持つ中部電力や東京電力の地熱発電所は数えるほどしかない。写真は北海道電力の森地熱発電所で地熱の副産物として北海道で年中夏野菜のきゅうりやトマトが収穫できるようになった

 機会があれば、国内各社が開発を進めている小型原子炉SMRや洋上風力発電の覇権争い、火山王国日本なのになぜ地熱発電が進まないのか? なども解説しましょう! では!