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小学生、ガンダムの手を動かす。横浜「動くガンダム」特別プログラム

©創通・サンライズ

 通称「動くガンダム」のある「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は現在メンテナンス休業中だ。メンテナンス期間は7月15日まで。運営する株式会社Evolving Gはメンテナンス中であることを活用して、2022年6月21日に「GFYエデュケーショナルサポート特別版~“動くガンダム”ハンド遠隔操作にチャレンジ!」をプレス公開した。横浜市立 鉄(くろがね)小学校の6年生26名がガンダムの「ハンド(手)」を遠隔操作で動かした。

 Evolving Gは2021年11月から横浜市教育委員会の協力のもと、ものづくりへの興味喚起を目的として、横浜市の小中学生を対象に「動くガンダム」の仕組みを解説・体感してもらう「エデュケーショナルサポート」を実施している。既に計23校、1,442名の子どもたちが参加しているという。

 今回は特別版として、横浜市立 鉄小学校の子供たちが「動くガンダム」の中でも特に機構の密度が高いハンドを、手袋型コントローラを使って遠隔操作で動かした。また「メンテナンスチェック体験」として、「動くガンダム」制作ディレクター陣の指導のもと、GUNDAM-DOCK TOWERからハンドのメンテナンス状況をチェックする体験を行なった。

「動くガンダム」本体は外装を外して各部を点検中 ©創通・サンライズ
外された外装 ©創通・サンライズ

表現力豊かなガンダムの「手」

 「動くガンダム」の手の大きさは、平手で2m/握り手で1.2m。幅は平手で1.6m/握り手で1.1m。奥行きは平手1.2m/握り手1.0m。片手の重さは182kg(メカ133kg、外装49kg)。制御盤は胴体に収められている。ACサーボモーターと電動シリンダーで駆動される指は3節リンクしているが、5指が独立可動する。速さは1rpm(回転毎分)。

 材質は、中のメカはステンレスとアルミニウム製。外装はFRP。右手人差し指の先端にはライトが付いており、天を指差す「ラストシューティング・ポーズ」のときは光を放つ。サンリオのグループ会社である株式会社ココロが開発を担当した。

 「動くガンダム」の制御にはアスラテック株式会社のロボット制御システム「V-Sido(ブシドー)」というソフトウェアが使われている。ハンドも同様で、「V-Sido」を介することで、操縦者の手の動きをセンサで取り込みつつ、指同士が触れてロボットが破損しない安全な動きをリアルタイムに作り出すことができる。

 ハンドはボディを動かすシステムとは独立しており、インターネット経由で外部からアクセスすることもできる。今回は光回線で直結して動かしている。

右手 ©創通・サンライズ
左手 ©創通・サンライズ

動くガンダムのしくみを体験しながら学ぶ体験会

株式会社 バンダイナムコフィルムワークス IP事業本部 ガンダム事業部 企画製作・ライセンス課 志田香織氏

 体験会ではまず、株式会社 バンダイナムコフィルムワークス IP事業本部 ガンダム事業部 企画製作・ライセンス課の志田香織氏が、機動戦士ガンダム生誕40周年プロジェクトである「GUNDAM GLOBAL CHALLENGE」の経緯から説明した(詳細は、2020年11月30日掲載の本誌記事などを参照)。志田氏は「今日は皆さんにハンドを動かして、メンテナンスのチェックを体験してほしい。プロだからこそ見過ごしてしまうことがある。皆さんの新鮮な目でしっかり点検してもらうとありがたい」と語りかけた。

【お詫びと訂正】初出時に志田香織氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

時節柄、まずは検温と消毒から
最初は映像鑑賞 ©創通・サンライズ

 なお参加者のうち「動くガンダム」を実際に見たことがある人は1人だった。そこでまずは映像で「動くガンダム」の様子が紹介された。このガンダムは「起動実験」という設定で、ガンダムの動きや演出パターンを変えながら行なわれている。

動くガンダムは3つの部分から構成

GGC テクニカルディレクター 石井啓範氏

 続けて、ガンダムのメカ設計を行なった、GGC テクニカルディレクターの石井啓範氏がガンダムの概要を紹介した。「動くガンダム」はガンダム本体、台車、ドックと大きく3つの部分に分かれている。ドックは建物や橋を作る技術、台車は重機を作る技術、ガンダム本体は工場で動く産業用ロボットの技術によって、滑らかで精密な動きを実現している。外装は10年前からの1/1立像の技術が使われている。そしてハンドは演出に用いられるものなので、エンタメロボットを作る技術が使われている。

 ガンダム本体の高さは6F建のビルくらい。重さは25tくらいある。関節数は全身で34。すべて電動モーターで動く。石井氏は「動かすことと、デザインの両立が難しかった」と紹介した。大きさが10倍になると1,000倍になってしまう重さもやはり大変で、動くガンダムはできるだけ軽くするために形状やカバー素材を工夫した。また安全性も重視しており、台車で後ろから支えることで転倒安定性を確保した。コックピット部分に空間はあるが、人は乗らず外部から動かすのも安全を確保するためだ。屋外で展示されるものなので、雨や台風、地震にも耐えられるように設計されている。

さまざまな技術が結集している「動くガンダム」 ©創通・サンライズ
ガンダム本体の構成。電動モーターとシリンダーで駆動 ©創通・サンライズ

プログラムでかっこよく動く

GGCシステムディレクター 吉崎航氏

 今回のメインとなる「ハンド」についてはGGCシステムディレクターの吉崎航氏が解説した。吉崎氏はまず「プログラムに興味を持ってもらいたい」と呼びかけて「要するにかっこいい動きを作る仕事をしている」と自己紹介した。かっこいい動きのためには、たとえば「右手を上げる」という動き1つとっても、肩や肘、首などさまざまな関節を同期させて動かす必要がある。手を動かすときも同じで、指と指がぶつからないように動かさなければならないし、加速度の調整も重要だ。これらは人が手で計算するのではなく、プログラムで自動計算させている。

片腕を上げるだけでもさまざまな関節を同期させる必要がある ©創通・サンライズ
ハンドはもっとも細かい動きができる部分 ©創通・サンライズ

 そして吉崎氏は「1度プログラムを作ってしまうと比較的簡単に動かすことができます。今回はハンド部分だけを動かしてもらいます。外装がついてなくてがっかりした人がいるかもしれませんが、今回の体験は10年後でも自慢できるすごい体験です」と今回の体験会の趣旨を解説した。

体験会は「すごい!」、「面白い!」、「楽しい!」

重さ25t=小学生862人分 ©創通・サンライズ

 簡単な紹介のあと、早速実際の体験会へ移った。プログラムは遠隔操作体験、動作観察やメンテナンスチェック、そしてカンファレンス&アカデミー見学の3部構成。体験会も3班に分かれて実施された。記者が同行した班は、まず併設施設の「カンファレンス」と「ACADEMY」の見学で動くガンダムのしくみを学び、次にハンドの遠隔操作体験、最後にガンダム間近からの動作観察やメンテナンスチェックという流れだった。

内部を走るケーブル類も現在メンテナンス中

 カンファレンスでは再び映像を見て、もう少し詳しいガンダムの仕組みだけでなく「ガンダムが大好きな大人たちが動くガンダムを作った」という情熱を学び、「ACADEMY」に移動。

「ACADEMY」へ移動 ©創通・サンライズ
まずはカワダロボティクスの協働ロボット「NEXTAGE」のデモを見学 ©創通・サンライズ

 こちらではまずは設置されているカワダロボティクスの協働ロボット「NEXTAGE」によるガシャポンのガンダム組み立てを見学した。川田工業はガンダムドックや基礎そのほかを手がけている。

 生徒たちは続いて、自由見学で「ACADEMY」の中のパネルや模型展示、シミュレーター 体験などを楽しんだ。協働ロボットについては「給食作業をやってほしい」、「掃除してほしい」、「配達してほしい」といった意見が上がった。カワダの星野由紀子氏がNEXTAGEが日本橋の「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」でコーヒーを淹れていることを紹介すると、驚きの声が上がっていた。

 「ACADEMY」では歴代のガンプラも展示されている。子供たちの多くは「ガンダム」は知っていても、ガンプラを組み立てたことはないとのことだった。いっぽう、引率の先生はガンダムに詳しく、子供たちに「昔はこれに自由に色を塗っていたんだ」と解説していた。

ガンダムの機構を模型で学ぶ ©創通・サンライズ
シミュレーター 操作体験も ©創通・サンライズ
歴代ガンプラのどれがかっこいいかを議論中 ©創通・サンライズ
「ACADEMY」では動くガンダムの概略を学べる ©創通・サンライズ

 ハイライトであるハンド遠隔操作体験は「GUNDAM-LAB」2階から行なわれた。こちらはGGCシステムディレクターの吉崎航氏が解説した。操作はゲームコントローラと、手袋を使ったデータグローブで行なう。ゲームコントローラでは指1つずつは動かせないが両腕のハンドの握りと開きのほか、手首の旋回ができる。データグローブでは片手しか動かせないが、指一本ずつが動かせる。子供たちは自由に指を動かしたり、指示に応じて「きつね」のポーズを作ったりして楽しんでいた。

子供達に基本操作を解説する吉崎氏
子供たちのサイズに合わせたデータグローブ
ガンダムの手を見ながらグローブで操作できた ©創通・サンライズ
引率の先生も体験

 吉崎氏が「ACADEMY」のシミュレーターを作ったことをアピールすると、子供たちからは「すごーい」と感嘆の声が上がっていた。徐々に実感が湧いてきたようだった。

シミュレーター を作ったことを子供達にアピールする吉崎氏 ©創通・サンライズ
「GUNDAM-DOCK TOWER」に移動 ©創通・サンライズ

 続けて、小学生たちは「GUNDAM-DOCK TOWER」に移動。まずは5Fからハンドの動きをチェックして動作を観察した。こちらではテクニカルディレクターの石井氏が解説した。子供たちはストップウォッチを片手にどのくらいの速度で指が動くのか、滑らかに動いているかといったことをチェックし、それぞれチェックシートに書き込んでいた。

ガンダムを見ながら「GUNDAM-DOCK TOWER」へ ©創通・サンライズ
外装がないため、フレーム各部やモーターもよく見える ©創通・サンライズ
太腿のシリンダー ©創通・サンライズ
胴体部 ©創通・サンライズ
「GUNDAM-DOCK TOWER」5Fからハンドの動きを間近で観察 ©創通・サンライズ
熱心にチェックシートに書き込みしていた ©創通・サンライズ
子供達が主に重なっていたのは手の動きのチェック ©創通・サンライズ
メンテナンスでは溶接の経年劣化などもチェックする ©創通・サンライズ

 その後は最上階である6Fへ移動。ガンダムの横顔を見ながら質疑応答を行なった。子供たちから「次は何を作りたいですか」と問われた石井氏は「ジオン軍のモビルスーツを作りたい」と答えていた。子供たちの温度はさまざまだったが、梅雨時ながら幸い天候にも恵まれたこともあり楽しい雰囲気で会は進んだ。また先生からガンダムを教えてもらったという生徒は「すごい!」、「面白い!」を連発。見学会は大成功だったようだ。

6Fからは首筋や背面もよく見える ©創通・サンライズ
子供たちの質問に答える石井ディレクター
次は「ジオン軍のモビルスーツ、ザクとかを作りたい」という
最後に記念撮影 ©創通・サンライズ

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は7月16日に再オープン、新演出、うちわプレゼントも

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」再オープンは7月16日の予定 ©創通・サンライズ

 「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」自体は、7月16日に再オープン予定だ。再オープン時には、特別演出「RX78F00 HMT(HIGH MOBILTY TYPE、ハイマット)」を継続して実施するほか、施設内カンファレンスルームではガンダムシリーズのTVアニメーション最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』アニメ本編の前日譚「PROLOGUE」の無料上映を実施する。

 特別演出はガンダムの高機動化と武装強化をコンセプトに再構築した高機動型機体「RX78F00 HMT」の実験中のエピソードという設定で行なわれる。今後さらに新演出も展開される予定。ガンプラ新商品「1/144 RX-78 F00 HMT ガンダム高機動型」(2,530円) も販売される。また、来場者には「再オープン記念 特製うちわ」がプレゼントされる。

 このほか、ほかのガンダム立像との連動イベント「GUNDAM NEXT FUTURE -LINK THE UNIVERSE-」、「PROLOGUE」オンライン試写会参加チケットや「ガンプラトライアルキット RX-78-2 ガンダム」がもらえる横浜ベイエリアでのスタンプラリーやバルーン展示など各種イベントも実施される予定だ。詳細は「GUNDAM NEXT FUTURE」公式サイト、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」公式サイトを参照してほしい。