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横浜「動くガンダム」に人が乗れる巨大ロボが大集合!技術ディレクター2人の新チャレンジ

©︎創通・サンライズ ©︎ツバメインダストリ ©︎三精テクノロジーズ

 横浜・山下埠頭の「動くガンダム」こと「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に、人が乗れるサイズのロボット2体が集合した。ツバメインダストリ株式会社開発の搭乗型ロボット「アーカックス」と、三精テクノロジーズ株式会社の4足歩行型ライド「SR-02」だ。

 株式会社Evolving Gによる「動くガンダム」開発プロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」に参加したディレクターの、次なるチャレンジを紹介するために実施されたもので、12月16日と17日の両日には2体のロボットが揃ってデモを行なった。

 「アーカックス」は12月16~24日にかけて展示されるが、「SR-02」は16日、17日の両日のみの展示となるため、「動くガンダム」含めて3台が揃うのはこの週末だけとなった。

アーカックス、ガンダム、SR-02の3ショットが見られるのは最初で最後
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三精テクノジーズ 4足歩行型ロボットライド「SR-02」
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ツバメインダストリ 搭乗型ロボット「アーカックス」
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ツバメインダストリの搭乗型ロボット「アーカックス」

ツバメインダストリの搭乗型ロボット「アーカックス」
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 「アーカックス」は、ツバメインダストリが開発中の搭乗型ロボット。全高4.5m、重量3.5t。先端に車輪のついた4脚で走行することができる。前輪操舵、後輪駆動。バッテリ(DC300V)で駆動し、関節の数は26。しばしば勘違いされているようだが油圧は使われていない。シリンダーも電動シリンダーである。建設機械と同等の転倒安全性を確保し、ISO 及び JIS に基づいたリスクアセスメントを実施するなど、「安全に人が乗ることができて、なおかつかっこいいロボット」を目指して開発されている。既に4億円で販売されている。

ツバメインダストリ「アーカックス」
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アーカックスとしゃがみこんだ「ガンダム」
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 胴体中央のコックピットに乗り込んでジョイスティックとペダルで操縦できるほか、有線でつないだティーチングペンダントを使った外部からの遠隔操作も可能。コックピットは完全閉鎖式。全身には9つのカメラがあり、4面のディスプレイで外部の様子を見ることができる。

 ツバメインダストリのCTOは「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」でテクニカルディレクターをつとめた石井啓範氏で、「アーカックス」のモーターや、モーターの回転力を増幅し滑らかに伝達する減速機等には共通するメーカーのものが使われており、それらの制御技術のほか、鉄(一部アルミ)のフレームにFRP(強化繊維プラスチック)を使った外装や軽量化のための工夫など、「動くガンダム」にも使われたさまざまな技術が応用されている。

ツバメインダストリ CTO 石井啓範氏。「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」テクニカルディレクター
腰やステアリングの旋回輪はANTEX製。3機使われている。
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内部フレームは南鉄工所が手がけた。小物板金はミスミ
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FRP外装はガイナ造形
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「動くガンダム」同様世界の産業用ロボット減速機で6割のシェアを持つナブテスコの「精密減速機RV」を9機使用。
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ハンドや頭部などに用いられている小型アクチュエータはオリエンタルモータ製。こちらは全部で13軸
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大型のモーターは「動くガンダム」と同じ安川電機製。タイヤはフォークリフト用を転用
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本体後ろの内蔵バッテリには東芝の二次電池SCiBを使用
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100Vで充電できる。ロボット側の充電端子はCCS(複合充電システム)規格
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ハッチは4つの機構がリンクで連動する仕掛け
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 前脚を約60度前に伸ばすビークルモードでは時速10kmで走行できる。速度10㎞/hは現行減速機のスペック上の最高速だ。

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ツバメインダストリには、株式会社ジパング、長濱重工株式会社、ヤマタホールディングス株式会社、BA-TSU ART GALLERYが出資しており、本体にはそれらの会社ロゴも貼られている。「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の施工を手がけた川田工業もスポンサーの一つだ。

本体には各出資者のロゴも貼られている
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ツバメインダストリCEOの吉田龍央氏によればビジネス面も順調とのこと
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三精テクノロジーズ4足歩行型ライド「SR-02」

三精テクノロジーズ4足歩行型ライド「SR-02」とアスラテック吉崎航氏
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 舞台装置や遊園地のジェットコースターなどの大型遊戯機械の製作を手掛けている三精テクノロジーズの4足歩行型ライド「SR-02」は、アミューズメント目的に開発されている乗り物だ。全長約3.4m、全幅約1.6m、全高約2.7m。人は4人乗れる。前進、後進、旋回のほか、ローリングやピッチングなどさまざまな動きができる。外装デザインはプラモのパッケージアートなどを手がける天神英貴氏が協力している。

しゃがんで両手を広げたガンダムと「SR-02」
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人の乗り降りに用いるしゃがみこんだ姿勢
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プレゼンする天神英貴氏(左)と吉崎航氏(右)
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 人が乗る時はしゃがむことができる。筆者は一度乗せてもらったことがある。速度は遅いがロボットが足を下ろすたびに下から突き上げる衝撃があり、なかなかワイルドな乗り心地だった。また旋回動作は意外と早く、ローリングされると、まさに遊園地などの乗り物の感覚だった。

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 「SR-02」には、「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」システムディレクターの吉崎航氏が所属するアスラテック株式会社が、ロボット制御システム「V-Sido(ブシドー)」を提供している。「V-Sido」は「動くガンダム」にも使われていて、全身の滑らかな動作を作り出すことができる。

アスラテック吉崎航氏。「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」システムディレクターでもある
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側面。全長約3.4m
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制御にはアスラテック「V-Sido(ブシドー)」を活用
吉崎氏が開発中のコミュニケーションロボの「ねこずきん」が乗車
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「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は2024年3月末まで

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の会期は2024年3月末まで
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 「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」では、「ガンダムSEEDシリーズ」の楽曲にのせた冬季特別演出「GFY Winter Illumination 2023 feat. GUNDAM SEED series」も12月1日より2024年1月31日までの期間、行なわれている。「GUNDAM-DOCK TOWER」には2024年1月26日より公開予定の劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』に登場する新モビルスーツ「ライジングフリーダムガンダム」の描き下ろしイラストも展示されている。

ドック壁面にあしらわれた「ライジングフリーダムガンダム」のイラスト。
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劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」プロモーションイラストも掲示中
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冬季特別演出「GFY Winter Illumination 2023 feat. GUNDAM SEED series」の一部
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ガンダムが未来の可能性を指し示す
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 「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の開催期間は、2024年3月31日まで。新型コロナ禍の影響もあり、これまで再延長を繰り返してきたが、おそらく今度こそ本当に会期終了と思われる。

 入場料金は大人1,650円と決して安くはない「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」。「動くガンダム」の姿自体は敷地外からも見えるし、実際の多くの人が外からも眺めている。だが、遠目で見るのと間近で見るのとは印象が大きく異なる。多少なりとも興味があり、間近で大きな人型の機械が動くのを目の当たりにする「体験」をまだしていない人は、ぜひ見に行ってほしい。

 「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に来るたびに感じることなのだが、特に用途があるわけでもない「18mのガンダム」が動く様子を、老若男女、世界各国から来場した人たちが見上げている風景は悪くない。

巨大な人型の機械が動く様子を目の前で見るのは「体験」そのもの
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未来を指すガンダムをみんなで見る経験
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夜のデモ
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「動くガンダム」は「人の心も動かすプロジェクト」だとされている
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来場者の中にはアニメ「マクロス」シリーズなどで知られる河森正治監督の姿も
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河森正治氏は「SR-02」乗車体験も楽しんでいた
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