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「ガンダムは優しかった」。横浜ガンダム19日から一般公開、LUNA SEAも応援

 株式会社Evolving Gは『機動戦士ガンダム 40 周年プロジェクト』の一環として横浜市と連携し、 18mの実物大ガンダムを動かす施設「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」を12月19日からオープンする。イベント予定会期は2020年12月19日(土)~2022年3月31日(木)。入場料金は、大人1,650円(13歳以上)、小人(7歳以上12歳以下)1,100円。ガンダムを間近で見られる観覧デッキ「GUNDAM-DOCK TOWER」での観覧料は別途3,300円。チケットは公式サイトで販売中だ。ガンダムというコンテンツと日本のものづくりが融合したプロジェクトである。

 一般公開前日の12月18日にはオープニングセレモニーとしてガンダムの「起動式」が開催され、セレモニー特別演出が公開された。また『機動戦士ガンダム』総監督の富野由悠季氏や横浜市長の林文子氏らも登場。さらにスペシャルゲストとして「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」のテーマソング「THE BEYOND」を手がけた「LUNA SEA」が生演奏を行なった。

LUNA SEAの生演奏も行なわれた

 今回の演出は以下のとおりだった。まずガンダムにパイロットが乗り込んだあとに、ガンダムは各部ライトの点灯テストを行なう。その後、プレス公開時と同様にドックから出てきたあと2歩歩行した。その直後に「不調」をきたして一旦、片膝をついてしゃがみこむ。しかし「再起動」して再び立ち上がり、起動テストを再開。カタパルト発進シークエンスに移ったあと、最後は両腕を広げ片膝を曲げたウイングガンダムのようなポーズで停止した。続けて、LUNA SEAが「THE BEYOND」を生演奏で披露した。

 そして最後のポーズのままトークショーが行なわれ、最後はLUNA SEAがカバーした「Beyond The Time 〜メビウスの宇宙を越えて〜」とともにガンダムは再びドックへ戻っていった。なお今回の演出もプレス公開時の演出同様、オープン以降の演出とは一部異なるとのこと。

スタンバイ状態のガンダム
パイロットがコックピットに乗り込む
ドックから出てきて歩行動作
緊急事態発生で膝をつく
再度立ち上がる
カタパルト発進シークエンス
今回の特別演出の最後のポーズ
広げられた手のひら

富野由悠季氏「ガンダムは優しかった」。セレモニー「起動式」

株式会社バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長 宮河恭夫氏

 セレモニーで株式会社バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長の宮河恭夫氏は「今回の『動くガンダム』は2009年にガンダム30周年で18mの立像を立てたのがスタート。450万人が来場した。今度は動かしてみようと思いついて2014年にプロジェクトを設立した」と経緯を改めて説明した。

 「技術が進化してファンタジーに現実が追いついてしまった。夢の見方を教えたい」というGGCリーダーズの1人である早稲田大学名誉教授の橋本氏の言葉を引用し、「多くの世代と議論し、やりきることができた。次のガンダム、次の技術を語っていきたい」と語った。そして「何よりクリエイターによるガンダムが生まれたからこそ、作り続けてきたスタッフたちのおかげで40周年を迎えることができた。何より一番大切なのはファンの皆様が支えてくれたこと」と語った。

 そして最後に「新型コロナ禍でさまざまなエンタメが開放できてない。我々もオープンに迎えるにあたり入場者数制限や感染予防につとめて楽しんでいただけるよう努力する。このガンダムの一歩が次の技術への一歩、明るい未来への一歩となれば。横浜市、協賛各社や関係者にお礼を申し上げる」と挨拶を締めくくった。

横浜市長 林文子氏

 続けて横浜市長の林文子氏は「実物大の18mのガンダムを動かす世界初の壮大な夢を実現させる舞台として横浜を選んでもらって光栄。ガンダムの新しい歴史がここ横浜から始まる。今日はガンダムファンとしてプロジェクト発表から楽しみにしていた。ガンダムは世代を超えて世界中のファンを魅了している。ついにガンダムが横浜の大地に立った。分野・世代を超え、皆様の湧き上がる熱意がガンダムを動かした」と語った。

 そして「横浜市を背景にそびえ立つガンダムのボディを見上げてほしい。コラボ商品もご用意頂いているし、きらめく夜の街の散歩も一緒に楽しんでほしい。夢あるエンタメや技術が強く必要とされていることを私も実感している」と語った。

『機動戦士ガンダム』総監督 富野由悠季氏

 『機動戦士ガンダム』総監督の富野由悠季氏は、「お子様方には『ごめんなさい』と申し上げます。2本足歩行ができる実物大のガンダムが作れなかったからです。けれど今回製作した1/1サイズのこのガンダムは今まで以上に人の形が素晴らしいということを教えてくれました。この大きさの人型とおもちゃカラーというものがどれだけ素晴らしいかを見せてくれているからです。

 この大きさのかたちの人型が動いたときの優しさとは一体なんなのでしょうか。皆様は、ことにお子様方は知っているはずです。新幹線や新しく作られた自動車、遊園地の乗り物は、動いてもやさしい。ガンダムはこの大きさで、おもちゃカラーで動いたからこそ、動きが優しくて気持ちがいいということを教えてくれたのです。

 そんなことは、このように作ってもらわなければ、わからなかったというのが我々大人の立場でした。そういう意味では大人たちは想像力がなくお馬鹿さんだったと思っています。今回そのようなことを勉強させてもらったことを本当に嬉しく思っています。見ていってください。ガンダムは優しかったんです」と語った。

左から宮河恭夫氏、富野由悠季氏、林文子氏

LUNA SEAと富野総監督のスペシャルトークも

LUNA SEAメンバーと富野由悠季氏

 ガンダムが動作したあと、富野総監督、LUNA SEAのRYUICHI さん、SUGIZOさんがトークを行なった。司会者から「40年でこんな1/1ができる。素晴らしいことですよね」と話を振られた富野監督は「ここの部分は放送しないでください、一言だけ言いたいことがある」と笑いながら断ったあと、今回の動くガンダムに対して「ちょっと、ちょっとだけやっぱり、驚いています。本気になって作る人がいるとは思っていなかったので。本当に、頑張ってくださった方々、本当にありがとうございました。本当にご苦労様でした。ありがとうございます」と頭を下げ、会場にいた関係者たちを労った。会場からも拍手が起きていた。

 RYUICHIさん、SUGIZOさんの2人は子供時代からでもガンダムに親しんでいたという。前述のとおりLUNA SEAは「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」のテーマソングのほか、テレビアニメシリーズとして放映された『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のオープニング主題歌「宇宙の詩 〜Higher and Higher〜」、「悲壮美」、「BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜」を担当。エンディングにもSUGIZOさんプロデュースによる楽曲が起用されている。

 RYUICHIさんは「子供のころはアニメーションのなかに入り込んでいた。ア・バオア・クーまで。まさか地球上にリアルなガンダムが降り立つとは」と語った。

 SUGIZOさんはジオン軍好きだそうでもともとは「できればガンダムよりもザクを」と考えていたそうだが、今回のガンダムには「問答無用に感動した。涙してしまった。子供の頃に帰る。知らず知らずのうちに涙が出ている。根源的な強さがある」と語り、今回、富野監督の前で「THE BEYOND」を演奏したことについて「本当に感無量。こんなに子供の頃の自分に誇らしいことはない」と喜びを語った。富野監督は「(LUNA SEAの2人は)視聴者の立場だったんですね」と驚きを示した。また「50周年には動くザクを」と盛り上がった。

3人でのスペシャルトークの様子

「感動創造機械」としての「動くガンダム」

ガンダムの顔。肩の上にはサーチライトがあり、夜の演出で用いられる

 先立って12月11日に、GGCリーダーズの1人でロボット研究者の早稲田大学名誉教授 橋本周司氏が「第4回 ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会」で「ロボット工学から見たガンダム」と題した講演を行ない、今回のガンダムプロジェクトの意義とシステムの概要について解説を行なった。その内容の一部と、施設内の「GUNDAM-LAB」の解説、プレス公開日等の写真とも合わせて、改めて「動くガンダム」についてもご紹介しておく。

 「動くガンダム」本体は高さ18m、横幅はおよそ7m、奥行きは約5m。重量は約25t。鉄製の可動フレームにFRPまたはCFRPの外装を貼り付けた構造で、全身の自由度は24(内訳は首ピッチ、ヨー、肩カバー、肩ピッチ、肩ヨー、ヒジ、腰ヨー、腰ピッチ、スカート、モモ、ヒザ、足首、つま先)。加えて両腕先のハンドは5指が可動する。ハンドと手首を除く、本体各部を動かすモーター数は26。左右脚部の腿と膝は2つのモーターを同期させて1つの関節を動かしている。頭部には2軸一体型のユニットが用いられている。

 肩と膝の減速機はは国内最大級のもの。さらに大きなトルクを必要とする腰や太腿は電動シリンダーで駆動されている。特徴的な肩の意匠等はモーターと減速機を隠すためのデザインである。そのほか、本体の可動フレームを曲げるといった工夫を行うことで、ガンダムのデザインのなかに可動機構を収めている。

 なお、動くガンダムの自由度については「22+両ハンド手首が計12」または「24+両ハンドが計10」といった表現が混在しているが、これは数え方による。「安川電機系のシステムが22で、残りのハンド部分のココロ系のシステムを別」として数えるか、「本体関節+手」と数えるかの違いだ。本体に加えて、台車も上下・前後に動く。

 総出力は約170kW。消費電力は本体が約340kW、台車が約190kW。電源、信号の配線のケーブルは約1,500本、全長は4,877m。肩とフロントスカートの裏にはバンパースイッチがあり、接触したらすぐに止まるようになっている。そのほか安全装置がある。コントロールルームはガンダム本体の外、足元にある。

 ガンダムの腰部分の背面は「Gキャリア」と呼ばれる巨大な台車と接続されている。台車は約8m水平前後に走行し、また約4m上下に昇降する。この動きと同期させることによってガンダムが前後に歩行、またしゃがみ動作を行う。Gキャリアと本体は多段式保守デッキ「Gドック」内に格納されている。Gドックの横幅は約15m、高さ約25m。奥行きは約38m。川田工業のリリースによれば無柱大空間を作る技術が応用されているという。

昼間のデモの様子
正面から見た歩行動作
ガンダムの目の発光は黄色または緑色
夕方~夜の演出。時間によって異なる表情を見せる
両腕を上げる動作。本体駆動は安川電機のモーター、ハンドはココロのシステム
本体・台車を含む全体の制御はアスラテック。カタパルト発進ポーズ
脚部。右側面から
歩行動作で足を浮かせたときは足裏の意匠も見える
歩行動作のときは腿部装甲がスライドし、シリンダーが顔を出す
歩行動作中の上半身の動き
全身の関節の連動から躍動感を感じる
残念ながら施設自体の面積の都合で歩行動作は1歩半程度
肘関節の隙間からは、中の減速機が見える

 ハードウェアは、川田工業による建屋(Gドック)のなかに、住友重機械による台車(Gキャリア)、安川電機のモーターとナブテスコ製の減速機などで駆動されるガンダム本体と、ココロ製のハンドが収められたものとなっている。それぞれが異なる出自のものを組み合わせてガンダムのシステム全体ができあがっている。

 今回の「動くガンダム」はあくまで演出装置として位置づけられている。そのためシステムは最上位インターフェイスを演出系とし、その下位にハンド、本体、デッキ、台車の制御が実行される構成だ。本体とハンド、台車はそれぞれ異なる制御が行なわれているが、それらの差異はGGCシステムディレクターの吉崎氏がチーフロボットクリエイターであるアスラテックの制御システムが吸収して同期させている。

 制御ソフトウエアには、アスラテック独自のロボット制御システム「V-Sido(ブシドー)」が採用されている。アスラテックは実物大ガンダムの動き(モーション)をコンピュータ上で検討するため、「モーションシミュレータ(V-Sido Simulator for GFY)」も開発した。このモーションシミュレータは「GUNDAM-LAB」のアカデミーエリアで簡単なものを来場者が体験することも可能だ。

 各関節のモーターはエンコーダーで角度や速度を検出しており、角度指示信号の周期は4ms以下、モーション周期は100ms。各階層ごとに常時状態監視を行なっており、かつ、安全系は制御系とは独立している。インターネットにも接続されていない。

 橋本教授は「感動を創造する機械を作った」と講演で語っていた。今回のガンダムプロジェクトは基本的には「枯れた技術」とはいえ多くの技術を組み合わせた技術プロジェクトでもあり、「国プロ並みの規模」だったという。詳細は今後のイベント等で徐々に公開されていくものと期待している。

可動デッキのガンダムへの寄り付きの距離感も見所
可動デッキのスイベル部
本体は「Gキャリア」で背面から支えられている
Gキャリアと本体の接続部、胴体ピッチ軸のシリンダー、ケーブルの配線なども見所
観覧デッキから見たガンダムと横浜の風景
首部分の意匠。ケーブルなども表現されている
背面ランドセルや小ぶりのビームサーベル
ランドセルのバーニアは4発。動作中は発光する
人間は見上げるよりも見下ろすほうが高さを感じる。忘れずにぜひ見下ろしてみてほしい
デモ終了後にガンダムは観覧デッキに顔を向ける。そのときに地上でも目が合う一瞬がある
ガンダムの目線のシャッターチャンス
デモ直前だけコックピットが開く。中にはパイロットの人形が収められているのが見える
GGCディレクター3人。左から制御担当の吉崎航氏、メカ設計担当の石井啓範氏、意匠・演出担当の川原正毅氏
山下埠頭入り口から見たガンダムファクトリー横浜