山田祥平のRe:config.sys
アームでマルチディスプレイレイアウトを思い通りに
2021年12月4日 06:18
PCのディスプレイは長時間見つめ続けるものだけに、その設置にはそれなりの工夫が必要だ。ところがディスプレイ付属のスタンドの自由度は決して高くない。そこで、ディスプレイ用のアームを使って設置のレイアウトを改善してみた。
ディスプレイを縦に積んで使いたい
ディスプレイをアームに取り付けるなんて、ブラウン管のディスプレイを使っているときには考えられもしなかった。だが、薄軽液晶が当たり前になって、その状況は一変した。
ディスプレイアームはディスプレイの裏側に装備されているVESAマウント用のネジ穴を利用して可動アーム先端のパネルにディスプレイを取り付け、高さや角度、左右位置などを調節することができるようにするためのものだ。いってみればディスプレイを宙に浮かせて自在に位置を操るシカケと思えばいい。かつてはとても高価なものだったが、今は、1万円前後で入手できるようになっている。
VESAはVideo Electronics Standards Associationの頭文字をとったもので、映像業界の標準化団体だ。DisplayPortの規格を策定しているところだといえば、ああ、あそこねと思うかもしれない。
市販のディスプレイの多くは、付属のスタンドにパネルがついていて、それをカチャンとディスプレイの背部に取り付けて自立させるようになっている。廉価なディスプレイではスタンドがネジなどでの直付けになっているかもしれない。いずれにしてもVESA対応ディスプレイ製品ならパネルの背面に4つのネジ穴が見つかるはずだ。そのネジ穴の縦×横の間隔が規格として定められている。一般的な30型以下のディスプレイでは100mm×100mmだと思う。スペックにVESAマウント対応と記載されているので購入前にも確認できるはずだ。
ディスプレイアームが欲しいと思ったのは、28型のディスプレイと27型のディスプレイを、両方横位置で縦に並べて設置したくなったからだ。
28型のディスプレイを付属のスタンドで自立させ、その上に27型のディスプレイを置きたいと思った。同じ縦軸にディスプレイを重ねると、上部と下部のディスプレイで設置ベースが干渉してしまうし、そもそも、下のディスプレイの上部まで上のディスプレイを持ち上げることができない。設置用に別の置き台を用意することも考えたが、転倒防止のための固定も不安だ。初めての経験ということもあって、興味本位でアームを使ってみようと思い立った。
アームを使ってディスプレイを高い位置にレイアウト
まず「HPシングルモニターアーム」を入手した。アームのベンダーとして有名なのはエルゴトロンなのだが、これはどうやらそのOEMらしい。同じものだと思われる製品が、本家のエルゴトロンはもちろん、Amazon Basicなどにもある。色がつや消しのブラックだというのでこの製品を選んだが、本家の「エルゴトロン LX デスクマウント モニターアーム」もマットブラックだ。OEM製品ということで価格はちょっと安いが、そのときごとに価格は変動しているようだ。
届いたのは机に取り付ける台座つきの支柱と、それにとりつけるアーム、さらにディスプレイに取り付けるアームの3点セットだ。机にはベースをクランプで取り付ける。使っている机には金属幕板があるのでうまく取り付けられるかどうか心配していたが、ちょうどクランプで幕板ごと挟み込むことができて問題はなさそうだ。心配なら木板などをいっしょにはさみこもうと用意していたのだが杞憂だった。
低ければ長いポールで高くする
いったんはうまくいったかに見えたアーム設置だが誤算があった。縦にディスプレイを積んだ状態にするには高さが足りない。支柱が短かったのだ。
そこで見つけたのが「サンコー モニターアーム用ポール」だ。これは同社製のアーム製品のオプションで、70cmと100cmのものが用意されている。直径も35mmで同じなので、今回使っていたHPの製品にも使えるはずだ。調べてみるとその使い方の解説をしているブログ等がたくさん見つかった。
サンコーの製品はバリエーションが豊富で価格も安く、最初からこっちにすればよかったと思うくらいに製品群が充実している。アームの可動についても自由度が高そうだ。
追加で購入したサンコーのロングポールはベース部と一体化されていて、最初の支柱は無駄になってしまうが背に腹は代えられない。70cmのポールを入手し、机に取り付けてアームを装着してみたところいい感じの高さになった。質感も酷似していて違和感がない。
これで28型のディスプレイの上に27型のディスプレイを積んだような状態にすることができた。ただ、このサイズのディスプレイを積むと、最上部は机上からの高さが80cm近くになる。これだけの高さがあると上のディスプレイを見る視野を確保するには、かなり上方に首を曲げる必要がある。仰ぎ見るようなイメージだ。下のディスプレイをもう少し下げられれば、上のディスプレイの位置も下げられるのだが、同梱のスタンドでの高さ調整範囲ではこれ以上下げることができない。
だったら下部のディスプレイもアーム設置にして5cmほど高さを低くすればいい。ポールには2つのアームを取り付けることもできるのでできることはできる。
いろいろと考えたが、とりあえず、上のディスプレイを少し俯かせることにした。なんちゃってカービングだ。もっともアームの首部分は後方には70度も仰向けにできるのに、前方にうつむかせられるのは5度だけだ。本当はもうちょっとうつむいてくれればいいのにと思っている。サンコーの製品は上下左右ともに可動範囲がさらに広いようだ。やっぱり理想のセッティングには、いろいろと各社の製品を分析する必要がありそうだ。
マルチディスプレイ環境の拡充
個人的な使い方としては、机上にディスプレイを設置してレイアウトを決めたら、ほとんど動かすことはない。アームというとディスプレイを使わないときには遠くに押しやったり、作業に応じて角度を変えたりと、フレキシブルに動かす用途を想像するが、デスクスタンド灯のZライトとは違って、ディスプレイに向かってキーボードとマウスを使うという作業は、ディスプレイを動かす必要性をほぼ感じない。今は、ノートPCに外付けの据置ディスプレイを接続して使うことも多くなっているが、アームを使えば、より作業がしやすくなるレイアウトで設定できる。それでもほぼ固定となるだろう。
東日本大震災の時、自室には大きな被害はなかったが机上のディスプレイがうつむき方向に前方に倒れ、ディスプレイ表面にキズがついてしまった。アームに固定されたディスプレイならその心配はなさそうだ。そういう意味ではアームの利用は震災対策ともいえる。
また、こうまでして複数台のディスプレイを使うよりも、さらに大きな1台のディスプレイを使う方がいいのではないかという考え方もある。だが、ディスプレイは複数台あったほうが何かと融通がきく。たとえば、オンライン会議のためにZoomやTeamsを使ったり、あるいは、Netflixで映画を見たりといったときに、1台のディスプレイでフルスクリーン表示し、他のディスプレイは調べ物やメモなどの作業用に使ったり、メールやメッセージの着信、SNSのチェックなどのために各種アプリのウィンドウを開いておくといったことができる。それらを1つのディスプレイ上に複数のウィンドウを開いてやるのは手間が煩雑だ。
以前紹介したWindows 11のスナップレイアウトなどはこうした利用に便利なように用意された機能だろう。複数台のディスプレイを使うのは、このスナップレイアウトをディスプレイ単位に拡張するようなものだ。
今の不満は、個々のディスプレイサイズが異なるため、それぞれのディスプレイで文字サイズ等が同じにならないことだ。ディスプレイをまたいでの表示にも支障がある。
Windowsのマルチディスプレイ対応は、ディスプレイごとに拡大縮小率を変えられるが、25%単位と大雑把なものだ。今回のように27型と28型といった微妙に異なるサイズの違いを吸収するのが難しい。最初からすべて同じサイズのディスプレイを購入すればいいのだが、なかなかそういうわけにもいかない。
GPUの進化によって、ゲームをしないビジネスユーザーにとっては、有り余るほどのグラフィックリソースが使えるようになっているのだから、Windowsもそろそろこのあたりにも手を入れて欲しいものだ。そう思っているパワーユーザーは少なくないと思う。