山田祥平のRe:config.sys
スーツケースに入らない大きなディスプレイの世界観
2020年4月18日 11:00
在宅勤務を余儀なくされるようになり、PCの外付けディスプレイの需要が高まっているようだ。企業のオフィスで使っていたのと同じ環境を自宅でもという場合もあれば、効率を追求し、それ以上の環境をという場合もある。そこで今回は、大型4Kディスプレイの有用性について考えてみる。
モバイルディスプレイが宝の持ち腐れに……
17型のブラウン管ディスプレイではじめた個人的なマルチディスプレイ環境。個人的にはすでに25年ほど続けてきた。マルチディスプレイ環境の有用性が手放せなくなり、ちょっと複雑なことをやるときには、最大で4台のディスプレイにデスクトップを拡張してきた。
直近で使ってきたディスプレイは、そのすべてが23.8型のIPS液晶ディスプレイで縦横比は16:10のものだ。フルHDより縦方向がちょっと長い。この縦横比は、ディスプレイを回転させてポートレートで使っても重宝する。フルHDをポートレートで使うと縦に長すぎ、横幅が狭すぎるのだ。また、異なるサイズのディスプレイを並べて使うと、いろいろ使い勝手の点でめんどうだが、Windows 10以降ではずいぶん改善されてきているので、サイズを揃えることにこだわる時代もそろそろ終わりかもしれない。
マルチディスプレイにこだわってきたのは、アプリのウィンドウをフルスクリーン表示することが多かったからだ。何も考えないでウィンドウのタイトルバーをダブルクリックするだけで、カレントディスプレイの画面いっぱいに最大化されて作業を継続できる。ディスプレイごとに役割を決めておき、そのディスプレイで最大化してアプリを使う。じつにシンプルだ。
デメリットとしてはやはり場所をとることか。作業に使っているデスクは買ってからすでに30年以上経過しているが、1×2mの会議室用テーブルで引き出しも何もない、歳月の経過にもビクともしないただの平板だ。だが、広いだけに4台の24型ディスプレイを置いてもなんとかなった。
しかも暑い。液晶ディスプレイとは言え4台が目の前で点灯しているとそれなりの熱を発生する。とくに、16:10で24型というサイズ感にこだわってきたので、フルHD製品が主流の今、代替製品を見つけるのが難しく、10年以上前に買った古い製品を使い続けてきた。だから1台あたりの消費電力も100W近かったりする。同サイズの最新製品なら半分どころか数割の消費電力で済む。
そんなこんなで、ディスプレイは陳腐化が遅い製品でとくに不便もなかったから、新しい製品に飛びつくこともなく、ズルズルと過去の環境をひきずってきたのだ。
が、新型コロナ感染防止問題で、予定していたMWC取材のためのバルセロナ出張もキャンセルし、国内においてもさまざまなイベントが中止されオンラインに移行、4月になって、ついには非常事態宣言。外出自粛が要請されるなかで、当然、移動のための時間は少なくなり、自宅での作業時間は増える一方だ。モバイルディスプレイを活用する場もない。これを機会に少し、固定環境におけるディスプレイについて考え、再構築ができるかどうか検討してみることにした。
ディスプレイ世界の4in1
ずっと24型程度のディスプレイ複数台によるマルチディスプレイ環境を最高の環境として考えてきたが、まず、これを1台のディスプレイに集約してみたらどうかを体験してみる。
これまで24型にこだわってきたのは、Windowsデスクトップが23型フルHDをほぼ100%表示で使うことを前提に設計されているからだ。1インチあたりのドット数が96個(96dpi)がWindowsのデフォルトだ。フルHDなら23型、それよりちょっと広い1,920×1,200ドットを使う場合、23.8型で使うとちょうどよかった。
この数年間で、大型ディスプレイへの移行を考えなかったわけではないが、フルHD解像度であるかぎり、24型超のディスプレイは意味がないと考えてきた。Windowsには小さなディスプレイのために拡大スケーリングの機能は用意されているが、大きなディスプレイのための縮小スケーリングはできない。だから24型超のディスプレイを使っても、表示できる情報の量は基本的に変わらない。
だが解像度が高ければ情報の量は増やせる。それはわかっている。24型フルHDと同様の100%表示をかなえるには、46型4K解像度が必要だ。ところが、各社のラインナップをチェックしても46型4Kディスプレイはめぼしいものが見つからない。
だが、42.5型4Kなら価格的にもこなれてきていて、いくつかの候補が見つかる。そこで、LGエレクトロニクス・ジャパンにお願いして、「43UN700-B」をしばらく使わせてもらった。
4K解像度は3,840×2,160ドットの16:9で、これを42.5型に表示すると、デスクトップは約93%の表示サイズになる。したがって、100%サイズにするためには、スケーリング値を108%にする必要がある。ところがWindowsのスケーリングは25%単位なので108%の設定ができない。
ちょっと大きくなるが125%、またはちょっと小さくなるが100%の両方を試してみた。やはり125%表示ではもったいないと感じる。われながらケチだ。それでも各アプリのウィンドウ内のズーム機能を使えば、100%表示でいいと判断した。具体的にはブラウザなどの設定で、ズーム倍率を110%表示にするのだ。UI的には小さくなってしまうが操作に難があるほどではなく、コンテンツ表示には支障がない。
また、設定→デバイス→マウスで、マウスカーソルの移動速度を多少上げた。デフォルトのままでは広い解像度のなかでの移動がたいへんだ。同時に、ポインタのサイズを変更して少し大きくした。ポインタサイズについては設定→簡単操作→カーソルとポインターで変更してもいいし、マウスの追加設定で、ポインタデザインをWindows標準(大きいフォント)などに設定してもいい。
これらの設定は、あくまでもディスプレイ1台であることが前提だ。たとえば、ノートPCにディスプレイを拡張するような使い方では、異なる解像度、異なるサイズのディスプレイをつなぐことになるため、マウスポインタの挙動や見かけがディスプレイごと違ってくるのでやっかいだ。
また、以前から自分のデスクトップでそうしてきたように、タスクバーの位置をデスクトップ上部に固定する。メニューやリボンとタスクバーボタンが上部と下部に離れていると、操作のためのマウスポインタ移動に手間がかかりすぎるからだ。
大きなディスプレイと行動変容
ハードウェアとしての43UN700-Bはとてもよくできている。センターポールと液晶パネルを接合するために4本のネジで固定するのがちょっとめんどうだが、設置時に一回だけの作業だ。また、スタンドのフットスペースも340×270mm(幅×奥行き)と、ぶっちゃけ13.3型ノートPCを置けるスペースがあれば設置できる。ディスプレイそのものの横幅は970mmあるし、重量もスタンドとあわせて17.5kgあるので、テーブルやデスクにもそれなりの耐荷重が求められるが、それほど高いハードルではないと言っていい。
42.5型4Kのサイズ感は21.5型フルHD 4枚分の広さだ。ベゼル幅がゼロの21.5型ディスプレイを2×2=4枚並べたものが1枚のパネルで実現されている。画面中央に身をかまえ、正面からディスプレイに対峙すると右端、左端を凝視するには首の移動が必要になる。ディスプレイと瞳との距離は約80cmだ。ちょっとつらいと感じるのは、この製品のスタンドに高さの調整機構がなく、デスクトップ下端が100mm強の高さに固定されていることだ。これは半分の50mmくらいに下げられるようにしてほしかった。ディスプレイ上部を見るために首を上下するのはつらく、少しでも低いほうがありがたい。
もっとも、瞳とディスプレイの距離を1m程度まで離せば首の上下左右運動は抑えられる。そうなると100%表示ではつらいのでスケーリングを125%表示にせざるをえなくなり、ちょっとソンをしているような気になる。また、一般的な事務用のデスクは、奥行きが700mm程度なので、それだけの距離を確保するのが難しいかもしれない。まして、在宅勤務などで確保できる作業机のサイズはもっと小さいかもしれない。
3~4台あったディスプレイを大きな1台に集約することで、デスクトップでの作業の行動変容が起こっていることに気がつく。実際に42.5型を2台並べたマルチディスプレイ環境も試したりもして、いろんなことがわかってきた。次回は、42.5型4Kディスプレイが起こしたパーソナルコンピューティングの行動変容について深掘りしていくことにしよう。