山田祥平のRe:config.sys

Windows 11のウィンドウ、重ねて表示、並べて表示、フルスクリーン表示、それから……

 デスクトップで書類としてのアプリウィンドウを表示するにはタイリングとオーバーラップの2種類がお馴染みだ。自由度が高いという点ではウィンドウが重なるオーバーラップがよいとされてきたが、どうも最近は、並べて表示するタイリングがトレンドだ。

ディスプレイサイズと画素密度

 Windowsなどのオペレーティングシステムと対話するための基盤となるデスクトップは、接続されたディスプレイのサイズと解像度、スケーリングなどに依存して広さが決まる。一般的なノートPCであれば縦横比16:9の13.3型、16:10の14型、3:2の13型といったところだろうか。大振りのノートPCでは15.6型、17型あたりまでの選択が可能だ。

 据置型のディスプレイなら21型、23.8型、24.1型あたりがポピュラーだ。さらに27型、31.5型、42.5型などがある。サイズについては好みもあれば場所の制約などにも左右される。また、24型超は4K解像度が現実的な選択肢に加わる。また、これらのディスプレイを横につないだような縦横比をもつ曲面ディスプレイなども人気だ。

 Windowsの想定画素密度は96dpiなので、フルHDとしての1,920×1,080ドットを100%の表示で使うためには23型のディスプレイが必要になる。それを下回るディスプレイでは表示が小さくなってしまうので、視力等に応じて拡大する必要がある。100%を下回る縮小はできないので、100%から25%刻みで好みの倍率でスケーリングして使う。カスタムスケーリングもできるが、Microsoftとしては「元の設定に戻すことが困難になる場合がある」として変更しないことを求めている。つまるところ、フルHDを100%なら23型、4Kを100%なら46型が必要ということだ。それを下回る場合は、多少のスケーリング設定をしたくなるだろう。

フルスクリーンがすべてではない

 さて、そのデスクトップだが、多くのユーザーはそのすべてをアプリのウィンドウに占有させるフルスクリーン表示で使ってきた。流行のことばでいえばイマーシブだ。

 たとえば13.3型のフルHDディスプレイの横幅は縦置きA4用紙の幅の1.5倍弱ある。この幅にワープロなどの編集画面をフルスクリーンで表示し、見やすい本文文字サイズで作業しようとすると、どうにも中途半端になる。文字が大きすぎたり、縦方向に表示できる行数が少なく感じたりするはずだ。また、ブラウザで表示する各サイトも間延びして両脇のスペースがもったいなく感じる場合がある。レスポンシブなサイトでは1行の文字数が多すぎて読みづらかったり、ウィンドウ幅に応じて表示されるサイドバーがうっとおしかったりということも起こる。

 縦置き用紙のサイズを横長の画面に当てはめようとしているのだから仕方がないことなのだが、16:10や3:2の縦横比が使いやすいとされるのは、この無駄が多少は緩和されるからだ。そういう意味ではかつての王道ともいえる4:3のディスプレイがもっとも使いやすかったのだが、画面といえばワイドというトレンドは、そこを見て見ぬふりして台頭してしまった。まあ、そのおかげでディスプレイパネルはTVと共通化され、ディスプレイは廉価になったのだろう。いずれにしても縦横比はある程度のサイズを超えた時点であまり気にならなくなる。

タイリングウィンドウ表示の復権

 さて、Windows 11では、各ウィンドウの右上のコントロールボタンとして、「最小化」と「閉じる」ボタンの間にあった「元に戻す」ボタンがなくなった。正確には以前と同じように「元に戻す」として機能するのだが、マウスポインターを重ねると6種類のレイアウトが表示され、選んだ位置とサイズで表示させることができる。これがスナップレイアウトと呼ばれる機能だ。

 この機能によってアプリのウィンドウをフルスクリーン表示したときに感じるもったいない感が抑制され、複数のウィンドウを表示してデスクトップをより有効に使えるようになるというわけだ。

 このときのウィンドウ表示はタイリングだ。あるウィンドウを任意の位置、サイズにすると、そのレイアウトの他の領域に、別のアプリを配置するために、そのときに開いているウィンドウが一覧表示される。必要がない場合はEscキーで中断できる。

 この機能が有効に活かすためには、各アプリがウィンドウのサイズに依存しない作りになっていてほしい。十分に大きなディスプレイサイズ、そして解像度であればあまり気にする必要はないが、13.3型程度のフルHDディスプレイでは仮に縦半分に2分割してふたつのウィンドウを表示しても横スクロールが発生するなどで使いにくいだけかもしれない。Webページにしても、レスポンシブデザインで、本文の折り返し位置がウィンドウの横幅に応じてダイナミックに変わるようになっているならいいが、横幅を決め打ちしているようなサイト/ページでは破綻してしまう。

横長ディスプレイをタイル分割して縦長に使う

 おそらく今後は、アプリやWebサイトにウィンドウサイズに依存しない作りが求められるようになるだろう。これはWindowsのようなPC用のオペレーティングシステムのみならず、iPadなどのタブレットなどでもいえることで、限られた広さしかない矩形を最大限に活かして作業するためにはオーバーラップでのウィンドウ表示ではウィンドウ相互のスキマがもったいない。デスクトップにビッシリとスキマなくウィンドウを並べる方が合理的だということだ。

 ウィンドウ同士が重なり合っている場合、背後のウィンドウは見えない。Windowsではタスクバーボタンにポインタを重ねると開いているウィンドウのサムネールが表示されるし、Windowsキー + TabやAlt + Tab、また、タスクビューボタンを使って、開いているすべてのウィンドウを一覧できるので、タスクの切り替えについては、作業したいウィンドウを探すのに不便はあまり感じなくなっている。それよりも無駄が多い横長のウィンドウを、どうすればうまく縦に使えるかを考慮してくれた方がありがたい。アプリやサイトの作りに依存はするが、これがこれからのPC上での作業の効率を決めていくことになりそうだ。

アプリのレスポンシブデザインを切望

 たぶん、今後、プリントという行為は次第に「残す」ためのものではなく「一時的」なものになっていくだろう。プリントが作業の最終過程ではなくなるということだ。いかに美しい印刷物を手に入れるかではなく、いかに、画面で美しく読みやすいかが求められるようになる。そのために、アプリもサイトもちょっとした意識の変革が必要だ。

 Googleの掲げるモバイルファーストインデックスの御旗のもとでは、モバイルデバイスのような小さなディスプレイしかもたない場合に、それに最適化されて表示されないページは検索結果の下位においやられてしまう可能性がある。Googleの検索で上位に表示されなければ、そのページはこの世に存在しないのも同義だからたいへんだ。モバイルに最適化されたサイトが増えていったのと同様に、Webサイトがウィンドウサイズに依存しなくなるのにそんなに長い時間はかからないだろう。ある意味で、デスクトップ上のウィンドウは、その1つ1つがモバイルディスプレイのようなものだと考えた方が手っ取り早い。

 その一方で、アプリはまだ当面難しいかもしれない。Windows用のデスクトップアプリはもっとも遅れているともいえる。いまなお紙に印刷することを想定しているアプリは多い。あのGoogleドキュメントでさえそうだ。また、Adobeの一連のアプリのように、フルスクリーン以外では使う気になれないUIのものもある。

 TeamsやZoomのように世代的に新しいアプリであっても、フルスクリーンを占有しようとし、マイクやカメラはともかく、さらにはオーディオ再生までも独占しようとする。

 アプリの挙動が考慮されるようになり、本当の意味でのDXが進めば、PCはもっともっと使いやすくなるだろう。アプリを動かすためのプラットフォームとしてのWindowsは、こうしたトレンドも想定しているはずだ。だからこそ、Officeアプリなどにも同様の方向性を求めたくなる。シンプルリボンの採用などでその気配は感じるがまだまだだ。