レビュー
7,000円でお釣りが来る「Athlon 200GE」を試してみた
2018年9月28日 20:13
AMDからエントリー向けCPU、Athlon 200GEが発売開始となった。今回AMDよりサンプルをお借りできたので、どの程度の実力を持つのか、簡単にテストしていきたい。
Athlon 200GEはZenアーキテクチャのCPUコアを2つ、VegaアーキテクチャのGPUコア(コンピュートユニット)を3つ統合したプロセッサ。同じコアを採用した製品として、2月にRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの2モデルを投入してきたが、いずれも1万円超えの製品で、Intelが1万円以下で投入しているCeleronやPentiumに太刀打ちできなかった。Athlon 200GEはこのラインを補完するものとなる。
Athlon 200GEの税別価格は6,480円とされており、税込みでも7,000円を切る。この価格帯には、Pentium Gold G5400とCeleron G4920の2製品が存在する。本来、これらを入手してテストすべきだが、時間および機材の都合でテストできていない。ここでは、上位のRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gとどのぐらいの差が存在するか、簡単に確認してみることにする。
検証機材
今回テストするRyzen 5 2400G/Ryzen 3 2200G/Athlon 200GEは同一のSocket AM4プラットフォームであるため、共通の機材を使うことにしている。環境は以下のとおり。
テスト環境 | |
---|---|
メモリ | Crucial BALLISTIX TACTICAL DDR4-2666 8GB×2(2,133MHz動作) |
マザーボード | ASUS B450-F GAMING |
CPUクーラー | Athlon 200GE付属CPUクーラー |
SSD | Kingstone SSDNow V100 128GB |
OS | Windows 10 Pro(April 2018 Update) |
電源 | Corsair CX430M |
ドライバ | Radeon Software Adrenalin Edition 18.9.3 |
じつは、当初PlextorのNVM Express対応M.2 SSD「M8Se」の512GBを用意していたのだが、Radeon Softwareのインストールが完了後、動作中にブルースクリーンが頻発する事態となった。マザーボードをASRockの「AB350 GAMING K4」に変更してみたところ同じ症状なので、SSDとの相性問題とみられる。なお、この件についてはAMDにフィードバック済みだ。
そこでやむ得ずやや古めのSSDを使うことにしているが、今回はおもにCPUとGPU性能の比較を行なうベンチマークとなっているため、SSDが大きなボトルネックになるとは考えにくいだろう。
また、レビューにあたって、内蔵GPUを利用するためのドライバはレビュワー向けに特別配布されておらず、AMDのドライバダウンロードページにもAthlon 200GEの項目の用意がないのだが、Ryzen 5 2400GやRyzen 3 2200G向けに9月26日付けで配布開始されたRadeon Software Adrenalin Edition 18.9.3をインストールしてみたところ問題なく認識されたので、今回はこれを使用している。
GPUはあまり期待できないが、CPUは旧世代から着実に向上
今回のテストでは、PCの総合性能を測定する「PCMark 10」、3D性能を測定する「3DMark」、そしてCPU-Zに付属するベンチマークに絞って結果をお伝えする。
PCMark 10の総合スコア(グラフ1)だが、Ryzen 5 2400Gと3 2200Gが4,000前後のスコアであったのに対し、Athlon 200GEは3,136と8割程度だった。Athlon 200GEはCPUコアのみならずGPUのコンピュートユニットも大幅にカットされているが、その割には良いスコアだと言える。
また、RyzenはいずれもTDPが65Wであるのに対し、Athlon 200GEはTDPが35Wと5割弱になっていることを加味すると、一般的なPCの利用法では、かなり優れた電力効率であると言える。
項目別に見ていくと、処理の軽いEssentialsとProductivityは上位2製品の8割弱~9割弱程度の性能だが、CPUコア数やGPU性能がものを言うDigital Content Creationでは6割未満の性能となっている。よって、本格的な写真や動画編集、3Dコンテンツ制作などは厳しいだろうが、日常のWebブラウジングやオフィスアプリでは差を大きく体感できないレベルだ。
3DMarkの結果(グラフ2~5)を見ると、Athlon 200GEはざっくりRyzen 5 2400Gの4割、Ryzen 3 2200Gの5割程度の性能。コンピュートユニット数は前者が11基、後者が8基なので、数の割には健闘していると言えるが、絶対スコアが低いので、過度な3Dゲーム性能は期待できないだろう。
なお、先述のとおり、ドライバは“Adrenalin Edition”ということで、Radeon RXシリーズやRadeon RX Vegaシリーズと共通のUIなのだが、Alt+Rで起動するRadeon Overlayは基本的な色設定のみで、ゲーム録画などの機能は提供されないようだ。ここでも機能的にディスクリートGPUと差別化されている。
CPU-Zのベンチマークだが、シングルスレッドは328.9、マルチスレッドは948.1と、おおむねクロックやスレッド数に相応する結果となった。
これだけだとインパクトが弱いので、参考までにCPU-Zに含まれている旧来のSocket FM2+用APU「A10-7850K」のスコアを重ね合わせてみると、シングルスレッドで約1.39倍、マルチスレッドで約1.28倍という結果。A10-7850KのTDPが95Wであることを踏まえると、Athlon 200GEはかなり電力効率が高い。もし今、A10-7850Kを使い続けているのであれば、Athlon 200GEでも良いので、AM4プラットフォームに買い換えるべきだと断言しよう。
ちなみにAthlon 200GEはRyzen用のオーバークロックユーティリティ「Ryzen Master」に対応しており、起動はするものの、倍率がロックされており変更できなかった。Ryzenにある“遊び”の要素は省かれていると見ていい。
CPUに見合ったマザーボードが欲しい
今回は時間の都合上消費電力を計測できていないが、これまでの計測結果から予測するに、ディスクリートGPUや多数のHDDを積むといった構成でなければ、システム全体の消費電力が60Wを超えることはまずないと見ていいだろう。熱もかなり穏やかで、かなり小ぶりの付属クーラーでも、高速で回転することはなかった。
ともすれば、やはり小型フォームファクタに組み込みたいところなのだが、残念ながらいまのところMini-ITXフォームファクタのSocket AM4マザーボードは軒並み1万円以上であり、7,000円未満のAthlon 200GEと釣り合わない。microATXであれば4,000円台から用意されているが、せっかくの35Wの旨味がスポイルされてしまう印象である。PCI Expressスロットは不要なので、安価なAM4マザーボードの登場に期待したいところだ。
もっとも、「単に安いPCが欲しい」というニーズであれば、Athlon 200GEとmicroATXのフォームファクタの組み合わせはかなり魅力的。PentiumやCeleronに縛られない、強力な第3の選択肢が生まれたことは、大いに歓迎したい。