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メモリ4GBはなぜダメなのか?8GBのPCと対決。Windows使用時の速度差を動画で比較検証

 4GBしかメモリを搭載していないPCは性能不足、というのは今ではよく知られている。ただ、4GBメモリのPCは安価であるため、その上の8GBのPCと比較して、実際に体感でどのくらい違いが出てくるのか、PC選びで悩む人は少なくないだろう。ここでは、WebブラウザのやOfficeアプリの動作などを、動画を使って比較し、実用上の差を明らかにしていく。

まずはベンチマークで4GBと8GB環境の性能差を知る

 Windows 10の動作要件によるメモリ容量は2GB以上とされており、メモリ4GBでも動作はする。低価格PCにメモリ4GBのモデルが多いのは、コスト重視という事情もあるだろうが、果たしてそれが快適と言えるだろうか。

 実際、ベンチマークソフトでも4GBのメモリを搭載するPCはより大容量のメモリを搭載するPCと比べてスコアが低い。まずはベンチマークスコアをご覧頂こう。

【お詫びと訂正】初出時に、Windows 10の動作要件でメモリの容量を4GB以上としておりましたが、正しくは2GB以上となります。お詫びして訂正させていただきます。

 今回は、マウスコンピューターのデスクトップPC「mouse DT5」をベースに、4GBのメモリを搭載した状態と8GBのメモリを搭載した状態で比較を行なった。mouse DT5は現行モデルなので標準構成でも8GBのメモリを搭載している。そこで、メモリに関しては別途、4GBモジュール2枚を用意した。4GB×2なので、この検証ではメモリの動作モードがシングルチャネル、デュアルチャネルと異なっている点に注意されたい。

検証に使用したマウスコンピューターのPC
マウスコンピューター「mouse DT5」(直販価格7万1,280円)。ミニタワーサイズのデスクトップPCで統合GPUを利用するコストパフォーマンス重視のモデルだ
mouse DT5のCPUはCore i5-10400(6コア12スレッド)
GPUはCPU内蔵のIntel UHD Graphics 630を使用する

 厳密に検証をするなら、4GB×1枚と8GB×1枚で比較をするべきなのだろうが、現在メモリが4GBのデスクトップPCを最小限のコストでアップグレードするなら、4GBモジュールをもう1枚追加するのが妥当だろう。今のPCでは偶数単位でのメモリ増設が常識となっている。今回は容量だけでなく動作モードがデュアルチャネルになることでのパフォーマンスアップも合わせて、4GBから8GB以上へと増設することのメリットを見て頂きたい。

PCMark 10

 さて、簡単にいくつかのベンチマークスコアを見ていこう。まずはシステムパフォーマンスの指標であるPCMark 10で比較をしてみたい。

 上のグラフの通り、全ての項目でメモリ8GB環境のほうが高スコアだ。PCMark 10では3つのシナリオで、各3~4つのテストを実行する。スコアの向上率が高い上位3つのテストを抽出すると、1位がEssentialsシナリオのApp Start-up、2位がDigital Content CreationシナリオのVideo Editing、3位がEssentialsシナリオのWeb Browsingだ。

 App Start-upはアプリ起動テストなので、どのようなPCにも関わるところだ。そしてWeb Browsingも、現在のPCにおいてプライベート/ビジネス問わずWebブラウザは最もよく利用するアプリだろう。ビジネス的なシナリオであるProductivityは3位までにランクインしていないが、Spreadsheets(表計算)、Writing(文書作成)の2つのテストともに4GB環境よりも8GB環境のほうが5%ほど高いスコアを出している。

 このように、メモリが4GBから8GBへ増設しただけでPC作業が全般的に性能向上することが分かる。

Cinebench R23

 続いてCinebench R23を見てみよう。これはCPUの演算性能を見るベンチマークで、メモリへの影響はあまりないように思われるかもしれないが、実際にはメモリとCPU間でのデータのやり取りは多い。容量というよりも4GB×1のシングルチャネルと、4GB×2のデュアルチャネルという動作モードの違い、つまりメモリ転送速度による性能差を見るテストとなる。

 CPU(Multi Core)は全スレッド使用時で、CPU(Single Core)は「mouse DT5」の場合、Core i5-10400の6コア12スレッドのうち1スレッドのみ使用時のスコアだ。どちらも2%の向上が確認できた。

ドラゴンクエストX ベンチマークソフト

 もう1つはドラゴンクエストX ベンチマークソフトで、3Dグラフィックス性能の比較だ。「mouse DT5」はビデオカード非搭載のPCなので、CPUに統合されたGPU機能を利用する。

 また、ビデオカードには専用のビデオメモリが搭載されているが、CPUに統合されたGPU機能はこれを搭載しておらず、PCのメインメモリをビデオメモリとして借りる形となる。

 この場合、まずメインメモリを共有するため、PCから見たメインメモリの使用可能容量はメモリ全量からGPU機能がビデオメモリとして確保した分を引いた容量になることと、メモリの転送速度が3D性能に与える影響が大きいため、シングルチャネルよりもデュアルチャネルのほうが高性能であるという点を覚えて頂きたい。

 これまでのベンチマーク以上にスコアに差が開いているのは上記の理由からだ。メモリをシングルチャネルの4GBから、デュアルチャネルの4GB×2枚に換えたことで37%もスコアが向上しているのが分かる。

Webブラウザで検証。その遅さ、回線速度じゃなくメモリかも

 ベンチマークソフトの結果は上記の通りだが、実際、体感的にどのくらい違いが出るだろうか。PCは人それぞれ使い方が異なるが、ここでは代表的な用途をいくつか想定して処理を行ない、それを録画した。

 まずはブラウザベースの処理での動作を見てみよう。使用したWebブラウザは利用者の多いGoogle Chrome。人気がある一方で、メモリ使用量が大きいという評価もよく聞かれる。

 1つ目の検証は、Webサイトをたくさん開いていったらどうなるかだ。バッチファイルを組み、1秒に1ページ、50回ループさせてみた。50ページというのはさすがにオーバーだが、どちらかと言えば何ページ開いたあたりで動作が重くなるのかというところに注目して頂きたい。

Webサイトを1秒ずつ合計50ページ表示

 メモリ4GB環境も10ページ目あたりまでは(すでに少し遅れをとっているが)まずまずのレスポンスでWebサイトを開いている。しかし、それ以降は数秒に1回程度ページ情報を表示できるくらいで空白となることが増えていく。

 一方でメモリ8GB環境は大きな遅延がなく、1秒1ページのペースでページ情報も表示できている。約50秒時点でメモリ8GB環境は読み込みも含めて完了しているが、メモリ4GB環境が全ての読み込みを完了したのは2分10秒時点だ。そこには実に1分20秒の差がある。

 そしてこれは映像には残していないが、メモリ4GB環境はその後のページ切り換え、タブやChromeを閉じる操作も長時間表示画面が固まったようにそのまま変わらない状態が続く。

 では、この時メモリに何が起きているのかをタスクマネージャーで見ていこう。

Webサイト50ページ読み込み時のタスクマネージャー

 タスクマネージャーのメモリ項目の読み方だが、中段右上にある4GBまたは8GBの表示がPCの物理メモリ容量。メモリを何GB搭載しているのかがここで分かる。その下のグラフは物理メモリの使用量。アプリを起動したりタブを開いたりしてメモリを消費するとグラフは上へ上へと伸びていく。

 その下にある矩形は幅が物理メモリ容量で、どのくらいの割合で何に使用しているのかが分かる。各領域にマウスカーソルを重ねると容量、用途といった詳細な情報を得ることもできる。

 その下のテキスト情報はメモリ配分の詳細だ。特に「利用可能」という項目には注意してほしい。その下にある「コミット済み」とあるのは仮想メモリ(ページファイル)を含む「使用可能な全メモリ容量」だ。

 ページファイルとは、メモリにロードされたデータの一部、使用頻度の低いものをSDDやHDDといったより低速だが大容量のストレージに逃がすことで、メインメモリが足りなくなった際に補うものだ。メインメモリ容量以上にメモリを使ってもシステムがクラッシュしないのはこの仕組みがあるおかげである。

 ただ、これがあるゆえにメモリが足りていなくても問題ないと勘違いされる方も多いので注意したい。いくらSSDが高速と言っても物理メモリの転送速度と比べればはるかに低速だ。

 まず開始時点のメモリの状況を見ると、4GB環境の使用可能容量は1.1GB、8GB環境は4.4GBだ。処理が始まると利用可能容量は徐々に減っていく。4GB環境でもゼロにならないのは上記の通りページファイルとしてSSDに逃がしているためだ。

 当然だが、およそ使用可能容量が天井を突いたあたりから処理が重くなっていく。PC使用時のメモリはこのような動作をしていることを覚えておこう。

Web会議でも差が出るか?動画視聴で想定テスト

 続いてWeb会議を想定してフルHD動画×4本をWebブラウザ上でストリーミング再生してみた。なお、初めに結果を言っておくと、このテストでは4GB環境も8GB環境も差はなかった。表示されるタイミングもほぼ同時だ。

フルHDサイズの動画4本をWebブラウザで再生

 ただし、実際のWeb会議では映像だけということはまずないだろう。資料を用意したりWebサイトの情報を参照したりといった想定を取り入れてテストしてみよう。

 システムの環境の都合、全てWebブラウザ上で行なうが、まずMicrosoft 365 for the webでExcel、PowerPoint、Word各1つずつを開き、フルHD動画×4、さらにWebサイトを10ページ開いてみた。

Officeアプリ×3、フルHD動画×4、Webページ×10をすべてWebブラウザで開く

 Microsoft 365 for the webの読み込みはどちらも1秒以上かかっている(次の処理が開始するまでに表示を完了できていない)として、続くフルHD動画4本の読み込み時点で4GB環境側での表示の遅れが生じ始める。そしてWebサイトを開いていくとその遅れは徐々に拡大し、ページの読み込みにも時間がかかるようになっていく。

 ここでもメモリ容量の差が出ているのが分かるが、逆に言えばメモリをそれほど消費しないのであれば、体感差は出にくいと言える。

ファイルコピーの所要時間の差を調べる

 続いてはファイル操作を見ていこう。コピーを行なうファイルは、1つ8GB(動画データ)のものと、532個(RAWデータ)で8GBのものを用意した。

 ファイルの総容量を8GBとしてみたが、結果から言えばファイルコピー時、全てをメモリにロードしてからコピー操作を行なうわけではないため、メモリ4GB環境でもメモリ使用可能容量を使い切ることはなかった。

 一方で、ファイル操作では基本的にメインメモリよりも低速のSSD/HDDを用いるため、メモリ容量や速度への影響は小さいと予想していたが、実際は完了までに要する時間に違いが出た。

「mouse DT5」のCドライブはSATA 6Gbps接続のSSD。もちろんHDDよりも高速だがシーケンシャルリードで564MB/s。メモリの転送速度よりは遅い

 1ファイルの動画のコピーに要した時間は4GB環境が約32秒、8GB環境が約30秒だった。また、532ファイルのRAWのコピーでは4GB環境が35秒、8GB環境が32秒だった。所要時間は計測タイミングで多少変わるが、概ね2~3秒程度8GB環境のほうが速かった。

8GBの動画をコピー
合計8GBのRAWデータ532個をコピー

 次に、実際の使用により近いシミュレーションとして、あらかじめMicrosoft 365 for the webでExcel、PowerPoint、Word各1、Webサイトを10ページ開いた状態、つまりある程度メモリを使っている状態からコピー操作を行なった場合にどうなるのか検証した。

Web版Excel/PowerPoint/Word、Webサイト×10を開いて、8GBの動画をコピー
Web版Excel/PowerPoint/Word、Webサイト×10を開いて、合計8GBのRAWデータ532個をコピー

 1ファイルの動画のコピーに要した時間は4GB環境が38秒、8GB環境が32秒。532ファイルのRAWのコピーでは4GB環境が42秒、8GB環境が36秒だった。何かをしながらのファイル操作は、単体で行なう際よりも所要時間を要する。メモリに余裕がない場合、より時間を要することが示された。

クリエイティブな処理ではメモリ容量が特に重要

 最後はクリエイティブ系アプリで比較をしてみた。動画や写真といったメディアファイルの処理は、特にメモリが重要と言われている。

 まずはHandbrakeでの4K/60p→フルHD/30pトランスコード処理。容量が821MBのソースファイルで、CPUによるソフトウェアエンコードを利用した。

4K/60p→フルHD/30pに変換(ソフトウェアエンコード)

ご覧の通り、4GB環境と8GB環境では8GB環境のほうが短時間で処理を終えている。4GB環境の1分59秒に対し、8GB環境は1分25秒で済んでおり、その差は34秒にもなる。

 もう1つはRAW現像。Lightroom Classicを用い、20ファイルを用い、シャープネスをメインにいくつかの補正をかけているが凝ったことはしていない。4GB環境は45秒、8GB環境は27秒だった。

20枚の写真をRAW現像&補正処理

 4GB環境と8GB環境でどのくらい処理速度が違うかを計算してみると、Handbrakeでのトランスコードでは1.4倍、Lightroom ClassicでのRAW現像では1.7倍程度という結果だ。

 クリエイティブ業務では当然、潤沢なメモリを搭載したPCを導入しているだろう。ただ、現在はアマチュアの方でも簡単な動画編集やRAW現像を行なうことも多い。ドライブレコーダや家族旅行の動画を編集・トランスコードして保管したり、家族写真をRAWデータで撮りJPEGで保管している方も多いと聞く。そのため、十分な量のメモリを搭載することのメリットは大きい。

生産性を妨げないためにもメモリをケチるのは得策ではない

 このように、映像(早送りもしていないので体感に近いだろう)でメモリ4GBと8GBのPCでの違いを明らかにしてみた。

 メモリが4GBでもWindows 10は使える。ただし同じ作業をするにしても時間がかかったり、あるいは固まったようになったりと、とても快適とは言えない。特にクリエイティブ系のアプリでは、時間がかかり過ぎて作業を途中で中断してしまうかもしれない。

 そのため、これからPCを購入しようと考えており、ある程度長く使っていこうという方には8GB以上のメモリを積んだPCを選ぶことをおすすめしたい。

 もしくはすでにPCがある人の場合は、デスクトップPCなら一部のディスプレイ一体型モデルを除けば大半がDIMMスロットにメモリモジュールを挿す構造なので増設は難しくない。一方でモバイルノートはメモリ換装に対応していないものがほとんどだが、15.6型以上のスタンダードノートやゲーミングノートではSO-DIMMスロットを採用しているものが多く、増設して8GBにするか、4GBのメモリを8GB品に換装することができる。

 ただし、「8GBにしたからWebサイトを50個開いても大丈夫」と解釈するのは間違いだ。使用中に開いているアプリがWebブラウザだけということはないだろうし、途中でウイルススキャンやソフトウェアアップデートのようなバックグラウンドタスクが起動するといったこともある。実際、検証でタブを50個開いた際のメモリ使用可能量は8GBでもほぼ天井に達していた。

 なお、今回はメモリがボトルネックとなる状況を紹介したが、より古いPCではCPUやHDDといったストレージが原因ということもあり、メモリを増設すれば全てが解決するとは限らないので注意されたい。とは言え、少なくとも4GBを超えるメモリを搭載すれば、快適さが増すのは間違いないはずだ。