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3万円と10万円のChromebookでどれくらい差が出るのか?ブラウザやアプリで速さを比較検証!

ASUS Chromebook Flip CX5(CX5500)

 Chromebookは低スペックでも比較的動作が軽く、3万円程度で買える抑えめの価格が、ユーザーに支持される理由の1つとして挙げられる。ただChromebookにも高性能なCPUを載せた10万円クラスの製品もある。それぞれどの程度の性能差があり、快適度を左右することになるのか、気になる人は多いだろう。

 ここではCore i5およびCeleronを搭載するChromebookを用意し、様々な用途でどれくらい性能の違いが出てくるのかを検証している。

Core i5搭載で10万円、Celeron搭載で3万円のChromebookを比較

 今回はASUSから2種類のChromebookを借用した。1台目は高性能モデルの「Chromebook Flip CX5(CX5500)」。ヒンジが360度回転する15.6型モデルだ。Core i5-1135G7搭載で4コア8スレッド動作、ブーストクロックは最大4.2GHz。メモリはLPDDR4Xで8GB、SSDはPCI Express 3.0 x2接続のものを採用している。実売価格は10万円前後だ。

Core i5搭載Chromebook
ヒンジが360度回転し、タブレット型としても利用できる

 もう1台の低価格モデルは「Chromebook CX1(CX1500)」で、15.6型のクラムシェルモデルだ。CPUはCeleron N3350で2コア2スレッドとなり、CoreではなくAtom系統のCPUとなる。クロックは最大2.4GHz。メモリはLPDDR4で4GB、ストレージはこのクラスで一般的に用いられるeMMCを採用している。実売価格は3万円前後だ。Chromebookとしてはこちらの方がボリュームゾーンと言える。

Celeron搭載Chromebook
クラムシェル型でタッチ非対応

 両者のスペックの違いは下表の通り。ディスプレイの解像度や無線LANの規格も異なる。

【表】検証機の主な仕様
Chromebook Flip CX5(CX5500)Chromebook CX1(CX1500)
CPUCore i5-1135G7
4コア/8スレッド
2.4~4.2GHz
Celeron N3350
2コア/2スレッド
1.1~2.4GHz
メモリLPDDR4X 8GBLPDDR4 4GB
ストレージSSD 256GB(PCIe 3.0 x2)eMMC 64GB
ディスプレイ15.6型
1,920×1,080ドット
15.6型
1,366×768ドット
タッチ操作
ネットワーク機能Wi-Fi 6Wi-Fi 5

 なお、Windows PCでのCore i5とCeleron搭載機について、以下の関連記事で検証しているので、興味がある方はそちらもご覧いただきたい。

3倍の価格差はベンチマークスコアで3倍以上の差に

 検証は動画を使った横並びの比較も行なっているが、まずはベンチマークアプリを用いた性能差を紹介していく。最初はULの「PCMark for Android Benchmark」だ。

 以下の「Work 3.0 Performance」は、Webページの表示、動画や写真の編集、ドキュメントファイルの操作、データの解析といった動作からスコアを導き出すベンチマークとなる。

基本性能の差はおよそ3倍

 Core i5搭載のChromebook Flip CX5(CX5500)が15,567で、Celeron搭載のChromebook CX1(CX1500)が5,327だった。価格差が3倍程度ある両者だが、そのスコアもおよそ3倍弱の開きが出ているので、非常に分かりやすい結果となった。

 次のStorage 2.0のベンチマークは、搭載するストレージのアクセス速度などからスコアを算出している。アプリやファイルを開いたりといった面に関わってくる内容だ。

 結果は、Core i5搭載機が59,311で、Celeron搭載機が12,982だった。前者はSSD対eMMCという違いが大きく出ている。このSSDの接続インターフェイスはPCI Express 3.0 x2なので理論値としては2GB/s出る。eMMCの方はバージョンは不明なものの、eMMC 5.1でも400MB/sあたりだ。およそ4倍強の差が付いているのはこうした性質の違いからだと分かるだろう。

 最後に、CPU性能を計測するGeekbenchを試してみた。まずMulti-Coreスコアを見ると、Core i5搭載機が5,139、Celeron搭載機は513で10倍もの開きがある。Single-Coreスコアも前者が1,245、後者が267で、4.7倍程度の差が付いた。

 3つのベンチマークから、価格差が素直に性能となって現れていることが分かっただろう。

Chromebookの体感差をチェック。Core i5 vs. Celeronで比較

 今回の動画を使った検証では少し特殊な機材を用意してみた。それは業務用KVM(PC切替器)で知られるATENの製品で、8ポートに対応したモデル「CS18208」だ。

 なぜKVMを用意したのかというと、動作のタイミングを合わせるのが難しいからだ。以前の検証では、複数台を個別に撮影し、マウスクリックでカーソルが変化したようなタイミングをトリガーにし、編集ソフトのタイムライン上で位置を調整していたが、今回は業務用KVMで実装されている「ブロードキャストモード」でこれを解決した。

複数台に同じキーボード操作を送信できるATEN製のブロードキャストモード対応KVM「CS18208
ファームウェアアップデート機能やラックマウント用のステー、管理画面を備えるなど一般向けのKVMとは異なる

 KVMは通常、2台以上のPCを、スイッチで切り換えながら1組のキーボード/マウス、ディスプレイで使用するものだ。つまり、キーボードとマウスの操作はスイッチで選択した1台のPCに送信する1対1の関係だ。

 これに対し、ブロードキャストモードはキーボードの操作(マウスの操作には非対応)をKVMに接続されたすべてのPCに送信する。そのため、1対多の操作が可能になる。本来はサーバー管理向けの機能なので、数あるKVM製品の中でも上位モデルのさらに一部モデルが対応する程度だ。

 2系統の映像を同時にキャプチャする術もなかったので、今回はビデオカメラで撮影している。先に挙げた以前の検証と比べると表示画面の細部がやや分かりづらいが、動作についてはおおむね把握できるのでそれでご了承いただきたい。

【動画検証1】Webブラウザで複数のタブを開く

 最初のテストは、ChromeのブックマークフォルダにインプレスのWebサイトの17チャンネルを登録し、フォルダ内のブックマークを一括で開くというものだ。

 スマホなどでも同じだが、このような大量のWebサイトを開くテストはメモリ容量やネットワーク速度の影響が大きく、加えてJavaScriptやCSSの処理のためにCPU負荷も十分にかかる。以降同じだが、映像では上がCX5500(Core i5搭載)、下がCX1500(Celeron搭載)だ。

【Webページを開くテスト】

 実際の動作を見ると、Webページ表示に要する時間はかなり差がある印象だ。Wi-Fi 6対Wi-Fi 5というネットワーク速度でも差が付くが、Webサイトを表示する際にはCPU性能も影響する。そしてタブ数が多い場合はメモリ容量の影響も大きい。Celeron搭載Chromebookといった低価格モデルを利用する場合、開くタブの数に注意した方がよいだろう。

【動画検証2】クラウド上のExcelファイルを開く

 続いてはクラウド(Googleドライブ)上にExcelファイルを用意し、それをExcelアプリで開いてみる検証だ。1,030行32列にデータが入力されており、それを元にグラフを2つ作成するという内容になる。

 Excelファイルは203KBなのでそこまで大きなサイズではない。そのため、ネットワーク速度の影響は先のテストよりも小さいと思われる。おそらくメモリ上に展開されても容量的には問題ないだろう。大きな差が付く要因は主にCPUになるはずだ。

【Excelファイルを開くテスト】

 KVMのブロードキャストモードを利用しているため、コマンド自体は同時に実行されているはずだが、Celeron搭載機にはワンテンポの遅れがあった。そしてワークシートが表示されるまでの時間はCore i5搭載機が2.46秒に対してCeleron搭載機は5.14秒を要した。

 小サイズのファイルならこの程度の差で済むが、業務で用いるような大きなデータではこの差がより大きくなるだろう。表示にかかる待ち時間は何も生み出さない無益な時間だ。ビジネスでChromebookを活用したいなら、Celeron搭載機はあまりおすすめできない。

 おまけとして、同じファイルをGoogleスプレッドシートでも開いてみた。Celeron搭載機は先のExcelの時よりも画面表示までの時間がかかり、Core i5搭載機の1.09秒に対しCeleron搭載機は6.58秒を要している。やはりCPU能力の差が業務処理には大きくのしかかることが分かる。

【Googleスプレッドシートを開くテスト】

【動画検証3】Googleスプレッドシートでグラフを作成

 この流れでGoogleスプレッドシートからグラフ作成を試してみた。Core i5搭載機は0.29秒、ほんの一瞬でグラフが表示された。このときのCeleron搭載機は最初のメニュー画面のままでまだ次の動作にも移っていない。

 そしてCeleron搭載機でグラフが表示されたのは2.22秒だった。時間として見れば2秒少々はたいした時間ではないのだが、2台を比べてしまうとCeleron搭載機の遅さが気になってくる。

【グラフを作成するテスト】

【動画検証4】SDカードからファイルをコピーする

 最後はmicroSDカードに保存した計77ファイル、500MBの写真をChromebookのダウンロードフォルダにコピーする処理に要した時間を比較した。これもワンテンポだけCeleron搭載機の方が遅いが、12.05秒対15.22秒なのでSSD対eMMCというストレージ本来の速度差よりも体感上の差は小さいという結果になった。この使い方では、前述したPCMarkのストレージの計測結果ほど差は出ないようだ。

【ファイルをコピーするテスト】

価格による性能差は大きいが、何を優先するかで選ぶのが大事

 ここまで高性能と低価格という2つのChromebookを検証してきた。比較動画からも分かる通り、上のCPU載せている方が各種処理が格段に速いことが示されている。ただし、使用目的によってはそこまでの性能が必要ないということもあり得る。

 例えば、比較動画は載せていないが、それぞれのデバイスでYouTubeなどをストリーミング再生した場合、優位な差は出ておらず、Androidタブレット的にWebページを見たり、動画を見たりという使い方であれば、Celeronで十分と言える。

 一方で、Chromebookを使ってWeb会議をしつつ、平行してほかの作業もするというマルチタスクな処理となると、CPU性能やメモリの容量が貧弱なCeleron搭載機は難しいだろう。そこは素直にCore搭載機を選ぶべきだ。CeleronはGPU性能も低いので、ゲームを動かすのにも向いていない。

 低価格モデルの多さが魅力のChromebookだが、自分の使い方に合ったモデルを考えて選ばないと、思った以上に使い勝手が悪いということになりかねない。無駄な買い物をしないように注意したいところだ。