特集
メモリ4GBはさすがにもう限界か。メモリをケチってはいけない理由を4GB~32GBで徹底比較
2022年7月30日 06:13
今でこそ、PCではメモリ8GBが最低限の容量となりつつあるが、数年前の低価格モデルでは4GBが標準的だった。PCの買い換えサイクルは一般的に3~5年と言われるほど長いため、今なお4GBの環境でストレスを感じつつPCを操作をしているという人は、それなりにいることだろう。
ここでは4GB、8GB(4GB×2)、16GB(8GB×2)、32GB(16GB×2)という4パターンのメモリ構成を用意し、容量差によってさまざまな処理にどのような違いが出てくるのかを示していく。現在4GB環境を使っている人や、これから購入するPCのメモリ容量をどうすべきか知りたい方は、ぜひ参考にしてほしい。
(1) 【検証1】シングルタスク処理の性能差
(2) 【検証2】マルチタスク処理の性能差
(3) 【検証3】ファイルコピーの速度差
(4) 【検証4】コンテンツ制作の速度差
(5) まとめ - 十分なメモリを用意しないと後悔することに
検証パートでは、それぞれの作業速度の違いが一目で分かるように、画面を4分割した動画を貼っているので、クリックしてその違いを確認されたい。
なお、一般向けPCでのメモリモジュールは、2枚組または4枚組といった同容量かつ偶数枚でのデュアルチャネル構成で利用するのが基本だ。ここでは4GB単体の構成のみシングルチャネルで使用していることに注意してほしい。
細かい説明は避けるが、なぜ偶数枚で使うのかというと、たとえば、8GBのメモリを単体で使うのと、4GBのメモリを2枚で使うのとでは、DDRメモリの特性上、後者の方が高速になるからだ。
これはデュアルチャネルにより、複数枚のメモリに対し同時にアクセスすることで、メモリの転送速度を高められるためで、ざっくりと言えば、2枚単位なら1枚時の2倍の転送速度が得られるイメージだ。
検証では、マウスコンピューターのデスクトップPC「DT5」を使用し、メモリを差し替えてテストを行なった。ただし、編集部で用意した各メモリは動作クロックがバラバラだったため、マザーボードのUEFIメニューからDDR4-2400に統一して動かしている。
DT5はCore i5-11400を搭載しており、比較的性能は高い。そのため、ここでの検証はワーストケースではなく、限りなくベストケースに近いものと捉えていただきたい。
【検証1】シングルタスク処理の性能差
メモリの容量が異なる4パターンの環境をできるだけ均等に測るため、検証ではWindows 11に標準搭載されている自動化ツールの「Power Automate」を利用した。Power Automateを使えば、Photoshopに写真を取り込み、色調補正やフィルタをかける、Excelファイルを複数開いてコピー&ペーストしながらグラフ化するといった一連の流れが自動化できる。
Power Automateはフローをクラウドに保存し、実行の際にダウンロードを行なう。このダウンロード時間に若干の差があるため、映像の同期はフローのダウンロード後、準備を経て「実行」に移ったタイミングとしている。それではメモリ搭載量による性能差を映像によって見ていこう。
Webブラウザでの違い
まずはアプリケーション単体で容量の差を比較をしていきたい。最初はWebブラウザだ。このフローでは、Edgeの新規タブを開く、スクロール、戻る、タブを切り換える、YouTube再生などを織り込んだ。最終的に13のタブを開いた後、最初のタブに切り換え、以降13タブ目まで順次タブ切り換えを行なった。
まず、Edgeが起動する時点で4GB環境はわずかに遅れているが、2つ目のタブを開くタイミングでこの差はより明確に現われた。 以降、4GB環境は常にほかの3つの環境よりもワンテンポ遅れている。さすがに数サイト程度なら4GBでも余裕にメモリ内に収まるはずだ。ここでの遅れは4GB環境のみシングルチャネルであることが原因と思われる。
中盤では、新規タブにWebサイトを読み込む処理が完了する前に直後のスクロールが始まってしまうことがある。4GB環境ではより顕著だ。 フローの最後は、YouTubeを開いた後、停止せずそのままタブ切り換えを順繰り行なっている。
4GB以外の環境では瞬時にタブが切り換わっていくが、4GB環境は2分37秒や2分42秒あたりなど、一瞬白いブランクタブ状態を挟んでからサイトが表示される。 スクロールに関しては現在開いているサイトなので、シングルチャネルであることが影響していると思われるが、 タブ切り換えについては4GBでメインメモリから溢れる状況となっている。これは、一部のデータをより低速のストレージ(SSD)へと退避(仮想メモリ)させ、必要なタイミング――つまりタブ切り換え時に呼び戻すことで、遅れが生じていると考えられる。
Excelでの違い
次は業務用途を想定して、Excelで動作の違いを試してみた。ここでは比較的データ量が軽いものを使っている。
まずワークシート5つほどのグラフ作成用ファイルを開き、次にデータとなるCSVファイルを開く。CSVファイルのデータをグラフ作成用ファイルのワークシートにコピーしていき、体裁を整える操作を挟んでグラフを作成していくといった内容だ。
大差はついていないものの、フローが進むにつれて4GB環境の遅れが現われる。このフローはデータ量的にメインメモリの範囲内で処理できていると思われるが、4GB環境だけシングルチャネルであるため、処理が遅れているのだろう。
Webブラウザを終了する
もう1つパターンを変えたWebブラウザテストを行なった。検証をしていた中でアプリケーション終了時のレスポンスが各環境で違うということに気づき、それを検証した内容だ。複合テストとなっているので、いくつかポイントに分けて解説する。
このフローでは最初にインプレスのWebサイトの17チャンネルを各タブで開いた。先のブラウザテストと異なるのはスクロールやタブ切り換え操作をしていない点と、ウエイトを挟んでいない点だ。ウエイトなしというのは、自動化ツールのPower Automateのタイミングに任せているのだが、見たところ現在のタブをある程度表示できた後に次のタブの処理に移っている雰囲気だ。
最初のタブを開くまではほぼ同時。ただし、最後のタブを開くころには4GB環境とそのほかでは大きな時間差が生じている。 残り3つの環境にも多少の差が出ているが、インターネット接続速度が常に一定ということを考慮すれば誤差の範囲と言えるだろう。 4GB環境とそのほかでは約20秒の差だ。
すべてのタブを開いたところで一度1番目のタブに戻っている。これはタブ切り換え時の再表示速度を見るためのものだ。 4GB環境を除く3つの環境は一瞬だ。スローで確認しても、白背景を挟まず表示が切り換わっていた。一方、4GB環境は2秒ほど白背景の時間があった。
5秒のウエイトを挟み、もう一度最後のタブに切り換える。その直後、ウエイトなしですぐさまアプリケーションの終了(Alt+F4)を送信している。 4GB環境を除く3環境はタブ切り換えから1秒以内でブラウザを終了できているが、4GB環境は4秒を要した。
何かしらのアプリケーションを使っていて、ウィンドウ右上の閉じるボタンを押しても反応がない、少し遅れるといった経験はないだろうか。これもメモリ不足を疑ってよい事例と言える。
【検証2】マルチタスク処理の性能差
マルチタスク時ではどうか。現在のPCの使い方として、アプリケーションを1つだけ開いて使うということはまずない。なにかを作成するにしても、複数のウィンドウを切り換えながら、時には情報等をブラウザなどに表示させながら行なうのではないだろうか。そこで実際のPC利用時の環境を想定したテストを用意してみた。
フローを紹介すると、以下のような流れだ。
- エクスプローラで写真フォルダを開く
- Edge(ブラウザ)を起動してインプレスの各チャンネルをタブに開く
- Excel処理(先のテストと同様のもの)→ブラウザのタブ切り換え
- 写真表示
- ブラウザのタブ切り換え
- ブラウザを閉じる
- Excelを閉じる
- エクスプローラを閉じる
Edgeでタブを開くシーケンスは、途中まで先の「Webブラウザを終了する」テストと同じだ。 16GB環境と32GB環境は平均20秒強、8GB環境は25秒程度、そして4GB環境は50秒超を要した。 4GB環境だけほかより特出して遅いのはこれまでと同様である。
以降は各操作間に0.5秒のウエイトを設定している。これまでのテストと比べると矢継ぎ早に次の処理が実行されるため、性能を引き出せていない環境では処理が追いつかなくなる。
4GB環境は特にこれが多発している。 4GB環境では1分55秒から始まるタブ切り換え時、真っ白のブランクタブ状態になるのはもちろん、サイトが表示されぬまま次のタブに切り換わってしまうことが続く。
さらに、この処理的に重い状態が続く2分6秒からの写真表示シーンでは、Enterキーのコマンドが速すぎたようでエクスプローラ画面が最前面に表示され、以降はただエクスプローラ上をカーソルが移動するだけだった。
その後、各ウインドウを閉じていく操作が続くが、上記のとおり時間ではなく操作としてほかの環境とズレてしまっているため、フォトアプリ画面がポツンと残る状態になっている。
ただし、 8GB以上なら大丈夫だったかというとそうでもない。写真表示シーケンスでは写真を開いた直後にウエイトなしでズームをしている。16GBも同じようにだめで、ちゃんと実行できているのは32GB環境だけだ。
そして、 最初の写真(夜のTAIPEI 101)を開いた直後が問題だ。32GB環境では1分25秒、16GB環境では1分29秒、8GB環境では1分33秒部分を見比べていただきたい。しっかりズームできているのは32GB環境のみ、ほか8GB、16GB環境はズームをスキップして次の写真(夜の芦ノ湖)に移ってしまった。
最後にすべてのフローを完了するまでに要した時間を比較してみよう。
もっとも速かった32GB環境は117秒で処理を終え、16GB環境は121秒、8GB環境は125秒、そして4GB環境は160秒だった。 Webブラウザでタブを開くシーケンスでも所要時間を比較したが、実はそれ以降も少しずつ処理時間の差が開いていたことを意味している。 メモリ容量が多いほど速く処理を終えているというのが今回の結果から言えることだ。
【検証3】ファイルコピーの速度差
ファイルの転送速度を比較した。シナリオとしては、まず総容量5GBとなる複数の写真データのコピー、次に単一の映像ファイルで5GB、10GB。15GBを用意した。元ファイルは本体SSDに、コピー先は外付けのSSDとしている。
まず写真フォルダ(トータル5GB、430ファイル)のコピー。4GB環境のみほかの環境よりも一瞬遅かった。
次に映像ファイルのコピー。5GBのファイルでは4GB環境に一瞬の遅れがあるようには感じられる。10GBのファイルでは明らかに進捗バーが消えるタイミングが遅くなった。最後の15GBは4GB環境だけさらに一呼吸遅れている。
このように、 ファイルコピーのような操作でも4GB環境はほかよりも遅かった。そして取り扱うファイル容量が大きいほど差が開いた。
ただし、 ファイルコピーと言っても5/10/15GBのファイルをいったんすべてメモリに取り込んでから行なうわけではなく、10GBのファイルのコピー時、8GB環境がほかより遅かったということはない。
このシナリオはほかのアプリケーションを起動していないことからも、メモリを溢れる状況には陥っていないと推測される。 4GB環境がほかよりも遅かったのはシングルチャネルであることが影響したのだろう。
では、これをマルチタスク環境で、十分にメモリを消費している状態から行なったらどうだろうか。先と同様、4つのExcelファイル、17のタブを開いたEdge、エクスプローラに写真フォルダを表示した状態から複数ファイルのコピーを行なってみた。
マルチタスク環境かつメモリを消費した状態では、8GB以上の環境はほぼ同じようにコピー処理ができているのに対し、4GB環境では50%ほどコピーが終わったところで、3~4秒に渡って極端なコピー速度の低下が見られた。 今回はメモリ不足が生じていると考えてよいだろう。最終的に4GB環境はほかの環境から7秒遅れでコピー処理を終えた。
【検証4】コンテンツ制作の速度差
ここまでのシナリオでは、4GB環境が遅い、あるいは操作が追いつかなくなるといったことはあったものの、アプリケーション自体はしっかり動作している。ただし、 ここでの検証では、4GB環境ではそもそもアプリケーションが起動しない、アプリケーションの挙動がおかしいといった2つの症状が起きている。
Photoshopでのメモリ容量差
まず、メモリ不足で挙動がおかしくなったのはPhotoshopだ。 そもそも現行Photoshopのシステム要件を見ると、メモリは8GB以上とされている。これを無視したらどうなるだろうか。
Photoshopの起動にかかる時間自体でかなり差がつくため、このフローではあらかじめ起動済としている。フローの流れとしては以下の通りだ。
- 5,184×3,888ドットのJPGファイルを開く
- レイヤー複製
- シャドウ・ハイライトの適用
- レベル補正の適用
- レンズフィルタの適用
- 自然な彩度の適用
- 画像操作の適用
- レイヤーの表示/非表示を切り換え
4GB環境はレイヤー複製を行なった段階で挙動が怪しくなり、シャドウ・ハイライトの適用に進んだところでPhotoshopがクラッシュした。
ほかの3つの環境が問題なく最後まで完走していることからも、メモリ容量を除くハードウェアに問題がないことは明らかだ。 つまり「システム要件を満たさない場合、アプリケーションが不安定になる」可能性がある。
実は、画素数の小さなJPEGファイルを用いたり、ごくシンプルな補正処理のみに限定したりと工夫をすれば4GB環境でもなんとかなる(こともある)。ただし、それでは何のためにPhotoshopを利用しているのか分からない。
また、 膨大なレイヤー数を扱ったり、ほかのアプリケーションによってメモリを消費した状態から操作しようとしたりすると、たとえ8GB以上搭載するPCでもクラッシュすることがある。 システム要件の8GBというのは最低要件だ。やりたいと思う処理内容や使用環境に応じて必要なメモリ量は変わってくる。
DaVinci Resolve 17 Studioでのメモリ容量差
もう1つ、 4GB環境ではアプリケーションの起動すらムリだったのが動画編集アプリのDaVinci Resolve 17 Studioだ。
フローに関しては簡単に編集済みのプロジェクトを用い、プレビュー→レンダリングする内容だ。複雑なプロジェクトではないため、プレビュー再生に関しては8GB~32GB環境までほぼ同等だ。
ただし、 レンダリングに関しては8GB環境が16GB、32GB環境からワンテンポ遅れた。わずかだが8GB環境でもメモリ不足だったのかもしれない。
とは言え、今回のプロジェクトは短く単純なものだ。 実際に映像制作をするなら最低でも16GB、性能を引き出すなら32GB以上搭載していたほうが安心なのではないだろうか。
さて、従来から、クリエイティブ系アプリケーションでは十分なメモリが必要とは言われてきたが、この2つの検証からもこれは正しいと言えるだろう。
もちろん、クリエイティブ系アプリケーションと言っても、重いもの軽いものなどさまざまだが、十分なメモリを搭載していたほうがクリエイティビティを発揮できる。先のマルチタスク検証のように、何かを参考にしながらとか、ファイル一覧を表示させながらなど、ほかにもメモリを消費する要素は多いからだ。
また、クリエイティブ系アプリケーションに限らず、特定のアプリケーションで調子が悪い、特定の操作で調子が悪いといったことはPCを運用していればよくあること。もちろんほかに原因がある場合もあるが、メモリ不足の可能性も疑ってみるとよいだろう。
まとめ - 十分なメモリを用意しないと後悔することに
今回はより実際の利用に近い形での検証を行なってみた。本稿作成にあたり、今現在まだメモリ4GBのPCが販売されているか調べてみたが、ビジネス向けモデルを中心にまだ多くのモデルが存在しているようだ。
特定のWebサイトを見るだけなど、用途が低負荷な処理のみで済む環境で使うなら、メモリが4GBでも問題は起きないかもしれないが、そうではない場合、価格につられてメモリ容量をケチってしまうと、間違いなく後悔する。
今現在、容量単価が安いのは8GBモジュールだ。必要なメモリ容量が分からない方は、8GBの2枚組、計16GBを確保しておくと将来的にも安心だ。特に大抵あとから拡張不可なモバイルノートは要注意である。そうしたモデルを検討する際は可能な範囲でメモリの多いものを選択したほうが、快適なPCライフを過ごせるはずだ。少なくとも4GB環境はまったくおすすめできない。