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第8回: ASUSのモンスターノート「ROG G703GI」の能力を宋氏が3D CGワークステーション視点で検証

Core i9-8950HK、GeForce GTX 1080搭載のASUS製ノート「ROG G703GI」

 本連載では、これまで5人のクリエイターにASUSのクリエイター向けノートPC「ZenBook Pro 15」を使ってもらい、異なるジャンルの視点から製品の性能の高さや使い勝手の良さを体感してもらった。しかし、ASUS製品でクリエイター向けとなるのはZenBook Pro 15だけではない。クリエイターのプロフェッショナルな業務に対応できる製品ラインナップを多数取り揃えている。

 本稿では、ASUSの超ハイエンドゲーミングノート「ROG G703GI(型番:G703GI-I9G1080)」(以下、ROG G703GI)を用い、Autodesk製3D CGソフト「3ds Max」でプロフェッショナルな3D CG業務に耐える性能を持つかどうかを、3D CGテクニカルコンサルタントの宋 明信氏に検証してもらった。

ROG G703GIと宋明信氏(略歴:長年Autodeskにて、ソフトウェア エンジニアを担当し、とくに3ds Maxを中心にユーザー向けの技術啓蒙や支援を行なう。PCやビデオカードとソフトウェアとの相性テストなども担当。現在は独立し、ウイニービレッジにおいてコンテンツ制作会社に対しての3D CGの技術支援やソフトウェア開発などの業務を行なっている)

GPUはGeForce GTX 1080、CPUは独自オーバークロックで全コア4.8GHz駆動のCore i9-8950HK

 ROG G703GIは、「ROG」という製品ブランドが示しているとおり、基本的にはゲーマー向けの製品。つまり、ゲームを"プレイ"するために開発された製品だ。しかし、ゲームが動作するということは、その開発を行なうのに必要な仕様も満たしていると言ってもいい。じっさい、ゲーム開発用にゲーミングPCを購入するユーザー、企業も少なからずいる。

 業務用PCには性能以外に、信頼性や安定性も求められる。そのため、たとえばNVIDIAだと、ワークステーションや開発向けGPUである「Quadro」シリーズでは、各種開発向けソフトの動作検証を行なったり認定を取得したりしており、信頼性や安定性を確保している。QuadroとGeForceで、GPU自体はほぼ同じ仕様、性能でも価格に開きがあるのは、その信頼性・安定性担保によるものと考えていい。

 だが、基本的にはQuadroとGeForceは、チップが同じなら、性能・機能はほぼ同等だ。そのため、中小規模のソフトウェアメーカーでは、Quadro機ではなくGeForce機を購入することで経費を削減し、浮いた分を人件費やそのほかに充てるということもあるのだ。

 そういった事情で、ゲーム開発にかぎらず、建築、広告、映画など3D CGを扱う幅広いジャンルの業務でゲーミングPCが使われるケースを想定し、今回、宋氏にROG G703GIを試してもらった。

 本製品は、ノート型だがきわめて高い性能を持つ。CPUには、6コア/12スレッドのCore i9-8950HKを採用。このCPUは、スペックシートを見ると最大動作周波数は4.8GHzとなっているが、6コアすべてにTurbo Boostがかかったときの周波数は4.3GHz止まりとなる。しかしROG G703GIは、オーバークロック機能により、6コアすべてで4.8GHzが出せるようになっている。

 GPUは、いまでこそ最上位の座をRTX 20シリーズに譲ったものの、いまでも十分ハイエンドとして動作するGeForce GTX 1080を採用。また、この高速なGPUの性能を十分に発揮させるため、液晶にはリフレッシュレート144HzでG-SYNC対応のフルHDパネルを採用している。

ROGのロゴが入った金属素材の天板
本体右側面
SDカードスロット、USB 3.1×2を装備
本体左側面
Ethernet、Thunderbolt 3、USB 3.1、音声入出力を装備
キーボードは10キーつきで、RGBバックライトを装備
背面に電源×2、Mini DisplayPort、HDMIを装備

 そのほかの仕様も豪華で、メモリは2,666MHz駆動のデュアルチャンネルDDR4を64GB搭載。ストレージは、RAID 0構成の512GB(256GB×2) NVMe SSDとハイブリッドHDD 2TBを採用する。

 デスクトップでも、なかなかここまでのものはないという構成になっている。

価格性能比ではデスクトップワークステーションを凌駕

 ということで、3D CGテクニカルコンサルタントの宋氏に、検証用データを使ってROG G703GI-I9G1080で3ds Maxを動かし、性能を見てもらった。68万ポリゴンのキャラクターを動かしてみたところ、ストレスなく視点を変えたり、拡大縮小できた。格闘ゲームだと1キャラクターで10万ポリゴン前後なので、68万ポリゴンのキャラがスムーズに動くということは、高い性能を意味する。

68万ポリゴンのキャラもスムーズに動かせる

 じっさい、宋氏は本製品を検証していて何度も「速いなぁ」と驚くシーンがあった。業務で利用するデスクトップワークステーションと並ぶ体感性能があり、プロが仕事で使ってもストレスを感じることはないだろうとのこと。本製品は実売価格で60万円前後するが、それでも同等性能のワークステーションに比べるとはるかに安価なので、価格性能比で言うとデスクトップワークステーションを優に超える。

 また、本製品はモバイル向けではないものの、持ち運び可能なため、クライアントのところに持って行って作品の仕上がりを直接見せたり、必要に応じてその場で修正もできる。

 さらに、バッテリが一種のUPSとして機能する点も見逃せない。複数人が別のマシンで負荷のかかる作業を同時に行なった場合、小規模なオフィスだと電力不足でブレーカーが落ちたり、そこまでいかなくともマシンが落ちる可能性もある。しかし、バッテリつきノートPCなら、そういった事態でも停止することなく稼働を続けられるのだ。

3ds MaxでFluid(流体)効果を作成してみよう

 3D CGはさまざまな表現が可能で非常に多くの分野で活用されている。おそらく一般ユーザーが"3D CG"と聞いて、まっさきに思いつくのはキャラクターなどのモデリングだろう。もちろん3ds Maxにはモデリング機能もあるが、今回は少し趣向を変えて、3ds Maxに搭載されている3Dシミュレーション機能を使った流体効果の作成を宋氏に実演してもらった。

 3ds Maxは、30日間の無償体験版が用意されているほか、学生なら無償で3年間利用できる。インストールして下記の手順のとおり実行すれば、シーンに溶け込んだリアルな流体のレンダリングができる。要領を掴んだら、パラメータを変更して、違う表現を試して、3D CGの可能性を感じてほしい。

右側コマンドパネルからSphere(球体)を選択してビューポート内にてマウスドラッグで作成
コマンドパネル内のプルダウンリストからFluids(流体)を選び、表示されたボタンからLiquid(液体)をクリックして画面上でFluidsアイコンを作成。作成したアイコンを球体の真上に配置
流体アイコンを選択したまま、右側の左から2番目のModify(修正)タブを選びSimulation View(シミュレーションビュー)をクリック。Simulation View(シミュレーションビュー)ダイアログウインドウが現れる
ダイアログウインドウ内のAdd Colliders(コライダーを追加)内の[Pick(ピック)]をクリックしてシーン内の球体をクリック
後は下図の赤枠ののボタンを3つともオンに設定。最後に再生ボタンのような「計算開始」ボタンをクリック
しばらくするとアイコンから液体が流れ出し、球体に衝突。マシンスペックにもよるが、数分計算してるとこんな感じに。適当なところで停止ボタン(計算開始ボタン横)をクリック
Rendering(レンダリング)メニューから Environment..(環境設定)を開く
Environment Map(環境マップ)をクリックしてBitmap(ビットマップ)を選択
ファイルブラウザーが開くので、任意の360度パノラマ画像を選択(フリーのパノラマHDR画像はこちらで入手可能)
画面内の流体用アイコンを選択し、マテリアルエディターを開く。左側リストからPhysical Material(フィジカルマテリアル)をダブルクリックする
エディター内に表示されたマテリアルのラベル部分をダブルクリックして、右側に表示されたパラメータ内のリストからGlass(Solid Geometry)(ガラス-ソリッドジオメトリ)を選ぶ
Assign Material to Selection(マテリアルを選択へ割り当て)ボタンをクリック
画面上部ツールバー内にあるレンダリングボタンをクリックしてレンダリング計算開始
出力イメージ

これから3D CGクリエイターを目指す人へ

 最後に宋氏から、これから3D CGクリエイターを目指す人に向けたアドバイスをいただいた。

 宋氏「難しいことは考えずに、まずはソフトをさわってみることが大切です。画用紙にデッサンをする場合は鉛筆や絵の具などが必要になりますが、 3D CGソフトウエアといっても所詮はビジュアルコンテンツを作るための道具や画材にすぎません。表現したいイメージを、使える機能だけでもいいので何か具現化してみるといいですね。

 優れた絵画や映画などをその構図や動き、光の表現など意識して観察する癖をつけておくと自身の作品を作るさいにとても役に立つと思います」。