Creators Meet ASUS

第1回:皆が楽しみながら良いものを生み出す開発環境の構築 ~3D CGアニメーター内山晶氏編

 5人のプロクリエイターにASUSのクリエイター向け製品を体験してもらう本連載。第1回目は、株式会社ブヒスター代表取締役で3D CGアニメーターの内山晶氏に話を伺った。

内山晶氏
職歴と関わった作品。2010年5月~2014年8月:Tango Gameworks a division of ZeniMax Asia K.K.、「The Evil Within」/「Psycho Break」(リードアニメーター)。2007年10月~2010年5月:PlatinumGames Inc.、「VANQUISH」(シニアアニメーター)/「BAYONETTA」(シニアアニメーター)。2003年4月~2007年9月:Konami Digital Entertainment、「実況パワフルメジャーリーグ1、2」(リードアニメーター)

ゲームにはまるうちに「もっとこうすればいいのに」と思い、ゲーム会社の門戸を叩く

 若い頃から「カタチ」を作ることに興味があったという内山氏。大学では工学部で建築学を専攻した。当時はちょうどPCが普及し、建築の業界ではCADの3D対応が一般化しはじめたときだった。内山氏も、授業で3D CADを扱うようになり、必然的に3D CGにはまっていったという。

 「最初は3Dのモデリングにはまりました。モデリングって、木彫りとか粘土細工に近いイメージで造形が作れるのが楽しいですよね。(内山氏)。

 一方、普段の生活では、サッカーゲームにのめり込んでいた。

 「それこそ、彼女にゲームのディスクを割られるくらい、プレイしまくってました(笑)」。

 それでもゲームを止めることなく、次第にゲーム内での表現について「もっとこうすればいいのに」と思うことが増えた。なら、自分でやってやろう、と就職活動ではコナミを受け、見事合格。建築ではなくゲームの世界に入ることになった。「ただ、はまっていたのはサッカーゲームだったけど、最初に担当したのは野球ゲームだったんですけどね(笑)」。

キャラクターになりきって動きをデザイン。現場でのコミュニケーションを最優先

 タトゥーやピアスなど、強面で一見すると近寄りがたい雰囲気もある内山氏だが、インタビューには気さくに答えてくれた。仕事の現場でもコミュニケーションを最優先して作業を進めるという。

 現在は独立しているが、内山氏を含むブヒスターのスタッフは、クライアントとなるゲーム開発会社に常駐して開発を行なう。製作するのは3Dキャラクターのモーションだ。映画における役者がそうであるように、内山氏は、そのキャラクターの性格や人柄を考慮し、役作りをして動きをデザインする。

 ゲーム開発を統括するディレクターの指示にしたがってだけ動くのではなく、自らキャラクターモーションをディレクターに提案もしていく。ゲーム製作は、チームワークなので、ディレクターやキャラクターデザイナーと密にコミュニケーションしながら、1つ1つの動きを作っていく。

 昨今のゲームでは、俳優やスタントマンが動きを再現し、それをモーションキャプチャで取り込むことも多い。カットシーン(プレイヤーが操作を行なわない映画のようなストーリー映像)ではその動きがそのまま使われることもあるが、ゲーム内での動きについては、リアルさよりも、プレイヤーがキャラクターを動かしたときの手触りやテンポを重視し、モーションには手作業でかなり修正を入れるのだという。内山氏が俳優に動きを指示することもある。

 もう1つ、氏が大事にしているのが、開発環境の構築だ。企画・ゲームが面白くないと感じながら、命じられたものだけをただ作るのはクオリティやパフォーマンスに大きく影響する。

 ゲームキャラクターを動かすには、まず、ディレクターやプランナーの構想があり、続いてデザイナーがキャラクターを描き、アニメータがその動きを作り、プログラマーが動かすためのコードを書く。内山氏が受け持つのはアニメーションの部分だが、長年やってきたことで、デザイナーやプログラマーたちが使う、それぞれの「独自言語」も理解できるようになった。その能力を活かし、それぞれの間に入って調整役を行なうことも少なくないそうだ。

 いかにこのゲームが面白くなるか、スタッフが楽しく、面白くそれが作れるのか。良い作品を生み出すためにはこういった開発内部の環境作りが必然であり、それこそが、各々のパフォーマンスを最大限に引き出すために重要な、内山氏の役割でもある。

ZenBook Pro 15×MotionBuilder

タッチパッドとディスプレイが統合されたScreenPadを搭載したASUS ZenBook Pro 15

 内山氏は普段、Autodeskの「Maya」や「MotionBuilder」を利用している。国内では、3D CGソフトとしてMayaが主流だが、モーションキャプチャのデータを扱ううえでは、MotionBuilderが欠かせないという。

 今回、「ZenBook Pro」を使って、じっさいにMotionBuilderを使い、実データで作業を行なってもらった。「普段、業務ではデスクトップPCを使っています。いま、仕事でやるのと同じように、コントロールリグを操作してキャラクターを動かしてみていますが、このZenBook Proはノートでも性能にまったく問題はないですね。アニメーションの製作では、パネルの画質はあまりこだわらないんですが、とても綺麗なので、色にこだわる人たちには好まれると思いますよ」(内山氏)。

 「ScreenPadについては、たとえば自分が使うソフトのショートカット機能があると、入門者には便利だと思いますね。ただ、これに慣れすぎてしまうと、ほかのPCで作業するときに支障が出るかもしれないので、自分ではすぐには使わないかもしれません(笑)。すみません、ウソがつけないんで(笑)」。

大事なのは、作品を作る過程で自分が楽しめるか

 内山氏に、クリエイターとしての心がけを聞いてみた。

 「作品を作る過程で、自分が楽しめることですね」。スタッフが楽しんで作業できる環境作りにこだわる内山氏だが、自らも楽しめてこそ、より良い作品ができるのだと語る。

 そうやって自分たちが手がけたゲームが世に出て、TV画面に映し出されてるのを見たときに達成感を感じられるのが、この仕事の醍醐味だという。