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第2回:日本のTV業界にPremiereを導入した先駆者~映像エディター小林譲氏編

~ZenBook Pro 15のScreenPadはパラメータ操作にうってつけ

 5人のプロクリエイターにASUSのクリエイター向け製品を体験してもらう本連載。第2回目は、ドラマやCM、映画など幅広く活躍する映像エディターの小林譲氏に話を伺った。

小林譲(Jo Kobayashi Bellamy)氏
イギリスの美大卒業後、現地の制作会社にて3年間編集の下積みをする。2006年に帰国。大手ポスプロImagicaにてテレビ番組を中心に日本のキャリアをスタート。海外で取得したグローバルな映像センスと英語力で、ドラマ、音楽系、CM系へと活躍の幅を広げる。2017年に独立。フジテレビ、WOWOWの番組や、大手企業CMの編集も担当

日本生まれのイギリス育ち。映画にはまって映像の道に

 小林氏は日本の生まれで、12歳の時に家族とともにイギリスに移住。中学、高校、大学、そして社会人として3年間をイギリスで過ごした。10代の頃に映画にはまった小林氏は、幅広いジャンルの作品を見るが、とくに映像美のある作品に強く惹かれ、次第に映画製作に関わる仕事ができたらと感じるようになり、大学も美大へ進学、映像について学んだ。

 2006年に日本に帰国してからは映像プロダクションで最大手のイマジカに就職。最初の7~8年間はTV番組の編集を担当し、映像編集の経験を積みながら、仕事の幅を広げていった。その内、ドラマや映画の制作者から、映像エディターとして小林氏が指名で起用されることも増え、2017年には独立した。

 CMであれ、TV番組であれ、映画であれ、動画コンテンツの制作にはさまざまな工程があるが、そのなかで小林氏が受け持つのは、編集部分だ。基本的な作業内容は、不要な部分を削除したり、順番を入れ替えたりするカット編集と呼ばれるものだが、色味を調整したり、エフェクトをかけたりということも行なう。

 基本的には作品のプロデューサーやディレクターの意向をヒアリングしつつ、さまざまな加工を施し、伝えたいイメージや、ストーリー、メッセージに近づけていく。ときには小林氏から提案を持ちかける。そういう意味で、編集者とプロデューサー・ディレクターは作品を仕上げていくうえでのパートナーのような存在なのだと小林氏は語る。

日本のTV業界で先駆けてPremiere Proを採用

 カラーコレクションなどではBlackmagic DesignのDaVinci Resolveも使うが、編集でおもに使うソフトはAdobeのPremiere Proで、加工の必要があるときはAfterEffectsやPhotoshopも連携して使う。小林氏が映像に関わりはじめた頃は、すでにデジタル編集が主流となっており、当初からデジタルでの編集を行なっていた。

 プロの世界では、編集・製作にAvidのシステムやソフトが標準的に使われている。小林氏の学生時代もAvidを使えないと就職できないと言われていた。そんななか、アマチュア向けのソフトとしてAppleからFinal Cut Proが登場。安価だったこともあり、小林氏も利用をはじめた。

 クリエイティブ分野でのAppleの勢いもあり、氏がイギリスで就職したさいも、TV番組製作でFinal Cut Proを使ってみようという試みが広がり出始めていたころで、学生時代の経験を活かすことができた。それから数年して、日本に帰国したときも、国内のTV製作業界でもFinal Cut Proが使われはじめており、小林氏の経験が重宝されたのだという。

 他方、Premiere Proも当時はまだアマチュア向けという位置付けだった。機能面でもTV製作などには不十分な点があった。しかし、たまたま仕事でPremiereを使う機会があったこともあり、2013年頃、小林氏は国内のTV番組製作ではまだほとんど誰も使っていなかったPremiere Proを使用してみようという提案を行なった。結果としては、Premiere Proでも製作できることが確かめられた。

 いまでは映画「シン・ゴジラ」でも利用される(「シン・ゴジラ」。編集は庵野監督の製作スタイルを考慮してPremiere Proを活用参照)など、プロ・アマを問わずPremiere Proが使われてきている。

俯瞰目線で本当に必要な編集なのかを判断

 小林氏が作品を手がけるうえで心がけているのは、まず、監督など一緒に作業する人と同調し、そのビジョンを理解したうえで、作品を高めていくという点。

 同時に、俯瞰目線も持つようにしている。若いころは「監督に、いいところを見せてやろう!」という気持ちが強く、爪痕を残そうと、過剰な編集になってしまうこともあった。だがいまでは、その編集が、本当にその作品が必要とするものなのかを俯瞰的に判断するのを心がけているという。

 「僕が尊敬する演出家の人は、1週間かけて準備したものでも、納品直前にカットすることもあります。そういうとき、ほとんどの人は“せっかく作ったのに!”と言うんですね。もちろん、その“せっかく”が大事なときもありますが、俯瞰目線で本当に必要ではないと判断したときに削ることができる人はすごいなと思います」(小林氏)。

 監督は、作品に対する思い入れがもっとも強いだけに、ともすれば、よかれと思って行なう加工が、作品にとっての脂肪分になってしまうこともある。共同で作業を行ないながらも、“足し算”が間違っていないかを常に意識し、提案するのも映像編集者の仕事なのだという。

ZenBook Pro 15のScreenPadでのカラーホイール操作が思いのほか便利

ASUS「ZenBook Pro 15」

 今回、小林氏にASUS「ZenBook Pro 15」で4K30pの映像をPremiere Proで簡単に編集していただいた。小林氏が最初に感じたのは、4Kパネルによる精細さと発色の美しさだった。性能面では、4Kのシングルストリームなら、カラーグレーディングしながらのカット編集をストレスなくできることを確認できた。

 フルHDのタッチ液晶を埋め込んだタッチパッドとなる「ScreenPad」については、映像編集ソフトでは、さまざまなツールバーを多数表示するので、それをScreenPadに表示して操作できると便利そうだとコメントしてくれた。目線は映像に集中しつつ、細々したツール類も画面のどこかしらに置いてパラメータを調整したい。

ZenBook Pro 15を使ってPremiere Proを動かしてもらった。4K30pの映像もシングルストリームなら、ストレスなく編集できると小林氏

 ScreenPadでは、音楽プレーヤーやカレンダーなどの専用アプリを表示・操作できるのに加え、セカンダリディスプレイとしても利用できる。小林氏がいくつか試してみて、とくにこれは使えそうだとなったのがPremiere Proのカラーホイールによるカラーグレーディング調整だった。ScreenPadは、タッチ操作もできるため、ScreenPadを見ずに操作できると小林氏。

 作品によっては、カット数が優に千を超えるため、本来ならパラメータを調整するハードウェアコントローラを使うところだが、出先での作業のように、コントローラを持ち運べない場合は、簡易的にではあるが、ScreenPadで代用できそうだという。

ZenBook Pro 15のScreenPadの用途をいくつか試してもらったところ、カラーホイールの操作にうってつけということがわかった

 もちろん、ZenBook Pro 15には、HDMIとThunderbolt 3×2つあるので、外部ディスプレイも複数接続できるほか、Thunderbolt 3は大容量の高速ストレージに接続しても活用可能だ。

 製品の細かな仕様や、性能については関連記事を参照いただきたい。