Creators Meet ASUS

序章:「創造力を解き放つ」。ASUSがZenBook Pro 15に込めた想い

~誰もがクリエイターになる時代

タッチパッドとディスプレイが統合されたScreenPadを搭載するASUS「ZenBook Pro 15」

 ASUSが2018年6月に発表し、8月に国内でも発売されたクリエイター向けノートPC「ASUS ZenBook Pro 15」(以下、ZenBook Pro)の新モデルは、非常に特徴的な液晶つきタッチパッド「ScreenPad」の搭載にだけ目が行きがちだが、6コアCPUや、4Kパネル、Adobe RGB比100%の色域、ペン対応など、クリエイターの「創造力を解き放つ」ための仕様、工夫が盛り込まれた意欲的な製品だ。

 本連載では、そんなZenBook ProをはじめとしたASUS製PCを、フォト、マンガ、動画、3D CG、CGアニメーションなどの現場で活躍するプロのクリエイターに利用してもらい、生の声を聞いていく。

 ASUSは1989年創業のPCメーカー。創業当初は自作向けのPCパーツメーカーとして成長し、その後、完成品PC事業にも参入。格安PCの代名詞的存在になった「Eee PC」などで一躍注目を集め、いまではPC以外にもZenFoneなどスマートフォンでも知られる世界的な総合ITメーカーになっている。

 そんなASUSが今回投入したのが、クリエイティブな作業を快適にできるようにと開発されたZenBook Proだ。本稿ではまず、この連載の初回として、ASUS JAPAN株式会社システムマーケティング部のシンシア・テン氏と熊谷歩美氏に、ZenBook Pro投入に込める想いなどを伺ってきた。

 そこから見えてきたのは、ZenBook Proは、必ずしも"プロクリエイター"のためだけの製品ではない。写真や動画など、指数的に肥大化するユーザーコンテンツを編集するであろうすべての人の作業効率を向上させるために開発されたという点だ。

ASUS JAPAN株式会社システムマーケティング部のシンシア・テン氏(右)と熊谷歩美氏(左)

あらゆる人が持つ創造力を解き放ちたい

 ASUSは、一般コンシューマ向け、ゲーマー向け、Chromebookを含む法人向けなど幅広いPCを展開しているが、とくにクリエイターに焦点を当てた製品はZenBook Proが初となる。

 だが、シンシア氏は「ZenBook Proは、プロのクリエイターの方のためだけに開発した製品ではないんです」と語る。製品の仕様や特色からは、本製品がクリエイターをターゲットとして企画されたものであることが窺い知れるが、「写真や動画など、肥大化するデジタルコンテンツを、なにかしらのかたちで編集するとき、われわれは一般の人にも快適に動作するPCが必要だと考えたんです」という。

 ハイエンド一眼レフカメラの画素数は1億に達し、地上波TVも8K放送の開始が目前に迫っている。そこまではいかなくても、一般ユーザーが扱うスマートフォンやカメラで普段撮影する写真や動画も、やはり数年前と比べると遙かに巨大になっており、その傾向は今後も続く。

 そうやって日常的に撮影した素材に、たとえばInstagramのフィルターなど、なにかしらの編集を加えてSNSに投稿する人/機会もかなり一般的になっている。若い世代では、写真だけでなく、SnowやTikTokなどのアプリで短い動画を撮影し、簡単な加工を加えて友達とシェアする文化も広まってきている。手軽な加工ならスマートフォンでもいいが、少し凝ったことをやりたくなった途端、一定以上の性能を持ったPCが必要となってくる。

 そういったときに、誰もがストレスなく作業でき、あらゆる人が持つそれぞれの創造力をとことんまで解放させるPCを提供していきたい。そういう想いで開発されたのがZenBook Proなのだという。

スマホ感覚で、Windowsと同じUI/UXのScreenPad

 とは言え、「もちろんZenBook Proはプロのクリエイターにこそ使ってもらいたい」とシンシア氏。

 同製品の開発にあたっては、さまざまなプロクリエイターの作業環境を調査した。その結果わかったのが、多くの人がブラウザや他のアプリを使って音楽を聴いたり動画を観たりしながら作業を行なうことが多いこと、そして、その結果、本来の業務で使うアプリに、画面全体の65%程度の面積しか使えなくなるということだった。

 そういったながら視聴であれば、必ずしも画面サイズは大きくなくてもいい。ZenBook Proの開発時は、ScreenPadの代わりにスマートフォンをコンパニオンデバイスとして採用することも検討した。

開発段階ではスマートフォンをコンパニオンデバイスとすることも検討した

 だが、WindowsとスマートフォンとではUIが異なるため、両者でシームレスな操作感を実現できないと判断。結果として、スマートフォンとほぼ同じサイズのタッチパッドにタッチパネルを埋め込みWindowsのアプリをそのまま動かせるようにした。

 ScreenPadには、いくつかのモードがあり、F6キーを押すごとに機能を切り替えられる。まずは通常のタッチパッドとしてのモード。液晶を内蔵しているが、普通にボタンのクリックもできる。

ScreenPadは、一見するとただのタッチパッド

 もう1つは「ScreenPadモード」。このモードにすると、まずタッチパッド上の液晶に壁紙が表示される。タッチパッドに画面が表示されているだけで、期待感を煽ってくるが、このモードでは、画面の上から下にスワイプすると、専用のアプリの一覧が表示。アイコンをタップすると各アプリが起動する。

ScreenPadモードにすると、画面が点灯

 現在用意されているのは、カレンダー、音楽プレイヤー、電卓などのほか、Microsoft Officeの一部機能を使ったり、Adobe ReaderでPDFにScreenPadで手書きの署名をつけたりできる。現時点ではほぼASUS製アプリのみだが、Spotify製アプリが用意されているほか、SDKも公開予定で、今後対応アプリの増加が期待される。

音楽プレイヤーアプリ
カレンダーアプリ

 ASUS JAPANでも、発表会でのプレスからのフィードバックを受け、本社にScreenPadスワイプキーボードの提案を行なっているという。

 残りの「拡張ディスプレイモード」では、ScreenPadがセカンダリディスプレイになる。ScreenPadは5.5型のフルHD(1,920×1,080ドット)なので、通常の外付けディスプレイのように利用するのは無理があるが、動画を視聴したり、スケーリングを上げてTwitterなどのタイムラインを時々閲覧するといった用途に便利だ。

拡張ディスプレイモードでは、セカンダリディスプレイとなる

 拡張ディスプレイモードでは、さらにScreenPadをタッチパッドとして使う(マウスカーソルを動かす)モードとタッチパネル(そのままタッチで操作)の切り替えや、アクティブウインドウをメイン画面-ScreenPad間で行き来させることをワンタッチでできるようになっているなど、作り込みも見られる。タッチパネルモードでの操作はスマートフォンそのものだ。

フルスクリーン表示でタッチパネル操作にすると、操作感はスマートフォンそのもの

薄型でありながら6コアのCPUとGeForceを搭載

 ZenBook Proは、ScreenPadで奇をてらっただけでなく、上位モデルでは、6コアのCore i9、GeForce GTX 1050 Ti、PCIe接続の高速1TB SSDを搭載と、プロのニーズを満たすしっかりとしたスペックを兼ね備えている。

 「たとえば非常に高度な3Dモデリングや、4K60pの動画編集までいくとじゃっかん荷が重いですが、写真編集、フルHD程度の動画編集などであれば、一般ユーザーはもちろんプロの方に使っていただいても余裕を持った性能を発揮できます」と熊谷氏。

 この点については、今後の連載で、じっさいにプロに使ってみていただいて、さまざまな用途で十分な性能を持つかを検証していく。

 最近は、動画編集など高負荷な用途で、高性能なゲーミングPCを購入するユーザーも増えていると聞く。ASUSでも、クリエイター向けにも同社のゲーミングPCである「ROG」シリーズを訴求してみてはどうなのだろうか?

 「確かに、クリエイターの方がROGを購入するケースも増えています。ただ、1つ懸念点としてあがるのが、ゲーミングPCにはデザインが派手すぎるものが多いという点です。状況に合わせて、フルカラーに輝くLEDは、ゲームプレイ時は雰囲気を盛り上げてくれますが、オフィスで使うにははばかられますよね。また、ゲーミングノートPCは、必ずしも携帯性を重視していないため、厚く、重いものも多いです。

 そういったなか、ZenBook Proは、日本古来の枯山水をモチーフに、パワフルでありながら、薄さや美しさも両立させました。時間や場所を問わず活動するクリエイターの方には、やはりZenBook Proがお勧めとなります」(熊谷氏)。

挑戦を辞めないASUS

 ちなみにこれはじゃっかん用途が異なるが、Windows Vistaの時代には、「SideShow」と呼ばれるサブディスプレイがMicrosoftによって規格化され、ASUSはそのときも、世界に先駆けて搭載機を発表した(ASUSTeK、世界初のSideShowノートを国内販売参照)。

 その後もASUSは、天板の裏表両面に液晶を備えた「Taichi」など、独創的な製品を開発してきた。こういった変わり種の製品は、話題性こそあるが、実売面では受け入れられない可能性もある。なぜ、同社はそういったリスクを背負ってまで、新しいものを提供し続けるのか? そんな素朴な疑問をぶつけてみたところ、シンシア氏は次のように答えてくれた。

 「弊社は長年、"Start with People"、すなわち、人を中心に据えた製品開発を信念としています。技術を提供する企業として、どういう技術が人々に必要とされているかを常に考え、それをカタチにした製品を作り続けているんです」。

ノートPCとして高い性能を発揮

 以上のように、ZenBook Proは、クリエイターの求める要素を凝縮させた完成度の高い製品だ。クリエイターではなくとも、クリエイティブな作業を行なうのであれば、購入の選択肢に入れたい製品だろう。

 前述のとおり、さまざまなシーンにおけるじっさいの使用感は個別にお伝えしていくが、本稿ではベンチマークを掲載しておくので、参考にしていただきたい。結果に表われているとおり、ノートPCでありながら、写真の現像、動画のエンコードや3Dなどでとくに高い性能を実現している。

天板にはうっすら同心円模様
左側面に音声端子、microSDカードスロット、USB 3.1×2
左側面に、電源端子、HDMI、Thunderbolt 3×2
ベンチマーク結果
ZenBook Pro 15 UX580GE-8950ZenBook Pro 15 UX580GD-8750Core i7-7560U搭載の薄型ノート
CPUCore i9-8950HK(2.90~4.80GHz)Core i7-8750H(2.20~4.10GHz)Core i7-7560U(2.4~3.8GHz)
GPUNVIDIA GeForce GTX1050 Ti(4GB)NVIDIA GeForce GTX1050(4GB)Intel Iris Plus Graphics 640(300MHz~1.05GHz)
メモリDDR4-2400 SDRAM 16GBDDR4-2400 SDRAM 16GBLPDDR3-1866 SDRAM 16GB
ストレージ1TB SSD(M.2 PCIe NVMe)512GB SSD(M.2 PCIe NVMe)1TB SSD(M.2 NVMe PCIe)
ディスプレイ15.6型3,840×2,160ドット(282ppi)15.6型3,840×2,160ドット(282ppi)12.3型3,000×2,000ドット(293ppi)
PCMark 10 v1.1.1739
PCMark 10 Score480345493,543
Essentials818682117,407
App Start-up Score9955119468,902
Video Conferencing Score787068206,565
Web Browsing Score700267956,956
Productivity669561476,266
Spreadsheets Score834676847,427
Writing Score537149185,287
Digital Content Creation548650612,602
Photo Editing Score620247663,422
Rendering and Visualization Score596855661,440
Video Editting Score446348893,578
3DMark v2.6.6174
Time Spy23441826430
Fire Strike Ultra17641197289
Fire Strike Extreme34022627513
Fire Strike653754491,077
Sky Diver18587173864,134
Cloud Gate21215201886,552
Ice Storm Extreme507985023341,531
CINEBENCH R15.0
OpenGL126.31 fps111.55 fps49.01 fps
CPU1197 cb1146 cb312 cb
CPU(Single Core)195 cb173 cb129 cb
Geekbench 4.3.0
32-bit Single-Core Score494943494,068
32-bit Multi-Core Score21982208297,935
64-bit Single-Core Score553148974,564
64-bit Multi-Core Score23355215588,699
OpenCL860867407928,113
CUDA9228975773
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット30772273705,967
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
1,280×720ドット211971949410,880
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)15823128313,741
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)15360138022,044
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)14200122731,588
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)12564109481,633
1,920×1,080ドット 高品質(ノートPC)102999031
SSDをCrystalDiskMark 5.5.0で計測
Q32T1 シーケンシャルリード2928.091 MB/s2459.283 MB/s3,256.691 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1764.243 MB/s1421.504 MB/s1,773.259 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード343.766 MB/s316.130 MB/s523.804 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト286.157 MB/s255.244 MB/s457.636 MB/s
シーケンシャルリード835.199 MB/s1228.871 MB/s1,339.288 MB/s
シーケンシャルライト1057.285 MB/s1126.691 MB/s1,514.566 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード39.916 MB/s35.469 MB/s47.449 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト91.714 MB/s84.237 MB/s172.948 MB/s
Adobe Photoshop Lightroom Classic CCで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調1分8秒441分21秒732分36秒68
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し(H.264)
1,920×1,080ドット、30fps2分37秒812分42秒387分15秒32
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モード:高パフォーマンス)
バッテリ残量5%まで4時間35分34秒4時間40分38秒7時間49分5秒※7%まで