Creators Meet ASUS
第4回:販売営業からひょんなきっかけでCG屋に転身~3D CGテクニカルコンサル宋 明信氏編
~技術支援でクリエイターの作業効率を向上
2018年11月22日 11:00
5人のプロクリエイターにASUSのクリエイター向け製品を体験してもらう本連載。第5回目は、3D CGテクニカルコンサルタントの宋 明信氏に話を伺った。
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3D CGで写実的な画が作れるのは当たり前。いまクリエイターに要求されるのは訴求力
この連載で紹介したこれまでの3名と異なり、宋氏は自ら作品などを作るのではなく、作品を作るために3D CGソフトを利用するユーザーに対して、技術的な技術支援を行なうテクニカルコンサルタントだ。
経歴もやや異色で、もともとは自動車などのクレイモデルを作るための素材を販売する営業をやっていた。そんな折り、上司から「これからはアナログだけではダメだ。CGの勉強をしろ」と言われ、独学で学びはじめたのだという。
「ある意味、その会社で実験台にされたんですね(笑)」と、宋氏は笑う。しかし、そのおかげでCG業界のいろいろな人と会う機会があり、認知もされ、キャリアアップを目指とともに、自分の知識で業界に貢献できればと、Autodeskに入社した。
当時はさまざまな業界で3D CGが脚光を浴びはじめてきていた時期だった。ゲームでは「バーチャファイター」がブームとなり、映画では「ターミネーター2」で新しい種類の映像が驚きを与えた。また、バンタンやデジタリハリウッドなど、CGを教える教育機関も誕生しはじめていた。
「しかしそれから20年くらい経った現在では、3D CGではテクニックよりもクオリティが求められる時代になっています」と宋氏。PCの性能があがり、ソフトウェアの表現力も増したため、写真のような画は誰でも作れるようになった。そういったなかで、ただリアルなCGを作れるだけではなく、訴求力のある画像/映像を作れるクリエイターが求められている。
AR/VRといった3D CGの新しいかたちの応用も登場している。AR/VR向けにコンテンツを作るのであれば、最初からそれに転用可能なかたちで製作を行なう必要があり、クリエイターにはそういった知識も求められる。
3D CGテクニカルコンサルタントとは
3D CGはゲームや映画に限らず、設計、製造、研究、広告など幅広い分野で活用されている。3D CGソフトも日増しに高機能化している。そのため1種類のソフトであっても、あらゆる機能を熟知するのは難しい。そのため、プロのクリエイターであっても、むしろプロであるがゆえ、日々の業務に追われ、ソフトについて研究を行なう時間が取れず、かならずしも効率的な製作を行なえているとは限らない。無駄な工数が発生していることも多い。
そういった状況を改善するためのアドバイスを行なうのが宋氏の仕事だ。たとえば、ベジェ曲線でラインを描くとき、ハンドルをちまちまといじるのではなく、スケーリングや回転によって、より短時間に作業できることもある。そういった効率的なアプローチの積み重ねで、作業時間をかなり減らすことも可能だという。
また、ある程度の規模の製作になると、モデリング、ライティング、テクスチャなど、役割が専門的な人やチームに分業されることも多い。しかし、大きなプロジェクトになると、人手が足りないのを補うため、一時的に別の作業に回されることもある。しかし、社内で詳しい人が教えている余裕はない。そこで宋氏のようなコンサルタントが、育成を行なう。
3D CG業界では、若手が減っているという問題もある。写真や動画に比べて、とっつきにくそうだというイメージがあるのも要因の1つだろう。だが、宋氏は、「3D CGに興味があるなら、深く考えないではじめてほしい」と語る。
3D CG制作でも十分な性能を持つZenBook Pro 15
宋氏にも、ZenBook Pro 15で3ds Maxを使ってもらった。宋氏によると、そこまで複雑でない3Dモデルを扱うのであれば、GeForce GTX 1050があれば十分というが、じっさい、今回使ったZenBook Pro 15(型番:UX580GE-8950)は、GeForce GTX 1050 Tiを積んでおり、今回宋氏が用意してくれた検証用の3Dモデリングの操作では、スムーズな動作が確認できた。
とくに、レイトレーシング性能が高いことに宋氏は驚いていた。GeForce GTX 1050 Tiは、直近のGeForce RTX 20のようなリアルタイムハードウェアレイトレーシング機能は搭載していないが、サンプルデータでは、非常に短い待ち時間でレイトレーシングが完了していた。6コアのCore i9-8950HKを搭載(UX580GE-8950モデルのみ)しているのが効いている。
宋氏が直近で利用した4コアのノートPCと比べると、ZenBook Pro 15は2~3倍近く速く、それがこの本体サイズで実現できているのは驚異的ですらあるという。
3D CGプロダクションは、チェックや打ち合わせで、作品に携わる外部の人に3Dモデリングや映像を見せることもよくある。そういったときにも、持ち運び可能なZenBook Pro 15は活躍しそうだ。
映画などだと、GPU負荷がかなり⾼くなるため、3D CG担当者が4K環境で使っているのはまだ少ないそうだが、映像編集や合成を担当する⼈は、⾼い解像度を求めて4K環境で作業する⼈も多く、とくに最終映像が4Kなのであれば、それを縮⼩せずに表⽰できるZenBook Pro 15が装備する4Kパネルはほぼ必須の仕様となってくる。
ちなみに4Kというと、最近は映画やドラマが4K解像度で提供されることも増えているが、製作コストや期間の都合で、3D CGのレンダリングは実際よりも低い解像度で計算されることもある。あるいは、画面要素の中で要素別に解像度を変えて画像生成することもあるようだ。
フルHDのタッチ液晶を埋め込んだタッチパッドとなる「ScreenPad」については、デフォルトの設定だと文字が小さすぎるが、解像度やスケーリングを調整すれば、細かなパラメータを調整する操作パレットの操作用に使えそうとのこと。
ScreenPadでは、音楽プレーヤーやカレンダーなどの専用アプリを表示・操作できるのに加え、セカンダリディスプレイとしても利用できる。これを前述の操作パレットの作業に使ったり、打ち合わせでSkypeに使ったりできそうだ。
若いうちにいろいろな表現手段に触れるのが大事
前述のとおり、宋氏がCGを学びはじめたのは社会人になってからだが、コンピュータに最初に触れはじめたのは、中学2年生のころ。当時Texas Instrumentsに勤めていた宋氏の叔父が日本に帰国したさい、米国で使っていたCommodoreの「PET 2001」とプログラミングの参考書をプレゼントとして与えられた。
当時は自分ではプログラミングできず、参考書に書かれたBASICのコードをそのまま"写本"するだけだった。それでも、当時はゲームセンターに行かなければプレイできなかったゲームが自宅でできるということに驚きと喜びを感じたという。
宋氏は、作品を作ることに喜びを感じる人であれば、表現手段を限定せず、3D CGにも触れてみてほしいと語る。昔は、3D CGをやるにあたって必要なハードもソフトも高額だったが、いまでは10万円台のPCでも扱え、ソフトに至っては、Blenderのように無料で高機能なものもある。3ds Maxも学生であれば無料で使える。場合によっては、油絵を描く画材を揃える方がお金がかかることもあるとは宋氏の弁だ。
ソフトによって多少操作性は違うが、3D CGの概念さえ理解してしまえば、あとはどのソフトでも使えるようになるという。