ニュース
スト6世界1位は日本の翔!チリ出身15歳のBLAZが準優勝の衝撃もあったCapcom Cup
2025年3月11日 16:25
両国国技館において「ストリートファイター6」の世界大会「CAPCOM CUP 11」(以下CC11)が3月5日から9日まで開催された。大会はオフラインで行なわれ、会場には多くの観客が動員されたほか、試合の模様はYouTubeやTwitchにて無料配信が行なわれた。
CC11は1年を通して開催されているカプコンプロツアー(CPT)で勝利した選手たちが集結して、その頂点を決める決勝大会。世界各地で行なわれた予選を勝ち抜いた総勢48人の選手たちは、8つのリーグに分かれて、3日間の総当たり戦を行ない、各リーグの上位2名、計16名が決勝トーナメントに進出する。
CC11出場を決めた48人のうち、日本の選手は、DetonatioN FocusMe所属の板橋ザンギエフ、REJECT所属のときど、FUKUSHIMA IBUSHIGIN所属の翔、Beast所属のふ~ど、Crazy Racoon所属のShutoの5人。
3月5日~7日まで行なわれた3日間の予選を勝ち抜いたのは、グループAのWinnersサイドがベルギーのケン使いTAKAMURA、LosersサイドがノルウェーのPHENOMで、グループAにいた板橋ザンギエフは残念ながら予選敗退となってしまった。
グループBはWinnersサイドがアメリカのNOAHTHEPRODIGY、Losersサイドが韓国のNL、グループCはWinnersサイドがFUKUSHIMA IBUSHIGIN所属の翔、LosersサイドがREJECT所属のときどとなり、日本人2人が1位2位通過という奇跡の展開となった。
グループDはWinnersサイドがチリの若手プレーヤーBLAZ、LosersサイドがイギリスのBROSKI、グループEはWinnersサイドがBeastのふ~ど、Losersがドミニカ共和国のMenaRD、グループFはWinnersサイドが韓国のLeShar、LosersがシンガポールのXIAN、グループGはWinnersサイドにスウェーデンのJP使い、JUICYJOE、Losersからは中国のXIAOHAI、グループHはWinnersサイドからアラブ首長国連邦のケン使いANGRYBIRD、LosersサイドはCrazyRacoon所属のShutoが決勝進出した。
大会は、FUKUSHIMA IBUSHIGIN所属の翔が見事に初優勝を飾り、優勝賞金100万ドルを手にすることとなった。
本稿では予選の見所や、TOP16の流れについて簡単に触れた後、優勝した翔のインタビュー内容を中心にお届けしたい。なお、本稿ではすべての選手の敬称を略している。また、試合内容の詳細については、公式サイトのアーカイブが公開されているので、こちらもご覧頂ければ幸いだ。
優勝はFUKUSHIMA IBUSHIGINの翔!決勝トーナメントでは無敗の強さを誇る!
4日間の激闘を制したのはFUKUSHIMA IBUSHIGINの翔。その試合内容は圧巻で、予選リーグは4勝1敗でWinnersサイドでの決勝トーナメント進出を決めていたが、決勝トーナメントにおいては1度も負けることなく、グランドファイナルへの進出を果たした。Winners Finalでは強豪LeSharとの対決となったが、ここもキッチリと勝ち切っている。グランドファイナルでは、決勝トーナメント初戦で当たったBLAZを再度撃破して初のカプコンカップ優勝を決める運びとなった。
優勝こそ翔だが、予選、本選ともに最注目となったのはグループDにいたチリの若手プレーヤーBLAZなのは間違いないだろう。若干15歳の若さで予選全勝の好成績を達成して決勝トーナメントに進出。キャラクターピックについても、ほかのプロプレーヤーたちがあまり使用しないリュウを使用していた点も注目度を高めることにつながった。
決勝トーナメントでは初戦で翔のJPと当たって敗れてしまうが、Losersを全勝で駆け抜けて、最後のグランドファイナルまで勝ち残る驚異の実力を発揮した。グランドファイナルにて再び翔との再戦となり、ここで敗れて準優勝という結末となったが、4日間を通して、負けた相手が優勝した翔のみという将来が楽しみな選手と言える。
今回優勝した翔に唯一、黒星を刻んだのが、同じく日本人のときどである点も注目のポイントだ。2人はともに同じグループCで予選突破を目指していたが、4勝1敗でWinnersサイドから決勝進出を決めた翔に対して、ときどは2日目の段階で2敗を喫しており、崖っぷちの状態。そんな状況の中で予選3日目に翔との試合を制し、さらにGGHalibelとの試合でも勝利することで予選突破を決めたのだ。他選手の試合結果に救われた面もあるが、ギリギリのところで勝ちを拾うときどらしさが感じられる。
一方で、予選リーグを全勝突破したふ~どは、決勝トーナメント初戦でLeShar相手に惜敗、さらにLosersでもときどとギリギリの激闘の末に敗れて、決勝トーナメントでは1勝もできずに敗退となってしまった。これについては本当にマッチングの運が悪かったとしか言いようのない結果だ。
なお、本大会の上位8名については、サウジアラビアで開催されるeスポーツワールドカップ(EWC)への出場権が与えられることが発表されていたが、既に権利を獲得していたAngryBirdの枠をかけて、配信などには一切載らない舞台裏において9位決定戦が行なわれていたようだ。こちらでもふ~どはグランドファイナルまで進めたものの、最後の最後でNLに負けてしまい、EWC出場権も逃してしまう事態となってしまったとのことだ。
なお、Losersながら決勝トーナメント進出を果たしたShutoは、XIAOHAIやTAKAMURAといった強敵を撃破して順調にコマを進めていたが、TOP8でBLAZと対戦して惜しくも敗れてしまう結果となった。順位としては7位タイでEWC出場権を獲得している。
BLAZとの対戦は「合気道のように相手の勢いを受け流す気持ちで挑んだ」
ここからは、優勝した翔のメディア向けインタビューの内容について紹介していきたい。
まずは予選から本戦まで使用キャラクターをJP1本でほぼ全勝を果たすことになったが、ほかのキャラクターチョイスについて考えなかったのかについて聞かれると、翔は「キャラ変更を考えてしまうと、もし負けた時に意識がブレてしまうので1本に絞ることにした」とした。
一方で、2月から追加になった不知火舞を配信などでかなりやり込んでいる点について指摘されると「実際のところ、舞についてもかなりやりこんでいたのでめっちゃ出したかった。実はこれもケンカの種の1つだったんですけど、結果として出さなくてよかったです」とした。
ケンカとは、配信内のインタビューにて触れていた、夫婦ゲンカのことを指す。妻と朝まで喧嘩していたが、最後に仲直りして本日の決勝トーナメントに挑むことになったと笑顔で語っており、ケンカの内容の中にはこうした使用キャラクターに関する内容も含まれていた事を示した。
結婚したことで、プロとしての活動の心境などに変化があったか聞かれると「モチベーションについてはあまり変わらないですが、体調管理や家のことなどのケアをして貰えるのでかなり助かっています。また、苦しい時や辛い時のメンタルケアもかなり助かっています」と結婚によるプラス効果について語ってくれた。
CC11において、最もインパクトのあったBLAZとの対戦について聞かれた翔は「すごく勢いがある選手なので、正直言ってやりたくはなかった。あの若さで、この会場の雰囲気の中で、あれだけの勢いのあるプレイができるそのメンタルの強さがとにかくすごい」と勢いのある強さとそのメンタルを評価。
一方でそんなBLAZが唯一勝てなかった相手の翔は「BLAZの勢いにそのまま呑まれてしまわないようにすることを意識し、合気道のように相手の勢いを受け流すような気持ちを意識して対戦に挑みました」とBLAZとの対戦を振り返った。
今回獲得した賞金の使い道について、配信のインタビューでは結婚指輪を用意したいと語っていたが、そのほかについて尋ねると「お金はすぐに消えてしまうものなので、活動資金のつもりで使っていこうと思います。たとえば、体調管理において、食事面などでもよりよい物を食べるなど、自身の活動にプラスになるところに投入していきたい」と語った。
Winners Finalで当たったLeSharについては「今日はこちらの流れがよく、むしろLeShar自身が本調子じゃなかったように感じました。正直、今でも怖い相手ですので勝ててよかったです」とした。
また、予選、決勝を通して唯一の白星を喫したときどとの対戦について触れられると「ときどさんには勝てなくて、本当に悔しいですね。次の大会などで当たることがあったら、今度こそ勝ちたいです」と悔しさを見せた。
格闘ゲームなど、eスポーツのシーンを語る上で周囲の理解は欠かせない。現在のゲーム環境についての意見を聞かれた翔は「自分が子どもの頃は、まだ世間では家の中でゲームするより、外で遊んだ方がいいと言われていましたね。でもうちの場合、両親がのびのびとやりたいことをやらせてくれていました。
自分が中学2年生の頃から、格闘ゲームではウメハラさんやときどさんたちがプロとして活動して、盛り上げてくれていましたので、そうやって盛り上げ続けてくれていたからこそ、今があると考えているので、今後は自分自身が盛り上げる側となっていきたい」とプロとしての意識を語った。
日本開催についての感想を求められると「やはり応援してくれたファンの皆さんの声援は大きいですね。声援のおかげで緊張が自分の力に変わりました。これまで目標としてきたカプコンカップという世界1の大会を、しかも初の日本開催という舞台で優勝できた事は、本当に感無量です」としてインタビューを締めくくった。
ファンの声援も後押しとなった日本開催のCC11
以上、CC11での決勝トーナメントの模様を簡単にレポートした。日本での開催が選手たちの力になったことは間違いなく、これまでのインタビューなどでも、国内開催のメリットとして、翔の語ったファンの声援以外にも、時差がないことや、都内在住なら自宅から通えること、対戦相手を呼びやすいなど、多くのアドバンテージが存在する。こうした地元開催の理を生かすことで、より盤石な態勢で試合に臨めた事も優勝に輝いた要因の1つなのだろう。
加えて本大会では最注目となったBLAZとの対戦において、とにかく見事な立ち回りを見せられた点も重要だ。その要因は、対戦した者同士でしか分からない要素もあると思うが、やはり、プレイスタイルにおける人の相性が大きく影響したようにも感じられた。
会場の様子は、国内外から多くの観客たちが訪れ、日本人選手のみならず、海外選手へも暖かい応援の声を投げかけていたのが印象的だった。オンライン配信で海外の試合の観戦などが可能になったことで、海外選手のファンが国内でも増えた事もあるのだろうが、選手たち個々のファンだけでなく、格闘ゲーム大会そのもののファンが増えたことで、すべての選手を応援しようという人たちも多く来場していたのだろう。
両国国技館の外周部の廊下には、飲食の店舗やGood 8 Squadの出店も見られたほか、「ブランカちゃん」などのガチャガチャコーナー、スズキがSF6のキャラクター、ジュリをイメージしたコラボバイク「GSX-8R Tuned by JURI」を展示、ゲームの試遊台なども設置され、どこも人が溢れる大盛況の様子だった。
こうしたオフライン大会の観戦の魅力は、選手たちが見せる配信外でのパフォーマンスやアピールなどもポイントだ。試合直前の段階で選手同士が突然動いて絡みを見せるなど、配信のカメラが追いつかない場面もあり、一連の流れを一部始終追うにはやはり、現地での観戦が一番だ。また、試合中の声援の熱量や、コンボ発生時の声掛けなど、会場が一丸となる雰囲気は会場でしか味わえない魅力の1つと言える。
2025年以降の格闘ゲームシーンでは、さらにオフラインでのこうしたイベント開催が増えるだろう。興味のある選手がいればその人の応援に、そうでなくても会場の雰囲気を味わってみたい人は、ぜひ一度会場に来て一緒に応援してみることをおススメしたい。