山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

レアな縦横比7:5は電子書籍利用に最適。11.4型タブレット「OPPO Pad Neo」を試す

「OPPO Pad Neo」。色はスペースグレー。実売価格は4万4,800円

 「OPPO Pad Neo」は、11.4型のAndroidタブレットだ。白銀比に当たる7:5というめずらしいアスペクト比を採用しており、電子書籍のページを余白なく表示できることが大きな特徴だ。

 Androidタブレットの多くは、16:9や16:10というアスペクト比(縦横比)を採用している。このアスペクト比は動画表示でのフィット感は高いが、電子書籍を表示すると画面左右に大きな余白ができてしまう。アスペクト比4:3が多くを占めるiPadシリーズと比較して、没入感を削ぐこの仕様はどうしてもネックになる。

 本製品はAndroidタブレットとしては非常にめずらしく、7:5という白銀比のアスペクト比を採用している。16:10よりも天地に余裕があるほか、電子書籍を表示した場合も左右の余白が少なくて済み、その分ページを大きく表示できる。電子書籍利用には極めて向いた製品だ。

 今回はメーカーから借用した本製品を、既存のAndroidタブレットや、Apple「iPad(第10世代)」などと比較しつつレビューする。

エントリー寄りのスペックながら独自の強みあり

 まずはざっとスペックをチェックする。ここでは本製品と同じくAndroidを採用し、アスペクト比が16:10のGoogle製タブレット「Pixel Tablet」と比較する。

【表】OPPO Pad NeoとGoogle Pixel Tabletの主な仕様
OPPO Pad NeoGoogle Pixel Tablet
発売日2024年1月2023年6月
OSColorOS 13(Android 13ベース)Android
サイズ255×188×6.9mm258×169×8.1mm
重量538g493g
ディスプレイ11.4型10.95型
解像度2,408×1,720ドット(260ppi)2,560×1,600ドット(276ppi)
リフレッシュレート90Hz60Hz
プロセッサMediaTek Helio G99Google Tensor G2
RAM6GB8GB
ストレージ128GB128GB/256GB
メモリカード対応(最大1TB microSD)-
Wi-FiWi-Fi 6Wi-Fi 6
バッテリ容量8,000mAh約7,300mAh
充電USB Type-CUSB Type-C
オーディオクアッドスピーカークアッドスピーカー
生体認証顔認証指紋認証
実売価格(3月10日時点)4万4,800円5万7,800円から

 本製品はSoCにMediaTek Helio G99を採用しており、ミドルクラスのタブレットの中でもエントリー寄りに近い製品だ。ここで比較しているPixel Tabletはミドルクラスの中でもハイエンド寄りなので、同じ11型前後のAndroidタブレットでありながら性能差は少なからずある。具体的な性能は後ほどベンチマークの項で見ていく。

 アスペクト比以外で両者の違いを見ていくと、本製品は4万円台という実売価格を実現するために、妥協したとみられる点がちらほら見られる。具体的には顔認証にしか対応せず指紋認証は対応しないことや、重量が500gオーバーとやや重めであることがそれだ。

 その一方で、解像度は2.4K(2,408×1,720ドット)をサポートするほか、リフレッシュレートは最大90Hzまで対応、さらにバッテリ容量が8,000mAhと多いなど、この価格帯の製品としてはかなり健闘している点も目立つ。Pixel Tabletが非対応のメモリカード(microSD)を最大1TBまでサポートするのも強みだ。

 比較対象のPixel Tabletは、電源ボタン一体型の指紋認証センサーを備えるなど、ハードウェア面でのプラスアルファがあるほか、専用のスピーカースタンドをラインナップするなどの独自性もあるが、OPPO Pad Neoはそうした際立った特徴はない。全体としては、アスペクト比がやや特殊なことを除けば、普通のAndroidタブレットと言って差し支えない。

本体外観。前面カメラは長辺側にあるなど、横向きでの利用を前提としたデザイン
ベゼル幅はほぼ均等なので縦向きでの利用でも違和感はない
左側面。電源ボタン、スピーカー、カードトレイが配置される
右側面。スピーカー、USB Type-Cポートが配置される
上面。音量ボタンがある。ちなみにこの反対側や底面にはボタンやポート類はない
背面。上部中央にカメラを配置するレイアウトは上位モデル「OPPO Pad 2」と共通だ
背面カメラはやや突起があるが段差は緩やかでそれほど邪魔に感じない
重量は538g。10型よりひとまわり大きい11.4型とはいえ、やや重めだ

余裕のある天地はやはり魅力。性能はFire HD 10並み

 では実機を見ていこう。ここからはPixel Tabletに加え、Amazon「Fire Max 11」、Apple「iPad(第10世代)」とも比較をしていく。

 本製品はAndroid 13ベースのColorOS 13.2を採用しており、セットアップの手順などは一般的なAndroidと変わらない。アプリの数は控えめで、OPPOの独自アプリもあるにはあるが、こちらも数は少なく、Androidのリファレンスに近い内容。ちなみに電子書籍アプリはプリインストールされていない。

ホーム画面。アプリの顔ぶれはAndroidのリファレンスに近い
アプリ一覧。電子書籍アプリはプリインストールされていない

 現物を手に取ってまず感じるのは、やはりその天地の広さだ。Androidタブレットで感じがちな天地の窮屈さがまるでない。これだけ余裕があれば、電子書籍だけでなく、ブラウジングなどの用途でも十分な情報量を確保できる。逆に動画では上下の黒帯がやや目立ってしまうが、このあたりは一長一短ということになるだろう。

 ちなみに10~11型クラスのタブレットとしては面積がかなり広いため、ボディの剛性は気になるところだが、手に取った限りでは堅牢性は十分で、ひ弱なイメージはない。ベゼルが上下左右ともに均等な幅で、縦横どちらの向きでも使いやすいのもプラス要因だ。

左が本製品、右がPixel Tablet(アスペクト比16:10)
左が本製品、右がFire Max 11(アスペクト比5:3)
左が本製品、右がiPad(第10世代)(アスペクト比4:2.78)
厚みの違い。左はいずれも本製品、右が上からPixel Tablet、Fire Max 11、iPad(第10世代)
アスペクト比16:10のPixel Tablet(下)との天地サイズの比較。本製品(上)のほうが情報量は明らかに多い
WebブラウザでPC Watchトップページを表示したところ。本製品のほうが項目1つ分多く表示できていることが分かる
動画についてはPixel Tablet(下)のほうが上下の余白が小さく、フィット感は高い
画面右上から呼び出せるスマートサイドバーにアプリを登録しておくことですばやく起動できるようになる

 ベンチマークについては、エントリー寄りのミドルクラスということで、あまり高いスコアは期待できず、実際のスコアもその通りとなっている。前回紹介した8.7型の「Redmi Pad SE 8.7」のような1万円台のエントリークラスよりは上だが、あまり多くを期待できるものではない。ちなみに今回試した中で最もスコアが近かったのはFire HD 10で、Fireシリーズでいう中程度の性能ということになる。

 そうした意味で、電子書籍のほかブラウジングや動画鑑賞が用途としては中心になり、高い処理能力を必要とするゲーム用途は期待しないほうがよいだろう。なお「高パフォーマンスモード」をオンにした状態では、スコアは1.5倍近い約2万5千まで引き上げられ、Fire Max 11を上回ったことは付記しておく。

「Octane 2.0」でのベンチマーク結果。左上が本製品で「16,939」、右上がPixel Tabletで「45,996」、左下がFire Max 11で「23,365」、右下がiPad(第10世代)で「62,684」と、この顔ぶれの中では最も低い

同じページであっても圧倒的に大きく表示可能

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最終号を使用している。

 ここまで見てきたように本製品は7:5というアスペクト比を採用しているため、アスペクト比16:10のPixel Tabletと並べると、本製品のほうがページサイズは一回りどころか二回りは大きく表示される。もともとの画面サイズが若干大きい(本製品は11.4型、Pixel Tabletは10.95型)ことを差し引いても、ここまで差がつくものかと驚かされる。

 11型のFire Max 11、および10.1型のFire HD 10とも比較してみたが、いずれもワイド比率なこれらの製品に対して、本製品で表示するページサイズは明らかに大きい。10~11型のタブレットを選ぶ場合、限られた画面サイズの中で少しでも大きく表示したいのは当然で、本製品はそうしたニーズに応えてくれる製品と言える。

コミックを表示したところ。縦向きだと単行本よりもはるかに大きく、雑誌掲載時のサイズに近い
左が本製品、右がPixel Tablet。本製品のほうが二回りは大きい
左が本製品、右がFire Max 11。画面サイズだけで言うと11.4型と11型ということでほぼ等しいはずだが、ページサイズの差はPixel Tabletよりもさらに広がった
左が本製品、右がiPad(第10世代)。どちらもフィット感は高いが、ページサイズは本製品のほうが大きい
こちらは見開き表示。上下も左右も余白はほとんどなくフィット感は高い
上が本製品、下がPixel Tablet。単ページ表示時と同様、本製品のほうが二回りは大きい
上が本製品、下がFire Max 11。同じ11型クラスの製品と思えないほどページサイズに差がある
上が本製品、下がiPad(第10世代)。こちらも単ページ表示時と同じく、本製品のほうがページサイズはわずかに大きい

 また解像度は260ppiということで、Pixel TabletやiPad(第10世代)とは同等、Fire Max 11よりは上ということになる。電子書籍ユースでは十分なクオリティで、余白の少なさと相まって没入感は高い。

表現力の比較。左上が本製品(260ppi)、右上がPixel Tablet(276ppi)、左下がFire Max 11(213ppi)、右下がiPad(第10世代)(264ppi)。おおむね解像度通りのクオリティで、左下のFire Max 11のみやや粗い

 画面を縦向きにしての雑誌表示も実用的だ。一般的なワイドサイズのタブレットでは横幅が圧迫されてページが大幅に縮小されるのに対し、本製品は十分なサイズで表示できる。原寸大には一歩及ばないとはいえ、限られた画面サイズでなるべく大きく雑誌コンテンツを表示したいというニーズにはぴったりだ。

 さらにAndroidゆえ、音量ボタンによるページめくり機能が使えるのも利点だ。ボタンによるページめくりは、手袋などをしていてタッチ操作が行なえない場合にも有用であり、同等のアスペクト比であるiPad(第10世代)と比べた場合、これらの機能が使えるのはプラス要因となる。

雑誌コンテンツを表示した場合も上下の余白は最小限だ
左が本製品、右がPixel Tablet。本製品のほうが2回りは大きい
左が本製品、右がFire Max 11。同じ11型台と思えないほどサイズに差がある
左が本製品、右がiPad(第10世代)。どちらも及第点をつけられるが、元の画面サイズが大きいぶん、ページサイズは本製品のほうが大きい

 ただし同等サイズのタブレットと比べた場合、重量が538gとやや重いのはマイナスだ。Pixel Tabletや同等サイズのiPad(第10世代)はいずれも500gを切っているほか、比較対象が10~11型のiPad(第10世代)シリーズの中で最も軽量な11インチiPad Pro(第7世代)の444gだと、その差は100gを超える。長時間手に持って使うのはかなり辛く、これを許容できるかが1つのポイントになるだろう。

 加えて、ボディの側面がかなり丸みを帯びており、側面がしっかりと垂直に切り立った製品に比べると、保持しにくいのもやや気になる。側面が丸みを帯びていたかつてのiPhone 8などと同じ傾向で、持った時に薄く感じる利点はあるものの、ホールド感は高くない。ただし試した限り、この持ちにくさが災いしてのタップの誤反応はあまり見られなかったので、そこは救いと言える。

本製品は側面が丸みを帯びており、側面が垂直になった製品と比べると手から滑り落ちやすい。伏せた状態から持ち上げる場合も不利だ
このほか画面の広さを生かした2画面分割にも対応する。分割位置は左右にスライドさせて調整できる
フローティング表示にも対応。別のアプリを開きながら読書が楽しめる

実売4万円台、電子書籍ユースには最適

 以上のように、アスペクト比を除けばそれほど突出した特徴はないが、こと電子書籍ユースでは、そのアスペクト比だけで「買い」と言える製品に仕上がっている。同じく余白ができにくいiPad(第10世代)を候補から除外している場合は、購入候補の筆頭に来る存在だろう。

 また実売価格も4万円台と、コストパフォーマンスも優秀だ。スペックがエントリー寄りなのは気になるところだが、電子書籍ユースであれば大きな問題はなく、またワンランク高いスペックを求めるのであれば、実売6万円台で同じくアスペクト比7:5の上位モデル「OPPO Pad 2」を選ぶ手もある。

 いずれにせよ、電子書籍ユースで使う場合は非常に魅力的な製品であり、またエントリーモデルのiPad(第10世代)が6万円前後、Pixel Tabletもほぼ同等の価格帯であることを考えれば、お買い得感は高い。本製品が一定の評価を得ることで、Androidタブレットにも同等のアスペクト比を持つ製品が増えてくるのを期待したいところだ。

システムナビゲーションはデフォルトでは「ジェスチャー」だが、天地サイズに余裕があるため、苦手な人は「ボタン」で使用する手もあるだろう