イベントレポート
Qualcomm、MetaとVR HMD向けSoCを共同開発。オーディオ分野でBoseとの協業も
2022年9月3日 06:01
9月2日よりドイツ共和国ベルリン市にあるベルリン・メッセで開催されているIFA 2022の開幕基調講演に、QualcommのCEO クリスチアーノ・アーモン氏が登壇。同社のソリューションなどを紹介した。
その中で、XR向けの半導体を提供するMeta(旧Facebook)と、複数世代に渡るメタバース向け機器の共同開発契約を締結したことを明らかにした。すでにQualcommは「Meta Quest 2」に、同社のXR向けSoCである「Snapdragon XR2」を供給しているが、今後両社はその後継製品向けのSoCなどを共同開発していく。
また、同時に音響機器メーカー「Bose」との協業も明らかにされ、今後BoseがQualcommのSnapdragon S5 Sound Platformを含むオーディオICを、同社のプレミアム製品などに採用する計画だ。
QualcommとMeta共同開発のSnapdragon SoCが将来の「Meta Quest」に採用
Qualcommは、元々携帯電話向けのモデムやSoCなどを開発・提供する形で成長してきた半導体メーカーだ。このため、今でも5Gモデムやスマートフォン向けのSoCに強みがある。Snapdragonシリーズは、世界中のAndroidスマホメーカーに採用されており、この分野でトップシェアを維持している。
近年のQualcommはその強みを、スマホ以外の産業に対して横展開していく戦略を採っている。スマホ向けに開発した技術を、PC、自動車、メタバース向け機器、IoTなど、さまざまな機器に展開していくことで、さらなる成長を目指している。
そうしたQualcommがメタバース向けに提供しているのが「Snapdragon XR」シリーズで、その最新製品となるSnapdragon XR2は、Meta(旧Facebook、メタバースビジネスはMetaが買収したOculus由来)が販売している「Meta Quest 2」(旧Oculus Quest2)に採用されている。
Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏は「非常に大きな発表がある。Metaとの複数世代に渡る長期の提携に関する発表だ」と述べ、Metaの創業者 兼 CEOのマーク・ザッカーバーグ氏の動画を紹介した。
その動画の中でザッカーバーグ氏は「今日はQualcommとの協業の拡張を発表する。VR向けのカスタマイズされたチップセットを共同で開発する。それはSnapdragonの技術を応用したものとなり、我々のロードマップにある将来のQuest製品で採用される」と述べた。
MetaとQualcommが次世代のVR HMD向けのSnapdragon SoCを共同で開発し、Meta製品用に特化してカスタマイズされたものが、将来のMeta Quest製品に搭載されることになる。
AI対応機能などを含む将来のBoseオーディオ製品で、Qualcommのオーディオ向けSoCが採用予定
Qualcommは、米Boseとの協業も発表した。Boseはスピーカーやヘッドフォンなどを提供しているオーディオ機器メーカーで、多くの根強いファンがいることでも知られている。
アーモン氏はBose CEO リラ・スナイダー氏を壇上に呼び、両者の提携に関して説明を行なった。
その中でスナイダー氏は「両社は共同で開発を行なっていく。BoseのエンジニアがQualcommのオーディオICの開発にも協力して、両社の製品群の拡充を実現していく。現代のオーディオは音が出れば良いというものではなく、音質が重要なのはもちろんだが、AIによる新しい機能なども重要になりつつある。例えば、ボリュームの上げ下げなどを今後はAIが自動で認識して行なうなどの機能実装が必要になると考えており、それがQualcommとの提携を決めた理由の1つだ」と述べた。
今後AI機能などを同社のヘッドフォンなどに搭載することなどを視野に入れ、Qualcommをパートナーに選んだというわけだ。
Qualcommは、イギリスのCSR(Cambridge Silicon Radio)社を買収して得たオーディオ関連製品を「Snapdragon Sound」として製品群の拡充を行なっており、3月にはQualcomm S5/S3 Audio SoCという新しいオーディオICを発表している。
今回のIFAでも同社のオーディオICを搭載したワイヤレスヘッドフォンなどが発表されており、別記事で紹介したJabraのElite 5はその例の1つだ。
Boseは今回のIFAではQualcommのICを採用した製品は発表していないが、今後「Qualcomm S5 Audio SoC」を採用した製品を将来のプレミアム向け製品で採用する計画であることを明らかにした。