イベントレポート
AMD、第2世代Ryzen Mobile搭載ノートPCやRadeon VIIを展示
2019年1月13日 09:37
AMDは、CES 2019の会期2日目にあたる1月9日午前(現地時間)に、同社社長 兼 CEOのリサ・スー氏がCESの基調講演に登壇し、同社が今年リリースする予定の7nmプロセスルールで製造されるデスクトップ用第3世代Ryzen、サーバー用第2世代EPYC)、そして2月7日に販売が開始されるRadeon VIIなどについて説明を行なった。
また、AMDはCESに先立って報道発表を行い、12nmプロセスルールで製造される第2世代Ryzen Mobileを発表した。AMDはCESにおける自社ブースで第2世代Ryzen Mobilewを搭載したノートPCを展示した。
7nmにちなんで2月7日に販売開始されるRadeon VII
既報のとおり、Radeon VIIは2月7日から販売開始されることが既に明らかにされている。Radeon VIIはVega2の開発コードネームで知られる7nmプロセスルールで製造されるVegaアーキテクチャに基づいたGPUになる。じつは、Radeon VIIが2月7日に発売されるのは、Vega”2”で”7”nmにちなんでことだと、AMDの関係者は明らかにした。
Radeon VIIは60基のCompute Unit、3,840のストリームプロセッサ、エンジンクロックがベース1.45GHz/ピーク1.8GHz、16GBのHBM2メモリを搭載し、メモリバス幅は4,096bitで最大で1TB/sのメモリ帯域幅というスペックになっており、演算性能は13.8TFLOPSに達する。なお、PCI ExpressはGen 3に対応で、Radeon VIIは1SKU構成になる。
14nmで製造されていた従来のVegaアーキテクチャのRadeon RX Vega 64のダイサイズが495平方mmだったのに対して、7nmのRadeon VIIは331平方mmなっている。また、Radeon RX Vega 64では2スタックしか搭載することができなかったHBM2が、4スタック搭載できるようになり、搭載メモリは16GBと倍になり、メモリバス幅が4,096bitへと広げることが可能になり、最大で1TB/sのメモリ帯域幅というモンスタースペックを実現することができるようになった。
これにより大きな効果が期待できるのが、AdobeのPremiere Pro CCやDAVINCIといったビデオ編集ソフトウェアでの性能向上で、AMDによれば、8K編集時にRadeon RX Vega 64に比較してPremiere Pro CCで1.29倍、DAVINCIでは1.27倍の性能向上が期待できるという。いずれもGeForce RTX 2080を上回っているという。
AMDとしては、メモリが16GBになったことで、ビデオ編集、OpenCLやDirectComputeなどを利用した汎用演算での性能向上が大きいということをアピールしており、今後Microsoftが導入する計画のWindows ML(Microsoftが定義したWindowsにおけるマシンラーニングのAPI)を利用してゲームでのマシンラーニング活用などで、NVIDIAのDLSSなどに対抗していきたい意向だ。
なお、AMDによれば、今回のようにRadeon VIIという「ギリシャ数字」のブランド名のスキームは今回の製品のみのワンタイムのものになるそうだ。今後リリースされる製品は従来のような「Radeon RX Vega 64」などの複数のアルファベットと数字の組み合わせに戻ることになるとのことだ。
既報のとおり、Radeon VIIは、「バイオハザード RE:2」、「Devil May Cry 5」、「Tom Clancy's The Division 2」という3つのゲームがバンドルされて699ドル(税別、1ドル=110円換算で76,890円)でVega2と7nmにちなんだ2月7日から販売される。
第2世代Ryzen MobileはS0i3に対応したモダンスタンバイに対応、搭載ノートPCがAMDブースに展示される
AMDはまた第2世代Ryzen Mobileを発表した。第2世代Ryzen Mobileは12nmプロセスルール(Ryzen 3-3200UとAthlon 300Uは14nm)で製造され、TDP 35W、TDP 15Wという2つの熱設計枠の製品が提供され。前者はゲーミングPC向け、後者は一般的な薄型ノートPC向けという位置づけになる。
今回の世代から、いわゆるS0i3への対応が実現された。S0i3の詳細に関しては別記事を参照して欲しいが、OSが通常の状態(ACPIの規定でS0ステートと呼ばれる)にあるままで、CPUやGPUの電力をほぼオフにするモードで、スマートフォン向けのSoCなどで一般的に実装されている機能だ。
今回このS0i3がようやくAMDのモバイルプロセッサに実装されたことで、Windows 10のモダンスタンバイ(S3メモリスタンバイとは異なり、OSが動作しているままスタンバイになるステートのこと、以前はConnected Standbyと呼ばれていた機能)に対応することが可能になる。とくに2-in-1型デバイスなどではこのモダンスタンバイの実装例が増えてきており、クラムシェル型PCでもスタンバイからの復帰が早いことを評価して採用される例が増えている。このS0i3に対応していないことは、AMDのモバイルプロセッサの弱点だっただけに、このことはPCメーカーにとって歓迎すべきことだろう。
今回AMDはTDP 35WのRyzen 7 3750Hを搭載したASUSの「FX505DY」、Ryzen 5-3500Uを搭載したDellのI「nspiron 5000 15」、Ryzen 7-3700Uを搭載したDellの「Inspiron 5000 14 2-in-1」、Ryzen 3-3200Uを搭載したLenovoの「Yoga 530 14"」など第2世代Ryzenモバイル搭載ノートPCを同社ブースに展示した。