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川崎重工、ヒューマノイド2種と、人も乗れるヤギロボットを「2022国際ロボット展」で公開

 川崎重工業株式会社は、3月9日から11日まで東京ビッグサイトにて開催された「2022国際ロボット展」で、頑健なヒューマノイドロボット「RHP Kaleido(アールエッチピー・カレイド)」シリーズの新型のほか、サイズを小さくして人との親和性を上げた「RHP Friends(アールエッチピー・フレンズ)」、そして最大積載量100kgの4脚ロボット「RHP Bex(アールエッチピー・ベックス)」を公開した。

タフなヒューマノイド「RHP Kaleido」は高所作業をイメージ

 国際ロボット展 川崎重工ブースのステージで1日4回実施されたデモは、3種類のロボットが順番に出てくる形式で行なわれた。

今回公開された3種類のロボット
「RHP Kaleido」。3K現場で人と一緒に働くタフなヒューマノイドをイメージ

 最初に登場したのは「RHP Kaleido」。川崎重工が2015年から開発、2017年に「2017国際ロボット展」で発表した。RHPは「Robust Humanoid Platform」の略で、開発責任者の掃部雅幸氏によれば、今回発表した「RHP Kaleido」は7世代目となる。

 今回のRHP Kaleidoは身長179cm、体重83kg、自由度は34。特徴は腕力で、可搬重量は両腕で60kgあり、ベンチプレスで実際に持ち上げることができるという。歩行速度は時速5km。

腰部分を背面から
3本指のハンド。握力は40kg。一度掴んだら全体重をかけても外れない構造となっているという
180度まで折れ曲がる独自の関節構造を採用した足首

 RHP Kaleidoのデモは、危険をともなう鉄塔や風車のような高さのある建造物での高所メンテナンス作業を想定したシナリオで行なわれた。登場したRHP Kaleidoはゆっくりと歩行。腕立て伏せして体重を支えるだけの腕力があることや、足首関節の可動範囲が大きいことを示した。

 その後、2人の人間作業員にクレーンで吊り上げられて、点検場所のある高所へ。鉄骨を自らの腕で掴み、ハンマー点検を模した動作をしたあと、両腕で掴んだまま、鉄骨から滑り降りて着地した。

川崎重工「Buddy Kaleido」

 RHP Kaleidoのもう1種類のデモは、一本橋を渡り、最後に段差をジャンプして降りるというもの。一本橋を歩くときの腰の動きがおもしろい。

 ジャンプした瞬間をスローモーションで見ると、重心位置はそれほど上がっていないが、滞空時間はそれなりにあること、着地後の揺れとその制振の様子が分かる。

川崎重工「RHP Kaleido」一本橋歩行&ジャンプ
川崎重工「RHP Kaleido」のジャンプ スローモーション

「RHP Friends」は車椅子押しやダンスで人との親和性をアピール

「RHP Friends」。5本指の手とディスプレイによるツインアイを持つ

 続けて出てきた2体目のヒューマノイドは「RHP Friends」。身長は168cm、体重は54kgと、RHP Kaleidoよりもだいぶ軽く、小さい。

 全身の自由度はハンド10軸を含めると40。より狭隘な場所で細かい作業をすることを想定して開発しているという。ディスプレイによる目もあり、人とのコミュニケーションも、より重視している。

川崎重工「RHP Friends」車椅子押し
川崎重工「RHP Friends」車椅子押し 横から

 デモでは介護分野での活用を想定し、人とコミュニケーションしながら高齢者が乗った想定の車椅子を押したり、全身協調制御をアピールするためにダンスを踊る様子が紹介された。

 ダンスについては、モーションキャプチャによるティーチングが使われている。実際に人が踊った動作をモーションキャプチャで取り込み、それを、産業技術総合研究所が開発して、現在は株式会社コレオノイドが事業化しているロボット用統合GUIソフトウェア「コレオノイド」の動作振り付け機能を使ってロボット用に変換した。

川崎重工「RHP Friends」 ダンス
制御ソフトウェアには「mc_rtc」と「コレオノイド」を採用

 川崎重工のヒューマノイド開発は、東京大学のほか、産業技術総合研究所(AIST)とフランス国立科学研究センター(CNRS)によって設立された国際共同研究ラボ「AIST-CNRSロボット工学連携研究ラボ」とも連携して進められている。ロボットの制御ソフトウェアフレームワークには「mc_rtc」が使われている。

ヤギのような4脚ロボット「RHP Bex」は可搬重量100kg以上

「RHP Bex」。重量物を運べる4脚ロボット

 最後に登場したのはウマ、あるいはヤギのような4脚ロボット「RHP Bex」。ヒューマノイドよりも早く実用化することを想定して開発された多脚のロボットで、体重が80kgほどあるRHP Kaleidoの足を4本使っているため、可搬重量は100kg以上となる。

 最大の特徴は4脚を使った歩行モードと、車輪移動モードの2つの形態を使い分けること。脚の膝部分に受動輪、そして胴体中心に駆動輪を内蔵しており、でこぼこした不整地から平らな整地に移動したら、車輪移動モードに変形して移動する。

 デモでは不整地である畑での作物収穫の仕事を手伝ったり、人が乗りこんでロボットを操縦する様子を実演した。農業のほか、建築現場での荷物の搬送や、プラントでの点検などといった業務での活用を想定しているという。

川崎重工 「RHP Bex」荷物運び
川崎重工 「RHP Bex」人が乗る

 脚歩行の動作生成には、アスラテック株式会社のロボット制御システム「V-Sido(ブシドー)」を用いている。V-Sidoは、人からの指示(搭乗者によるハンドル操作、もしくはジョイスティックなどを使った遠隔操作)と、ロボットに搭載されたジャイロなどのセンサー情報を基に、ロボットの歩行動作をリアルタイムに生成する。また、歩行動作生成の応用で、屈伸などの全身動作も生成しているという。

「V-Sido」を使うことで、人が乗ってリアルタイム操作しながら歩かせることができる

サービスロボット分野にも本格参入

双腕自律走行サービスロボット「Nyokkey(ニョッキー)」

 このほか同社は「Nyokkey(ニョッキー)」という双腕の自走サービスロボットも開発している。長い両腕と、ニョキッと伸びる首が特徴のNyokkeyは重さ75kg、腕の自由度は6。可搬重量は10kg。

 開発を始めたのは2021年春頃、ハードウェアができたのは夏頃と、高速に開発した。開発担当者の久保仁氏によれば、現在はあくまでプロトタイプなので、すべてを1から自社だけで作ることにはこだわらず、まずはかたちにして用途を開発することを優先しているという。

ドアを開けつつ、荷物が落ちないようにキープすることも可能
長い両腕を使って押すドアも引くドアも開けられる

 すでに藤田医科大学病院で医薬品や検体などを運んだり、夜間に患者の様子を確認するといった実証実験を行なっている。今回は、無人VTOLや同じく川崎重工が開発中の配送ロボットと連携して荷物を倉庫から輸送するイメージのデモも実施していた。

 このほか飲食店における配膳や下膳、ビル内の見回りなどへの応用を考えているという。具体的には、同社が2022年4月に羽田イノベーションシティに開設予定の「Future Lab HANEDA」内のカフェで、Nyokkeyが配膳や下膳する実証を行なうとのこと。

川崎重工 双腕型自走式ロボット「ニョッキー」と搬送ロボット連携