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【年末特別座談会 前編】後藤、笠原、山田のライター3氏に聞く、今年の10大ニュース

 2017年12月19日、毎年恒例の「PC Watch年末座談会」を今年も開催した。

 PC Watch執筆陣がその年のトピックについて振り返り、それぞれの見解を語る趣旨の座談会で、開催は今回で5回目。出席者は笠原一輝氏、後藤弘茂氏、山田祥平氏の3名。司会はPC Watch編集長の若杉と、MCの勝又楓さん。

 おもな内容は、2017年に報じたニュースのなかから、注目度の高かったものを振り返る「今年の10大ニュース」、ライターが今年買った製品のなかからベストバイだったものについて語る「今年買ったもの」コーナー、「プレゼントコーナー」の3つ。本イベントについては、例年どおり生中継もお送りした。本記事では10大ニュースの一部の模様をテキストでお伝えする。

 例年は1~11月までのニュースを振り返ってきたが、今年はPC Watchに掲載した記事のなかから注目度の高いテーマをピックアップしている。

※以下で紹介する視聴者プレゼントは生配信で抽選を行ないましたので、応募はできません。ご了承のほどお願いします。

笠原一輝氏
後藤弘茂氏
山田祥平氏
勝又楓さん(左)とPC Watch編集長の若杉(右)

プレゼントタイム! Acronis True Image 2018 & セルフィーライト

勝又 みなさん、こんばんは。2017年PC Watch年末座談会が始まりましたー!。今回はみなさんにライター生命をかけて業界を本音でぶったぎっていただきます。

笠原 いや、かけないですよ(笑)。

勝又 いえ、かけてください(キリッ)。

若杉 10大ニュースを振り返る前に今回はいきなり視聴者プレゼントの発表です。

勝又 最初のプレゼントはアクロニス・ジャパン様ご提供の「Acronis True Image 2018」と「セルフィーライト」の3セットをプレゼントいたします。

若杉 こちらはバックアップソフトのAcronis True Image 2018で、5台のデバイスにインストールできるサブスクリプションキーとなり、1TBのバックアップ用クラウドストレージがついています。

笠原 僕も応募していいですか?

若杉 ランダム当選なのでもし本当に当たった場合は買い取っていただきます。

 笠原さんは普段どうやってバックアップしてます?

笠原 僕はデータはOneDrive for Businessでクラウドにバックアップしてあり、PCのストレージはまさにそのTrue Imageでバックアップしてます。データについては、クラウドにあるものがマスターで、PC側にあるのはそのキャッシュという扱いです。ただ、クラウドを全面的には信用していないので、PC側にもクラウドの全データをバックアップしていますが。

山田 後藤さんは?

後藤 僕はご存じのとおり、クラウドは信じないので使っていません(笑)。

第10位 Fall Creators Update提供開始

勝又 第10位は、Windows 10 Fall Creators Update提供開始です。特徴としては、Windows Mixed Reality対応。各社がHMD発売、ゲーム性能向上、OSレベルのアンチチート、UDデジタル教科書体搭載、Timelineは非搭載など実装に遅れも、となっております。

若杉 Fall Updateでは色んなアプリや機能が追加されました。代表的なものとしては「Windows MR」に対応して、各社からHMDが発売されました。これはMRというよりはどちらかといえばVRですね。最近ではSteamのアプリも動くようになったようです。

 ゲーム性能の向上や教科書向けのフォント(UDデジタル教科書体)など新しい要素が加わった一方で、当初予定されていた「Timeline」などの新機能は実装が間に合わなかったということもありました。

山田 ぼくが一番うれしかったのは、「OneDrive」の仕様変更ですね。自分がどのクラウド(ストレージ)にファイルを持っているのか、これまではいちいちブラウザを開いてアクセスする必要があったのが、エクスプローラでわかるようになりました。

 Fall Creators Uptate全体で見ても、安定したなぁという印象が強いです。

笠原 「Fall Creators Update」は言いにくいので「RS3」と呼びますが、やはりWindows MRへの対応が一番大きいですよね。それにArm版Windows 10のサポートが入る。僕にとってはこの2点が重要です。

 若杉さんはWindows MRはVRだとおっしゃいました。今のところは確かにVRっぽく使えるし、外形的に見ればそのとおりなんですが、将来的なところを見ると、HoloLensとVRの間にあるのがMRといったところで、ここはただのスタート地点にすぎません。これから色んな要素が増えていくと、もっと「MRらしさ」が実現して、新しい使い方が出てくるんじゃないかと思います。

若杉 ぼくが驚いたのは、Windows MR対応HMDを出しているのが、グローバルなトップメーカーだけじゃなかったことでした。AcerやLenovoのほか、日本のメーカーとして、富士通も参入しましたよね。富士通がこういうものをほかに先んじて出すイメージはなかったので意外でした。

笠原 確かに日本のメーカーはコンサバティブなイメージがあったなかで、最近の富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、色んな意味で攻めてますよね。そこは僕らもいい意味で今後に期待したいところです。

第9位 富士通から世界最軽量ノートLIFEBOOK UH

勝又 第9位は、富士通から世界最軽量ノートLIFEBOOK UH登場です。特徴としては、1月に重量777gで発表、2月に公式重量を761gに変更、10月にKaby Lake-Refresh 4コア搭載で748gで後継機種、となっております

山田 僕は「軽さは正義」だと思っているので、この軽さはそそられるものがありますね。今年のLIFEBOOK UHは富士通さんの意欲的な製品づくりに感動した装置の1つです。

 個人的には、これからのPCがタッチ対応しないのはどうよ、というのはあって、インセルタッチパネルを使えば、そんなに極端に重くなるわけではないだろうからがんばってほしいなと思います。

後藤 僕にとっても購入候補の1つですね。ただ、カンファレンスで使うためには11時間以上駆動できる必要があるので、リアルにガンガン使って、11時間バッテリが持つのであれば、買いたいと思っています。今、ぼくが「VAIO Pro 11」を使い続けているのは、その条件をクリアするのが結局これしかないからです。

山田 机のないカンファレンスだと、13型って膝の上に置くしかないので、大きいんですよ。だからこのサイズ感っていうのは、取材の機動性という点では良いんですよね。富士通さんも「LIFEBOOK Lite」的なものを出してくれたらいいのになって思います。

後藤 それだと市場が小さくなってしまうから難しいかもしれませんね。

 11型サイズで700g台というのは僕らにとって必須条件ですが、われわれのようなニーズを持つ人がどのくらいいるのかという話です。僕の場合はそれに加えて拡張バッテリ込みで11時間駆動する条件が加わります。アメリカのカンファレンスは朝8時にはじまって、遅いやつだと21時過ぎに終わったりもするので、その間、充電なしで駆動できる必要があります。

山田 最近のノートPCも予備バッテリを持ち歩いて、交換できればいいのにね。

笠原 僕はその考え方は古いと思っていて、新しいノートブックの世代を考えると、USB PDで充電するのがもう当たり前になりつつありますよね。モバイルバッテリとUSB Type-Cのケーブルを持ち歩いて充電するケースが増えてます。Macbook Proのユーザーさんなんかはそんな感じです。

 だから世の中的には、内蔵のバッテリは6~8時間くらい持てばいいんじゃないのって人のほうが多いんじゃないかなとは思いますね。

後藤 古さは自覚してます(笑)。

山田 「モバイルバッテリで充電したい」というニーズでいうと、機密の多いデータを扱う人って、人前でPCを開けないから、「スタバでちょっと充電する」ってことができないんですよね。そうなると、街中で充電できるところは本当にかぎられてくるらしいんです。でも外回りには出なきゃいけない。

笠原 LIFEBOOK UHは、バッテリの容量をかなり削った結果、軽量化できている側面があるので、そこをどう評価するか。たとえば3時間だけ動けばいい、という人なら十分満足するでしょうが、僕らのように、内蔵バッテリだけでもっと長時間使いたい人には、若干厳しいかな、といった印象です。

 もちろん今後USB PDが普及すれば、そういった点も解消されるでしょうけれどね。

山田 でもこの機種って60Wないと充電できないので、仮にモバイルバッテリで充電するとなると、そこにも課題が残りますよね。60Wを給電できるモバイルバッテリとなるとまだまだ選択肢がかぎられます。

笠原 45Wで充電できるようになってほしいですね。

山田 つないでおけばPCのバッテリが減らない、くらいでいいんだけど。

後藤 今後、PCをどのくらい省電力化できるかって観点でいうならば、これから先はそれほど望めないですね。半導体デバイスのチップ自体が「絞り尽くした」レベルで省電力化しているので、パネル(基板)の部分で技術革新がないかぎりは難しいでしょう。

第8位 ThinkPad 25周年で復刻モデル登場

勝又 第8位は、ThinkPad 25周年で復刻モデル登場。特徴としては、7列キーボード復活の25周年特別モデルとなっております。

若杉 ThinkPadといえば編集者やライターなど、業界でも愛好家の多い製品ですが、ライターのお三方はこの復刻モデルをどう見ますか?

笠原 この記念モデルを買った人からは、コストパフォーマンスがよかったという話は聞きますし、25周年モデルとしては妥当な気はします。でも、ハイエンドユーザーとしては、スペック的にもっとがんばってほしかったな、という気持ちはあります。

 たとえば「ThinkPad T470」、「ThinkPad X1 Carbon」、「ThinkPad X1 Yoga」あたりのハイエンドモデルをベースとした25周年モデルだったらよかったのにな、と思ってしまいます。

後藤 僕はこういうPCってよくわかんないんですよ(笑)。

若杉 後藤さんにもよくわからないPCというのがあるんですね(笑)。

後藤 もちろん中身のデバイスはよくわかるんだけど、(製品としては)自分の中の優先順位が低くて、自分では使わないし、人に使わせる話もできないし。

山田 初期のThinkPadには「できるThinkPad」というのが付いててね、それ僕が書いてたんだけど、せっかくならそれも復刻してほしかったな。

笠原 それ単なる仕事の要求じゃないですか(笑)。

山田 いやいや。そのくらい古くからThinkPadを使ってるという前フリだったんだけど(笑)。ThinkPadは世に出たときから、持ち運びできるデバイスに対して僕達が求めることを、同じように追求していた。僕はあまり熱心なユーザーではなかったけれど。

 まあそれはともかく、復刻版以降のことについて話を聞くと、キーボードに関するこだわりも含めて、水面下では色んな開発が進んでいるらしいので、来年は、復刻でできなかったことが新たな形で出てくるかもしれないんですね。その辺はこれからの楽しみかな。

笠原 日本人的にはこの「25周年」ってキリが悪くてあまりピンとこないかもしれませんが、英語圏では「Quarter」って結構重要な概念なんですよね。

若杉 ちなみにインプレスも今年で25周年です。

笠原 めでたい!

 僕はThinkPadの25周年モデルが出たときに、LenovoのデザイナーのDavid Hillさんにインタビューしたのですが、「25年間ずっと同じものをデザインしているノートブックの会社というのはほかにはない」とおっしゃるんですね。VAIOにしろ富士通にしろ、Appleでさえも外観がどんどん変わっている。もちろん変わることは良いことなのだけれども、ThinkPadに関しては筐体の基本的なデザインが25年間ほとんど変わってないところがすごいなって思います。

プレゼントタイム! ドスパラ「GALLERIA Mini 1060」

勝又 続いて次のプレゼントタイムです! ドスパラ様ご提供の「GALLERIA Mini 1060」を差し上げます。

笠原 すごいスペックですねこれ。僕も応募していいですか?

勝又 当たったら自腹ですよ(笑)。今回は、ドスパラ広報の勝亦さんがお越しいただいているので、ご紹介をいただきたいと思います。

ドスパラ広報勝亦氏(左)

勝亦 こちらの製品のすごいところは、この小ささでデスクトップ版のCore i7-7700とGeForce GTX 1060 6GBを搭載したゲーミングPCとなっているところです。場所もとらないので、ご家庭でも邪魔になりません。

 よく廃熱についてご質問いただきますが、筐体4面がメッシュになっており、デュアルファン構成で廃熱に対応。前面もヘアラインデザインでスタイリッシュになっています。こちらのモデルは税別164,980円となっております。

山田 実物を見ると、驚くほど小さいですね。

勝亦 容積はだいたいペットボトル2本分程度で、重量は2.1kgです。

第7位 新Surfaceシリーズ国内発売

勝又 第7位は、新Surfaceシリーズ国内発売。特徴としては、4,096段階筆圧検知の新Surface Pro、シリーズ初クラムシェルのSurface Laptopで、OSはWindows 10 S、Surface Book 2が日米同時発売、となっております。

若杉 今年はSurfaceの新製品が4つ出ました。

 Surface Proは「4」から「無印」になって、スペック的にも順当な進化をしました。

 新機軸の製品としては「Surface Laptop」が発売されました。OSも「Windows 10 S」という、UWP(Universal Windows Platform)アプリしか動かない特殊な仕様です。

 Surface Book 2は既存の製品のバージョンアップ版ですが、日米同時に発売したのは、日本的には画期的だったのではないかと思います。

笠原 今年のSurfaceはよくできてるものばかりだったと思います。実質「5」のSurface Proは、旧モデルをブラッシュアップして良いモデルに仕上がっています。とくにペンの書き心地がとても良いですね。

 Surface Laptopもラップトップとしての完成度は高いです。Surfaceのなかでは比較的安価に手に入るというのもポイント。学生さんにもいいかもしれません。

 Surface Book 2は、旧モデルの弱点だったUSB Type-C非搭載といった部分をうまくカバーしていて、個人的にも大好きな機種です。

若杉 後藤さん的にはこれも興味の範疇外ですか?

後藤 おっしゃるとおり、モノとしては興味の範疇外ですが(笑)、「PC」というモノ自体が技術革新を起こしにくい状態になってしまっているなかで、出来合いのSoCの上で、どのように新しいものを出すかという意味では、うまくやっていると思います。

 これは良く言えば「成熟している」と言えるし、あるいは「硬直している」とも言えます。結局同じモノしかできない。差異を作るのが難しい状況です。

笠原 SoCのベンダーさんも同じようなことしか言ってないですしね。

若杉 祥平さんはどうです?

山田 Surface Laptopは、今まで出たSurfaceのなかで一番好きかもしれない。こんなことを言ったら元も子もないかもしれないですが、キーボードと画面が外れるPCって本当に意味があるの? と思うんですよ。

笠原 意味はありますよ(笑)。むしろそうじゃないPCなんてPCじゃないとまで言いたい。ペンもタッチも必要だし、いろんなものがあって、生産性が上がっていくわけじゃないですか。

山田 でもさ、膝上に乗せたSurfaceが床に落下していくのをこれだけ目撃するってことは、本当に分離できる必要があるのか疑問を抱いてしまうよ。カンファレンスに行ったら1日に何回も見るよ。

笠原 いやいや見たことないですよ。

山田 まあもうちょっとあとで詳しく話そうかな。

第6位 USB3.2が策定。しかし混乱も

勝又 第6位は、USB 3.2が策定。しかし混乱も。特徴としては、転送速度を2倍に引き上げた「USB 3.2」が策定、コネクタは統一されるも、機能や給電能力に差があり混乱もあった、となっております。

若杉 USB 3.2では最大で20Gbpsの転送が可能になります。コネクタの形状もUSB 3.1くらいからType-Cへの統一が進んでいますよね。

 Type-Cのコネクタはリバーシブルで給電もできるし、いろんな機能も使える。パッと聞くと便利そうに見えるのですが、じつはケーブルや端末によって、速度や機能、給電能力に差があって、下手をするとケーブルによってデバイスが壊れかねない状況です。今年はUSB 3.1を謳う製品の現状を検証する企画もやったりしました。

笠原 確かに、USBの規格そのものが難しくなっちゃっていますね。

 メインの規格はUSB Specification(Universal Serial Bus Specification)なんですけど、それはデータ通信についてしか書いてなくて、このほかにType-Cのスペックと、USB Power Deliveryのスペックもあって、この3つで成り立ってるという非常に混沌とした状況なんです。

 僕らは取材してるから「ああ、3つくらい規格があるんだ」ってわかるけど、一般の方はUSB Specificationの規格とUSB PDの規格は別と言われても、「はあ?」って感じですよね。

 そもそも規格が3つもあるのが根本的な問題なんですけど、そこは(NPOの)「USB Implementers Forum」(USB-IF)がなんとかしようとしていて、規格やロゴの認証を作ろうという動きがありますし、もちろん時間はかかりますが、そういう状況はこれからじょじょに改善されていくんじゃないかと思います。

若杉 過渡期ということでしょうね。

山田 ケーブルの両端に同じプラグがついてるということ自体はすばらしいことだと思います。データ通信も充電も全部同じケーブルでOKってことですから。でも両端にType-Cのプラグがついていたって、じつは中身がUSB 2.0だったりするかもしれないし、あるいはUSB 3.0かもしれない。今、「そのケーブル」は「どの規格」なのか、見た目からは判別がつかないんです。

 USB 3.0が出た頃はプラグの中の色を青くしようという試みがあったけど、それも結局は青と黒で混在しているし、うまくいかなかった。

 なかにNFCを組み込んで、端末に近づければケーブルの素性がわかるようにする手もあります。E-Markerを入れると高くつくので難しいところもありますが……。

 でもせめて、たとえばプラグのところに小さくでもいいのでQRコードかなにかを印刷しておいて、スマートフォンで読み込むと、型番とか規格がわかるようにはなってほしいなとは思いますね。

笠原 将来的には、USB Type-Cのコネクタが飛行機とか鉄道の座席についてる世のなかになるんじゃないかと予想しています。5年後くらい経てば飛行機には載るんじゃないかなあ。いずれ新幹線とかでも使えるようになれば、みんな使うようになると思います。やっぱり、過渡期だし、としか言えないですね。

後藤 すごく大枠の話をすると、コネクションってまず「有線」と「無線」とがあって、無線に置き換えられるなら置き換えてもいい。でも無線は帯域が制約されているので、有線のほうが帯域を広く使える点で有利だったりもする。でも最終的にはいろんなものが無線でつながっていくはずです。それこそパネル(基板)同士が無線でつながるかもしれない。そういうことがあり得る世界だとは思います。

笠原 まあ実際は、無線給電もなかなか普及しないですよね。

山田 確かに無線給電は有線と比べれば遅いけど、僕は自宅では無線で給電してるよ。

笠原 ぼくも使ってます。

山田 でも寝てるうちに充電できる程度には使えるわけだし、これに慣れたらケーブルにわざわざつながなくはなるよね。

笠原 「Qi」の難しいところは、置くポイントがズレていると、充電されてなかったりするところなんですよね。

第5位 Arm版Windows発表

勝又 第5位は、Arm版Windows発表です。特徴としては、Snapdragon上で動くWindows 10、Win32アプリも動作するフルバージョン、ASUS、HP、Lenovoなどから搭載機発売、となっております。

若杉 出ること自体は、昨年の12月頃から言われてきましたが、2017年12月の上旬、改めて「Snapdragon 845」とあわせて、正式発表されました。もう笠原さんに記事は書いていただきましたが、この場で改めて解説いただければと思います。

笠原 ポイントはいくつかありますが、1つは「性能的にそこそこ使える」というところ。いままでのIAで使ってたWindows 10でいうと、Cherry Trailよりは速く、Core i3よりはちょっと遅いくらいのイメージで動きます。Officeとかを使ってる分にはそこそこ動くので、モバイルならそれで十分でしょう。

 一番の特徴はAtomと比べてバッテリが持つところですね。Snapdragonにはモデムが内蔵されているので、それがじつは省電力に効いているというのも理由の1つです。スタンバイ時の省電力性能もAtomより優れています。そこが差になっているのかな、という気はします。そういう意味ではモバイルな人にはいいんじゃないかなと思います。

 唯一問題なのは、Win32の64bitアプリが動かないところです。バイナリトランスレーターの機能が、Win32の32bitしか動かないので、たとえばAdobeの「Premiere Pro」のように、64bit版しかないアプリを使っている人は困るでしょうね。

 ただマイクロソフトによると、2018年にはArm 64bitのコンパイルができるようなSDKを配布すると言っているので、たとえばAdobeさんがARM64bit版のPremiere Proを作る決断をすれば、その問題は解決しますが、それまでにどのくらいかかるのかがまた問題ですね。

後藤 諸悪の根源は、Arm 32bitと64bitで、まったく命令セット体系が違うところですね。バイナリトランスレーター自体の問題。世のなかにこれだけ命令セットアーキテクチャがあって、今生き残っているのがよりによって一番複雑なx86系とArm系の2つだったっていうところが皮肉なところなんですよ。

 Armの命令セット体系は、32bitで複数の命令セットを混合したものでした、64bitでそれを全部リセットしてきれいにしたんだけど、それは過去のArmの命令セットとはまったく違ったものでした。

笠原 バイナリトランスレーションもいろいろ工夫していて、OS側のDLLをArm版のをできるだけ使ってトランスレーションしているので、大昔、DECアルファ版Windows NTの頃に見かけたようなつらさはないですよね。

後藤 まあ、よくやったよね、という感じはします。

山田 僕が心配しているのは、「モバイルだからこれでいいでしょ」って言って、メモリを4GBで出してきたりすることです。

笠原 そうですね。「Surface 3」のときはOSがフルバージョンのWindows 8.1でしたが、メモリが最大で4GBでした。性能的にCPU(Cherry Trail)は問題なかったのだけど。あれが8GBだったら、ユーザーの感覚はだいぶ違ったのではないかなと思います。

 Arm版Windowsの搭載機としては、どのメーカーからもメモリを8GB搭載しているモデルが出るので、それを選べばまあ問題はないのかなと。

後藤 トランスレーターにはトランスレーター分のキャッシュが必要なので、その意味でもメモリは余裕があったほうがいいですね。

山田 わざわざ4GBのSKUなんか作らなければいいのに。

笠原 それはマーケティング的な問題で、メモリ4GBでストレージ64GBのモデルを作らないと、599ドルって値付けができないんですよ。だから、どうしてもそういうモデルが出てきちゃう。

 最上位のモデルは799ドルなので、僕らの読者が買うなら、メモリ8GBでストレージ256GBのモデルをおすすめしたいところですね。

若杉 ちょっと話が脱線しちゃいますが、メインメモリが4GBしかないっていうのは本当につらいんですよ。僕らはメーカーさんからPCをお借りして評価する機会も多いのですが、そこそこ良い機種、フラグシップに近い機種であっても、メモリが4GBだったりするんです。

 それでなにが起こるかというと、OSは普通に動くのだけど、Webブラウザ、とくに「Google Chrome」を使ってみるだけでPCがすごく重くなる。評価機としてそれを渡されてしまうと、僕らはそれを使った率直な感想として「重い」としか書きようがないんです。でもそれって試せばすぐわかることですよね。もしかして、それを検証せずに4GBのまま出してるんじゃないかなって思ってしまいます。

笠原 貸出機のメモリは8GB以上にしてくれと、広報の人に訴えたいということですね。

山田 でもコストの問題で「4GBでいいや」と思って買う人も多いと思うんですよね。その人が実際に使ってみて、重くて全然だめじゃん、ってなってしまったら、気の毒じゃないですか。

笠原 PC Watch読者の皆様は、8GB以上にメモリを盛りましょう。個人的には、16GB以上をおすすめしたいところです。

後藤 すごく昔は、36カ月間でDRAMの容量が4倍になったんですよ。それから24カ月間で2倍になる時期があって、今はどうなっているかというと、DRAMの容量はほとんど上がらないんです。微細化が停まってしまっているから。

 DRAMとNANDを兼業しているところは開発リソースをNANDに振ってしまっている事情もあるのですが、いずれにせよ、DRAMはセルを小さくする物理的な限界に達してしまっていて、ここからさらに小さくする方法もあるにはあるのですが、そうするとコストが上がってしまう問題があるので、これから先、DRAMの容量はほとんど増えません。だから実際のところ、搭載メモリの標準が4GBの時代というのはまだまだ続くでしょうね。

第4位 超小型PCが人気。ゲーム機の小型版も登場

勝又 第4位は、超小型PC人気。ゲーム機の小型版も登場です。代表例としては、モバイラー待望のクラムシェル型UMPC「GPD Pocket」、ゲーマー向け「GPD WIN 2」、NUCよりも小さい手のひらサイズの超小型PCマウスコンピューター「MousePro-C100PV」、Windows 10搭載8.2型クラムシェル「KS-PRO」、ファミコンが手のひらサイズになって復刻、となっております。

若杉 ここでは、今年出たなかでアクセスの多かった製品をリストアップしてみました。昔からPC Watchの読者はモバイルPCが好きみたいで、たとえば「VAIO type P」とかが好きな人が多くて、それに近いフォームファクタで出た「GPD Pocket」はすごく注目度が高かった。

 今後はおそらくSnapdragonを搭載して、OSにArm版Windows 10を採用した8型くらいの製品も出てくると思います。「ニンテンドークラシックミニ」も売れてるみたいですね。

 お三方のなかでは、この辺の製品を買われた方はいらっしゃるんですか?

3人 買ってないです。

笠原 GPD Pocketは、個人的にはすごくおもしろいと思うんですが、僕の使い方だと、アプリケーション自体がクラウドになってしまっていて、PCとスマートフォンで同じアプリが動いているので、同じことができちゃう。机に座ったときはThinkPadを開いて、電車の中とかではスマートフォンで事足りてしまっているので、GPD PocketのようなサイズのPCが必要かと言われると、正直今の使用シーンだと、ないですね。

若杉 13型と5型で十分だということですね。

笠原 その間に10型のタブレットを挟むくらいですかね。

山田 GPD Pocketは、昔の僕なら飛びついたかもしれないですね。重量も480gだし、いい感じだなあ。

若杉 祥平さんには文字が小さすぎて無理じゃないですか?

山田 300%くらいまで拡大すればいけるかもしれない。

笠原 祥平さんって、なんかいつも画面の文字がでかいですよね。iPhoneとかも。

山田 でもiPhoneって、いやがらせかって思うくらい字が小さいよ。

若杉 祥平さんの画面って、横5文字くらいですよね(笑)。あいうえおで改行されちゃうくらい。

山田 それは言い過ぎだと思うよ。7文字くらい。

祥平さんのスマホの画面

後藤 うーん年寄りスマートフォンだ。

若杉 らくらくフォンですね。

 「GPD WIN 2」にはゲームパッドが内蔵されてて、ちょうどニンテンドーDSみたいな感じでゲームができるWindows機なんですが、その新バージョンとして、Kaby Lake-Yを搭載したものが出るんです。今度取材をする予定があります。来年もいろんなフォームファクタのPCで盛り上がってくれればいいなと思いますね。

プレゼントタイム! マウスコンピューター「NEXTGEAR-C ic100BA1-SP」

勝又 次のプレゼントは、マウスコンピューター製ゲーミングPC「NEXTGEAR-C ic100BA1-SP」です。

笠原 僕もリツイートしました。

勝又 さすが速いですね(笑)。

若杉 なんでリツイートだけそんなに速いんですか? 原稿はそんなに速くないのに。

笠原 そういう鋭い指摘はやめてください(笑)。

勝又 こちらは、マウスコンピューター「G-Tune」担当の安田さんに製品を紹介してもらいたいと思います。

マウスコンピューター安田氏(左)

安田 本製品は省スペースかつハイスペックなPCです。外箱のデザインもおしゃれになっています。

勝又 軽いです。

安田 外箱込みでも3kgくらいです。本体だけだと1.6kgです。LANパーティのようなイベントにも人気で、貸し出しもさせてもらってます。私自身も持ち込んでみましたが、普通のスーツケースに余裕で入ります。

山田 スーツケースに入ればなんでもモバイルなんだよ(笑)。

若杉 この製品なら壊れないんでスーツケースで運んでも大丈夫です。

安田 CPUはCore i7-7700HQで、GPUはGeForce GTX 1060 6GBなので、4Kなどでよっぽど重いゲームをやるのでなければ、この1台でだいたいのゲームも事足ります。

 インターフェイスも充実していて、USB 2.0と3.0が4つずつ、3.0 Type-Cが1つあります。これはVRのHMDの接続を想定してのものです。


※後編に続く