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岐阜大、致死率ほぼ100%の狂犬病ウイルスの弱点を発見

今回研究対象となった、L-Pタンパク質との結合面から離れたところにあるNPYNE配列。このNPYNE配列が弱点となりうる

 岐阜大学や北海道大学の研究チームは12日、狂犬病ウイルスの弱点を発見したと発表した。これにより狂犬病治療薬の開発が進むと期待される。

 狂犬病は、同ウイルスを保有する犬、猫、コウモリなどに噛まれたり引っかかれたりするとで傷口から侵入、もしくは極めて稀だが濃厚なウイルスによる気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症。

 一度発症すれば特異的治療法はなく、致死率はほぼ100%とされる危険なものであるため、4類感染症全数把握疾患に定められており、診断医師は直ちに届け出る必要がある。日本では1957年以降発生しておらず、一部ほかの島国や地域でも根絶されたが、2002年にイギリスでコウモリからの伝染で死亡者が発生する例もあり、油断できない。

 狂犬病ウイルスの中では、Lタンパク質がPタンパク質と結合することでRNA合成酵素として機能し、ウイルス増殖の中心的な役割を担う。そのため、Lタンパク質とPタンパク質の結合(L-P複合体)を阻害することが治療薬開発戦略の1つとして有望視されてきた。

狂犬病ウイルス粒子中のL-P複合体の模式図。このL-P複合体がウイルス増殖の中心的な役割を担う

 最近はL-P複合体の立体構造が決定されたことで、Lタンパク質のC末端領域がPタンパク質との結合面を形成することが明らかになっていた。しかしC末端領域内の結合面を形成しない部位がどのような役割を持つのかが不明だった。

 今回の研究では、以前より明らかになっていた、Pタンパク質結合能とRNA合成酵素機能の両方にとって重要となるLタンパク質のNPYNE配列に注目。立体構造におけるNPYNE配列の位置を確認したところ、C末端領域のPタンパク質との結合面から遠く離れた部分に位置していることが分かり、結合面でない部分も機能的に重要であることが明らかとなった。

 さらに、NPYNE配列中のアミノ酸残基の機能的重要性を分析したところ、Lタンパク質結合能およびRNA合成酵素機能、安定性のそれぞれに重要となることが分かった。つまり、C末端領域を標的としたL-P結合阻害の化合物が発見されれば、効率的にウイルス増殖を抑制する狂犬病治療薬となる可能性が期待されるとしている。

NPYNE配列中のアミノ酸残基の機能的重要性