特集
USB Type-Cの挙動を探る(ディスプレイ編)
~Type-C搭載ディスプレイの映像出力&給電機能をチェック
2017年10月19日 06:00
データ転送や給電にとどまらず、映像信号の伝送も行なえるのは、USB Type-Cの大きな特徴の1つ。それゆえ、USB Type-Cポートを搭載したディスプレイとノートPCをType-Cケーブルで接続すれば、ディスプレイに映像を出力しつつ、ノートPCをディスプレイから充電できてしまう。1本のケーブルでまとめて行なえてしまうのがじつに便利だ。
とは言え、それらが成立するにはケーブルや機器が条件に合致している必要があり、そうでなければ映像出力だけしか行なえなかったり、逆に給電しか行なえない場合もあり得る。今回はUSB Type-Cポートを搭載したEIZOの27型ディスプレイ「FlexScan EV2780」を例に、ケーブルやノートPCによってどのように挙動が変わるかを見ていこう。
映像出力&給電を同時に行なうための条件とは
EIZOの27型ディスプレイ「FlexScan EV2780」は、背面にUSB Type-Cポート×1を搭載しており、ノートPCから出力された映像を大画面で表示できる製品だ。これだけなら従来のHDMIなどがUSB Type-Cに変わっただけだが、本製品は映像出力と同時にPCに対する給電を行なえるのが特徴だ。1本のケーブル上で、映像信号はPCから本製品へ、電力は本製品からPCへと、逆方向に流れるのが面白い。
こうしたことから、外出先からノートPCを持ち帰るたびに、充電のためにACアダプタにつなぎ、外部出力のためにディスプレイケーブルにつなぎ……と複数のケーブルの抜き差しを行なっている人には、たいへん重宝する製品だ。
もっとも、USB Type-Cからの出力は30Wまたは15Wということで、前回のアダプタの検証のときに、最大出力30WのAnker製アダプタで充電が行なえなかった「ThinkPad X1 Carbon」は充電が難しいであろうことは容易に想像できる。
このほか、メーカーサイトの動作確認情報を見ると、製品によってはUSB Hub機能が使えなかったり、OS上でディスプレイ名が正しく表示されないといった細かい問題もあるようだが、今回はひとまず映像表示と電源供給が同時に行なえるかに絞り、PCとケーブルを取り替えながら、実際の挙動を見ていこう。
使用するPCは前回も使用した、Appleの「MacBook Pro 15インチ(2017)」(以下MacBook)と、レノボの「ThinkPad X1 Carbon(2017)」(以下ThinkPad)の2台。接続に用いる両端Type-Cのケーブルも前回と同じ9種類(下記参照)に加え、本製品に添付されているC-Cケーブル、MacBook添付のC-Cケーブル、合計11種類についてチェックする。
略称 | メーカー(ブランド) | 品番(リンク先は製品情報) | 長さ | 規格 | 最大電流 | USB PD | USB IF認証 | その他 | Amazonで購入 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AB | AmazonBasics | AKL6LUC017-CS-R | 0.9m | USB 3.1 Gen 1 | 表示なし | 表示なし | - | - | リンク | |
AK | Anker | PowerLine+(AK-A8187091) | 1.8m | USB 2.0 | 表示なし | ○ | - | PowerIQ対応 | リンク | |
C | Cable Matters | 107002-BLK-0.5m | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 表示なし | 表示なし | ○ | Thunderbolt 3 (40 Gbps) | リンク | |
E1 | エレコム | USB3-CC5P05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 5A | ○ | ○ | - | リンク | |
E2 | エレコム | USB3-CCP05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 3A | ○ | ○ | - | リンク | |
E3 | エレコム | MPA-CC13A05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 1 | 3A | ○ | - | - | リンク | |
E4 | エレコム | U2C-CC5P05NBK | 0.5m | USB 2.0 | 5A | ○ | ○ | - | リンク | |
E5 | エレコム | U2C-CC05BK | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | - | リンク | |
M | 丸七 | VM-07 | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | - | - |
まずMacBookだが、ディスプレイの出力を30Wに設定したときは、映像表示とMacBook本体への充電が同時に行なえるケースが多かったが、出力を15Wに切り替えると、どのケーブルでも充電ができなくなった。チェッカーの表示では4.1~4.7V/2.86Aの電力は供給されていることになっているが、MacBook側の表示では「充電中」のステータスが「いいえ」となったままで、バッテリ残量は減る一方だ。
また、30Wに設定している場合も、ケーブルがUSB 3.1に対応しない【AK】【E4】【E5】【M】では映像の出力が行なえなかった。MacBook付属のケーブルもこれらグループと同様の症状で、30Wの場合は給電のみで映像出力はNG、15Wだと映像出力・給電ともにNGだった。その一方で、本製品添付のC-Cケーブルは30Wでは映像出力と給電ともに対応し、15Wでは映像出力のみと、【AB】【C】【E1】らUSB 3.1対応のグループと同じ挙動だった。
略称 | メーカー(ブランド) | 品番 | 長さ | 規格 | 最大電流 | USB PD | USB IF認証 | 映像出力 | 給電 | 映像出力 | 給電 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AB | AmazonBasics | L6LUC017-CS-R | 0.9m | USB 3.1 Gen 1 | 表示なし | 表示なし | - | ○ | 19.6V/1.45A | ○ | 4.55V/2.86A |
AK | Anker | PowerLine+(AK-A8187091) | 1.8m | USB 2.0 | 表示なし | ○ | - | × | 19.4V/1.45A | × | 4.19V/2.86A |
C | Cable Matters | 107002-BLK-0.5m | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 表示なし | 表示なし | ○ | ○ | 19.6V/1.45A | ○ | 4.62V/2.86A |
E1 | エレコム | USB3-CC5P05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 5A | ○ | ○ | ○ | 19.6V/1.45A | ○ | 4.48V/2.86A |
E2 | エレコム | USB3-CCP05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 3A | ○ | ○ | ○ | 19.6V/1.45A | ○ | 4.53V/2.86A |
E3 | エレコム | MPA-CC13A05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 1 | 3A | ○ | - | ○ | 19.6V/1.45A | ○ | 4.55V/2.86A |
E4 | エレコム | U2C-CC5P05NBK | 0.5m | USB 2.0 | 5A | ○ | ○ | × | 19.6V/1.45A | × | 4.60V/2.86A |
E5 | エレコム | U2C-CC05BK | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | × | 19.6V/1.45A | × | 4.51V/2.86A |
M | 丸七 | VM-07 | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | × | 19.5V/1.45A | × | 4.37V/2.86A |
では、一方のThinkPadはどうだろうか。前回の実験で、ThinkPadは最大出力30Wのアダプタでは充電が行なえないことが判明しているが、今回の実験でも、30W、15W、どちらの場合もやはり充電は行なえなかった。ThinkPadのユーティリティ上ではつねに「放電中」という表示のままだ。
映像出力については、両者をつないでいるケーブルがUSB 3.1対応であれば、問題なく行なえた。USB 2.0対応の【AK】【E4】【E5】【M】、およびMacBook付属のケーブルでは先程のMacBookの場合と同じく、映像出力は行なえなかった。いずれの結果も、これまでの実験から予想されうる内容だ。
略称 | メーカー(ブランド) | 品番 | 長さ | 規格 | 最大電流 | USB PD | USB IF認証 | 映像出力 | 給電 | 映像出力 | 給電 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AB | AmazonBasics | L6LUC017-CS-R | 0.9m | USB 3.1 Gen 1 | 表示なし | 表示なし | - | ○ | 19.9V/0.03A | ○ | 4.94V/0.00A |
AK | Anker | PowerLine+(AK-A8187091) | 1.8m | USB 2.0 | 表示なし | ○ | - | × | 19.9V/0.03A | × | 4.94V/0.00A |
C | Cable Matters | 107002-BLK-0.5m | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 表示なし | 表示なし | ○ | ○ | 19.9V/0.03A | ○ | 4.94V/0.00A |
E1 | エレコム | USB3-CC5P05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 5A | ○ | ○ | ○ | 19.9V/0.03A | ○ | 4.94V/0.00A |
E2 | エレコム | USB3-CCP05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 2 | 3A | ○ | ○ | ○ | 19.9V/0.03A | ○ | 4.94V/0.00A |
E3 | エレコム | MPA-CC13A05NBK | 0.5m | USB 3.1 Gen 1 | 3A | ○ | - | ○ | 19.9V/0.03A | ○ | 4.94V/0.00A |
E4 | エレコム | U2C-CC5P05NBK | 0.5m | USB 2.0 | 5A | ○ | ○ | × | 19.9V/0.03A | × | 4.94V/0.00A |
E5 | エレコム | U2C-CC05BK | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | × | 19.9V/0.03A | × | 4.94V/0.00A |
M | 丸七 | VM-07 | 0.5m | USB 2.0 | 3A | × | - | × | 19.9V/0.03A | × | 4.94V/0.00A |
まとめると、本製品で映像出力と給電を同時に行なうためには、2つの点に留意する必要がある。まず映像出力については、ケーブルがUSB 2.0ではなく、USB 3.1対応であることだ。
そもそも映像信号の伝送は、USB 3.1の信号線の一部を使うことが前提になっているため、ケーブルがUSB 2.0であれば、出力のしようがないというわけだ。本製品に添付されているC-Cケーブルは挙動を見るかぎり、USB 3.1対応なので、これを使えば問題になることは少ないだろうが、今回の実験のようにPC付属のケーブルやサードパーティ製ケーブルを使う場合は、気をつけたほうがよいだろう。
もう1つ、給電については、PCが充電を行なうために最低限必要なW数が、本製品の最大出力である30W以下であることが条件となる。たとえばMacbookは30Wあれば問題なく充電できるので、本製品と接続して充電を行なうことは可能だが、ThinkPadは最低でも45Wが必要なため、最大30Wの本製品を使っての充電は不可能というわけだ。
なお、EIZOからは本製品の後継に当たる新製品「FlexScan EV2785」が先日発表されており、こちらではUSB Type-Cの最大出力が30Wから60Wへと大幅に引き上げられている。本稿執筆時点では未発売であるため互換性の情報は乏しく、実機による検証を待たなければ断言はできないが、こちらの製品であれば前述のThinkPadも充電できる可能性が高そうだ。
ディスプレイによっては映像信号と電力が同じ方向に流れる場合も
今回は据え置き型のディスプレイを例に紹介したが、外出先などでノートPCと接続してマルチディスプレイ環境を作れるモバイルタイプのディスプレイについても、Type-C対応が進みつつある。たとえばASUSの「ZenScreen MB16AC」などがその代表例だ。
しかしこちらの場合、ディスプレイはノートPCからの給電によって駆動するので、映像出力と給電はいずれも「ノートPC→ディスプレイ」という向きに流れる。機器の性格によってはこのように給電の向きも変わる場合もあるので、ますますややこしい。
こうした場合においては、まずは添付のケーブルで試してみるというのが王道だろう。製品添付のケーブルは詳しいスペックこそ不明な場合が多いが、よほど特殊なつなぎ方でもないかぎり、本体機器の動作範囲はカバーしていると考えられるからだ。まずはそれらを使って正しく動作することを確かめ、その上でどうしても交換が必要な場合は、二者択一で迷ったらなるべく上のスペックの製品を選ぶという原則に基づいて、代替のケーブルを探すことになる。
USB Type-Cのケーブルは一般的に、上位の規格に適合する製品ほど外皮が硬く、かつ太いために取り回しはよいとは言えないが、かといって動作しないものを選んでしまっては本末転倒だ。USB Type-Cケーブルを使う機会は今後ますます増えてくると考えられるだけに、ケーブルのスペックがややこしくわからないという場合も、なるべく素性が明らかなケーブルを選んでおくことで、何らかのトラブルが発生した場合に原因が切り分けやすくなるはずだ。