西川和久の不定期コラム
NUCよりも小さい手のひらサイズの超小型PC
~マウスコンピューター「MousePro-C100PV」
2017年9月26日 11:00
マウスコンピューターは9月26日、法人向けブランドのMouseProより、筐体サイズ70×70×34.1mm(幅×奥行き×高さ)とNUCよりもはるかに小さい、フルスペックのPCを詰め込んだ「MousePro-C100PV」シリーズを発表した。
発表に先立ち実機を試す機会に恵まれたので試用レポートをお届けしたい。
驚愕の70×70×34.1mm/約164g
編集部より連絡があったとき、「NUCよりも小さいのでそれがわかるような写真を……。」とメールに一筆。まぁひとまわりほどかな、と思っていた筆者はNUCが入っているようなサイズのパッケージを開けてビックリ。確かにNUCよりもはるかに小さく、まるで大きめのUSB式ACアダプタのサイズなのだ。
この時点ではスペックは不明だったが、筐体に配置しているコネクタ類を見るかぎり全部入り。プロセッサ、メモリ、ストレージ、Wi-Fi/Bluetoothの有無は実際起動して確認することになる。ワクワクしながら初回起動したところ、AtomではなくCeleron、メモリは4GB、ストレージは64GB。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、Bluetoothも……なんと本当に全部入りだった。
考えてみれば以前、スティックPCの記事に、じょじょに大きくなっていく筐体を見て「これならボックスタイプのほうが使いやすいのでは」と書いたことがある。本機はまさにそんな感じの筐体に仕上がっている。
おもな仕様は以下のとおり。
MousePro-C100PV | MousePro-C100PV-HGH-A | |
---|---|---|
プロセッサ | Celeron N3350(2コア2スレッド、1.1~2.4GHz、キャッシュ2MB、TDP/SDP 6W/4W) | |
メモリ | 4GB(LPDDR4) | |
ストレージ | eMMC 64GB | |
OS | Windows 10 Pro(64bit) | |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500 | |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0+LE | |
インターフェイス | USB 3.0、USB 2.0、microSDカードスロット(SDXC/SDHC)、HDMI | |
付属品 | VESAマウントキット、ACアダプタ | |
サイズ | 70×70×34.1mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 約164g | |
付属品 | - | 無線キーボード/マウス(Logicool Wireless Combo MK235) |
オフィスソフト | - | Microsoft Office Personal 2016 |
税別価格 | 37,800円 | 57,800円 |
プロセッサはApollo LakeのCeleron N3350。2コア2スレッドでクロックは1.1GHzから2.4GHz。キャッシュは2MB、TDP/SDPは6W/4Wとなる。
メモリはLPDDR4の4GB。仕様的にはDDR3にも対応しているものの、DDR4のほうが高性能を期待できる。ストレージはeMMCで64GB。OSはビジネス・法人向けのブランドのMouseProということもあり、64bit版のWindows 10 Proを搭載している。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500。HDMIを装備。ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 4.0+LEも内蔵。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0とUSB 2.0が1基ずつ、microSDカードスロット(SDXC/SDHC)。音声入出力はないが、出力に関してはHDMIに音声信号も乗っている。
これからもわかるように、デスクトップPCとして全部入りだ。何1つ欠けているものはない。欲を言えば外部出力用に、DisplayPortもほしかったところか。
そして本機最大の特徴である筐体は、サイズ70×70×34.1mm(同)、重量約164g。扉の写真からもわかるように、NUCどころではなく、すっぽりと手のひら収まってしまうコンパクトさだ。これまでもスティックPCも含め、小型PCは数多くあったが、これだけのスペックを備え、このサイズを実現したのはまさに驚愕と言えよう。
価格は税別37,800円で、無線マウス/キーボードとMicrosoft Office Personal 2016搭載モデルは同57,800円。同プロセッサを搭載したマザーボードを使って組み立てたパターンや、小型PCの価格を見るかぎり、OSがProなのでHomeとの差額などで若干高めだが、このコンパクトさはそれに見合う価値があると思われる。
筐体は光沢ありのオールブラック。iPhone 7 Plusと比較写真からもわかるようにとにかく小さい。これで本当に動くのか疑ってしまうほどだ(笑)。付属のACアダプタが約65×47×27mm(同、プラグ含まず)、重量120gなので、サイズ/重量ともに大差ない。少しパワーのあるUSB式ACアダプタと変わらないサイズ感だ。
前に電源ボタン、パワーLED、USB 3.0、USB 2.0。左にmicroSDカードスロット。右にロックポート。後に電源コネクタ、HDMI、Gigabit Ethernetを配置。天板はロゴ、裏は四隅にゴム足とVESAマウンタ用のネジ穴などがある。付属品は12V/2A出力のACアダプタとVESAマウントキット。
振動やノイズは皆無。発熱は起動直後に大量のストアアプリのアップデートと、Windows Updateがあり、CPU使用率がかなり長い間100%だったが、ほんのり暖かくなる程度だった。実際PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)の結果を見ると、プロセッサの温度は約52℃から64℃あたりと少し低めだ。
BIOSは起動時に[Delete]キーで表示できる。ひととおり内容を確認したが、とくに変わった部分はなかった。
余談になるが、この春、久々にVPSやレンタルサーバーではなく、仕事場内に物理的なサーバーを作った。用途はMastodon(加えてNginx+Node.js系)。現在も運用中だが、このマシンは以前記事でご紹介したMini-ITXフォームファクタのASRock「N3150B-ITX」を使っている。BraswellなCeleron N3150(2コア/2スレッド、1.6~2.08GHz)を搭載したマザーボードだ。
購入してすぐにPentium N3700(4コア/4スレッド、1.6~2.4GHz)を搭載したものに入れ替えたので、長い間、押入れに眠っていたのを引っ張り出した格好となる。これにメモリ4GB、SSD 64GBを加えCentOS 7を動かしている。
Mini-ITXフォームファクタなので使用しているケースも小型なのだが、BraswellとApollo Lakeで世代が違うとはいえ、同じクラスのマシンがこのサイズになってしまうのだから本当に驚いてしまう。Linuxも動くのなら、OSなしモデルを用意し、サーバー用途でも使えるので面白そうだ。
Celeron N3350搭載機としては標準的な性能
OSは64bit版のWindows 10 Pro。Apollo LakeなCeleron、メモリ4GB、eMMC 64GBなので、エントリーモデルのタブレットや2in1と動き的には大差ない。PCに求められる一般的な処理であれば問題なくこなす。
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は、フルHDのディスプレイで1画面。「ユーザーサポート」グループにPDFが2つ追加されている。デスクトップは同社ブランドカラーの黄色ではなく、MouseProブランドのブルーがベースの壁紙となっている。左側は「ごみ箱」のみとシンプルだ。
ストレージはeMMC 64GBの「SanDisk DF4064」。C:ドライブのみの1パーティション。約57.35GBが割り当てられ、空き42.6GB。BitLockerはかかっていない。Gigabit EthernetがRealtek製、Wi-FiとBluetoothはQualcomm製だ。
プリインストールのソフトウェアはとくになし。先に書いたように、「Windows 10ユーザーガイド」と、「ハードウェアマニュアル」がPDFで入っている。空き容量の関係もあるのだろうが、余分なアプリが入っていないのでビジネス用としては扱いやすいと思われる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)。CrystalDiskMarkの結果を見たい。参考までにCrystalMark(2コア2スレッドで条件的に問題ない)のスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 4.4。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7.05。64bitで4GBなのでメモリにはリミッターがかかっている。メモリのバンド幅は9,728.12502MB/s。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1,617。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 208.9/Write 107.6、4K Q32T1 Read 37.28/Write 16.03、Seq Read 287.1/Write 110.7、4K Read 12.39/Write 15.72(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 17505、FPU 15110、MEM 18827、HDD 27029、GDI 4458、D2D 1757、OGL 3848。
DDR4なのでメモリのスコアが若干高めか。eMMCのアクセス速度も「SanDisk DF4064」は少し速い。ほかはクラス相当だ。参考までにGoogle Octane 2.0のスコアは9,887。これからもわかるように、爆速は望めないが、一般的な使い方であれば普通に使える環境だ。
MouseProはビジネス・法人向けのブランドなので、WindowsもProを搭載しているが、できればこのままHomeに乗せ換えMouseブランドでも販売してほしいところ。少なくともOSの差額だけ安価になるはずだ。
加えて上位SKUのApollo Lakeで同じTDP/SDPのCeleron N3450(4コア/4スレッド、1.1~2.2GHz)や、Pentium N4200(4コア4スレッド、1.1~2.5GHz)搭載モデルなどの販売にも期待したい。
また、前半でふれたが、Linuxが動くならOSなしモデルもありだろう。これでサーバーになるなら「Raspberry Pi」に匹敵するインパクトがある。とにかく、いろいろなバリエーションがあると楽しめそうなPCと言えよう。
以上のようにマウスコンピューター「MousePro-C100PV」は、70×70×34.1mm(同)の超コンパクトな筐体に、Celeron/4GB/64GB、インターフェイス全部入りを詰め込んだPCだ。一見大き目のUSB式ACアダプタにしか見えないサイズでフルのPCなのだから衝撃的。
仕様の範囲内でとくに気になる部分もなく、小型PCが好きな個人はもちろん、省スペース/省エネを推進したい企業、加えてまだCore 2 Duoあたりのマシンを使い続けている企業にもおすすめしたい逸品だ。