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【年末特別座談会 後編】後藤、笠原、山田のライター3氏に聞く、10大ニュースとベストバイ

 「PC Watch年末座談会」後編は、10大ニュースの上位と、各ライターが今年購入したガジェットについて語る「今年買ったもの」コーナーの模様をお伝えする。

笠原一輝氏
山田祥平氏
後藤弘茂氏
勝又楓さん(左)とPC Watch編集長の若杉(右)

第3位 AMDのRYZEN、INTELのCore i9。多コア戦争勃発

勝又 第3位は、AMDのRyzen、IntelのCore i9。多コア戦争勃発。ZENマイクロアーキテクチャ採用8コア「Ryzen 7 1800X」、16コア/32スレッド環境を実現する「Ryzen Threadripper 1950X」、18コア/36スレッドの「Core i9-7980XE」などが登場しました。

若杉 今年になって、一気に2桁スレッドのコンシューマ向けCPUが出てきました。基本的な流れとして「AMDが8コアのRyzenを出します」ということから、Intelも焦った雰囲気が感じられるというか、対抗製品を出してきて、多コアのCPUが目立って出てきたという感じです。

後藤 Ryzenはマイクロアーキテクチャを一新して、Bulldozer系よりもクロックあたりの性能がすごく伸びたんですが、それは元の路線に戻った、という話ですね。Intelに匹敵するシングルスレッド性能になったということですが、シングルスレッド性能はこれ以上伸ばすのがかなり難しい。方法がないわけではないですが、電力的に効率よく伸ばすには壁がある。

 CPUはかつて、プロセスが縮小すると、トランジスタが2倍乗って、周波数が40%速くなり、自然に性能が上がって、自然にマイクロアーキテクチャが複雑になり、より高速化するサイクルがありました。でも今はそのサイクルを実現できない。なぜなら今は電源の電圧やリーク電流をこれ以上下げるのが難しいからです。それによって、CPUのシングルスレッド性能を引き上げていくことが難しい状態になっています。

 コア数を増やしたのは、そこからさらに性能を上げるためです。サーバーでは昔からやっていたことですが、それをコンシューマ向けの製品に持ってきた。やり方としては正攻法ですね。今、CPUの性能を上げるには、コア数を増やすしか方法がないんです。

 しかし「アムダールの法則」によって、並列化にも限界があって、性能のボトルネックがきてしまう。今は特定の用途でスレッド数が上がった分だけ性能が上がりますが、ここから先、プロセス技術が伸びていった時代と同じように、さらに性能を上げるためには、別の方策が必要になります。

 それはタスクを別のコアに流したり、コアを拡張して、特定のワークロード(作業量)に特化した別のユニットを加えたりする必要があるのです。たとえばディープラーニングのワークロードが増えるのであれば、ディープラーニングのワークロードに特化したユニットを加えるというやり方(ドメインスペシフィック)です。

 GPUはこれまで、並列ワークロードに対してGPUを性能を向上させてきました。それと同じことをどんどんやっていかないと、もう性能を上げられないところまできています。

 実はRyzenから始まった多コア化の動きは、プロセッサの性能を上げる大きな流れの中の中間地点に過ぎません。ドメインスペシフィックに色んな機能を追加して、性能を上げていかなければならないという宿命がこの先に待っています。

笠原 ぼくらの業界ではそういうのをヘテロジニアスプロセッサと呼んでたんですけど、今はそう呼ばないのかも。

 SoCのメーカーなんかを見ているとわかりやすいのですが、後藤さんがおっしゃったように、CPUがあって、GPUがあって、それからNPU(Neural Processing Unit)などなど入れていく。プロセッサ全体で色んなユニットを足していって、総合的な性能を上げていく方向に行きつつある。

後藤 General-purpose(汎用)のプロセッサだと、もう性能を上げようがないんです。上げられなくはないが、上げ幅が小さすぎる。

笠原 General-purposeのプロセッサ自体も変わってきていて、面白いのはNVIDIAがCUDAをGeneral-purposeに使い始めたじゃないですか。

後藤 今話しているGeneral-purposeとはシングルスレッドの話ですね。GPUが今データセンターでどう使われているのかというと、おもには並列コンピューティングです。超並列コンピュータ(Massively parallel computer)+「Volta」でディープラーニングを走らせている。

 この先の課題は、GPUをディープラーニングのワークロードにどう対応させていくかですね。今後はディープラーニング専用のプロセッサが繁栄するので、それに対応する必要がある。

笠原 Intelが10月に開催したIntel Shift 2017でNirvana担当CTO(Amir Khosrowshahi氏)は「ディープラーニングをやるには、GPUはもう時代遅れだ」と言ってました。

後藤 ディープラーニングだけやるんだったらそうなんですけど、GPUは汎用的なプロセッサとしても使える点に強みがあるんですよ。NVIDIAもこのままのかたちでGPUを進化させることはできないので、次のステップとしては、GPUをディープラーニング用とグラフィック用の2つに分化させることでしょうね。実際にはもう分化していますが。

 ディープラーニングに最適化するといっても難しいところがあって、あまり最適化させすぎても今度は汎用性が失われてしまう。アルゴリズムがどんどん変わっているので、そこにも対応しないといけない。

笠原 プログラマブルにするのか、専用ハードウェアにするのかで毎回議論してますよね。

後藤 それが昔の議論だったんですけど、今は「専用のもの」を汎用的なアーキテクチャの延長で作ろうという、新しい流れができています。クライアントPCには、インファレンス(推論用)のチップが入ってくるでしょう。認識処理とセットでどう作るかが課題です。

笠原 ここでいう推論というのは、たとえば「猫の画像」が入力されたら、「これは猫である」と認識することですね。そういう機能をプロセッサに持たせようという話を業界で議論していて、それを多くの人はNPUと呼んでいるんですけど。

 専用のハードウェアにしても、中身がいろいろと違うんですけどね。たとえばSoCがやってるようなのものは、シンプルに、アクセラレータに近いようなものが載っている。

後藤 ニューラル、Neuronと言ってますけど、ニューロンをハードウェア化するものは「Neuromorphic Computing」といって別のカテゴリーなんです。ニューラルネットワークはニューロンの働きをソフトウェアモデル化したもので、それのアクセラレータをプロセッサに入れると言う話ですね。そっちはモバイルの方がはるかに進んでいて、PCでは遅れています。

笠原 PCが遅れているというよりは、今はその必然性がないからですね。でも今はそれも変わりつつあります。

 かつてアプリケーションはPC、つまりローカルにあったわけですが、アプリケーションはクラウドに移行する方向で進んでいる。UWPなんかはそれを目指してますよね。

後藤 アルゴリズム自体がどんどん変わっていっちゃうので、推論のやつはみんな特定のアルゴリズムで、特定のネットワークモデルに特化して作ったので、そうするとたとえばCMN(Cepstral Mean Normalization)だけに対応すると、RMN(Robust Mixed-Norm)やLSTM(Long Short-Term Memory)などほかのニューラルネットワークタイプはどうなのか、という話になって、じゃあ対応できないの? ってことになる。GPUは対応できるけど非効率的なので、その中間にあるものが求められてるし、今みんなが作っている。

山田 「18コア36スレッド」なんてものを見たときに、これを使って「秀丸」を使ったらどんだけ速く原稿が書けるようになるのかなって思ったものですけど(笑)。

笠原 いや速くは書けないですよ(笑)。秀丸はシングルスレッドですから。

後藤 でもそれはある意味ですごく正しい。「勝手に原稿を作ってくれるマシン」をディープラーニングで作ることができるからね。

山田 箇条書きにすると勝手に文章にしてくれるとかね。

笠原 話をRyzenに戻しますけど、AMDが頑張ったおかげで、Intelのお尻に火がついて、これでふたたび競争ができたわけじゃないですか。Intelは油断していると「がんばらない」会社なので、ここ数年、PC業界はずっと停滞していた。AMDみたいな人たちがIntelのお尻を押さないと、いいものを出してくれないというところはあると思うんですよ。

 実際問題、Penrin以来、ほとんどCPUは変わってないわけじゃないですか。デュアルコアから変わっていなくて、Uプロセッサという枠の中に、もう7~8年新しいものが出てこなかったわけで、やっと今年、Kaby Lake Refreshが出てきた。これってAMDがプッシュしたからですよね。18コアのCore i9が出てきたのも、AMDが16コアのThreadripperを出してきたからでしょう。「やんなきゃいけない」から、やれたわけじゃないですか。それはすごくいいことだと思うんですよね。

山田 生きてるうちに、びっくりするほど速いコンピューターに触ってみたいなぁ。ストレスゼロのコンピューター。

後藤 世の中で増えていくワークロードの中で、ディープラーニングの割り合いが増えていくのであれば、これを速くできるコンピュータが「良いコンピュータ」なんですよ。

笠原 でも祥平さんの言ってる「ストレスフリー」って、フラッシュメモリを速くすれば実現できそうですけどね。

山田 いやいや、RAMに置いたって、びっくりするほど速くはならないじゃない。

第2位 IntelとAMDがGPU搭載CPUでタッグ

歴史的融合。IntelがAMD GPU内蔵Coreプロセッサを発表
AMD Radeon部門のトップがIntelに移籍

勝又 第2位は、IntelとAMDがGPU搭載CPUでタッグ。トピックとしては、歴史的融合。IntelがAMD GPU内蔵Coreプロセッサを発表、AMD Radeon部門のトップがIntelに移籍、となっております。

若杉 IntelとAMDでお互い切磋琢磨して、よきライバルとして新しいCPUをそれぞれ出してきたっていうのが直前の話なんですが、ここにきてその垣根を乗り越え、IntelとAMDがCPUで協業するという話が出てきた。これは非常に驚きをもって迎えられた話題でした。

後藤 これは必然ですね。Intelはこうせざるを得なかったんです。Intelは「HBM2」を使いたかったんですね。HBM2を使うには普通、インターポーザーというチップを使うのですが、Intelはこれを使わずに、ものすごく安く上げるパッケージ技術を開発しました。その技術を使って、チップ同士をつなぐものを量産したいんです。でもHBM2を搭載するIntel製チップの計画がどんどん後ろにずれ込んじゃって、間に合わない。どうしよう? となったときに、AMDと組もうという話になったわけです。

 それで、AMDのGPUを載せて、HBM2を載せて、Intelの新しいブリッジチップのパッケージ技術を持ってこようという話になった。で、このプロジェクトができあがりました。

 Intelには4~5年後までに実現したいCPUのビジョンがあって、それはCPUを1つの台の上に作るのではなくて、CPUを分割し、複数の細かいチップで構成しようという案です。各々のチップを高速なインターコネクトで結びます。

 CPUとGPUには高い性能が必要なので、7nmや10nmプロセスで作る。I/O周りはシュリンクしないので、14nmとか22nmとかの古いプロセスで作る。メモリはHBMでくっつける。HBM2とかHBM3というのはIntelがすごくプッシュしている規格なので、JEDECでもIntelが中心になってやっています。

 これを全部くっつけて、1つのパッケージに収める。単一パッケージの中に全部入っていながらも、細かく分割されていて、それぞれが高速に接続されているものをIntelは作ろうとしています。これをSiP(System in Package)といいます。

 今のところ、SiPには高性能なチップが存在しません。それはチップ間インターコネクトが高い電力を消費して遅くなるためです。でもIntelはそれを新しいパッケージ技術で解決できるので、とにかくそのパッケージ技術を立ち上げたい。立ち上げないことにはラーニングカーブ(経験曲線)が上がっていかないですからね。なのでIntelは今、すごく急いでいます。最終的にはそういうチップを作りたい。面白いことにAMDも似たようなことを考えています。

 将来のCPU性能を上げるために、各社それぞれ、チップある程度まとめるような形、スタッキングするというよく似た形で、問題を解決しようとしています。そうしないと、コストあたりのCPU性能が上がっていかないんですね。

山田 組むのはAMDじゃなければいけなかったの?

後藤 でもNVIDIAは使えないじゃん?(笑)。絶対に首を縦には振らないから。

笠原 Intelにとって、AMDはもはや敵ではないですよ。敵はNVIDIAです。NVIDIA的にはもうIntelと縁を切りたいけど、現実問題として、ディープラーニングもマシンラーニングも、IAの上でGPUが動いてる状況だから、なかなか思ったとおりにはいってないという。

山田 Intelがそうなってるということは、AMDはAMDだけで完結させることはできるの?

後藤 AMDも似たようなことは考えていて、もう少し長いビジョンで、完璧な3Dスタッキングを構想しています。

 たとえばCPUを入れたSoCがベースにあって、その上にGPUの台をくっつける、さらにその上にDRAMの台を載せちゃうようなかたち。TSV(Through Silicon Via)という間を貫通する技術を使って、全部を高性能につないで「全部入り」のチップを作ろうとしている。それはIntelのビジョンよりはもう少し先のものなので、4~5年先というわけにはいかないでしょう。

 面白いのは、IntelもAMDもある意味では同じ方向を向いていることですね。そうしない限りは性能を一定のペースで上げていくことができない。それが今のPCが抱えている問題ですね。

笠原 今はプロセスルールの恩恵もすっかり受けられなくなっちゃってますからね。

後藤 ほぼないような状態ですね。

笠原 モバイルの方はどんどん先に進もうとしているし、まあ経済的合理性から言ったら、モバイルの方に投資していくのは正しいわけじゃないですか。

後藤 いや、モバイルの方ももう緩み始めていて、フラッグシップに移行しているのはごく一部で、大多数は14nmや16nmプロセスにとどまっています。同じチップを作ったとしても、7nmプロセスの製造コストは14nmのおよそ2倍なので、ちゃんとペイできる余地が少ない。モバイルですらそうなんですよ。

笠原 モバイルが先に10nmになったわけですが、Intelは14nmで停まったままじゃないですか。経済的合理性からいくと、PCでは14nmのままでも成り立ってしまっている。

後藤 どちらかというと、成り立たせているんですよね。無理して14nmや16nmにとどまらせている方式を採用しているからです。

笠原 半導体って「規模の経済」だし、経済的な合理性に基づいてやってるわけじゃないですか。

後藤 「規模の経済」というのも揺らぎつつあるんですよ。もしかしたら、マイクロファブみたいな考え方みたいのも来るかもしれない。

笠原 来ないと思うけどなあ。そうなっちゃうと、半導体メーカーって成り立たないじゃないですか。

後藤 半導体自体が高コストですからね。たとえばスタートアップがチップを作りたいといっても、なかなか作れない。半導体を作るコストも高くなっているし、IPも高くなってる。若手のエンジニアが大学を出てプロセッサを作りたい、となったら、Intelに行くとか、そういう感じになっちゃっている。それをブレイクする道筋がなかなか見えてこないという状況です。

 SoCはArmのコアを使うとお仕着せになるので、アーキテクチャのライセンスを取ってゼロから作らないとダメですね。Armは命令セットだから改変できないし。

笠原 どちらかというとBoC(Based on Cortex technology)ライセンスが増えてるじゃないですか。

後藤 そうなると、横並びのものを作ることになるので、なかなか難しい。

笠原 BoCライセンスじゃほとんど同じものしか作れないですよね。

後藤 なんとかそこをブレイクしたいという話ですね。

若杉 「結局このIntel+AMD CPUは買いなの?」というコメントがきています。

笠原 おそらく液晶一体型とかとかNUCみたいなやつがわかりやすい用途なんじゃないかなと思っていて、そういう小型のPCに使われるのなら、良いんじゃないかと思います。

若杉 気になる性能は、実際に製品が発表され次第、お伝えするということで。

第1位 日本電機メーカーのPC分離が最終局面

勝又 そして、第1位は、日本電機メーカーのPC分離が最終局面。ということで、Lenovoが富士通のPC事業を支配下にしましたが、FMVブランドはNECに加え継続されます。東芝はPC事業をASUSへ売却との報道がありましたが、東芝は否定しました。

若杉 富士通については、本社からFCCLが分社化して、以前から東芝やVAIOとくっつくんじゃないかという話もありましたが、最終的には現在のNECパーソナルコンピュータと同じく、Lenovoと合弁会社を作りました。今あるFMVブランドは継続するところまでは決まっていますね。

 東芝も、ここにきてPC事業をASUSに売るんじゃないか? という報道も出ましたが、東芝は否定しています。まあでも何かしら売るのは秒読みなんじゃないの? という状況です。

 というわけで、国内電機メーカーで自分のところでPC事業を抱えてるのはパナソニックだけになりそうな状況です。

笠原 LenovoがFCCLの筆頭株主になったというのがこの契約ですけど、FCCLにとってはいいストーリーだったんじゃないでしょうか。今の枠組みを残したまま、Lenovoがスポンサーになって会社を運営していけるというかたちなので。

 Lenovoという会社は面白くて、CEOの楊元慶氏自身も、下の人に任せるという方針なんですよね。だから新FCCLも、利益を出し続けている限りは、おそらく何も言ってこないと思うんですよ。ので、うまく運営できれば、独立した企業体のまま生き残っていけるんじゃないかと思います。同じようにLenovoが買収したドイツのMedion(メディオン)という会社がそんな感じですね。

 東芝に関しては、ASUSにとって買う理由はないと思います。

 2014年にソニーがVAIOを切り離したとき、ソニーはPCのビジネスを全部止めたんですが、その結果AcerやASUS、DELL、HPが軒並みシェアを上げました。そう考えれば、買わない方が得なんですよね。だから売りに行くっていうニュースが流れる事自体、僕にはよくわからないです。たとえ売りにいったとしても、買わないんじゃないの? と思ってしまいますね。

山田 Lenovoって基本、買った会社にノータッチらしいんですよね。Medionもそうだし。まあNECパーソナルコンピュータについては、事実上レノボ・ジャパンと同じ会社になってますけど。Lenovoに買われた会社の人って、幸せそうに見えるよね。もちろん裏側はどうなってるのかは知るよしもないけど。

笠原 そうですね。結果的にLenovoは買収した会社をうまく使えてますよね。NEC PCも米沢を維持できてるわけだし、うまく生き残れたなという感じではありますね。

山田 で、東芝なんですけど、順番にお願いしていって全部に断られたってことをバネにして、幸せな方向に行く方法が、もしかしたらあるのかもしれない。

笠原 なんにせよ東芝本体の経済状況ですよね。フラッシュメモリの会社を売って、それで財務が改善するのであれば、もうちょっと頑張れる余地があるのかなとは思いますけど。

後藤 金のなる木を売るようなもんだと思うけどね。

笠原 まあそうなんですけどね。でもそれは決まっちゃったことですから。

若杉 ということで2017年の10大ニュースを振り返りました。

 最後のニュースは、日本のメーカーは今後どうなるのか、不安な点もあるにせよ、今回取り上げたトピックって、Intel+AMDのCPUが出るとか、Snapdragon 845でWindows 10が動くとか、それでより小型なフォームファクタのPCとか、これまで誰も想像しえなかったような新しいものが出てくる可能性を秘めているものです。

 PC業界もコモディティ化が進んで、先ほど後藤さんがおっしゃったようなシングルスレッドの性能は頭打ち、みたいな状況もあるなかで、振り返ってみると、まだまだこれから面白い製品が出そうな余地もありますよね。直近ではCESもありますし、そこでもいろいろと新製品が見られるんじゃないかと思います。

プレゼントタイム! ユニットコム製Ryzen搭載PC「LEVEL-C0B3-R2-IX」

勝又 ここで次のプレゼントです。ユニットコム(パソコン工房)様ご提供:Ryzen搭載PC「LEVEL-C0B3-R2-IX」をプレゼントいたします。本製品は、Ryzen 3 1200、メモリ4GB、HDD 1TB、GeForce GT 730を搭載しています。Intel CPUや水冷クーラー、GeForce GTX 1080 Tiなどが選択可能なモデルも用意されており、コンパクトでも高性能なマシン環境を構築することができるということです。

笠原一輝氏が購入したもの

勝又 続きまして、お三方が今年買ったものコーナーに移ります。

若杉 笠原さんはPCを3台購入されていますね。

笠原 3台のうちメインで使っているのは、「Surface Book」と「ThinkPad X1 Yoga Gen2」ですね。昨年「Surface Book」を買うと、ここで言った気がするんですが、それを使っています。

 ThinkPad X1 Yoga Gen2を購入したのは7月です。Surface Bookから乗り換えて、今メインで使っているのがこれです。

 HuaweiのMateBookはバックアップ用です。タブレットとキーボードが分離するので、タブレットはカバンに、キーボードはスーツケースに入れて、何かあったときのバックアップとして使っています。

若杉 タブレットは、昨年iPadの9.7インチを使っていましたよね。

笠原 じつはその9.7インチ、ストレージが32GBだったんですよ。まったく足りなかったので、途中でいやになってしまって、256GBの10.5インチを買い増しました。ソフトバンク版を購入したのですが、なんでかというと、僕は海外取材が多いので、「アメリカ放題」を使いたかったからです。

若杉 スマートウォッチの「FOSSIL W MARSHAL」を購入されています。

笠原 スマートフォンをiPhoneから「Galaxy Note 8」に買い替えて、Androidに戻ったので、それにあわせて買いました。

若杉 ソニー「WH-1000XM2」は、Bluetooth接続のワイヤレスヘッドフォンですね。お好きですよね。

笠原 毎年、新しいモデルが出るたびに買い替えています。

若杉 毎年となると、アップデートとか体感できるものなんですか?

笠原 今年は大きく変わっていて、昨年までの機種との大きな違いは、新たに圧力センサーを搭載していることです。昨年までの機種では耳に音圧がかかって、着けていると痛くなることもあったのですが、WH-1000XM2では装着状態に合わせてノイズキャンセリング効果を変えてくれるので、快適に使えるようになりました。

 「Shield」は、1月のCESで記事を書いてから欲しいなと思っていたので、NVIDIAのGTCに参加したときに買ったんですが、まだ箱から出してないです(笑)。

若杉 ありがちな積みガジェットですね。IoTカテゴリではスマートスピーカー2機種を購入されていますね。

笠原 どんなものなんだろうなと思って買いました。うちの「Amazon Echo」は奥さんと1台ずつ買って計2台あるので、「Alexa」と呼びかけると両方反応して大変なことになっています。

山田 呼びかけのキーワード変えればいいじゃない。

笠原 はい、そうしようと思います。個人的には、スタートレックに出てくるようなコンピュータが実現するというのが、Amazon Echoの目指しているところだと思うので、応援する意味で買いました。

山田 で、今混乱を楽しんでいるという。

笠原 その通りです。

若杉 英語環境なら個人の識別ができるのですが、日本語だとまだできないみたいですね。たぶん2018年には、日本語でも誰の声かを判別して、声の主の予定とかを教えてくれる機能が提供されるはずです。

笠原 ちょうど視聴者の方から「この配信で『Alexa』って言われたから反応した」ってコメントがきてますね(笑)。

若杉 でもGoogleのは個人の声を識別するはずですよ。

山田 プライベートな情報は、別の人が言っても教えてくれないよね。

若杉 今年のベストバイは「Galaxy Note 8」だということですが。

笠原 僕はPCとスマートフォンはハイエンド製品を選んで使っているのですが、去年はiPhoneを評価して使っていました。今年は「iPhone X」と「Galaxy Note 8」が出ましたが、やはりGalaxy Note 8は狭額縁が非常に良いデザインだし、ペンも便利なので、こちらを選んで買いました。ペンは取材の際にメモを取るときに使っています。生産性が高くなるし、満足しています。

 iPhone Xと両方買えばいいのに、というコメントも頂いていますが、そうですね、僕も両方買いたいです。原稿料を倍にしてください。

若杉 却下します。

山田祥平氏が購入したもの

山田 「Surface Laptop」は潔さが今までのSurfaceで一番好きですね。ラップトップでタッチ対応、3:2のアスペクト比というスペックは、探してもなかなかないんですよ。唯一残念なのは、この時代にType-C(USB PD)で充電できないところ。

 今年もいろいろな新製品が出ましたけれども、すべてを満たしているのはないんですよね。だから今年は過渡期だったのかなあと思いました。これ毎年言ってる気がするけど。

笠原 去年も言ってましたよね。

山田 でも今年ほど「過渡期」を感じた年はなかったかも。ディスプレイが16:9のままだとか、Type-Cで充電できないとか、ラップトップでタッチが使えないとか、ひとつひとつの製品に「もうちょっと欲しいな」という印象を受けた。その中でもSurface Laptopは本当に良かった。Type-Cで充電できればベストでしたね。

笠原 読者から「モバイルディスプレイはどうなったんだ」という質問が来てますが。

山田 健在です。

若杉 結局、壊れてなかったからそのまま使ってるって話ですよね。

山田 そうです。モバイル(に使おうと思っている)ディスプレイはいつも、新製品が出るたびに3kgを切ってるかどうかとかを見てるんですが、今のところ、今使っているLGのディスプレイより良い選択肢がなかなか出てこないのが現状です。

 唯一、いいなと思ったのが、ASUSのモバイルディスプレイですね。

若杉 それはモバイルディスプレイとして売られているモバイルディスプレイのことですか?

山田 そうです。本当はUSB Type-Cでアスペクト比が16:10とか3:2で、重量が3kgくらいのディスプレイがあれば最高なんだけどなとは思うんですが。

笠原 持って行かずに、出張先の現地で買いましょうよ。

山田 それは地球にやさしくないから、なしかな。

若杉 ではLGのディスプレイは、引き続き来年のCESにも持っていくんですね。

山田 2017年のCESは例の事件でショックを受けましたけど、2018年も同じものを持って同じホテルに泊まろうと思います。

若杉 ではまた壊れたという「吉報」をお待ちしています。

 スマートフォンは、今年出た「3大メーカーのフラッグシップ」を買われた感じですね。

山田 メインは「Galaxy S8+」です。iPhone Xも買いましたけど、相変わらず文字は小さい。「Mate 10 Pro」も、すごく良い端末ですよ。この3つを使うと、なんとなく今のスマホのトレンドが見えてくるかなという感じがします。

若杉 IoTはスマートスピーカー2機種と、オムロンの血圧計、Gear Fit2 Proなどなど。血圧計とかは祥平さんらしいというか。年齢出ちゃってる感じがしますけど。

山田 この間、10年前の血圧計を引っ張り出してきて使ってみたら、びっくりするほど高い値が出たので、これはやばいなと思って新品の血圧計をいろいろ探して買ったんですよ。

 オムロンというメーカーはえらいなと思うのは、ちゃんと新製品を出してることですね。調べてみると、ほかのメーカーの血圧計は、10年前くらいで新製品を出すのをやめているんですよ。でもオムロンは毎年出している。

 でも僕が買ったのは昨年のモデルなんですけど。というのも、今年のモデルは1人しか血圧が計れないんですね。うちには家人もいるので、2人分計れる必要もあった。

 でも不満もたくさんある。スマートフォンとの連携ではマルチペアリングできないとか、グラフ表示とか、PCで見られないとか。特にマルチペアリングができないのは、何台もスマホを持っていると使いにくいですね。

 今年は一眼レフの「D850」と「D5600」を買いましたが、カメラにも同じことが言えます。両方ともBluetooth接続でスマートフォンへの画像転送ができますが、スマートフォンアプリ側には複数のカメラが登録できるのに、カメラ側では1台のスマートフォンしか登録できない。これがものすごく不便で「今日はこのタブレットとカメラを持っていこう」となったときに、その都度登録し直さなければならない。

 複数台カメラを持っていれば、日によって持ち出すカメラは違いますよね。D5600は毎日の取材で持っていく小さくて軽いカメラだし、D850は気合いを入れて撮りたい日に持ち出す。でもマルチデバイスのことはどうやら想定されていない。カメラ側にもう少しマルチデバイスのことを考えてほしいなと思います。

 まあ「普通の人は電話なんて1台しか持ってないよ」と言われてしまえばそれまでなんだけど、もうちょっと2年先、3年先のことも考えてほしいかな。血圧計とカメラで、同じことを思ってしまいましたね。

若杉 ベストバイにD850を挙げた理由は何でしょうか。

山田 5年くらい「D800」を使っていて、次の機種がいつ出るのか心待ちにしていたんですよ。途中、我慢しきれなくてD5600を買ったりもしたんですけど、やはりD850を手に持って写真を撮ったときの安心感が期待した通りで、「こうでなくちゃ感」がすごく強かった。買えてよかったカメラです。まだ品不足みたいなんですよね。でも待ってて良かったです。

若杉 ベストバイは1製品を挙げてほしいと伝えたはずなんですが、なぜか「HHKB Professional BT」もベストバイに挙げてくださってるので、こちらは何が良かったんですか?

山田 キーボードがOADG(PCオープン・アーキテクチャー推進協議会)標準のレイアウトに準拠しているところですね。いや本当は準拠してないんですけど、まともにモバイルできて、なおかつ極上の気持ちで打鍵させてくれる良いキーボードです。これで書けばちょっと良い原稿になるかも。

若杉 なるほど。では、ディスプレイの吉報とあわせて、よい原稿を期待しております。

山田 でもさ、本当にどっかのメーカーさんで24インチくらいのモバイルディスプレイ出してくれないかなあ。絶対ベストバイになるんだけど。

笠原 出ませんよ(笑)。

後藤弘茂氏が購入したもの

若杉 後藤さんはPC関連だとKaby LakeのCPUを購入、iPhone 8は10nmだから買われたとのことです。Ryzenは「Raven Ridge待ち」とありますけど、ZENアーキテクチャの製品を買いたかったということですか?

後藤 そう。だけどRyzenはハードウェアのコードを全部ゼロから書き起こしてるんですよね。だから初物を買うのはこわかったし、AMDはAPUだと思ってるので、それも待ちたかった。結果、見送りました。今年は家中のデスクトップを入れ替えたので、その関係でKaby Lakeが入ったというところ。

若杉 今、後藤さんのスマホの画面にIngressが出てますけど、今まさに遊んでます?

後藤 いやいや、遊んでないです(笑)。iPhoneはなんでiPhone Xにしなかったかというと、iPhone 8とチップが同じだからです。もちろんiPhone Xになって有効化された機能もあるので、まったく同じではないのだけれども、それならiPhone 8でいいなということで、iPhone 8を買いました。

 今年のAndroidは、プロセスが境目なんですね。TSMCの10nmはサムスンの1世代目の10nmよりも好きなので、僕は今年はiPhone系の更新なんですよ。20nmは買いたくないし。

 AndroidのSoCがどう進化したかを考えると、今年はちょうど踊り場で、ニューラルチップも入ったけど中途半端な実装というか、本当にほしい実装ではないし、プロセスも中途半端だし。プロセスは10nmと液浸リソグラフィが鬼子なんですよ。その先にEUVの7nmがあって、本当はそこがゴールなんですけど。話がちょっとごちゃごちゃになっちゃったな。要は安いのが買いたかったけど、14nmにしたかった。そういう話です。

若杉 Nintendo Switchは「しょうがないので」とありますが、どうしょうがなかったんです?

後藤 Nintendo Switchは20nmなんですよ。「20nmのチップ買いたくないなー」って思ったので見送ろうと思ったし、実際見送ったんだけど、要請があったので。それでしょうがなく。

若杉 そんな話してるの多分世界で後藤さんだけですよ。Switch買わない理由が「20nmだから」って。

後藤 そんなことないよ! ファウンダリの人と話してて「これ20nmなんだって」って話したら、「あ、そうなんだ」って笑ってたし。

若杉 後藤さんはベストバイがないようですが。

後藤 そうですね。今年はないです。今年は「買わない」年でしたね。

若杉 まぁ、プロセスルールの変わり目なので買う、買わないというのは後藤さんの例年のことですよね。

山田 じゃあ来年は買うの?

後藤 来年も買うかどうかは微妙なところなんですよね。液浸の7nm(TSMCのArF液浸露光版7nm)もけっこう厳しいし、EUV版の7nmもだいぶ先になりそうだから。

 EUVの7nmになったらいっぱい買います。

笠原 でも後藤さんはまた「5nmがすぐ来るから」とか言いますからね。それで結局買わないとかそういうパターンじゃないですか。2年くらい前も10nmのときに「10nmかー、うーん」だったし。

後藤 いやいや、5nmの最初もまた鬼子でね、

若杉 時間も押してるのでその話はもういいです。

プレゼントタイム! レノボ・ジャパン製ゲーミングデスクトップ「Legion Y720 Tower」

勝又 本日最後のプレゼントタイムです。

若杉 こちら、ディスプレイとセットでご提供いただけるとの話だったのですが、ディスプレイ(Lenovo L27q-10モニター)の発送時期が遅くなるということで、個別にプレゼントさせていただきます。

勝又 PCの方は、レノボさんによると、AMD Ryzen7 1800Xを搭載し、ゲームやエンターテインメントを今までにない快適な環境で楽しむことができます。また、ドライバーなどの工具が不要なツールレス設計で側面のカバーはプッシュレバーで開閉し、PCパーツの拡張やメンテナンスを簡単に行うことが可能です。

 ゲームにおける没入感のあるハイエンドな体験に加え、お気に入りのプレイリストを聴いたり、最新のゲームをライブストリーミング、または動画のダウンロードなど快適なマルチタスク環境をご提供しますとのことです。

2018年もよろしくお願いします

若杉 最後にお三方に今年のベストPCを挙げてもらいました。笠原さんが挙げたのが、ThinkPad X1 Carbon。

笠原 僕が買ったのはThinkPad Yogaなのに、なぜベストPCがX1 Carbonなのかというと、個人的にはペン対応の2in1が必要なので、Yogaを買いました。X1 Carbonは、見た瞬間にすごいと思いました。狭額縁でCore Uを載せた14型というのは、当時ほかになかったので。

 来年はペンとかSurface Dialのようなものに対応した面白いものを期待したいです。あとは、Arm版Windows搭載機にも期待しています。

若杉 祥平さんは、Surface Laptopです。

山田 今までのSurfaceで、「ちょっとここがなぁ」と思ってた点がまったくないです。僕はノートPCを持ち運ぶようになって四半世紀が経ちましたが、そういう視点で触ったときに、扱いやすいし、すごくいいですね。ただ、1kgを超えているので僕の体力では毎日は持ち運べないですが、バランスいいですよね。

若杉 後藤さんはなしということのようです(笑)。

後藤 このコーナーがあったことに気づいてなかったのが本音です(笑)。実際にとくにないです(笑)。

若杉 ということで、当初2時間の予定でしたが、白熱した議論もあり2時間半が経ちましたが、長時間ご視聴ありがとうございました。お楽しみいただけたら幸いです。

 来年も年明けから、製品の話や業界の話など、お伝えしていきますので、よろしくお願いします。