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2in1としての完成度が高まった新「Surface Pro」。ペンや静音性、バッテリ性能が大きく進化

日本マイクロソフト「Surface Pro」

 日本マイクロソフトは、2in1タブレットPC「Surface」シリーズ新モデル「Surface Pro」を、6月15日より販売開始した。Surface Pro 4の後継モデルで、第7世代Coreプロセッサの採用による性能向上だけでなく、さまざまな面で進化を遂げている。今回は、CPUにCore i7-7660Uを搭載する最上位モデルを試用できたので、スペック面を中心に紹介する。

本体デザインは従来モデルから大きな変更はないが、キックスタンドが進化

 Surfaceシリーズは、一貫して板状のシンプルなデザインを採用しているが、最新モデルのSurface Proでもデザインの特徴は従来モデルからほとんど変わっていない。

 液晶面、背面ともにフラットな板状で、側面は斜めに切り落とされている。背面にはキックスタンドが備わり、中央付近にキックスタンドの切れ目があるとともに、キックスタンド部にWindowsロゴがあしらわれている点も、従来モデルから変わっていない。

 筐体色も、液晶面のベゼルが黒、背面はシルバーと、まったく同じ。背面カメラや側面ポート類の種類、配置なども同じとなっており、従来モデルのSurface Pro 4と並べると、どちらが新モデルなのか、パッと見では見分けがつかないほどだ。

 本体サイズは、292×201×8.5mm(幅×奥行き×高さ)。Surface Pro 4が292.1×201.4×8.4mm(同)なので、わずかな差はあるものの、サイズもほとんど同じと言っていい。重量は、搭載CPUによって多少の差はあるが、Core i7搭載モデルでは公称約782g。実測では786gと、公称値をわずかに上回っていた。

 なお、Surface Pro 4のCore i7搭載モデルの重量は公称で約786gだったため、わずかに軽くなってはいるが、こちらも認識できるほどの差ではなく、重量もほとんど変わっていないと言える。

 ただ、わずかながら外見的な違いもある。それは側面の溝に用意された排気口で、Surface Pro 4では排気口の細かい穴が外からはっきり見えているのに対し、Surface Proでは排気口の穴が目立たないようになった。大きな変更点ではないかもしれないが、これだけでも外観はかなりすっきりしたという印象を受ける。

 Surfaceシリーズの特徴でもある背面のキックスタンドは進化している。任意の角度で固定できるフリーアングル仕様となっているのは従来同様で、用途に応じて液晶面の角度を自在に調整できる。しかし、Surface Proではキックスタンドのヒンジが新仕様となったことで、最大165度と従来よりも深い角度まで開くようになった。

 Microsoftは、165度まで開いた状態を「スタジオモード」と呼び、ペン入力に最適な角度としている。実際に、Surface Pro 4よりも角度が緩やかになり、ペン入力がかなりやりやすくなったと感じる。これは、ペン入力を多用するクリエイターにとって、大きな魅力となるはずだ。

本体にタイプカバーとSurface ペンを取りつけた様子。本体デザインは従来モデルとほぼ同じだ
背面。フラットなデザインは従来モデルとほとんど同じだ
左がSurface Pro、右がSurface Pro 4。フットプリントはごくわずかな違いがあるものの、ほぼ同じだ
背面にはおなじみのキックスタンドを備える
キックスタンドは任意の角度で固定できる
Surface Proでは、キックスタンドのヒンジが新しくなった
こちらはSurface Pro 4のキックスタンドのヒンジ。形がかなり変わっていることがわかる
キックスタンドは最大165度まで開くようになり、より深い角度で利用可能となった
右のSurface Pro 4と比べると、かなりフラットに近い角度まで開くようになったのがよくわかる
下部側面。高さは8.5mmと、Surface Pro 4の8.4mmからわずかに厚くなったが、印象は変わらない
左側面
上部側面
右側面
本体重量は、公称782g、実測では786gだった

新しいSurface Penは、4,096段階の筆圧検知や傾き検知に対応

 Surface Pro新モデルの発表に合わせて、Surface Penの新モデルの投入も発表された。

 Surface Pro 4と同時に投入されたSurface Penは、1,024段階の筆圧検知に対応していたが、今回登場した最新のSurface Penは、4,096段階の筆圧検知に対応し、従来以上になめらかな入力を実現。加えて、新たに傾き検知にも対応。ペンの傾きによって線の太さなどが変わるため、より本物のペンや筆、鉛筆などに近い書き味が実現されている。

 実際に試してみたが、細かな筆圧の違いによって微妙な色の濃さや線の太さが変わったり、ペンの傾きの違いで線の太さが変わるなど、確かに非常になめらかな書き味を確認できた。ペン先への追従性も申し分なく、本物のペンで紙に文字を書いている場合にかなり近い感覚で利用できると感じた。イラストなどを描くことがない筆者でも書き味のなめらかさは十分に体感できたため、イラストレーターなどプロのグラフィッククリエイターにとってこの進化は大きな魅力となりそうだ。

 また、ペン尻には従来同様に、消しゴム機能を備えるボタンが用意されている。そして、このボタンをシングルクリック、ダブルクリック、長押しすることで、OneNoteの起動やスクリーンショットの撮影などの機能をワンタッチで呼び出せる。呼び出す機能は設定メニューから自由に変更できるため、ペン利用時の利便性を大きく高めてくれるだろう。

 なお、この新しいSurface Penは、日本では2017年8月以降に発売予定となっている。

Surface Proに合わせて追加された、4,096段階の筆圧検知、傾き検知に対応するSurface Pen新モデル
ペン前方にクリックボタン
ペン先は従来モデルとほぼ同じ
ペン尻には消しゴム機能を備えるボタンを用意。シングルクリック、ダブルクリック、長押しで設定した機能を呼び出せるギミックも用意
4,096段階の筆圧検知対応で、非常になめらかな書き味となっている。ペン先への追従性も申し分なく、軽快なペン入力が可能
キックスタンドを最大に開いた「スタジオモード」では、ペン入力も非常に軽快
ペンの傾きによって線の太さが変わる様子

2,736×1,824ドット表示対応の12.3型液晶を搭載

 ディスプレイはSurface Pro 4同様の、2,736×1,824ドット表示対応、アスペクト比3:2の12.3型液晶「PixelSenseディスプレイ」を採用している。

 Surface Pro 4でもディスプレイの表示品質の高さに定評があったが、Surface Proも同等の優れた表示品質を確保。野外でも見やすい高輝度かつ高コントラストで、発色も非常に鮮やか。解像度も非常に高精細ということもあって、デジタルカメラの写真もクオリティを失うことなく表示できる。

 個人的には、ディスプレイ表面が光沢仕様で、外光の映り込みが多い点はやや気になったが、表示品質に関してはほとんど不満を感じなかった。

 ディスプレイは、Surface Penでのペン入力に加えて、10点マルチタッチのタッチ操作もサポート。タッチパネルは液晶パネルにダイレクトボンディングされているため、視差も非常に少なく、ペン入力も快適だ。

Surface Pro 4同様、2,736×1,824ドット表示対応の12.3型液晶「PixelSenseディスプレイ」を搭載
光沢仕様のため外光の映り込みはやや気になるが、高輝度かつ高コントラストで、発色も非常に鮮やかだ

Alcantara製スエード生地を採用する「Surface Pro Signature タイプカバー」

 キーボード内蔵カバーは、従来モデルの「Surface Pro 4 タイプカバー」がそのまま利用可能となっている。

 そして、Surface Pro登場に合わせて、「Surface Pro Signature タイプカバー」と呼ばれる新モデルが追加された。こちらは、キーボード面および背面の外装部に、イタリアの合成皮革メーカー「Alcantara」が製造するAlcantara生地を採用する点が大きな特徴。

 Alcantaraはスエード調の合成皮革で、アパレルだけでなく自動車や飛行機などの内装など、さまざまな用途に利用されている高級素材。そのAlcantaraを採用することで、非常に手触りがよい。背面部はやや毛足が長いような柔らかい手触り、キーボード面のタッチパッド部分はやや毛足が短くサラサラとした手触りからは、従来のタイプカバーにはない高級感も感じられる。

 そのほかの仕様は、Surface Pro 4 タイプカバーとほぼ同じ。バックライト内蔵のアイソレーションタイプキーボードは、キーピッチが約19mmで、ストロークも十分に深い。タッチはやや硬めで、クリック感も強めのため、しっかりとタイピングできるという印象。

 また、キーボード後方が折れ曲がって液晶面にマグネットで貼りつく構造も同様で、キーボード面に適度な角度をつけて快適なタイピング環境も実現可能だ。そのほか、キーボード手前のタッチパッドにも変更はない。クリックボタン一体型で面積は十分に広く、複数の指を利用したジェスチャー操作もサポートしているので、軽快な操作が可能だ。

 サイズは216×295×4.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は310g。実測の重量は301.5gだった。カラーはバーガンディ、コバルトブルー、プラチナの3色をラインナップし、価格は20,952円で、2017年7月7日より発売される予定だ。

Alcantara製スエード生地を採用する「Surface Pro Signature タイプカバー」
タイプカバーとしての仕様は、Surface Pro 4 タイプカバーと同じだ
Alcantaraのスエード生地は、非常になめらかで高級感がある
背面側はやや毛足が長いようなふかふかとした手触り
パームレスト側は表面処理が異なっており、やや毛足が短いような手触りだ
キーボード後方が折り曲がり、キーボード面に角度をつけられる点も同様
主要キーのキーピッチは約19mm
ストロークも実測で1.5mmほどと十分な深さを確保。やや硬めのタッチとしっかりとしたクリック感も従来同様だ
タッチパッドの仕様もSurface Pro 4 タイプカバーと同じ。クリックボタン一体型で、ジェスチャー操作にも対応している
キーボードバックライトも搭載する
Surface Pro Signature タイプカバーの重量は、実測で301.5gだった

第7世代Core i7-7660Uを搭載し、静音性も高められている

 では、スペック面を確認していこう。CPUには第7世代Coreプロセッサを採用しており、試用機ではCore i7-7660Uを搭載。Core i7-7600U同様のTDP 15WのUプロセッサだが、内蔵グラフィックス機能としてIris Graphics 640を採用することで、描画能力が高められている。

 Core i7-7660U搭載モデルのメモリ搭載量は標準で16GBと、最上位モデルらしく余裕の容量となっている。内蔵ストレージは最大1TBのSSDまで搭載可能となっており、試用機ではNVMe/PCI Express 3.0 x4対応の512GBSSDを搭載していた。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載する。

 外部接続端子は、左側面にオーディオジャック、右側面にMini DisplayPortとUSB 3.0×1ポート、背面キックスタンド内部にmicroSDカードスロットを備える。独自形状の電源コネクタも従来モデル同様で、ACアダプタも従来モデルと同じものが同梱となる。

 センサー類としては、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープを搭載。カメラは、裏面に800万画素のメインカメラと、液晶面上部に500万画素の前面カメラを搭載。また、前面カメラ横にはWindows Hello対応の顔認証用赤外線カメラも搭載しており、セキュリティ性を高めつつ顔認証によって簡単なWindowsログオンを可能としている。

下部側面には、タイプカバー用の接続端子がある
左側面にオーディオジャックを配置
上部側面には、電源ボタンとボリュームボタンがある
右側面にMini DisplayPortとUSB 3.0を配置。電源コネクタは従来同様独自形状のものを採用
キックスタンド内部にmicroSDカードスロットを用意
裏面側に800万画素のメインカメラを配置
液晶面上部には、500万画素の前面カメラと、Windows Hello対応の顔認証用赤外線カメラを備える
付属のACアダプタ。Surface Pro 4同梱のものと同じだ
ACアダプタにはUSB充電ポートを用意
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブルを合わせて実測220.5gだった

高負荷時でも優れた静音性を実現

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1238」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3732」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、従来モデルとなる「Surface Pro 4」のCore i7-6650U搭載モデルの結果も加えてある。

【表1】検証環境
Surface Pro 2017年モデルSurface Pro 4
CPUCore i7-7660U(2.50/4.00GHz)Core i7-6650U(2.20/3.40GHz)
チップセット-
ビデオチップIntel Iris Plus Graphics 640Intel Iris Graphics 540
メモリLPDDR3 SDRAM 16GBLPDDR3 SDRAM 8GB
ストレージ512GB SSD(NVMe PCIe)256GB SSD(NVMe PCIe)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bit
【表2】Surface ProとPro4のベンチマーク比較結果
Surface Pro 2017年モデルSurface Pro 4
PCMark 10 v1.0.1238
PCMark 10 Score3,5303,254
Essentials6,7156,787
App Start-up Score9,1607,981
Video Conferencing Score5,2986,351
Web Browsing Score6,2416,168
Productivity6,2105,527
Spreadsheets Score7,5915,837
Writing Score5,0815,235
Digital Content Creation2,8642,493
Photo Editing Score3,5413,275
Rendering and Visualization Score1,7411,512
Video Editting Score3,8113,131
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.03,3733,593
Creative accelarated 3.04,8974,780
Work accelarated 2.04,3424,155
Storage5,0084,967
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)65.4661.16
CPU417342
CPU (Single Core)157135
3DMark Professional Edition v2.3.3732
Cloud Gate8,6427,353
Graphics Score12,87710,236
Physics Score4,0013,703
Sky Diver5,1034,553
Graphics Score5,1124,563
Physics Score5,3264,645
Combined score4,7434,356
Time Spy502406
Graphics Score444358
CPU Score1,9741,719
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)4,4663,781
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)3,2442,680

 結果を見ると、CPUの強化による順当な性能向上が見て取れる。PCMark 10、PCMark 8ともに、一部を除きほとんどの項目でSurface Pro 4のスコアを上回っている。また、CINEBENCH R15も同様で、第7世代Core i7に強化されたことによる効果が素直に現れていると言っていいだろう。

 また、3DMarkのスコアも同様で、こちらもすべての項目でSurface Pro 4のスコアを上回った。ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの結果も同様で、内蔵グラフィックス機能のIris Graphics 640の描画能力の高さが如実にスコアに表れた形だ。

 ところで、ベンチマークテスト中に感じたのが、Surface Proの優れた静音性だ。Surface Proでは、Core i7搭載モデルにのみ冷却ファンを搭載し、Core i5およびCore m3搭載モデルではファンレス仕様になっている点が特徴となっている。

 今回はCore i7モデルだったため、空冷ファンを搭載しており、高負荷時には空冷ファンが動作する。しかし、Surface Pro 4高負荷時の比較的大きな風切り音のに対し、Surface Proは風切り音がかなり小さくなっている。感覚的にはうるささが半減以下となっているという印象で、非常に静かだった。もちろん、まったく無音というわけではないものの、この静かさなら図書館などでも気にせず利用できるはずだ。

 続いて、バッテリ駆動時間だ。Surface Proの公称バッテリ駆動時間は動画再生時で約13.5時間となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約10時間25分だった。

 同じ条件でSurface Pro 4でも計測してみたところ、約7時間34分だったため、Surface Pro 4に比べて3時間近くも駆動時間が延びた形だ。これは、第7世代Coreプロセッサの優れた省電力性が大きく影響していると考えられるが、持ち歩いて利用することの多さを考えると、バッテリ駆動時間がかなり伸びている点は、大きな魅力と言える。

高性能2in1タブレットの標準的存在

 今回実際にSurface Proを試用してみたところ、基本的にはSurface Pro 4をベースとしたマイナーバージョンアップモデルで、思ったほど新鮮味がないという印象を受けたのも事実だ。

 とはいえ、CPUの強化やSurface Penの進化、バッテリ駆動時間の延長、優れた静音性など、着実な進化を実現しており、その魅力は大きく向上している。2in1タブレットというジャンルを確立し、着実に進化させてきたという大きな功績は、もはや揺るぐことはなく、今回のSurface Proの登場で、高性能2in1タブレットの標準としての存在感をさらに高めたと言っていいだろう。

 毎日持ち歩いて利用するビジネス2in1タブレットを探している場合はもちろん、クリエイティブ用途にも活用できる高性能な2in1タブレットを探している人も、Surface Proをまず最初に検討すべきなのは間違いなく、広くお勧めしたい。