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生成AIと半導体の未来を紐解く「VLSIシンポジウム2026」ハワイで開催

2024年6月にハワイで開催されたVLSIシンポジウム(VLSI 2024)の参加登録受付所。筆者が現地で撮影したもの

 半導体のデバイス・プロセス技術と集積回路技術に関する最先端の研究開発成果を披露する国際学会「VLSIシンポジウム(2026 IEEE Symposium on VLSI Technology and Circuits: VLSI 2026)」が、今年も始まろうとしている。開催地は米国ハワイ州ホノルル、会場はリゾートホテル「Hilton Hawaiian Village」である。開催期間は6月14日~18日を予定する。

VLSIシンポジウムの公式Webサイト。トップページの一部を抜粋したもの

 ここ十数年、VLSIシンポジウムは西暦の偶数年に米国ハワイ州ホノルル(Hilton Hawaiian Village)、奇数年に京都府京都市(リーガロイヤルホテル京都)を開催地としてきた。同シンポジウムの関係者はこの交互開催を「ハワイ開催」「京都開催」と呼んで区別する。コロナ禍による2020年と2021年のバーチャル開催を経て2022年にはハワイ開催、2023年には京都開催が復活した。今年はコロナ禍以降では3回目のハワイ開催となる。

 コロナ禍によって生み出された「オンデマンド」と呼ばれるリモートでの参加枠(バーチャル参加登録)は、今年も設けられる。ただし参加登録料金は現地参加とオンライン参加で変わらない。また現地参加者も公開された講演ビデオをオンデマンドで視聴できる。

コロナ禍収束以降では3回目のハワイ開催、オンデマンドは継続

 2026年の開催テーマは「Advancing the AI Frontier through VLSI Innovation(VLSIのイノベーションを通じたAIフロンティアの進歩)」である。VLSIのイノベーションがAIの進化には欠かせない。VLSIシンポジウムではVLSIのイノベーションを支えるデバイス・プロセス技術や回路設計技術、応用技術などの研究開発成果が披露される。

2026年のVLSIシンポジウム開催テーマと趣旨。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から
2026年のVLSIシンポジウム開催概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

 シンポジウムの全体的なスケジュールは以下のようになっている。基本的には曜日によって予定が決まる。始まりは日曜である。日曜(6月14日)と月曜(6月15日)がプレイベント、火曜(6月16日)~木曜(6月18日)がメインイベント(技術講演会: テクニカルカンファレンス)と進む。火曜と水曜の始まりには、プレナリー講演(基調講演)が実施される。

VLSIシンポジウム(VLSI 2026)の全体的なスケジュール(タイムテーブル)。公式Webサイトやプログラムなどから筆者がまとめたもの

日曜のワークショップでは埋め込みメモリや光電融合、スピン量子などを学ぶ

 6月14日は午後から、前半と後半の2つの時間枠でワークショップを実施する。前半(午後1時~午後3時15分)に3件ずつ、後半(午後3時30分~午後5時45分)に3件ずつのテーマを同時並行で進める。前半のテーマは「低温CMOS」「埋め込みメモリ」「光電融合」、後半のテーマは「シリコンのスピン量子ビット」「DRAM向け高性能CMOS」「製造歩留まりの向上」である。

日曜日(6月14日)に実施するワークショップ(前半)の概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から
日曜日(6月14日)に実施するワークショップ(後半)の概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

月曜のショートコースはAI向け製造技術とAIが支援する設計技術が共通テーマ

 翌6月15日はショートコース(技術講座)を予定する。共通のテーマに基づいた複数の講演で構成される。共通テーマはデバイス・プロセス技術(テクノロジ)側で1つ(講演記号はSCT)、回路技術(サーキット)側で1つ(同SCC)あり、両者を同時並行で実施する。

6月15日(月曜日)のショートコース(技術講座)概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

 デバイス・プロセス技術(テクノロジ)側の共通テーマは「Technologies Shaping the Future as Key Enablers for AI(AI(人工知能)時代の実現にカギとなる未来を形成する技術)」である。午前8時30分から午後5時00分までの予定時間で、合計で8件の講演を実施する。各講演のテーマは、ロジックのスケーリング、設計・システム・製造の協調最適化、先端2.5/3次元化による異種集積、DRAMのスケーリング、不揮発性メモリの展望、酸化物半導体の埋め込み、光相互接続などである。

デバイス・プロセス技術(テクノロジ)分野のショートコース(SCT)で予定される講演の一覧。VLSIシンポジウムの公式Webサイトとプログラムから抜粋したもの

 回路技術(サーキット)側の共通テーマは「AI-Driven Design Acceleration: Learning Across Circuits, Technology, and Yield(AIが設計を加速: 回路と製造、歩留まりの事例を学ぶ)」である。午前8時30分から午後5時00分までの予定時間で、合計で8件の講演を予定する。各講演のテーマは、AI支援によるアナログの設計自動化、AI技術によるメモリ開発期間短縮、AIの活用によるLSI設計の再構築、AI支援のフロアプランニング、機械学習を故障診断に応用、エージェントAIによる設計の自動化、などである。

回路技術(サーキット)分野のショートコース(SCC)で予定される講演の一覧。VLSIシンポジウムの公式Webサイトとプログラムから抜粋したもの

月曜日の夕方には恒例の「デモセッション兼レセプション」を開催

 同じ6月15日の夕方からは、恒例のデモセッション兼レセプションが実施される。デモセッションでは、16日以降に発表予定の研究成果を一部の有志がひと足早く、テーブルトップ形式(ポスターとテーブルのセット)で概要を展示する。同じ会場でレセプションも開催される。

一昨年(2024年)6月にハワイで開催されたVLSIシンポジウム(VLSI 2024)のデモセッション兼レセプションの様子。左端にテーブルトップ(テーブルとポスター)展示の列が見える。筆者が現地で撮影したもの
デモセッションの展示予定一覧。VLSIシンポジウムの公式Webサイトから抜粋したもの
デモセッションの展示予定一覧(続き)。VLSIシンポジウムの公式Webサイトから抜粋したもの

月曜の夜はデモセッション兼レセプションに続けて「パネル討論会」を実施

 同じ6月15日の夜は、デモセッション兼レセプションに続けてパネル討論会(Evening Panel Discussion)を予定する。時間割(現地時間)はデモセッション兼レセプションが午後5時45分~午後7時45分、続くパネル討論会が午後8時~午後10時である。

 前年までパネル討論会は、火曜日(技術講演会初日)の午後8時が開催時刻となっていた。前回のハワイ開催(2024年)のプログラムによると、火曜日は講演セッションが午後5時30分~午後6時前後には完了する。パネル討論会の開始時刻は午後8時となっていた。

 講演セッションの完了からパネル討論会の開催時刻までには、2時間ほどの空きがある。この「空き時間」が曲者で、参加登録者同士が再会を祝してグループで食事に出かけることが少なくない。当然ながら食事の席が盛り上がり、パネル討論会を欠席するグループがある。あるいは最初からパネル討論会に出席せず、アルコール有りの食事を楽しもうとするグループもあるだろう。

 こういった「出かけたまま戻ってこない」という動きを封じるため、パネル討論会をレセプションの直後にスケジュールした。レセプションではドリンクと軽食が振る舞われるので、参加者はお腹をある程度は満たした状態になる。そのままパネル討論会に参加してもらおうという目論見だ。

 ここで問題となるのは、技術講演会が始まる前、すなわち前日夕方の段階でどの程度の参加者が現地での受付を済ませているかだろう。筆者が過去に現地参加したときの様子では、技術講演会初日朝の現地受付は常に混雑していた。言い換えると、前日夕方のレセプションには参加していない登録者が一定数いるということだ。

 新しい試みを実施するのは、基本的には良いことだと筆者は考えている。この試みにより、パネル討論会の参加者が前回のハワイ開催と比べて増えることを期待したい。

パネル討論会(Evening Panel Discussion)の概要(6月15日(月曜日)午後8時開始予定)。ここでも「AI(人工知能)」が討論のテーマである。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

プレナリーセッションでは「生成AI」「先進パッケージ」「DRAM」「製造装置」の講演を予定

 続く火曜日(6月16日)と、翌日である水曜日(6月17日)の午前にはプレナリーセッションが実施される。それぞれ2件ずつの基調講演(いずれも招待講演)を予定する。

 火曜日(6月16日)は、「Building the Engine of AI: From Foundational VLSI Technologies to System-Scale Impact(AIのエンジンを構築する: 基礎となるVLSI技術からシステム規模の影響まで)」のタイトルでOpenAIのRichard Ho氏が、続けて「Advanced Package for Next-Generation AI System Scaling(次世代AIシステムの規模拡大に向けた先進パッケージ)」 のタイトルでTSMCのL.C. Lu氏が講演する。

火曜日(6月16日)の基調講演概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

 水曜日(6月17日)は、「Intelligence Accelerated: Memory Innovations to Power the AI Era(加速する人工知能: メモリの革新がAI時代に力を与える)」と題してMicron TechnologyのNirmal Ramaswamy氏が、続いて「Meeting AI Demand Through Equipment Innovation and AI-Driven Manufacturing: Progress and Challenges(製造装置の革新を通じてAIの要求に応え、AIが製造の進化と挑戦を牽引する)」と題して東京エレクトロンのYoshinobu Mitano氏が講演する。

水曜日(6月17日)の基調講演概要。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

投稿件数は1,000件を突破、3年連続で過去最多を更新

 ここからは投稿論文と採択論文の傾向を説明しよう。投稿論文の件数(レイトニュースを除く)は2010年以降、2023年までは500件~600件で推移してきた。ところが一昨年(2024年)のハワイ開催で897件と想定外の急激な増加をみせた。続く昨年(2025年)の京都開催でも、投稿件数は898件とほぼ変わらない(わずかに増加)。今年(2026年)の投稿件数は1,054件とさらに増えた。3年連続で過去最多を更新した。

投稿論文と採択論文の件数と内訳。レギュラー(一般)論文の投稿件数は1,041件と多い。採択件数は237件である。レイトニュース論文の投稿件数は13件とかなり活発だ。採択件数は2件にとどまった。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

 採択論文の件数は239件、採択率(採択論文数/投稿論文数)は22.7%である。前回の採択率は27.8%、前々回の採択率は26%、2023年以前は平均34%だった。今回は過去最低の採択率、言い換えると最も門戸が狭い。

国・地域別の投稿数では中国、採択数では韓国がトップを占める

 国・地域別に投稿論文件数(レイトニュースを含む)を見ていくと、中国(香港とマカオを含む)が366件と最も多い。全体の約3分の1(34.7%)を占める。次いで韓国が226件と多い。3番目は北米(米国とカナダの合計)で169件である。以上のトップスリーはいずれも、前年よりも投稿件数が多い(前年は中国が298件、韓国が174件、北米が141件)。4番目は台湾で95件、5番目は欧州で90件、6番目は日本で51件と続く。

国・地域別の投稿論文件数と採択論文件数(いずれもレイトニュースを含む)。2026年4月28日に東京で開催された記者会見の資料から

 国・地域別の採択論文件数(レイトニュースを含む)では、韓国が60件(採択率34.5%)と最も多い。2位は北米(米国とカナダの合計)で55件(同32.5%)、3位は中国(香港とマカオを含む)で42件(同11.5%)である。4位以下は欧州が34件(採択率37.8%)、日本が27件(同52.9%)、台湾が15件(同15.8%)と続く。

 過去最多の投稿論文件数、過去最低の採択率となった2026年のVLSIシンポジウム。採択された論文の品質はかなり高いとみられる。VLSIシンポジウムは大別すると「テクノロジ(デバイス・プロセス技術)」と「サーキット(回路技術)」に分かれる。両分野のハイライト(投稿・採択件数と注目論文)は本コラムの次回以降で紹介するので、ご期待されたい。