西川和久の不定期コラム

OpenClawとQwen3.5-9Bプリインで届いてすぐローカルAIが動くミニPC「SER9 Pro」

 BeelinkはOpenClawをプリインストールし、筐体をメタリックレッドにした各ミニPCモデルを販売中だ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen AI 9 PRO HX 370/32GB/1TB、OpenClawとLLMをプリインストールしたミニPC

 Beelinkのサイトを見ると、OpenClawをプリインストールし、筐体をメタリックレッドに変えたモデルが、GTR9 Pro、GTi15 Ultra、SER10 MAX、GTi14 Ultra、SER9 Pro、SER9 MAX、EQi Pro、EQi12 Pro……と並んでいる。

 プロセッサもCore Ultra 9 285H、Ryzen AI Max+ 395からRyzen 7 7735HSなどさまざまなのを搭載。予算や用途で選べるようになっている。

 今回手元に届いたのはSER9 Proで、Ryzen AI 9 PRO HX 370(なお、サイトの表記はPROなしだが、今回届いたモデルはPRO付きだったため以下統一)/32GB/1TBのOpenClawプリインストールモデル。主な仕様は以下の通り。

Beelink「SER9 Pro / Ryzen AI 9 PRO HX 370(OpenClaw & ローカル LLM)」の仕様
プロセッサRyzen AI 9 PRO HX 370(12コア24スレッド、クロック最大 5.1GHz、キャッシュ L2/L3 12MB/24MB、TDP 28W/cTDP 15~54W)
メモリ32GB/LPDDR5x-7500MHz(増設不可)
ストレージ1TB SSD/M.2 2280 PCIe4.0 NVME(2スロット1つ空き)
OSUbuntu 24.04.4 LTS
グラフィックスRadeon 890M(16コア)/HDMI、DisplayPort、Type-C
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイス前面: USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2 Type-C、3.5mmジャック
背面: USB4、USB 2.0 2基、USB 3.2 Gen 2、3.5mmジャック
そのほかデュアルスピーカー、マイク
サイズ/重量135×135×44.7mm(幅×奥行き×高さ)、約780g
価格1,169ドル(約19万円/1ドル=162円換算)

 このモデルは、基本的にSER9 ProのRyzen AI 9 PRO HX 370搭載モデルと同じ。プロセッサはRyzen AI 9 PRO HX 370。12コア24スレッドでクロック最大 5.1GHz。キャッシュ L2/L3 12MB/24MB。TDP 28W/cTDP 15~54W。

 メモリはLPDDR5x-7500MHzで32GB。つまり増設はNGだ。ストレージは1TB SSD/M.2 2280 PCIe4.0 NVME。M.2 2280スロット自体は2つあり空き1つ。

 そしてOSはUbuntu 24.04.4 LTS。サイトでは一応Ubuntu + Windowsの選択ボタンはあるのだが、無効になっている。OpenClawをメインにという意味では正解なのだが、主にWindowsを使う一般ユーザーから見るとハードルが高いかもしれない。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 890M(16コア)。外部出力用にHDMI、DisplayPort、Type-Cを装備する。

 ネットワークは、2.5GbE、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(データのみ)、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0 2基、3.5mmジャック2基、マイク、デュアルスピーカー。

 サイズ135×135×44.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約780g。価格は1,169ドル。現在円安が進行中で執筆時1ドル=162円なので約19万円。去年(2025年)から比較するとかなり割高になっている。

前面。電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2 Type-C。上のホールはマイク
背面はUSB4、USB 2.0 2基、USB 3.2 Gen 2、3.5mmジャック、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI出力、3.5mmジャック、電源入力
底面とiPhone 16 ProミニPCとしては少し大きめだろうか。左下の布は裏パネルを開けるときに引っ張るためのもの
付属品。ACアダプタ(サイズ約70×70×30mm、重量273g、出力19V/5.26A)、HDMIケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で806g。仕様より少し重い
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。背面にUSB4があり、Type-Cケーブル一本で接続可能

 筐体は写真からも分かるようにメタリックレッド。ミニPCとしては珍しい(ほかにない?)カラーリングだ。iPhone 16 Proとの比較写真からミニPCとしては少し大きめだろうか。

 前面は電源ボタン、電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2 Type-C。上のホールはマイク。USB4、USB 2.0 2基、USB 3.2 Gen 2、3.5mmジャック、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI出力、3.5mmジャック、電源入力を配置。

 付属品はACアダプタ(サイズ約70×70×30mm、重量273g、出力19V/2.56A)、HDMIケーブル。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 内部へのアクセスは比較的簡単で、裏の4隅にあるゴムを外すと下にネジがあるので外し、裏蓋の布を引っ張ると簡単に開く。

 ただし、中にスピーカーを固定するためもう1枚パネルがあり、これもネジを外すとM.2スロットにアクセスできる。実際はヒートシンクも外す必要もあるため、もう一手間かかるのだが……。

 なお、このデュアルスピーカーによってミニPCの割にはそれなりの音を出せるのも本機の特徴といえよう。

 メモリに関しては、冒頭の仕様にあるようにLPDDR5xで固定。増設することはできない。

四隅のゴムを剥がすと下にネジがありこれを外す
内部にもう1つパネルがありネジ2本を外す。スピーカーケーブルが本体側と接続しているので要注意。ヒートシンクの下にM.2 2基。1つ(内側)は装着済み

 ノイズは筐体に耳を近づければのレベル。発熱もあるにはあるが大したことはない。この点はミニPCとしては若干大きめの筐体が効いているのだろう。

OSはUbuntu 24.04.4 LTS

 初期起動時、Ubuntu 24.04.4 LTSそのまま。アプリ一覧は2画面+サブ。Ubuntuを普段使ってる人から見れば普通の構成だ。ストレージのパーティションは997GBが割り当てられている。

 lshwコマンドによると、M.2 1TB SSDは「Micron CT1000E100SSD8」。2.5GbEは「Realtek RTL8125 2.5GbE Controller」、Wi-Fiは「Intel Wi-Fi 6 AX200」。BluetoothもIntel製だ。

初期起動時のデスクトップ
アプリ一覧(1/3)
アプリ一覧(2/3)
アプリ一覧(3/3)
ストレージのパーティション
システムモニタ

 ただ、システムモニタを見ると、メモリ29GB中14.6GBも使っている。Ubuntuはフットプリントが小さいので、こんなに使わないハズなのだが……(答えは後述)。

 ベンチマークテストは、GeekBenchとストレージはkDiskMarkを使用した。どちらもそれなりのスコアでRyzen AI 9 PRO HX 370とSSDの性能は十分出ている。

Geekbench 6 Single-Core / Multi-Core。Single-Coreは2612、Multi-Coreは12935
Geekbench 6 Vulkanのスコアは54503
kDiskMark
kDiskMark
[Read]
Sequential   1 MiB (Q=  8, T= 1):  4877.140 MB/s [   4762.8 IOPS] <  1661.77 us>
Sequential   1 MiB (Q=  1, T= 1):  3124.499 MB/s [   3051.3 IOPS] <   326.71 us>
    Random   4 KiB (Q= 32, T= 1):  1859.586 MB/s [ 464896.7 IOPS] <    68.63 us>
    Random   4 KiB (Q=  1, T= 1):    80.455 MB/s [  20113.8 IOPS] <    49.39 us>

[Write]
Sequential   1 MiB (Q=  8, T= 1):  4354.890 MB/s [   4252.8 IOPS] <  1759.59 us>
Sequential   1 MiB (Q=  1, T= 1):  2929.292 MB/s [   2860.6 IOPS] <   243.90 us>
    Random   4 KiB (Q= 32, T= 1):  1318.807 MB/s [ 329701.9 IOPS] <    96.84 us>
    Random   4 KiB (Q=  1, T= 1):   343.407 MB/s [  85852.0 IOPS] <    10.99 us>

OpenClawを使ってみる

 OpenClawを使うにあたって、ローカルLLMインストール済みとあったので、何が入っているのか?調べてみた。

$ ps ax | grep llama
   1833 ?        Ssl    0:01 /root/llama.cpp/build/bin/llama-server -m /opt/models/Qwen3.5-9B-Q4_K_M.gguf --port 8080 --ctx-size 262144 --n-gpu-layers 99

 ご覧のように、起動時からllama.cppが動作しており、Qwen3.5-9B-Q4_K_M.ggufがロードされている。先のUbuntuの割にメモリを多く使ってたのはこれが理由だった。動作確認は以下の通り。

admin@seri:~$ curl http://localhost:8080/v1/chat/completions \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{
    "model": "Qwen3.5-9B-Q4_K_M",
    "messages": [{"role": "user", "content": "動作確認"}],
    "max_tokens": 30
  }'
{"choices":[{"finish_reason":"length","index":0,"message":{"role":"assistant","content":"動作確認(機能確認)ですね。具体的に何をチェックしたいか教えていただけますか?\n\nよくあるパターンに合わせて回答例を挙げます:\n\n---"}}],"created":1782956678,"model":"Qwen3.5-9B-Q4_K_M.gguf","system_fingerprint":"b0-unknown","object":"chat.completion","usage":{"completion_tokens":30,"prompt_tokens":14,"total_tokens":44},"id":"chatcmpl-hwVrwBn4xv7NZCiNOWtGzMIx0SeeS1rB","timings":{"cache_n":0,"prompt_n":14,"prompt_ms":262.771,"prompt_per_token_ms":18.769357142857142,"prompt_per_second":53.27832980047265,"predicted_n":30,"predicted_ms":2140.034,"predicted_per_token_ms":71.33446666666667,"predicted_per_second":14.018468865447932}}
llama.cpp動作中のCPU/メモリ負荷など

問題なく動作している。いつも使っているベンチマークテストの結果は(2並列まで)、

ベンチマーク: 1並列リクエスト
総実行時間: 36.74秒
平均応答時間: 36.74秒
最速応答: 36.74秒
最遅応答: 36.74秒
合計生成トークン: 403
平均トークン/秒: 10.97 t/s
スループット: 0.03 req/s
実効スループット: 10.97 tokens/s
ベンチマーク: 2並列リクエスト
総実行時間: 37.46秒
平均応答時間: 19.48秒 (±25.43)
最速応答: 1.49秒
最遅応答: 37.46秒
合計生成トークン: 401
平均トークン/秒: 7.92 t/s
スループット: 0.05 req/s
実効スループット: 10.71 tokens/s
並列効率: 48.8% (1並列基準 10.97 t/s × 2 = 21.94 t/s)

と、実質約10tok/sとなる。以前、同じプロセッサを搭載したEVO-X1で試した時(LLMのモデルは違うが)もおおよそこんな感じだ。チャットなら何とか使える速度だろうか。

 LLMに何が動いているのか分かったところで、次はOpenClawのバージョンを確認してみよう。

$ openclaw --version
2026.3.2

 執筆時、2026.6.11が出ているものの、ここはとりあえずプリインストールの状態でテストすることにした。

 Webブラウザでhttp://localhost:18789でアクセス、Yahoo! JAPANのトップニュース一覧を尋ねると……“約2分後”に答えが。これは10tok/sなので仕方ないところ。

OpenClawでYahoo! JAPANのトップニュース一覧を表示

 正直なところ、9Bで10tok/sだとOpenClawは動くには動くが、汎用的かつ実用レベルの反応は望めない。筆者はこれが理由で、27Bや30Bクラスもスキップして、DeepSeek V4 Flash(284Bアクティブ13B)もしくはMiMo-V2.5(310Bアクティブ15B/Vision必要時)を使っているほど。

 本機のデフォルトケースだと、何か単純な作業で時間がかかってもいい処理(夜中にクロールして朝までに結果をまとめる的な)をする程度だろうか。とはいえ、ローカルだけでOpenClawが動くというのはそれなりに意義はある。


 以上のようにBeelink「SER9 Pro / Ryzen AI 9 PRO HX 370(OpenClaw & ローカル LLM)」は、初期起動直後から、ローカルでllama.cppを起動、Qwen3.5-9B-Q4_K_M.ggufをロード、これを使いOpenClawが動作するという、完全にローカルのみで完結する環境を手に入れることができる。

 9Bで10tok/sなのでかなり限定的な用途になるものの、このまま使うのもあり、別途強力なLLMを用意して使うのもありだ。この辺り、次回いろいろ書いてみたいと思う。