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科学大の6G送受信器やNVIDIA光回路など、VLSI 2026注目講演
2026年6月19日 12:49
半導体のデバイス・プロセス技術と集積回路技術に関する国際学会「VLSIシンポジウム(2026 IEEE Symposium on VLSI Technology and Circuits: VLSI 2026)」が今年(2026年)も始まった。開催地は米国ハワイ州ホノルル、会場はリゾートホテル「Hilton Hawaiian Village」。開催期間(現地時間)は6月14日から18日である。
本コラムの前々回でご報告したように、6月14日から15日はプレイベント(ワークショップとショートコース)、6月16日から18日はメインイベント(技術講演会、テクニカルカンファレンス)を実施する。
本コラムの前回では、メインイベントで発表される数多くの研究成果の中から、VLSIシンポジウムの実行委員会が選出した注目講演の一部をご紹介した。実行委員会はシンポジウムを構成する2つの分野、「デバイス・プロセス技術分野」と、「回路技術分野」に分かれており、前回はデバイス・プロセス技術分野の注目講演と、論文投稿・採択状況を説明した。今回は回路技術分野の注目講演と、論文投稿・採択状況をご報告する。
なお本稿の注目講演は、実行委員会が選出したハイライトのすべてを紹介しているわけではない。あらかじめご了承願いたい。
無線、データ変換、機械学習、メモリ、プロセッサなどの注目すべき研究成果
回路技術分野では、10件の発表が注目講演として紹介された。応用分野別にみると、「無線回路」が2件、「アナログとデータ変換器」が2件、「機械学習/深層学習向けのデバイスおよびアクセラレーションと新しい計算技術」が2件、「パワーマネジメント回路」が1件、「メモリ技術」が1件、「プロセッサとシステム・オン・チップ(SoC)」が1件、「有線と光送受信器」が1件である。
科学大の6G端末用高速送受信器とIntelの熱管理用デジタルセンサー
始めは無線回路分野とアナログとデータ変換器注目講演を簡単にご紹介しよう。
東京科学大学(科学大)は、第6世代移動体通信端末(6G UE)向けのD帯デュアル偏波MIMO高密度フェーズドアレイ送受信器を開発した(講演番号C1.5)。最大通信速度は144Gbpsと高い。製造技術は65nmのCMOSプロセス。4個の垂直偏波送受信素子と4個の水平偏波送受信素子を集積した。消費電力は偏波送信素子当たりが120mW、偏波受信素子当たりが90mW。通信距離はシングルストリームの場合に最大50mとかなり長い。
University College Dublin(ダブリン大学)は、28GHz帯の位相シフト機能内蔵4相デジタル波形同期ループ(DWLL)回路を試作した(講演番号C4.4)。ミリ波のMIMOフェーズドアレイ向け。27.375GHzにおいて57fsと低いrmsジッタ、-80.6dBcと小さな基準スプリアスを達成した。位相シフト範囲は360度(分解能2.8度)と広い。同期ループのロックに要する時間は0.59μs以下である。
IntelとGeorgia Institute of Technologyの共同研究グループは、Intel 18AプロセスとIntel 3プロセスに向けた熱管理用デジタル温度・電圧センサーの開発成果を述べる(講演番号C10.5)。ハイブリッド接合で積層する3次元DNN(深層ニューラルネットワーク)プロセッサに組み込んだときのセンシング誤差(温度/電圧)は量産時の較正後において1.9℃/1.3mV(Intel 3)および3.1℃/2.1mV(Intel 18A)とかなり低い。センサーの経年劣化を補正する係数を常に生成することで、測定精度を維持する。センサーの活用でDNNプロセッサの負荷に応じた電圧バイアス制御を実現し、ガードバンドとして必要とされる温度範囲を狭くできた。
Samsung ElectronicsとYonsei Universityの共同研究チームは、1.5MHzと2.5MHzの間で中間周波数を構成できる直交連続時間デルタシグマ変調器を試作した(講演番号C28.5)。直交バイクアッド(Biquad)増幅器と直交デジタル雑音結合によって6次の雑音整形を実現する。性能指数(FoM)は帯域幅が4MHzのときに175.4dBと高い。
TSMCの機械学習用CiMコンパイラと低消費高密度SRAMマクロ
続いて、機械学習/深層学習向けのデバイスおよびアクセラレーションと新しい計算技術分野とパワーマネジメント回路分野、メモリ技術分野の注目講演を簡単にご紹介しよう。
TSMCは、234.4TOPS/W(電源電圧0.5V)および511.9TOPS/平方mm(電源電圧1.2V)と高い性能を有するCiM(コンピューティングインメモリ)コンパイラを開発した(講演番号C8.1)。機械学習向け。重み付け当たりに複数のMACユニットを割り当てるとともに、複数のデータ形式をサポートした。製造技術は2nmのナノシートFET。最小電源電圧は0.38Vと低い。
Southern University of Science and Technologyと高知工科大学の共同研究チームは、量子計算の誤り訂正に向けた最小重み完全一致(MWPM)表面符号デコーダを試作した(講演番号C7.3)。オンザフライの重み計算によって重みメモリのシリコン面積を989分の1に削減してみせた。並列マッチングエンジンによるフルMWPMを実現するとともに、ロック対ベースの速度調整がクロスプラットフォームに適応する。40nm技術で製造したテストダイは4Kの極低温下で1.9×10のマイナス6乗の論理誤り率と20.8nsのデコード時間を達成した。
Intelは、20W/平方mmの電力密度で入力電圧4.8V、ピーク効率94.8%のスイッチドキャパシタ昇圧レギュレータを開発した(講演番号C2.1)。垂直電力供給網の初段電流増幅器を想定している。
TSMC Design Technology JapanとTSMCは、データアクセス当たりの消費電力が2.28pJと小さく、記憶密度が37.4Mbit/平方mmと高いシングルポートSRAMを共同開発した(講演番号C29.1)。メモリセルは6トランジスタ構成。アクセス行に応じた読み出しトラッキングによるビット線振幅の調整機能を備える。書き込みアシストではアクセス行に応じて負のビット線ブースト容量を切り換えた。2nm技術で536kbitのSRAMマクロを試作してみせた。
MediaTekの超低消費推論チップとNVIDIAの3次元積層光受信器
ここからは、プロセッサとシステム・オン・チップ(SoC)分野および有線と光送受信器分野から1件ずつ、注目講演を簡単にご報告しよう。
MediaTekは、デジタルCiMベースで超低消費電力の常時オン推論実行ニューラルプロセッシングユニット(AoR NPU)を開発した(講演番号C21.1)。ウエアラブル機器向け。演算性能は1.47TOPS。512個の8bit MACと256KBの1次キャッシュを内蔵した。Transformerモデルの推論実行エネルギーは従来技術の31.8分の1に減少した。スマート眼鏡で最大10日間のバッテリ駆動が可能だとする。
NVIDIAは、3次元積層のシリコンフォトニクス技術による32Gbpsの光受信器を報告する(講演番号C20.2)。差動式インピーダンス変換増幅器(DTIA)を搭載した。光受信感度は32Gbps伝送が-17.3dBm、28Gbps伝送が-18.9dBmである。受信エネルギーは0.484pJ/bit(32Gbps伝送の場合)とかなり低い。65nm技術のフォトニクスIC(PIC)と7nm FinFET技術の電子回路(EIC)を銅-銅ハイブリッド接合によって3次元積層した。
投稿件数は3年連続で過去最多を更新
ここからは、回路分野の投稿論文数と採択論文数、採択率の状況を報告する。投稿件数(レイトニュースを除く)は573件で過去最多となった。2024年以降、3年連続で過去最多を更新したことになる。前回のハワイ開催(2024年)から、31件増加した。前年の京都開催(2025年)と比べても24件の増加である。
採択件数は138件で2024年と変わらない。2025年では採択件数が146件だったので、前年比では8件の減少である。採択率は24%と低い。前年の27%から3ポイント低下した。
国・地域別の投稿件数では中国、採択件数では韓国がトップを占める
投稿論文件数を国・地域別にみると、中国(香港とマカオを含まない)が173件で最も多い。ただし前年の174件からは増えず、ほぼ横ばいとなった。2番目に多いのは韓国で126件と数えた。前年の107件からは20件近く増加した。3番目は98件の北米(米国とカナダ)である。4番目は55件の欧州、5番目は43件の台湾、6番目は32件の港澳(香港とマカオ)、7番目は25件の日本と続く。
採択論文件数を国・地域別にみると、トップは韓国の37件である。韓国がトップになるのは初めて。2位は33件の北米、3位は21件の中国と欧州、5位は13件の日本となった。
技術分野別では投稿数と採択数ともプロセッサが最多を占める
技術分野別の投稿件数と採択件数ではいずれも、「プロセッサ(量子計算、機械学習を含む)」が最多となった。「プロセッサ技術」の投稿件数は126件、採択件数は27件である。採択率は21.4%と平均(24%)よりも低い。
投稿件数が多い分野にはほかに、「電力変換回路」の93件、「センサーとイメージャ、ディスプレイ」の60件、「データ変換器」の55件、「バイオメディカル回路とシステム」の54件などがある。
採択件数が多いのは「プロセッサ」のほか、「電力変換回路」の21件、「バイオメディカル回路とシステム」の18件、「センサーとイメージャ、ディスプレイ」の16件、「無線受信器と無線送信器」の13件となっている。
産業対大学では大学の数的優位が明確に
次は大学界(大学、大学院、大学付属機関)と産業界(企業と研究機関)の投稿・採択論文件数である。回路分野は2023年以前からすでに、投稿件数と採択件数ともに大学界が多数を占めてきた。2024年以降の投稿件数急増は大学界からの投稿増加が主体で、産業界からの投稿数は横ばいが続く。
投稿件数に占める産業界の割合は漸減し続けており、2024年と2025年に続き、2026年も低下した。2026年の投稿件数における産業界の比率は12.4%で、前年と比べて2.5ポイント下降した。
採択件数でも大学界が優位に立つ。大学の採択件数は107件、産業の採択件数は31件である。産業が採択件数に占める比率は23%と低い。それでも2025年まで3年連続で下降して過去最低となった同年の21%からは、2ポイント上昇した。
採択率は大学が21%、産業が43%で産業界が高い。採択率での産業優位は、過去ずっと続いてきた傾向でもある。
発表機関別採択件数のトップはマカオ大学とSamsungが8件で同数
発表機関別の採択件数では、University of Macau(マカオ大学)とSamsung Electronicsがいずれも8件でトップを占めた。3位は7件のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)とUniversity of Michigan(ミシガン大学)である。5位は6件で3つの機関が並んだ。Tsinghua University(清華大学)、東京科学大学、TSMCである。
日本の採択論文は無線通信とメモリが多い
すでに述べたように、日本の採択論文件数は13件である。技術分野別に見ると、無線通信が6件、メモリが3件、センサー(およびイメージャとディスプレイ)が2件、データ変換器が1件、パワーマネジメントが1件となっている。
発表機関別では東京科学大学(旧東京工業大学)が6件と最も多い。同大学の発表はすべて無線通信分野である。
今回と前回でご紹介したほかにも、注目すべき研究開発成果は少なくない。機会があれば本コラムでご報告するので期待されたい。










































