西川和久の不定期コラム

SoCが進化し、Apple Pencilに対応した「第6世代iPad」

製品写真(Apple Pencilは別売)

 2018年3月末、従来製品からプロセッサ(SoC)を強化し、Apple Pencilにも対応した第6世代iPadの販売がはじまった。

 価格は第5世代と変わらず税別37,800円(Wi-Fi/32GB)。発売日にWi-Fi/32GBモデルを購入し、数週間使った試用レポートをお届けしたい。

iPhone 7(Plus)と同じA10 Fusionを搭載しApple Pencil対応

 筆者とiPadの付き合いは、長いような短いような良く分からない状況だ。

 というのも初代iPad、iPad 2、iPad 3までは続けて購入した。しかしその後は、タッチ可能なスマホ以外のデバイスとしては、Nexus 7(2012)、Nexus 7(2013)、Surface 3、ASUS Chromebook Flip C100PAと、少し方向が変わってしまい、浮気期間が長くなっている。また大型化したiPhone 6 Plusの登場で、タブレットをまったく使わなくなった時期もあった。

 タブレットは、当初アプリ開発が目的だったものの、それが終わり、用途が仕事用のメインマシンを落とした後の余暇用となったのも、ご無沙汰した理由の1つになっている。

 当然、今となってはiPad 3の処理速度では遅く、Safariの動作すらも厳しい状況。たまにDuetでトリプルディスプレイやAmpliTubeで遊ぶ程度になっていた。

 そんな中、3月末に少し還付金があり、用途を考えた末、ASUS Chromebook Flip C101PAか、新しいiPadの2択となった。前者は2017年10月発売、後者は数日後に新発売。流通価格はほぼ同じだった。

 年末に掲載した「2017年を振り返る」では、来年、つまり今年(2018年)に欲しいデバイスとして、ASUS Chromebook Flip C101PAを挙げていたが、すでに販売開始から半年近く経っているので、今年後半出るであろうC102PAを狙うことにして、今回は新しいiPadを購入した次第だ。

 モデルはWi-Fi/32GBで、おもな仕様は以下のとおり。

Apple「第6世代iPad 32GB/Wi-Fi」
プロセッサA10 Fusion
メモリ2GB/LPDDR4
ストレージ32GB
OSiOS 11
ディスプレイ9.7型2,048×1,536ドットIPSパネル
インターフェイスIEEE 801.11ac無線LAN、Bluetooth 4.2、800万画素背面カメラ、120万画素FaceTimeカメラ、Lightningコネクタ、3.5mmヘッドフォンジャック
センサー指紋(Touch ID)、ジャイロ、加速度、気圧計、環境光、電子コンパス
バッテリ駆動時間最大10時間(Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生)
サイズ/重量169.5×240×7.5mm(幅×奥行き×高さ)/約469g
カラーバリエーションシルバー、ゴールド、スペースグレー
税別価格37,800円

 プロセッサはA10 Fusionで、iPhone 7(Plus)と同じだ。第5世代iPadのA9だったので、1世代新しくなっている。ちょうどiPhone 7(Plus)と6s(Plus)の体感性能差と考えれば分かりやすいだろうか。

 メモリは2GB、ストレージは32GB(128GBモデルあり)、OSはiOS 11。近年では、メモリはハイエンドのAndroidスマートフォンでは4GB以上の容量が一般的になったが、OSが異なるため単純比較はできない。iOSデバイスとしては、平均的な容量だ。

 ディスプレイは、9.7型2,048×1,536ドットのIPSパネル。インターフェイスは、IEEE 801.11ac無線LAN、Bluetooth 4.2、800万画素背面カメラ、120万画素FaceTimeカメラ、Lightningコネクタ、3.5mmヘッドフォンジャック。センサーは、指紋(Touch ID)、ジャイロ、加速度、気圧計、環境光、電子コンパス。

 サイズは169.5×240×7.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約469g。バッテリ駆動時間は、Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生などで最大10時間。

 メモリからバッテリ駆動時間までの各項目は第5世代と同じだ。カラーバリエーションは、シルバー、ゴールド、スペースグレーの3色。

 最大の特徴は、これまでiPad Proでしか使えなかったApple Pencilに対応した点。ただしApple Pencilの機能自体は同じだが、画面のリフレッシュレートが60Hz(第6世代iPad)か120Hz(iPad Pro)かの違いがあり、加えてプロセッサがA10X Fusionなので、書き心地には違いがある。

 このように、第6世代iPadはプロセッサの強化と、Apple Pencil対応が、第5世代と比較してパワーアップした部分となる。価格は据え置きの税別37,800円。ほかのタブレットや2in1と比較して、お買い得感が高い。

前面パネル中央上に120万画素FaceTimeカメラ、中央下にTouch ID対応ホームボタン
背面。左上に800万画素背面カメラ。カラーバリエーションはシルバー
左/下側面。下側面にステレオスピーカーとLightningコネクタ。左側面には何もない
右/上側面。上側面に3.5mmヘッドフォンジャックと電源ボタン。右側面に音量±ボタン
付属品はLightning/USBケーブルとACアダプタ
6th Generationの記述。パッケージの背面にストレージサイズ/Wi-Fiと6th Generationの文字
重量は実測で470g

 購入したのはシルバーで、前面がホワイト、背面がシルバーの配色となる。

 手元にあるもっとも新しいのがiPad 3ということもあり、見た目だけでもその差は歴然。同じ9.7型でも、ベゼルのサイズが大幅に違い、ご覧のようにコンパクトになっている。重量は実測で470g vs 651g。厚みも随分異なり、もはや別モノだ。

iPad 3との比較。パネルサイズは同じだが、ベゼルが広いため一回り大きく、また厚みもある。重量は実測で651gと、今となっては結構重い

 前面は、パネル中央上に120万画素FaceTimeカメラ、中央下にTouch ID対応ホームボタン。背面は、左上に800万画素背面カメラ。下側面にステレオスピーカーとLightningコネクタ。上側面に3.5mmヘッドフォンジャックと電源ボタン。右側面に音量±ボタンを配置。この辺りは同じだ。

 9.7型のディスプレイは、発色、明るさ、コントラスト、視野角すべてにおいて良好。品質の高いパネルが使われている。ただ、普段iPhone Xの有機ELを見慣れている関係か、少し黒の締まりが弱い感じがしないでもない。

 タッチの反応は非常にスムーズ。この価格帯でこのパネルが使えるなら、PC系も頑張って欲しいところだ。気になるのは、iPad 3より目立つ指紋の跡で、ちょっと操作するとみるみる指紋だらけとなる。ここまで目立つと頻繁にクリーニングする必要がある。

 Touch ID対応ホームボタンは、物理的に押し込むタイプだ。指紋の登録が少し面倒だが、いったん登録してしまえばロック解除は簡単に行なえる。いまのところ、両親指と右人差し指のみ登録している(左の親指は、右手にコーヒーカップなどを持っている時に使用)。

 カメラは800万画素で、iPadユーザーはiPhone所有率も高そうなので、描写力の劣るiPadでとくに撮影する必要はないだろう。同じApple IDを設定しておけば、どちらで撮影しても同期して写真アプリで表示できるため、わざわざiPadで撮影する必要はない。

 ノイズと振動はもちろん皆無。後半のバッテリベンチマークテストで長時間YouTubeを連続再生しても、ほんのり暖かくなる程度で、発熱はまったく問題ないレベルだ。

 サウンドは、縦位置で下側面にステレオスピーカーがあるため、幅が狭くステレオ感は乏しい。また反射のさせ方でも音質が大幅に変わる。とはいえ同クラスのタブレットと比較すれば良い方だろう。

 イヤフォン出力は、最大にするともはやうるさ過ぎて聴けないレベルだ。高音から低音まで出ていて切れもいいが、イマイチ伸びや艶やかさには欠けているだろうか。

 音質面よりも、横位置で動画再生時に音が一方に寄ってしまうのが最大の弱点だ。iPad Proは四隅にスピーカーを配置した4スピーカーなので、この問題は発生しない。

 個人的には、Apple Pencil対応より、4スピーカー仕様にしてほしかった。近い将来のモデルで実現してほしいと切に思う。この関係もあり、普段は縦位置でロックし使用、大きな画面&大音量で観たい時は、TVへCastしている。

速くて使い易いもののFacebookとInstagramアプリに不満

 初期起動時、バックアップから環境を引き継ぐか新規かを選択できるが、iPad 3の環境はもう古いこともあり今回はあえて新規で設定した。

 ホーム画面は2画面。一画面目は、「FaceTime」、「カレンダー」、「写真」、「カメラ」、「連絡先」、「時計」、「マップ」、「ホーム」、「ビデオ」、「メモ」、「リマインダー」、「iTunes Store」、「App Store」、「iBook」、「設定」。二画面目は、「ヒント」、「Podcast」、「Photo Booth」、「友達を探す」、「iPhoneを探す」。Dockには、「メッセージ」、「Safari」、「iTiunes」、「メール」、「ファイル」を配置。Touch IDなども含め操作やアプリは、第5世代と変わってないのでとくに説明の必要はないだろう。

 この状態でストレージは27.92GB使用可能だった。筆者のように、写真や動画などをローカルに置かないユーザーであれば足りるが、いろいろローカルへ入れたい場合は、128GB版を選択することになる。

 アプリの作動速度、描画速度、アプリ切替速度などすべて驚くほど高速で、ある意味、同クラスのPCを大幅に超えている。コンテンツ消費タイプの使い方であれば、ストレスや不満はまず感じないだろう。これだけの性能が税込み4万円は驚くばかりだ。

ホーム画面1/2
ホーム画面2/2
ウィジェット
タスク一覧とコントロールパネル

 iOS 11は、もちろんSplit ViewとSlide Overに対応。マルチタスク的にアプリを使用することができる。iPhoneや古いiPadでは非対応の独特の機能だ。

 前者は画面約半分もしくは約1/3と2/3に分割し、それぞれアプリを配置。後者は一時的にアプリの上に被せる状態で、もう1つアプリを引っ張り出すことができる。画面を効率よく使えて便利な機能だが、アプリ側の対応が必要となる。

Split View
Slide Over

 筆者の場合、iPhoneを含め、おもに使うアプリは、Safari、Facebook、Instagram、Twitter、メール、Messenger、写真、YouTube、Feedly……など。ほとんどソーシャル系とメッセージ系だ。

 この場合、たとえば横位置でSplit Viewを使い、InstagramとFacebook、TwitterとSafari、メールとMessengerを配置すれば便利だろう……と考えるが、実際やってみると、うまくいかないケースがある。

Facebookアプリ(Split View/Slide Over未対応)
Instagramアプリ(iPhone版のみ)

 というのも、FacebookアプリはSplit View/Slide Over未対応で全画面表示のみ。Instagramアプリにおいては、iPad版はなくiPhone版のみと、昔とまったく変わっていない。どちらもFacebook陣営で、Split View/Slide Over対応やiPad対応は技術的に難しいものではないため、(たとえばSplit View/Slide Over対応すると、逆側のViewに表示している広告をクリックする可能性があるなど)意図的にこうしていると思われる。

 メイン2つが未対応では使いにくいため、Split View/Slide Overの画面キャプチャに掲載した「Friendly」を使っている。このアプリはFacebook、Instagram、Twitterのアカウントを1つのアプリで表示でき、切り替えながら使うことができ、非常に便利だ。

 ただ、基本的にWebサイトを少し細工して表示している関係で、たとえばInstagramではDMが使えない(Web版未実装)など、若干専用アプリには劣るものの、Split View/Slide Overが使えるので重宝している。

 iOS自体はマルチタスクに対応し、さらに第6世代iPadはスピードアップ。用途によってはPCで扱うよりも使い勝手が良いケースがあるものの、肝心のアプリがこれでは、せっかくの良さが活かしきれない。App Store掲載時、Split View/Slide Over対応は必修項目にすべきだろう。

 ベンチマークは簡易的に、Geekbench 4とGoogle Octane 2.0を実行。バッテリベンチとしてWi-Fi接続で音量・明るさ共に50%のYouTube全画面連続再生を行なった。

 バッテリベンチ以外は、比較対象としてiPhone X/A11 Bionicのスコアも掲載する。結果は以下のとおりだ。

iPad/Geekbench 4/Single-Core 3,497/Multi-Core 5,996
iPad/Geekbench 4/Metal 13,141
iPad/Google Octane 2.0/26,036
iPhone X/Geekbench 4/Single-Core 4,245/Multi-Core 10,416
iPhone X/Geekbench 4/Metal 14,773
iPhone X/Google Octane 2.0/33,141

 ざっと見ると、A10 Fusion搭載のiPadは、たとえばGoogle Octane 2.0が2.5万超えと、Core iプロセッサ並みのスコアで十分速いのだが、A11 Bionic搭載のiPhone Xはさらに高速なのが分かる。とくにMulti-Coreが倍近く速い。

 いずれにしても、これだけ速いと手元のタブレット系(Surface 3、ASUS Chromebook Flip C100PAなど)は、仕事は別として余暇では出番がなくなってしまった。

 YouTube連続再生のバッテリベンチは、約11時間半で電源が落ち、ほぼ仕様どおり。この時、発熱はどの部分もほんのり暖かくなる程度だった。結構熱を持ったiPad 3とは対照的だ。

Apple Pencil

 第6世代iPadの最大の特徴はApple Pencil対応。購入はしていないので、今回はAppleからお借りした。販売価格は税別10,800円だ。

 iPad Proと共に発表されたApple Pencilは、ショップで少し触った程度。それなりの時間操作したのは今回が初となる。したがってiPad Proとの比較などはできないので予めご了承いただきたい。

 まず驚いたのがその大きさだ。Surfaceペンとの比較写真を掲載したが、結構長いのが分かる。バッテリや内部構造からこうなったのか、持った時のバランスなどを考慮してこうなったのか不明だが、子供もふくめ、これだと扱いにくいと感じる。重量はどちらも実測で21g(Surfaceペンはバッテリ込み)と同じだった。

Apple PencilとSurfaceペン
Apple Pencilで落書き
キャップ部(上)と延長コネクタ(下)
ペアリング時(もしくは充電)

 バッテリは内蔵式で、充電は上部のキャップを開けるとLightningコネクタがあるので、iPadに刺すか、付属の延長用コネクタを使い、通常のLightning/USBケーブルで行なう。

 このキャップと延長コネクタは小さく、行方不明になる可能性が高い。何か工夫がほしいところだ。さらに、刺した状態でペンを上から押すと、コネクタ部分がポキっと折れそうな不安要素もある。

 初期設定は、iPadとApple PencilでBluetoothを使いペアリングを行なう。方法が変わっていて、写真のようにiPadのLightningコネクタへ刺すとパネルが表示され「ペアリング」を選ぶだけでOKと簡単になっている。

 実際の使用感は、メモ書き/落書き程度だとSurface 3+Surfaceペンと比較して大差ないように思う。この点は用途で大きく変わると思われるため、ショップなどで実際に確認して欲しい。


 以上のようにApple「第6世代iPad 32GB/Wi-Fi」は、プロセッサにA10 Fusion、2GB/32(128)GB、9.7型2,048×1,536ドットIPSディスプレイと、第5世代のプロセッサを強化した上でApple Pencilに対応。にも関わらず、価格据え置きの税別37,800円(Wi-Fi/32GB)。非常にお買い得のモデルとなっている。

 前からだが、仕様的に唯一気になるのは、縦位置でも横位置でもステレオになる4スピーカーではない点(メモリ容量とパネル/カメラ性能も違うが)。これだけが理由でiPad Proにするには価格差があり過ぎる。

 またFacebookやInstagramなど、一部だが主要アプリがOSの機能に未対応。これによって使用感を損なっているのも残念なところか。

 とはいえ、これだけの性能/機能でこの価格。少し前のiPadを持っていて「そろそろ買い替え時か?」と思っているユーザーにオススメできる逸品だ。