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16型で1.1kg台の魅力! 大画面&軽量モバイルノート「LG gram」の実力を測る

LG gram 16Z90P-KA52J1

 LGエレクトロニクス・ジャパンから、軽量ノートPC「LG gram」シリーズの2021年モデルが登場した。2021年モデルでは、軽さや堅牢性、長時間駆動といった魅力はそのままに、全モデルでアスペクト比16:10の縦長ディスプレイを採用。また、Tiger Lakeこと第11世代Coreプロセッサを採用し性能も強化されている。

 今回は、新しく追加された16型ディスプレイ搭載モデル「gram 16Z90P-KA52J1」を取り上げ、ハード面を中心に紹介する。すでに発売中で、実売価格は21万6,800円前後。

搭載ディスプレイを一新し、全モデルフルモデルチェンジ

 LGエレクトロニクス・ジャパンのモバイルノート「LG gram」シリーズは、優れた軽さと堅牢性を兼ね備え、長時間駆動も可能という、モバイルノートにとって重要なポイントをしっかり満たした製品として、多くのユーザーから支持を集めている。今回登場した2021年モデルは、そういった魅力を維持しつつ、全モデルともフルモデルチェンジとなっている。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。アスペクト比16:10の縦長ディスプレイを採用し、従来モデルからフルモデルチェンジを果たしている

 2021年モデルで最大の特徴となるのが、全モデルでアスペクト比16:10の縦長ディスプレイを採用している点だ。従来モデルまでは一般的なアスペクト比16:9のディスプレイだったが、縦が長くなることで一度に表示できる縦方向の情報量が増え、Webページの閲覧はもちろん、ExcelやWordなどのビジネスアプリもより快適に利用できるようになっている。

 2021年モデルのラインナップは、14型モデル、16型モデル、17型モデルの3種類となる。今回取り上げている16型モデルはgramシリーズ初だが、実際には従来の15.6型モデルを置き換えるものとなる。

正面
左側面。高さは16.8mmと十分に薄い
背面
右側面
裏面。フットプリントは355.9×243.4mm(幅×奥行き)と、従来の15.6型モデルより幅がわずかに小さく、奥行きがやや大きくなっている

 薄く直線的で比較的シンプルな外観デザインは、従来モデルから大きく変わっていない。筐体色は全部で3色用意するが、試用機はマット調のブラックとなる「Obsidian Black」を採用。シンプルな筐体デザインと合わせて、とても落ち着いた印象が伝わってくる。

 サイズは、355.9×243.4×16.8mm(幅×奥行き×高さ)。2020年の15.6型モデルは357.6×225.3×16.8mm(同)だったため、横幅は1.7mm短くなった。ただし、縦長ディスプレイの採用によって奥行きは18.1mm増えている。とは言え、ディスプレイが4辺狭額縁仕様となっているため、ディスプレイサイズのわりにはかなりコンパクトという印象だ。

 重量は、公称約1,190g、実測では1,148.5gとわずかに軽かった。1.1kg台という重量は、13型クラスのモバイルノートでも十分に通用するが、16型の大型ディスプレイを搭載しつつこの軽さは大きな魅力と言える。

 ちなみに今回は、2021年の17型モデルも同時に借りられたため、そちらともサイズを比較してみた。17型モデルのサイズは380.2×260.1×17.8mm(同)と、16型モデルよりもひとまわり大きくなっている。もちろん一般的な17型ディスプレイ搭載ノートPCよりはかなりコンパクトだが、持ち歩くならやはり16型モデルのほうが軽快だろう。

17型モデル(左)との比較。17型モデルは16型モデルよりもひとまわり大きく、持ち歩くにはやや大きいという印象だ
奥が17型モデル、手前が16型モデル。こうするとサイズの違いがよくわかるだろう
ディスプレイを開いて17型モデルの上に16型モデルを置いてみた

 筐体素材はマグネシウム合金を採用し、軽さを追求しつつも従来モデル同様の優れた堅牢性もしっかり受け継いでいる。具体的には、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠した7種類の堅牢性試験をクリアしているという。

天板部分。直線的な筐体デザインやフラットな天板は従来モデルとほぼ同じ。筐体はマグネシウム合金を採用しており、モバイルノートとして申し分ない強度も確保

 実際に、ディスプレイを閉じた状態で筐体をひねってみても、ほとんど歪むことがなく、申し分ない強度が実現されているとわかる。ディスプレイ部単体ではかなり薄いこともあって、ひねるとやや大きく歪み、少々不安を感じるものの、持ち歩く場合にはディスプレイを閉じるため問題はないはずだ。毎日鞄に入れて持ち歩くとしても、まったく不安はないだろう。

重量は実測で1,148.5gと公称よりも軽く、十分軽快に持ち歩けると感じる

WQXGA表示対応の16型液晶を採用

 16Z90P-KA52J1のディスプレイは、2,560×1,600ドット表示対応、アスペクト比16:10の16型液晶を採用している。パネルの種類はIPSで、上下左右ともに申し分ない視野角を確保している。

2,560×1,600ドット表示対応の16型IPS液晶を採用。上下に広がったことで多くの情報を表示できるようになり、作業の快適度が高まる

 DCI-P3カバー率99%の広色域表示をサポートし、加えてパネル表面は光沢処理となっており、発色は非常に鮮やかな印象。赤や緑、黄色など鮮烈な印象の発色具合は、プロの映像クリエイターでも十分に満足できそうだ。しっかりと色味を確認しながら、写真のレタッチや動画編集が行なえるだろう。

DCI-P3カバー率99%の広色域表示をサポートしており、非常に鮮やかな映像を表示できる。写真や動画の編集も本来の色味を確認しながら作業が行なえそうだ。ただし表面は光沢処理のため外光の映り込みがやや激しい点は気になる

 ただ、光沢パネルということで、外光の映り込みはかなり気になる。オフィスなどで利用する場合には、天井の照明が映り込んで気になる場面も出てきそうだ。

 ディスプレイ周囲のベゼルは、先に紹介しているように4辺狭額縁仕様となっている。従来モデルでもまずまずの4辺狭額縁仕様だったが、2021年モデルでは上下のベゼルがさらに狭くなった印象で、ほぼ全体が表示部と感じるほどだ。もちろん、筐体の小型化にも大きく貢献しているのは間違いないだろう。

ディスプレイは140度ほどまで開く

キーボードはストロークが深くしっかりタイピングできる

 キーボードも、ディスプレイ同様に2021年モデルで進化した部分だ。配列は従来同様に日本語配列となっており、キーボードバックライトも搭載。16型と17型モデルではテンキーを用意するという点も従来モデルから変わっていない。ただ2021年モデルでは、キーストロークが約1.65mmと従来モデルの約1.5mmから深くなっている。

キーボードは日本語配列で、テンキーも備えている。配列は標準的で、タッチタイプも申し分ない

 実際にキー入力を行なってみると、一般的なモバイルノートよりもストロークが深いことがすぐに実感できた。しっかりキーを押し込んでタイピングするという、デスクトップPC用のキーボードに近い感覚でタイピングできると感じた。

 また、かなり強めのクリック感も、ほかのノートPCにはない特徴と感じた部分。キーを押し込みはじめてすぐにやや強めの固さが指に伝わり、そのまま押し込むと一気に固さが抜けて底まで押し込む、といった印象で、やや強めの力でしっかりタイピングする必要がありそうだ。

主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保
キーストロークは1.65mmと従来モデルから0.15mm深くなった。硬めの打鍵感と合わせて、デスクトップPC用キーボードのようにしっかりキーを押し込むようにタイピングできる

 筆者自身は、もう少し柔らかめの打鍵感が好みではあるが、とくに使いづらいと感じることはなく、確実なタイピングができるという印象だった。

 LG gramシリーズのような薄型ノートPCでは、キーボードのストロークが浅くなることが多く、なかには1.2mmや1mm程度とかなり浅いストロークのキーボードを採用する例も見られる。そういったなか、筐体の薄さは従来同様ながら、キーボードのストロークを深くするという点は、PCの利便性を高めるという意味でもおおいに歓迎できる。

 ただ、気になる部分もいくつかある。まず1つが、主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保しているものの、Enterキー付近の一部キーでピッチが狭くなっているという点だ。キーボード左右には筐体に少し余裕が残されており、すべてのキーを均一なキーピッチにすることも可能と思うだけに、この点は残念に感じる。

Enterキー付近の一部キーのピッチが狭くなっている点と、Enterキーとテンキーの間に広めの隙間が確保されていない点は少々残念

 また、テンキーとEnterキーの間にやや広めの間隔が用意されていない点だ。Enterキー操作時などに横のキーを間違って押す可能性が高くなるため、この点も改善を期待したい。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。従来モデル同様に大型のタッチパッドを搭載している。搭載位置が筐体中央になっているため、キーボードのホームポジションと比べるとやや右よりに配置されている点は少々気になるが、滑らかな指触りで操作性は申し分ない。

クリックボタン一体型のタッチパッドは大型で、滑らかな手触りと合わせて快適に利用できるが、ホームポジションからやや右に寄っている点は気になる
キーボードバックライトも内蔵しているので、暗い場所での作業も快適だ

スペックは標準的だがメモリは16GBほしい

 では、16Z90P-KA52J1の基本スペックを確認していこう。

 CPUにはCore i5-1135G7を採用。Tiger Lakeこと第11世代Coreプロセッサシリーズで、従来からCPUの処理能力が高められているだけでなく、内蔵グラフィックス機能がIntel Iris Xeグラフィックスに強化されたことで、3D描画能力も大きく向上。カジュアルゲームの快適プレイはもちろん、ビジネス系アプリでも優れた描画能力によってより快適な利用が可能となる。

 また、Intel Evoプラットフォームにも対応しているため、性能面はもちろん、高速起動などの快適に利用できる仕様が実現されている。

 メモリはLPDDR4X-4266を8GB搭載する。8GBあれば必要十分ではあるが、ビジネス系アプリも含めてアプリ自体が大型化しているため、16GBあったほうが安心できる。CPUにCore i7-1165G7を採用する上位モデルでは標準でメモリを16GB搭載しているため、メモリ容量に余裕がほしいと感じるなら上位モデルを選択すべきだろう。

 内蔵ストレージは、容量512GBのPCIe/NVMe SSDを搭載。内部には2基のM.2スロットが用意されており、購入後にSSDを増設可能となっている。ただし、SSDの増設はLGのカスタマーサポートに依頼する必要がある。自分で増設した場合には保証が受けられなくなるので注意したい。

 無線機能は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANとBluetooth 5.1を標準搭載。無線LANは2×2通信対応で、最大2.4Gbpsの高速通信が可能。

 外部ポートは、左側面にHDMI、Thunderbolt 4×2、オーディオジャックを、右側面にmicroSDカードスロットとUSB 3.1 Type-A×2を用意。Thunderbolt 4(USB 4 Type-C)だけでなくHDMIやUSB Type-Aも標準で用意しているため、ビジネスシーンでも安心だ。

左側面にはHDMI、Thunderbolt 4×2、オーディオジャックを配置
右側面には、microSDカードスロットとUSB 3.1×2を配置

 生体認証機能は、電源ボタン一体型の指紋認証センサーを搭載しており、顔認証カメラは非搭載。もちろん、電源投入時に電源ボタンを押すと、同時に指紋も読み取られるため、1度電源ボタンを押すだけで電源投入からWindowsログオンまで進むことになる。

電源ボタン一体型の指紋認証センサーを搭載
ディスプレイ上部には720pのWebカメラを搭載。顔認証カメラは非搭載だ

 付属ACアダプタは出力65WのUSB PD準拠ACアダプタとなっている。2個用意されているThunderbolt 4はいずれもUSB PDに対応しており、いずれかにACアダプタを接続することで給電および内蔵バッテリの充電が可能。内蔵バッテリは容量80Whと大容量だが、付属ACアダプタを利用することで急速充電が行なえる。もちろん、汎用のUSB PD ACアダプタも利用可能だ。

付属ACアダプタはUSB PD準拠で出力は65W。本体のThunderbolt 4に接続して利用する
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測305gだった

 このほかの特徴としては、DTS:X Ultra対応の高音質スピーカーの搭載や、Amazon Alexa対応などがある。スピーカーの音質は、やや低音が軽めという印象もあるが、でこのクラスのノートPCとしてはかなり優れると感じる。リモート会議などで相手の声がしっかり聞き取れるのはもちろん、音楽もなかなかの品質で再生してくれる。

 また、独自アプリとしてスマートフォンと連携し、ディスプレイ上にスマートフォンの画面や通知を表示したり、データを簡単に送受信できる「Virtoo by LG」をプリインストール。実際に手持ちスマートフォンで試してみたが、スマートフォンに届く通知をPCで確認できたり、スマートフォンで撮影した写真をPCへ簡単に転送できたりと、なかなか便利に活用できると感じた。

プリインストールされている独自アプリ「Virtoo by LG」を利用すれば、AndroidスマートフォンやiPhoneと連携し、スマートフォンの通知や画面をPCのディスプレイに表示したり、写真などのデータ送受信が可能

性能面は申し分なし

 では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL Benchmarkの「PCMark 10 v2.1.2508」、「3DMark Professional Edition v2.17.7137」、Maxonの「Cinebench R20.060」と「Cinebench R23.200」の4種類だ。

【表】ベンチマーク結果
LG gram 16Z90P-KA52J1
CPUCore i5-1135G7
(ターボブースト時最大4.20GHz)
ビデオチップIntel Iris Xe Graphics
メモリLPDDR4X-4266 SDRAM 8GB
ストレージ512GB SSD(NVMe/PCIe)
OSWindows 10 Home 64bit
PCMark 10v2.1.2508
PCMark 10 Score4,720
Essentials9,650
App Start-up Score12,512
Video Conferencing Score8,100
Web Browsing Score8,867
Productivity6,561
Spreadsheets Score5,807
Writing Score7,414
Digital Content Creation4,507
Photo Editing Score7,018
Rendering and Visualization Score2,782
Video Editting Score4,691
CINEBENCH R20.060
CPU1,829
CPU (Single Core)506
CINEBENCH R23.200
CPU4,314
CPU (Single Core)1,341
3DMark Professional Editionv2.17.7137
Night Raid11,925
Graphics Score15,449
CPU Score5,202
Wild Life10,959
Time Spy1,357
Graphics Score1,254
CPU Score2,540

 結果を見ると、スペックどおりの順当なスコアが得られている。第11世代Core i7搭載モデルと比べるとややスコアは劣るものの、大きな差がつけられているわけではなく、Core i5でも申し分なく快適に利用できるだろう。

 ただ、それだけにやはりメモリが8GBしか搭載しない点はかなり残念。写真や動画の編集を行なったり、大容量のデータを扱うアプリを利用する場面はもちろん、Office系アプリ利用時でも8GBではメモリ不足になる場面がかなり増えてしまう。コスト的に難しい部分もあるとは思うが、できればこのクラスのノートPCではメモリは16GB搭載を標準としてもらいたい。

 ところで、ベンチマークテスト中など高負荷時のCPUクーラーの動作音は、比較的静かという印象だ。高負荷時のファンの動作音や風切り音は耳に届くものの、ゲーミングPCのような爆音ということはなく、どちらかというと十分静かな部類と言える。それほど負荷がかからない状況ではほぼ無音に近い静かさなので、図書館などの静かな場所でも安心して利用できそうだ。

 ちなみにLG gram 2021年モデルでは、Tiger Lake搭載に合わせてCPUクーラーに大型のファンを採用するとともに、背面ヒンジ部の上下2方向から排熱を行なうことで冷却性能を高めているとのこと。キーボード後方の排気口付近は高負荷時に比較的高温となるが、キー入力時にキーボード付近で発熱を感じることはなく、効率良く排熱できていると言える。

 続いてバッテリ駆動時間だ。16Z90P-KA52J1では容量80Whの大容量バッテリを内蔵しており、公称のバッテリ駆動時間は約30時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)と非常に長くなっている。

 それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、14時間54分と、公称の半分ほどであった。

 ディスプレイの輝度は50%でもかなり明るいため、輝度を落とせば駆動時間をさらに延ばせられる。もちろん、テストで約15時間も持つということは、通常利用でも10時間は余裕でクリアできるはずで、充電器やモバイルバッテリを同時携帯しなくても1日のモバイル利用が可能だろう。

大画面PCを軽快に持ち歩きたい人におすすめ

 LG gramシリーズは、登場当初こそ軽さを追求したモデルだったが、途中から優れた堅牢性や長時間のバッテリ駆動を確保しつつ、そのなかで最大限の軽さを追求するという方向に転換。今回登場した2021年モデルは、その姿勢を保ちつつ、アスペクト比16:10の縦長ディスプレイを採用したり、ストロークの深いキーボードを採用するなどの進化を実現し、さらに魅力が高められている。

 細かな部分では、メモリ搭載量が8GBで増設が不可能だったり、せっかくのキーボードも一部キーのピッチが狭くなっていたりと気になる部分もあるが、全体的には十分な完成度を備えている。より大容量のメモリが必要な作業を行なう場合には、上位のCore i7搭載モデルを選択したいが、通常ビジネス用途であれば、十分快適に利用できるはずだ。

 あとは、どのディスプレイサイズを選ぶかだが、携帯性を重視するなら14型、軽快に持ち運べる範囲で可能なかぎり大画面ということなら16型がベストと感じる。そういった意味で、今回取り上げた16Z90P-KA52J1は、大画面を軽快に持ち歩いて利用したいという人におすすめだ。